東方増減記   作:例のアレ

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出発とスキマ攫い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま~」

 

「ああ、おかえり・・・って何だい!?その角は!?」

 

やっぱり神奈子ならつっこむよね

 

「え~と・・・生えてきた」

 

説明するのも面倒だし、適当適当

 

「生えてきたって、そんな馬鹿な事ある訳無いだろ!」

 

「あ、灰刃おかえり~。あれ?その角似合ってるね」

 

諏訪子との絡みは気楽で良いなぁ

 

神奈子も少しは見習えば良いのに

 

「無事でなによりだよ。さ、ご飯にしよ」

 

まだ後ろで神奈子が騒いでいるけど無視しておこう

 

それが良い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出て行くだって!?」

 

その日の夜、一緒に食事していた2人に話を切り出す

 

「ああ、最近俺を拝んでいく人間が増えたからな。完全に神になる前にまた旅にでるよ」

 

「良いじゃないか。灰刃も此処に祀られれば」

 

馬鹿な事言うな、誰が好き好んで神になんてなるか面倒臭い

 

「俺は妖怪でいる事が気に入ってるんだよ」

 

「そうかい、さびしくなるね」

 

神奈子・・・お前はただ飲み仲間がいなくなるのが惜しいだけだろ

 

「なに、永遠の別れって訳じゃないんだ。縁があればまた会えるさ」

 

「それもそうだね。お互い寿命なんかあって無い様なものだしね」

 

妖怪って寿命なんてあるのか?

 

「それで、どこに行くか決めてるのかい?」

 

「いや、全然」

 

もうすぐ夏だしな、北に行くのも良いかもしれない

 

「呆れたねぇ、本当に当ての無い旅かい」

 

「いや、当てならあるぞ?幻想郷だ」

 

旅に飽きたらあそこに戻れば良いだけだ

 

「幻想郷?聞いた事ないなぁ。神奈子知ってる?」

 

「噂だけなら聞いた事がある。ありとあらゆる幻想が集う場所だって事くらいだね」

 

「幻想郷は全てを受け入れるらしいから、2人も信仰が失われそうになったら来るといいよ」

 

「信仰が失われる?そんな事あるもんかい」

 

それがあるんだなぁ。希薄になってる記憶では既に信仰なんて形だけのものになってたから

 

「で?何時行くんだい?」

 

「明日かな。善は急げって言うだろ?」

 

「なら今日は送別会だね。」

 

結局、夜遅くまで酒盛りは続いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ元気で」

 

朝・・・と言うか、もう昼に近いけど

 

とりあえず、出発する事にした

 

「あんたもね」

 

「何かあったらすぐに来てくれてもいいからね」

 

少し名残惜しいけど、これ以上ここにいたら神格化が進む

 

さっさと行こう

 

翼を広げて飛び立つ

 

あっという間に小さくなっていく守矢の神社と2人の神

 

ちょ!参拝客の皆さん、俺を拝まないで!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神社から数キロメートル地点

 

俺は予定通りに北に向かっていた

 

やっぱり空を飛ぶのは気持ち良いな~

 

・・・・・OK現実逃避はやめよう

 

俺は嘘を吐いた

 

正確には神社から数キロメートル地点で目の前にいきなりスキマが開いた

 

勢いを落とせずにスキマに一直線に飛び込んだんだ

 

あの紫色したスキマ女め、今度は何を企んでやがる

 

お、出口だ

 

ここは・・・やっぱり幻想郷か

 

「いい加減にしないと消滅させるぞ、紫」

 

「あら、怖いわね」

 

すぐ隣に出現したスキマから上半身だけ出した紫がいた

 

その胡散臭い笑いをやめないと嫁の貰い手がいなくなるぞ

 

「その時は貴方に貰ってもらうから平気よ」

 

「心を読むな。変態スキマが」

 

油断も隙も無い

 

「それで、何の用だ?」

 

「それより、あなたって鬼だったかしら?妖怪だとばかり思っていたけど?」

 

角を見ながら訊いてくる

 

「うるさい、こっちにだって色々あるんだよ!それより用件を言え!」

 

「ええ、貴方に力を貸して欲しくて」

 

「何だ?月人にでも喧嘩売りに行くにのか?」

 

「違うわ。それは前にやって完敗したからもういいの」

 

やってたのか。軽い冗談だったのに

 

「この幻想郷全体に境界を使った結界を張ろうと思うのよ」

 

「結界?結界なんて張ってどうするんだ?」

 

「この幻想郷に人里があるのは知ってる?」

 

こんな妖怪の巣窟に人里なんてあったのか。全然知らなかった

 

「妖怪たちが生きていくには人間との関わりが不可欠。だから人里をつくり人間たちに住んでもらってるの」

 

