東方増減記   作:例のアレ

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チビ鬼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明け方、さくやの泣き声で目が覚める

 

周りを見れば、死屍累々

 

酔ってそのまま雑魚寝している鬼やら河童やら烏天狗やら

 

頭をかきながら欠伸を一つ

 

多分、おしめか何かだろうとさくやの所に行く

 

案の定、粗相のようでおしめを取り替え昨日貰った桃の残りを食べさせる

 

紐でさくやを背中に固定しながら朝食の準備に取り掛かる

 

昨日、残った白菜で簡単な味噌汁をつくり、米を炊く

 

途中でさくやが髪を引っ張ってくるが、本人が楽しそうにしているので好きにさせておく

 

包丁如きでは傷なんて負わない

 

にとりがお土産に持ってきてくれた魚を焼き、準備は完了………と、思ったら

 

「「おはよう」」

 

何時の間にか居間に紫と幽香が座っていた

 

「朝っぱらから何の用だ?」

 

大体の予想は出来ているが、何となく訊いて見る

 

「そんな事決まってますわ。貴方の背中で貴方の髪の毛で遊んでいる子の事ですわ」

 

紫の目が怖い

 

昨日、何処とも分からない場所に捨てたのが悪かったか?

 

「さあ、膝割って話しましょう?」

 

「出来れば割るのは腹にしてほしいな」

 

紫の戯言にツッコミを入れつつ、辺りを見ると雑魚寝していた連中が壁際に寄せられている

 

恐らく邪魔だと押しやられたんだろう

 

それでも寝続ける根性だけは評価しておこう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正直、昨日話した内容をもう一度話すのは面倒臭くて堪らなかった

 

だからと言って話さないと帰りそうに無いので仕方なく話した

 

「そういう訳だったのね」

 

「安心しましたわ」

 

説明しながら思った事が一つある

 

もしかしたら、さくやが俺の所に来たのは俺が子宝の神として祀られた所為かもしれない

 

子宝の神なのに子供の一人も居ないってのは不自然だから何かしらの強制力みたいなものが働いた可能性がある

 

俺自身が祀られていると確認、認識したからその力が一層強まった結果、さくやに出会ったのかも知れない

 

まあ、憶測だから本当かどうかは判らないがな。それに正直どうでも良い

 

「言っておくけど、さくやに手を出したら消滅させるから、そのつもりでな」

 

どうでも良い考えは即刻、思考から消して2人に釘を刺しておく

 

今はさくやから目を離す事はしないが、さくやが成長して1人で出歩くようになったら俺の目が届かない事もある

 

「幻想郷の妖怪たちにも伝えておけよ?さくやに何かあったら幻想郷ごと消すからな?」

 

もし、さくやが怪我、もしくは死ぬような事になったらさくやの両親に申し訳がたたない

 

引き受けた以上は全力を注ぐ

 

こればかりは絶対に譲れない

 

「貴方が言うと洒落にならないわね」

 

「洒落でも冗談でも無いからな」

 

幽香が引きつった笑いを浮かべながら言うが、切って捨てる

 

自分でもこうなるのは予想外だったが……俺は父性に目覚めたらしい

 

さくやが可愛くて仕方が無い

 

『目に入れても痛くない』何て迷信か気の迷いとか思っていたが、実践しても良い

 

実際痛くないんだろうけど、妖怪だから

 

レミリアやフランの時もそうだったが、自覚していない子供好きだったらしい

 

自覚したら自覚したで、厄介なのだが

 

………本当は距離を取った方が良いんだろうけど

 

さくやは人間で俺は妖怪

 

いつかは寿命の差が出て来てしまう

 

何時か来るであろう未来に思いを馳せながら

 

そんな事を考えていたら紫と幽香の事をすっかり忘れていた

 

「さて、これから朝飯にするけど食っていくか?」

 

取り繕うように言ってみる

 

さっきまでの俺の雰囲気との違いに戸惑った様子だったが、結局2人共頷いたので追加の魚を焼きに台所に向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勇儀ー!迎えに来たよー!」

 

食後にお茶を飲んでいると外から声が聞こえた

 

「ん?あの声は萃香(すいか)か?」

 

勇儀の関係者らしい

 

勝手に家の中に入ってくる

 

「勇儀ー、泊まってくるなら言っておいてよー」

 

