東方増減記   作:例のアレ

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後半グロイ表現につき注意


宴の後の別れ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでそれで?」

 

「それで終わりだ」

 

今、目の前で話をせがんでいるのは子供のような姿をした神だ

 

確か、数えて10人目くらいの『話を聞かせてくれ』という奴だ

 

一度に来てくれれば話す手間も省けるのに、個別にくるから面倒臭さが半端じゃない

 

「面白かった! 特に神奈子の空回りっぷりが!」

 

ああ、あの時の部分か

 

「いきなり出て来て正論言われて、妖怪から説教されるって……うぷぷ」

 

余程面白かったのか、それとも神奈子に恨みでもあるのか

 

どちらにしても離れてやって欲しい

 

「あー、久しぶりに面白い話が聞けた! ありがとう!」

 

礼を言いながら立ち去っていく少女を見送る

 

「お? いたいた。ちょっと話をきかせてくれよ」

 

それと入れ替わりに熊のような大男が話しかけてくる

 

「………あぁぁぁぁぁぁぁ!! いい加減にしろ!」

 

キレた

 

我ながら良く辛抱したものだ

 

「なんだ? いきなり大声をだして」

 

戸惑った様子の大男を無視して離れた場所に座っている諏訪子と神奈子の所に向かう

 

「俺は帰るぞ!」

 

いきなりの宣言に2人とも心底驚いたといった様子だ

 

「どうしたんだい? 藪から棒に」

 

「入れ替わり立ち代りで話を聞きたがる連中がうざったくて面倒臭い! まとめてくれば良いものを個別に来やがって! 俺はラジカセでもスピーカーでも無いっての!」

 

「らじかせとかすぴーかーってのが何なのか分からないけど、とりあえず落ち着きなよ」

 

あまりにイライラしすぎて言語が時代に合わなくなってしまった

 

「でも、まだ神無月は続いているよ? 勿体無いじゃない」

 

やっぱり一ヶ月の間、続ける予定なんだな

 

「俺は面倒なのが1番嫌いなんだよ」

 

自主的に頭に上った血を下げる

 

そのおかげで、大分落ち着いてきた

 

「どっちにしろ、さくやをこれ以上休ませたくないからな」

 

「うー……でもさぁ」

 

「良いじゃないか諏訪子。別にこれが最後って訳じゃ無いんだからね」

 

神奈子だ。思わぬところから救いの手が届いた

 

「今年は参加してくれただけで良しとしようじゃないか」

 

来年も再来年も続くって事か

 

次からも強制参加させられるんだろうな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあね。偶には神社の方にも顔出してよ」

 

「まあ、気が向いたらな」

 

その日の内に出発準備を整え、外に出る

 

隣ではさくやと鬼衣が別れの挨拶をしている

 

少し涙ぐんでいるさくやをみると、やはり母親が必要なのかも知れない

 

しかし、あては全く無い

 

さくやを背負い飛びながら考える

 

幻想郷の連中は真っ先に除外して考える。母親向きではないと断言できる

 

考えて考えて、頭の中で母親の代わりを務められそうな女性を挙げていくが、該当する人物はいない

 

手を振る三人…3柱が見えなくなっても考える

 

美鈴と、吸血鬼一家は……うぅん………

 

態々さくやの為だけに幻想郷に呼び寄せるのも考え物だ

 

寺子屋が無ければ向こうに移住するのも有りなんだけど

 

他……他は………

 

妹紅は年齢は良くても外見があれだしなぁ。母親って言うよりは姉のようになるだろうし、何より探しに行くのが面倒臭い

 

ん? 何か引っかかる

 

妹紅? いや、そっちじゃない

 

妹紅繋がりで誰かいたような………?

 

確かあれは、妹紅と別れた時に…………

 

「ああ!!」

 

そうだ! 慧音さんだ!

 

寺子屋で教師をやっているのはあの慧音さんだよ!

 

「どうしたの、父さん?」

 

「さくや、寺子屋の先生の名前って慧音さんだったりしないか?」

 

「そうだけど……今更なの?」

 

心にグサっときた

 

何気ない一言って結構ダメージがでかい

 

そうと分かれば早速…って先生兼母親ってのも何か変だ

 

大体、どうやって頼めば良いんだ?

 

『この子の母親になってください!』

 

どこからどう聞いてもプロポーズだ

 

慧音さんもダメか

 

あれ? 慧音さんが幻想郷にいるって事は妹紅も来ているのか?

 

探しに行く面倒が無くなった。帰ったら慧音さんに居場所を訊いてみよう

 

……そもそも、なんで俺は飛んでいるんだ?

 

スキマを開いて帰れば良いのに

 

考え事をしているとダメだな

 

スキマを開いて……と

 

 

「待ちなさい!!」

 

 

スキマが開くか開かないかのタイミングで待ったをかけられる

 

声のした方を向くと……兎?