「よく妖怪や鬼に襲われないな」

 

自分の住処の近くに人間が住んでいたら間違いなく襲いに行くだろ?普通

 

「人里の中では人間を襲わないように取り決めが行われたのよ」

 

成程、人間が居なきゃ妖怪は消える

 

つまりは体の良い餌場って訳か・・・仕方ないと言っても少し気に入らないな

 

「貴方も襲わないでね」

 

「人間なんて食わないって」

 

おい、何だ?その嘘ばっかりってな顔は

 

「それで最近、人間たちの方が少し優位に立っているのよ。だから外にいる妖怪たちを自動的に幻想郷に招き入れる結界を張るの」

 

「それでバランスを取る訳だな」

 

「理解が速くて助かるわ」

 

おおむね理解できたけど、それに俺がどう関わってくるんだ?

 

「で?俺に何をさせる気だ?」

 

「決まってるじゃない。結界を張る時の燃料タンクの代わりよ」

 

決まってるのか?てか、タンクって

 

また人を舐めた様な事を

 

「お願いします。これで良いんでしょう?」

 

くっ!先を越された!これじゃ反論でき・・・るな

 

「言い方ってものがあるだろう。人をタンク呼ばわりして快く引き受けてもらえるとでも思ってるのか?」

 

「いいじゃない、私と貴方の仲でしょう?」

 

何時、どんな仲になったのか?そこんとこ詳しく訊きたいな

 

「結界を張るって言っても今はまだ準備の最中なんだけどね」

 

「なら何で今俺を呼んだんだ?」

 

「しばらく会ってなかったからお願いついでに顔を見ておこうかと思ったの」

 

そんな理由で一々呼び出すなよ

 

「そうかい。ならもう用は済んだな。俺は行くぞ?」

 

「ダメよ。貴方にはこの幻想郷に住んでもらうから」

 

・・・は?

 

「何で?」

 

「今の所のバランスとりの為に・・・って言うのが建前」

 

建前って・・・言っちゃダメだろ

 

「本音は私よりも強い貴方に近くに居て欲しいから」

 

・・・何でそんな艶っぽい視線を向ける

 

悪いけど、俺はスキマ妖怪は守備範囲外だぞ?

 

「おい、言っておくけど「紫様!」俺・・は?」

 

誰?

 

何時の間にか紫の隣に金髪で尻尾がいっぱいある女性が浮いていた。この人もドアノブカバーを被っている、流行ってるのか?

 

「あら、藍。どうしたの?」

 

「どうしたの?じゃないですよ。てっきり何時もの様に寝てるかと思えば布団の中は空っぽですし辺りにスキマも見当たらないから心配になって探しに来たんじゃないですか」

 

「そう?ごめんなさい。今、私の想い人と逢引の最中だったのよ」

 

ふざけるな、誰がお前の想い人だ

 

けど金髪の女性は信じたのか顔を真っ赤に染めてあたふたとしだした

 

あらやだ、ちょっと可愛いじゃないの

 

「すすすすみません!私ったら気の利かない事を!すぐに消えますから!」

 

「いやちょっと待て!信じるなよ!」

 

「いえいえいえいえいえいえ!そんな隠す事でもないしょうに!って私は何を言ってるんですかね!と、とにかくごゆっくりと~~~~!!」

 

すごい速さで去っていく金髪

 

ありゃ絶対に誤解してるぞ

 

遠くで「紫様にもとうとう春が来ましたか」とか言ってるし

 

無駄な所で無駄に効力を発揮する能力だ

 

「おい、どうするんだ?あれ。って言うか誰だ?」

 

「あれは私の式、九尾の狐の藍(らん)よ。それから私は割りと本気だったりするのよ?」

 

此処は戦略的撤退が得策だな

 

簡単に言うと逃げる

 

「あ!あんな所で天狗たちが編隊飛行をしてる!」

 

「え?」

 

よし!今だ!

 

時代自体が古い所為か古典的な手が通用するのは楽しいな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、照れ屋さんね」

 

既に米粒程度まで小さくなった灰刃を見送りながら紫が呟く

 

「でもいいわ。時間ならまだまだたっぷりあるものね」

 

胡散臭い笑みを一層強くしながらスキマを開く

 

「また会いましょう?」

 

スキマに完全に入りきるとやがてスキマは消え去った

 

後には何時もと変わらない幻想郷の風景が広がるだけだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぶなかった。何があぶなかったのかは具体的には言えないけど、とにかくあぶなかった」

 

しかし幻想郷に住め、か

 

まだもう少し旅を続けたかったけど仕方ない、しばらくは幻想郷に留まろう

 

しかしな紫、俺がこれで諦めたと思うなよ

 

いつかまた自由を求めて飛び立ってやるぜ

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