「灰刃は妖怪だから、人間の気持ちなんか分からないんだ!!」
そう言った直後、灰刃は黙ってしまった
「あ……すまない………」
感情的になってしまった事をすぐに謝る
「いや………」
だが、時既に遅く
物凄く気まずい空気が辺りを包む
「そ、そうだ!2人共、良ければ今日は泊まっていってくれ!」
気まずさをに耐えかねたのか、慧音が間に入ってくる
「あ、ああ。良いだろ灰刃?」
これ幸いと、少しおどけてみる
「ああ、お言葉に甘えよう」
それをどう感じたのか、灰刃も軽い調子で返してくる
「そうか、良かった!なら、部屋に案内するよ」
灰刃は1人部屋、私と慧音は2人で寝る事になった
けど、あれから私はずっと後悔している
もっとしっかり謝っておけばよかった、何時もそうだからと言って灰刃と一緒に寝ておけばよかった
そうしてれば、ずっと後悔し続けるなんて事は無かったと思う。いや、無かった筈だ
次の日の朝
少し早くに目が覚めてしまった
しかし、慧音はそれよりも早く起きていたらしく、朝食の準備をしていた
「おはよう。もうすぐ食事の準備が出来るから、少し待っていてくれ」
朝の挨拶をしてくる慧音、朝から元気な事だ
灰刃は………いない。まだ寝てるのか?
いつもは私よりも早く起きているのに……珍しい事もあるものだ
特に気に留めずに居間らしき場所で待つ事にした
どのくらいの時間が経ったかは分からないけど、食事の準備が出来たらしい
灰刃はまだ起きてこない
いつもは私が起こされてるし、偶には起こしてやるか
立ち上がり、灰刃が寝ている部屋に向かう
「灰刃ー!朝だぞ!いつまで寝て…る?」
部屋の中には誰もいない
綺麗に敷かれた布団だけが残っている
おかしいな、厠(かわや)にでも行ったのか?
それにしては布団が綺麗過ぎる
「慧音、灰刃がどこに行ったか知らないか?」
居間に戻り、配膳していた慧音に尋ねてみる
「え?居ないのか?」
どうやら慧音も知らないらしい
まったく、朝っぱらから何処に行ったのやら………
結局、その日に灰刃が戻ってくる事は無かった
「一体どうしたんだ?」
今までも、急にふらっと居なくなる事はあった
けど、大抵はその日の内に帰ってきてた
丸一日も居なくなる何て事は滅多に無い
「なに、すぐに帰ってくるさ。それまでは、ここで待つと良い」
そんな慧音の言葉に従って、しばらく滞在させてもらう事にした
ただ待ち続けるのも悪いので、炊事や洗濯、掃除も慣れないながらに手伝ったりもした
しかし、2日、3日と待っても帰ってくる気配すらみせない
段々と不安になってくる
慧音も気遣ってくれているのか、努めて明るく振舞ってくれている
私も言い様の無い気持ちを持て余していた
灰刃が消えてから1週間
私は灰刃を探しに行く事にした
灰刃が居なくなるきっかけ、それはきっと居なくなる直前に言った『灰刃は妖怪だから、人間の気持ちなんか分からないんだ!!』発言の所為だと思った
灰刃は妖怪の中でもとびきり変わった奴だ
妖怪のくせに人間に関わろうとしない、かと思えば少しでも関わった人間は守ろうとする
そんな灰刃に、あんな事を言ってしまうなんて………自己嫌悪が激しい
長生きをしている分、人間の気持ちなら、多分私よりも理解していると思う
「謝りたい」
会って、私の言葉が灰刃を傷つけたなら土下座でも何でもしてやる
だから、探しに行く
意地でも見付けて謝ってやる
だけど、手がかりが無い
灰刃が行きそうな所……何年も一緒に居て心当たり1つ無いのは、正直情け無い
仕方がない
妖怪が集まるような場所を巡っていくか、聞き込みをして辿っていくか………
慧音に妖怪の溜り場がどこかに無いかと尋ねたが、危険過ぎると教えてもらえなかった
それでもしつこく聞き出そうとすると、慧音も一緒についていく事を条件に教えてもらった
しかし、私はこの時知らなかった
灰刃を探す出すのに数百年間も掛かる事を………