 

いや、人型ではあるんだけど、兎の耳をつけてブレザーを着た…人間? 妖怪? まぁ何でも良いけど

 

そんなのが2人、浮いていた

 

「……何か用?」

 

「間違いない、あの方の匂いがする」

 

無視かぁ

 

「蓬莱山輝夜、八意永琳、この2人は今どこにいる?」

 

蓬莱山輝夜には聞き覚えがあるにはあるが

 

「いきなりだな、まぁ良いか。お前の言う輝夜かは分からないけど、随分と昔に会った事がある程度で今どこにいるかまでは知らんな。八意永琳ってのには聞き覚えもない」

 

「嘘を言うな! お前からは強い匂いが立ち上っている!」

 

匂い? あいつと別れたのは何百年も昔の話なのに、匂いなんてする訳ない

 

「私は『匂いを嗅ぐ程度の能力』を持っている玉兎(ぎょくと)だ! それ故にお前からする匂いを嗅ぎ分けられる!」

 

ご丁寧な説明で

 

しかし、玉兎? 何だ? それ

 

「さあ、早く2人の居場所を教えろ!」

 

「だから、知らん」

 

「……どうしても隠すと言うのなら、少し痛い目にあってもらうしかないな」

 

言いながら、2人はどこから出したのか銀色の長い筒を取出した

 

あの形は確か……銃か?

 

もう記憶もおぼろげだけど、ライフルのような形に見覚えがある

 

この時代に火縄銃以外の銃ってあったのか

 

まあ、銃弾なんかがこの体に効くとも思えない、確証は無いけど

 

「父さん……」

 

背中のさくやが不安そうな声を出す

 

さくやの事を考えると逃げ出すのが最適か

 

そう思い、後ろにスキマを開ける

 

「悪いが、お前らに構っている暇じゃ無いんでな。帰らせてもら」

 

最後まで言い切る事が出来なかった

 

兎の持つ銃の先端から飛び出したのは銃弾では無く、レーザーのようなものだった

 

身体を確認する為に下を向く

 

右のわき腹より少し上、肋骨の辺りが消えていた

 

いや、そんな事はどうでもいい

 

「と……さ………」

 

兎が放ったレーザーが俺の体ごとさくやのわき腹の一部を消し飛ばしていた

 

「さくやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

傷跡が焼け焦げているおかげで出血はない、だが人間の体では致命傷だ

 

「次は確実に当てる。その前に喋った方が身の為だぞ」

 

声を無視して、解放したままの神力を限界まで増やし片方の翼に集め治癒の意思を力いっぱい込める

 

その翼を躊躇無く毟り取りさくやに当てる

 

助かるかは分からない。だけど、何もしないよりも遥かに良い

 

「聞いているのか!」

 

再び無視をし、先ほど開いたスキマの中にさくやと懐に入れておいた卵を入れる

 

これでこれ以上巻き添えになる事はない

 

兎たちに何かされる事も、俺…いや、アイツに何かされる事もない

 

さっきから体がざわざわしている

 

俺自身、止める気はさらさら無い

 

さくやにあんな事をしたんだ

 

後悔させてやる!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

身体が変化していく

 

所々が急激に膨張していき、徐々にアイツの身体を形成していく

 

着ている服が限界を迎える寸前に消え去る

 

そして、俺の身体はアイツになった

 

「グロァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

怒りの咆哮をあげ、兎達に向かい突進する

 

「クッ!」

 

「何だ!? この化け物は!?」

 

兎達が両手を翳(かざ)す

 

すると見えない壁のようなものに当たり、突進を防がれてしまった

 

……おかしい

 

俺は今、自分の意思でアイツの身体を操っている

 

普通ならアイツが身体を動かしている筈なのに

 

だけど、今は好都合だ

 

普段よりも強い身体があるのはこの状況においては歓迎だ

 

見えない壁に向かい力を込めていく

 

ピキッピキッと罅(ひび)の入るような音がする

 

「まさか……こいつは、あの歴史書に書かれていた……?」

 

「そんな筈があるか! 何万年前の事だと思っている!」

 

兎達が何か言っている

 

それでも構わずに更に力を増す

 

 

ミシミシミシ

 

 

音が変わる

 

もうすぐ破ける

 

「クソ! 障壁が破れたら散開するぞ!」

 

丸聞こえだ

 

 

パキン

 

 

壁が破けた

 

同時に兎達が左右に別れる

 

あらかじめ狙いを定めておいた左側の兎に向かい爪で薙ぐ

 

だが、浅い

 

避けられてブレザーの一部が切れただけだ

 

ならばと妖力を込めた翼を広げ、速度を上げてすれ違いざまに切る

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

兎の足が飛んでいく

 

動きが止まった好きに追い打ちをかけようとした時、後ろから光の筋が飛んできた

 

「ガァァァァァァァァ!!」

 

胴体に穴が開く

 

しかし、それだけだ。まだ動ける

 

動きが止まったまま苦悶の表情を浮かべている兎に尻尾を振るう

 

先端についた棘が伸び、兎の身体に無数の穴を開ける

 

「…………!!」

 

尻尾を振り、串刺しになった兎を捨てる

 

兎はそのまま重力に従い落ちて行った

 

「貴様! よくも!」

 

こちらに向けた銃口からレーザーが連射される

 

それを避けようと飛び回るが、この身体は大きい

 

避けきれずに何発か当たってしまう

 

その度に身体に穴が開き、肉の焦げる匂いが漂う

 

余りに強力過ぎるのか、威力を減らそうとしても減らしきれない

 

ならば、相討ち覚悟で突っ込むまで

 

「グオォォォォォォォォォォ!!」

 

さっきのように翼に妖力を込め速度を上げる

 

「くたばれぇ!」

 

兎も銃の引き金を引く

 

結果、俺は頭の半分を消し飛ばされ、兎は右手と右足を失った

 

俺の身体はグラリと揺れて、地面に向かい落ちていく

 

さすがに、ダメージを負いすぎた

 

「がはっ! っく、急いで綿月様方にお知らせしなければ……!」

 

そんな声が聞こえた気がするが、もう限界だ

 

俺の意識はそこで途絶えた

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