どうやら勇儀は無断外泊だったみたいだ

 

角が2本ある子供のような鬼に窘められている

 

「何だい、小娘じゃあるまいし一々言わなくても良いだろう」

 

うんざりだと言わんばかりの勇儀の態度に腹が立った様子の小さい鬼と口論が始まる

 

しばらくその様子を眺めていたが、にとりに抱かれたさくやがその声に反応して泣きそうになっている

 

これは見過ごせない

 

「喧嘩するなら外でやってくれ。さくやが泣くだろうが」

 

口論を止めてこっちを見る2人

 

「あー!アンタだね、勇儀と喧嘩して勝ったって言う妖怪は!」

 

「確かに昔、勇儀と勝負して勝った事はあるけど」

 

「アタシとも戦えー!」

 

凄く良い笑顔で凄く面倒な事を言い出すチビ鬼

 

しかも行き成り飛び掛ってきた

 

「面倒だし娘の教育にも悪いから断る」

 

丁度掴みやすい位置にあった角を握り止める

 

「何でー、良いじゃないかー。って言うか角を掴まないでよ」

 

「俺は鬼と違って戦いに飢えていないんだよ」

 

角を放して解放する

 

だが、チビ鬼は諦めない

 

しつこく絡んでくる

 

「ねぇー少しだけで良いからさー」

 

拳骨の一発でも落とさないと分からないか?

 

「受けてやりなよ。萃香は私よりもしつこいよ?今受けておいた方が後々楽になるさね」

 

「お?勇儀、分かってるー」

 

鬼が結託しやがった

 

俺に味方はいないのか?

 

「お兄さん」

 

にとり!お前は分かってくれると信じていたよ

 

「さくやちゃんは私が見ていてあげるから、行ってきなよ」

 

お前も敵か

 

あぁ、面倒臭い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、庭先に連れ出された

 

「アタシの名前は伊吹(いぶき)萃香(すいか)。見ての通り鬼だよ」

 

「俺は灰刃。妖怪だ」

 

簡単な自己紹介を終えると双方構える

 

かと思えば萃香は腰にぶら下がっていた瓢箪のふたを開け一口飲む

 

この匂いは酒か、これから戦うってのに随分と余裕のある行動だ

 

「じゃあ行くよ」

 

瓢箪を腰に戻すと萃香は地面を蹴り物凄い勢いで飛んでくる

 

それを油断無くサイドステップで避ける

 

鬼には何回も殺されている

 

これ以上は殺されてやるつもりは無い

 

着地してこちらに背中を向けている萃香に拳を振り上げ突っ込む

 

萃香もそれを察知したのか、振り向きざまに拳を放ってくる

 

 

ゴォンッ!!

 

 

拳同士がぶつかり有り得ない程の轟音がする

 

衝撃で後ろに飛ばされるが、それは萃香も同じ事だ

 

家の中からさくやの泣き声が聞こえてくるが気を取られている場合じゃ無い

 

着地後、すぐに体制を整えつつ萃香の元に飛ぶ

 

体重が軽い分、俺より飛んだ萃香が着地するタイミングでローリングソバットを放つ

 

しかし、確実に命中した筈の攻撃に手応えが一切無い

 

その事で致命的な隙が生じてしまう

 

顔を向けると脇腹の辺りに蹴りが迫ってきている

 

咄嗟に攻撃の威力を減らし、防御の為に腕を動かす

 

 

バキィッ!!

 

 

凄い音が鳴り同時に物凄い衝撃が腕に伝わり、吹っ飛ばされる

 

減らしてこれなのだから、直で喰らっていたらと思うと恐ろしい

 

「んー?何か変な感触。何かした?」

 

「お前こそ何かしただろう?確実にあたった筈だぞ?」

 

腕を振りつつ、訊いてみる

 

折れてはいないみたいだけど、無理は出来ないな

 

「アタシの能力『密と疎を操る程度の能力』だよ。密度を減らせば攻撃は全部すり抜けちゃうんだ」

 

ほぅ、それは良い事を聞いた

 

密度を『減』らせば良い訳だな?

