東方増減記   作:例のアレ

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面倒臭かった


旧友たちとの再会

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようにとり、久しぶり」

 

「お兄さん! 来ると思っていたよ!」

 

河童が住んでいる川の上流にある洞窟付近

 

にとりを見付け軽い調子で挨拶を交わす

 

周りにいる河童達も口々におかえりと言ってくれる

 

「来ると思っていたって、射命丸にでも聞いたのか?」

 

「うん、嬉しそうに号外をバラ撒いていたよ」

 

河童達の集落に目立った変わりは無い

 

立ち話もなんだからと洞窟の中に案内される

 

……前言撤回だ

 

前に来た時は洞窟の岩肌剥き出し状態に木で出来た戸が付いているだけだったが、今は鉄か何かの金属で出来た広い通路に自動ドアが付いている

 

「ふわぁ………」

 

今まで黙って付いてきていたリグルが感嘆の声を上げる

 

案内された部屋は明らかに動力に電気を使っているだろう照明に照らされていた

 

部屋の中央には木で出来たテーブルとイスが置かれている

 

「まあ座って待っててよ」

 

にとりは壁際に置かれている棚のガラス戸を開け、中からカップを3つ出し黒い粉を入れ、更にポットからお湯を注ぐ

 

この匂いからしてコーヒーか?

 

「砂糖とミルクは?」

 

「頼む」

 

「あ、私もお願いします」

 

運ばれてきたカップを受け取る

 

うん、間違いなくコーヒーだ

 

「驚いた、随分と進歩したんだな」

 

「えへへ、昔お兄さんから聞いたのを再現する為に皆で頑張ったんだ」

 

そういえばそんな事もあった

 

あの時は冗談半分、面白半分で言っただけだったが……まさかたったの500年で遣り遂げるとは

 

全手動洗濯機を作っていた頃とは雲泥の差だ

 

「それで、ご用件は?」

 

「ああ、家が半壊したから修理をお願いしたくてな」

 

「あらら、老朽化? 建てたの随分昔だからね」

 

「いや、戦闘好きの妖怪に穴だらけにされた」

 

「あははは、相変わらずめちゃくちゃだねぇ」

 

笑いながらにとりは壁際にある電話の受話器を取った

 

電話? そこまで進んでいるのか、河童の技術は

 

「うん、うん…そう、他の納期は遅らせないように……分かってるけど、お兄さんの頼みだよ? …うん、そう、灰刃のお兄さん……うん、じゃあお願いね」

 

誰かと話している中に俺の名前が出てきた

 

「これでOK。すぐに直しちゃうって」

 

「悪いな、他に何か仕事があったんだろ?」

 

「大丈夫、お兄さんの頼みを断る河童なんていないからさ」

 

そんなに慕われていたか?

 

「河童の技術を昔から受け入れてくれたのはお兄さんだけだからね。皆その事は絶対に忘れないよ」

 

日頃の行いって大切なんだな

 

まあ、俺の場合は未来の記憶があったからすんなり受け入れられたってだけなんだが

 

「お兄さんと私たちの仲って事でって…もしもし?」

 

話の最中に鳴った電話を取るにとり

 

「え? それ本当? うぅん、でも考え方によっては楽になったんじゃない? うん、それでよろしく」

 

「何かトラブルか?」

 

受話器を置いたタイミングで訊いてみる

 

「お兄さんの家、全壊してたって」

 

「は? ……幽香の仕業か」

 

気を失った幽香を放置してきたのは失敗だった

 

「でも、壊れた部分をチェックして修理するよりも一から建てた方が楽だから気にしないでよ」

 

「悪いな」

 

「気にしないでって」

 

俺の家が新築される事になった

 

色々と思い出もあるが、壊れた以上は仕方ないか

 

「で、そっちの人は何の用?」

 

にとりがリグルに訊く

 

「え? えぇと…私も家を建てて貰えたらなぁって」

 

「お仕事の依頼だね。えっと……今からだと3カ月待ちになっちゃうけど」

 

にとりの開いたスケジュール帳にはびっしりと予定が書きこまれている

 

そんなに立て込んでいたのか

 

まあ、にとりが気にするなって言うんだ、気にしたら逆に失礼になるだろう

 

今度また何かしらのアイディアか外の世界の既存品でも持っていけば良いだろう

 