 

逆に『増』やせば攻撃があたる

 

「そうか、俺の能力は増と減を操る程度の能力だ」

 

相手の能力を聞いておいて俺だけ言わないのもフェアじゃない

 

「つまり、こんな事が出来る訳だ」

 

地面を蹴り上げ、翼を動かし滑空する

 

速度を上げながら萃香に接近、勢いを落とさずに空中で前転

 

空中で踵落としを決める

 

萃香は密度を減らしままでいるのか、防御をしようとしない

 

 

ガンッ!!

 

 

萃香の頭に直撃、地面…と言うより地中に勢い良くキスをする

 

油断しているからだ

 

少しの間、動かなかったが両手を地面につけるとガバッっと起き上がった

 

「……いった~~~~~~~。何するのさ!!って言うか何したのさ!!」

 

頭頂部をさすりながら抗議の視線を向けてくる

 

「油断する方が悪い。言っただろう?増と減を操るって、お前の密度を増やしてやったんだ」

 

「う~~~~~~許さないからね!」

 

言った途端、萃香の姿が消えたと思うと、後ろから気配を感じた

 

「喰らえ!」

 

拳を振り下ろしてくる、が

 

「あ、あれ?」

 

萃香の拳は俺の身体をすり抜け盛大に空振り、そのまま地面に倒れこむ

 

そこに能力で減(め)り込ませる

 

ずぶずぶと地面に埋まっていく萃香

 

しばらくジタバタとしていたが、やがて動かなくなった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

能力を解除して萃香を持ち上げてやる

 

「まだやるか?」

 

「………参った」

 

手を離し萃香を解放してやる

 

昔に(俺が)殺された鬼の爺さんに比べても遜色無い位に強かったが俺も色々喰って強くなっている

 

油断さえしなければ問題無い

 

ふらふしている萃香を置いて縁側で見物している連中の所に向かう

 

半ば呆然としているにとりからさくやを受け取りあやしてやる

 

中々泣き止まない

 

ちょっと刺激が強すぎたか、だからやりたくないって言ったのに

 

さくやを抱きながら周りを見てみると

 

勇儀は何処から持ってきたのか酒を飲みながらにやにやと笑っている

 

射命丸は手帳に凄い勢いで何かを書き続けている

 

にとりはさっきも言った通り、呆然といった有様だ

 

幽香は悔しそうに俺を睨んでいる。怒りか何かの所為か、顔が赤い

 

紫はよく分からない顔だ。笑っているのか怒っているのか、怒る理由が分からないが

 

これでしばらく大人しくなれば良いんだけど

 

「灰刃さん!私、今のを記事にするんで失礼します!」

 

手帳を閉じて立ち上がる射命丸

 

「ああ、変な事書くなよ?」

 

「はい!今回ばかりは真実のみで構成します!」

 

いつもは捏造も混じってるのか?

 

「後、さくやちゃんに手を出したら大変な事になるって記事も同時に書きますので、今度こそさくやちゃんも写真を撮っても良いですか?」

 

そういう事なら問題無い

 

許可を出してやると、カメラを構える

 

「…はい、結構です。では私はこれで、新聞は出来上がり次第、お届けに参ります」

 

言い残し飛び去る烏天狗を見送る

 

「お兄さん……私も今日は帰るよ。凄いもの見ちゃったから」

 

にとりが立ち上がり、覚束ない足取りで歩いていく

 

「送っていこうか?」

 

「……大丈夫」

 

刺激が強すぎたのはさくやだけじゃ無かったみたいだ

 

「これで勝ったと思わない事ね!!」

 

幽香が行き成り叫ぶと飛んでいってしまった

 

何なんだ?あいつは

 

あれ?何時の間にか紫がいない、スキマを使って帰ったのか?

 

また何かしら叫びながら追いかけてくると思っていたんだけど

 

今回はさくやがいるから、容赦無く撃ち落すつもりだったのに

 

とにかく、これで全員帰ったか「灰刃ぁ!気分が良いから飲むぞぉ!」

 

あ~、勇儀がいたか

 

飲むって、まだ昼前だよ?

 

「こんな早い時間から飲むのか?言っておくけど、家に酒はもう無いぞ?」

 

昨日買ってきた分は既に飲み切った

 

つまみになる様なものも無いし

 

「萃香!負けたんだから、買出しに行ってきな!」

 

「しょうがないな~」

 

何だかんだ言っても萃香も乗り気らしい

 

その場から霧の様に消える

 

仕方ないか

 

せめてさくやに被害がいかないように寝かし付けてこよう

 

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