「それで御代金だけど…」「ええ!? そんなに!?」「これでも負けてるんだよ?」「うぅぅ……」

 

後ろから生々しい会話が聞こえるが、とりあえず無視をしておこう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあな」

 

「うん、またね」

 

河童たちと別れて飛び立つ

 

リグルは足りない代金を働いて返す事にしたとかで洞窟に残った

 

さて、この後はどうするか

 

幽香の所に家の礼をしに行くか? いや面倒だ

 

地下に行って勇儀に会うか? …夜で良いか、行ったら強制的に酒を飲まされる

 

わざわざ説教されに三途の川に行く気もしないし、家は建造中だ

 

本格的に何もする事がない

 

「人里にでも遊びに行くか」

 

「だったら飲もうよぉ」

 

背中から声が聞こえてきた

 

「何時から乗ってたんだ? 萃香」

 

「ちょっとぉ前からぁ」

 

酒臭い、かなり飲んで酔っている……いや、萃香が酔ってない方が珍しいか

 

「にゃはは! 灰刃ぁ、久しぶりぃ、どの位ぶりだっけぇ? 5日くらいだっけぇ? にゃははは!」

 

「数字だけはあってるな。それより、へべれけじゃないか。帰って寝ろ」

 

何が面白いのか、萃香はケタケタと笑い続けている

 

「嫌だよぉ、灰刃も飲めぇ!」

 

後ろから手を回して瓢箪を口に押し付けてくる

 

鬱陶しいのでその場で横に1回転、すると酔っ払いは笑いながら落ちて行った

 

「ふぅ、危機は去った」

 

「じゃあお祝いだぁ! 飲め飲めぇ!」

 

落ちて行った筈の萃香が真横を飛んでいて、またも口に瓢箪を押し付ける

 

「いい加減にしないと豆を投げつけるぞ」

 

「だってぇ…うぐっ……灰刃に会うの久しぶりなんだもん…ぐすっ……」

 

笑っていたかと思えば今度は泣き始めた

 

「だから飲んでもいいじゃんか! それとも私の酒が飲めないってのかぁ!」

 

怒り始めた

 

「良いじゃんかぁ! 一口だけだってぇ! にゃはははははは!」

 

笑い上戸で泣き上戸で怒り上戸の3点セットか

 

これだから酔っ払いは面倒臭い

 

「分かった、夜になったら付き合ってやるから、勇儀の所に行って飲んでろ」

 

「勇儀ぃ? にゃははは! 分かったぁ! 勇儀の所に行って来るねぇ!」

 

言うと萃香の身体が霧になって消えていく

 

「今度こそ危機は去ったな」

 

「だったらお祝いをしよう!」

 

「良いから勇儀の所に行け!」

 

「にゃははははははははははは!!」

 

本当に酔っ払いは面倒臭い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜になるまで適当に時間を潰し、地下までのスキマを開く

 

地下にある飲み屋街、その一角にある飲み屋に入る

 

地下で勇儀と飲む時はいつもこの店だ

 

暖簾を潜って勇儀と萃香を探す

 

「にゃはははははははははははははは!!」

 

「あっはっはっはっはっはっはっはっ!!」

 

探すまでも無かった

 

店の奥にある指定席の座敷で2人の鬼が意味も無く笑い続けている

 

「勇儀、萃香」

 

呼びかけると、笑いがピタッと止みこっちに視線を向ける

 

「おお! 灰刃! 久しぶりだねぇ! 5千年ぶりくらいかい! あっはっはっはっは!」

 

鬼ってのは過度に酔うと皆同じ反応を返してくるのか?

 

「単位を一つ減らせば正解だったな」

 

靴を脱ぎ、座敷に上がる

 

「本当に……うぅ……久しぶりだねぇ………ぐすっ………」

 

泣き出した

 

「連絡の一つも寄越さないでどこほっつき歩いてたぁ!」

 

怒りだした

 

「それは萃香がもうやったから」

 

「なんだとぉ!」

 

拳を机に叩きつけながら怒鳴る

 

その拍子に箸が机から転げ落ちる

 

それを目で追っていた2人の鬼は

 

「にゃはははははははははは!!」

 

「あっはっはっはっはっはっ!!」

 

何が面白いのか腹を抱えて笑い出した

 

ああ面倒臭い

 

酔っ払いの相手は本当に疲れる

 

これを回避するにはさっさと帰るか

 

「大将! 酒持ってこい! 樽で!」

 

こっちも酔っ払いになるしかない

 

店主が持ってきた樽を持ち上げて一気に流し込む

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だぁかぁらぁ! 明日天気になれって言うだろぉ!? どんな天気か明確に言ってやらなきゃ分からんだろぉ!」

 

「あれー? 灰刃身体固くなったぁ? それに木目みたいな模様がでてるよぉ?」

 

「萃香ぁ! そりゃ柱だ! 灰刃はこっちだよ! こっちの……灰刃ぁあんた縮んだかい?」

 

「阿呆か!? それは俺じゃなくて徳利(とっくり)だっての! 良いかぁ? 俺はなぁ……俺は…何だっけ?」

 

「お客さん、もうそれくらいにしといた方が良いんじゃないですか?」

 

「何だとぉ! まだまだこれからだってーの! 全く、鬼みたいな角生やしやがって!」

 

「そーだそーだ!」

 

「そりゃ、あっしも一応鬼ですから」

 

「煩い! ごちゃごちゃ言ってるとその角引っこ抜くよ!」

 

「そんな理不尽な」

 

「酒がなくなったぞぉ! もっと持って来ぉい!」

 

「だから飲みすぎですって」

 

「屁理屈を言うなぁ!」

 

「どこが屁理屈ですか……はぁ、普段止めてくれる役の灰刃さんまでこれじゃあ収集がつきませんよ。仕方ありませんね……」

 

ガッ! 「ぐっ」

 

ドッ! 「にゃ」

 

バキッ! 「うっ」

 

「酒は飲んでも飲まれるなって奴ですよ。今日はそのお座敷をお貸ししますので。おやすみなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「頭痛ぇ、ガンガンする」

 

って言うか、ここどこだ

 

昨日の記憶が無い

 

確か……えぇっと、地下に来て幽儀と萃香の2人と酒を飲んで………その後の記憶がすっぽりと抜け落ちている

 

「んん? ここ、どこだい?」

 

勇儀が起きたようだ

 

「多分、何時もの飲み屋だろ」

 

駄目だ、完璧に二日酔いだ

 

「ああ、そうかい……って、灰刃じゃないか! いつ帰って来たんだい!」

 

「ええー……昨日の記憶、丸っきり無しかよ」

 

酒豪種族が記憶無くすとか、どれだけ飲んだんだ

 

「昨日萃香が来て、お祝いだから飲もうって言ってきて……飲み屋まで来たのは憶えているんだけどねぇ」

 

後頭部を掻きながら思い出そうとしている

 

「まあ良いか、せっかく灰刃が帰って来たんだ、祝いに飲むぞ!」

 

まだ寝ている萃香の腰に下がっている瓢箪を取り中身を煽る

 

「とりあえず、近くで大声だすのはやめてくれ」

 

「何だい? ノリが悪いねぇ」

 

「俺は二日酔いの真っ最中だ。今飲んだら死ぬ」

 

とりあえず水が欲しい、できれば冷えているのが

 

「だらしないねぇ、二日酔いには迎え酒って言うだろ? 飲めば治るよ」

 

二日酔いの人に良く言われる言葉だが、本当なのだろうか?

 

モノは試しだ、飲んでみよう

 

勇儀が差し出している瓢箪を受け取り、一口

 

「うっ……」

 

 

 

 

~しばらくお待ち下さい~

 

 

 

 

「あ~……酒飲んで吐くとか、何百年振りだ?」

 

スキマを開いて中に吐いた

 

適当に繋いだからどこに捨てたかは分からない

 

「勿体ないねぇ」

 

「うるせ、今日は帰って寝る」

 

一刻も早く、酸っぱ苦い口の中を洗いたい

 

若干だがすっきりもしたので、由来はここからきているのかも知れない

 

見送る勇儀と寝ている萃香に軽く手を振りスキマに入る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「部屋が……洋風だと………」

 

スキマを開いて家の前まで帰って来た

 

新築したと言っていたが、見た目は殆ど変っていなかった

 

外の井戸で水を汲み、口の中を洗いながら、これなら勝手が判って良いと思い寝室に行くと、フローリングに床にベッドが鎮座していた

 

「まぁ良いか、寝よ」

 

よくよく考えれば、特に問題は無い

 

まだ痛む頭を無視して眠りについた

 

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