「おい、こっちであってんだろな」
「多分な」
「自分の家すら満足に覚えていないとはね。これだから猿は」
「3人とも、喧嘩してないで早く行くわよ」
黒い服を着た大男3人と小さな少女が歩く。その光景は知らない者が見たら明らかに事案そのものであろう。
ただ、その4人で1番強いのは少女なのだから世界とは分からないものである。
「ねえ、あの子じゃないかしら」
「あー、多分そうだな」
「さっきから多分ばかりじゃないか」
「ま、とりあえず話しかけてみっか」
最初にその少年を見つけたのはアリスだ。
親から恐らく本人だ、という答えも出たため話しかける。
「伏黒恵君だよね」
「あんた誰。って、そいつ…!」
「ご名答、君を売ったクソみたいな父親さ。あ、僕は五条悟ね」
振り向いた少年がその顔を歪める。
それもそうだろう。今よりも更に小さい頃に蒸発した父親がそこにいたのだから。ほとんど顔も覚えていなかったとはいえ、本人がいればわかる。
「あー、俺のことはとりあえず後にしろ」
「お前…。はあ、こいつは後で殴るとしてとりあえず先に本題に入ろうか、恵君」
「あ、ああ。なんだ?」
「君、見えてるし持ってるだろ?自分の力にも薄々気付いてるんじゃない?」
「それが?」
「そこのクソ野郎がさ、同じクソみたいな禪院家っていう術式大好きな家に君を売ってんだよ。で、その前に僕らが来たってわけ」
そう言っても恵の顔は硬いままだ。こちらが何をしに来たかを言ってないから仕方がない。むしろ警戒心が強いと褒めるべきだろう。
「で、売った本人とあんたらは何しにきたんだよ」
「いやー、こんなんでも父親だったのかね、五条家で保護してくださいーって泣いて頼まれたんだよ」
「あ?そんなこと言ってッ…ぐえ」
「ややこしくなるから貴方は少し黙ってなさい。夏油」
「ああ、任せてくれ」
五条の後ろで自分達と余り変わらない少女に黙らされた親を見たのだろう。
目を逸らして話を促す。
「つまり、その禪院ってとこに売られるかあんたに保護されるかってことか」
「そうそう。ま、君の術式なら禪院でも待遇はいいかもしれないけどね」
「津美紀はどうなる?あいつの母親も少し前から帰ってない。どっちなら津美紀は幸せになれる?」
その時、ちょうど二階の窓が開き、中から少女が顔を出す。恵の名を言っていることから、彼女が件の津美紀であろう。
自分よりも家族のことを優先する恵に対し五条は笑みを零した。
父親がいて驚いている彼女を見つつ、話を進める
「君、いいね。うちに来なよ。因みに禪院家だと血も引いてない、術式も持ってない女なんて奴隷みたいなもんだよ」
流石にそこまでだとは思っていなかったのだろう。顔を上げ真剣な顔でこちらを見返す。
そんな恵を見ながら、後ろを指さし続ける。
「あのロクデナシが家を出るくらいにはほんとにクソの集まりだよ。君はともかく彼女が禪院家にいったところで絶対に幸せになれない。100%なれない」
その言葉に答えは決まったのだろう。恵は五条に対して口を開いた。
「んじゃ、本題も終わったことだしとりあえずあいつ、殴る?」
「…殴る」
「話は終わった?私は少しだけ津美紀ちゃんと話してくるわ」
「初めまして、恵君。私は夏油傑だ。とりあえず今は鬱憤を晴らすといい」
「あー、クソ。来るんじゃなかったぜ」
五条と夏油は禪院家に来ていた。
本来ならば色々言い訳をして禪院になど赴くはずもないのだが、最近色々と好き勝手やっていることや売られた恵を無理やり引き抜いた事などで色々とヘイトが溜まり、高専の上層部からもそういう話が出たので仕方なく来たのである。
本来ならいつもの様に聞き流して直ぐに帰るはずだったのだが、とある事情で色々とめんどくさい事になったのだ。
その原因は夏油。彼は禪院がクソだクソだと隣の五条から聞かされていたため、呪術師ではあるが猿が喋っているようなものだと思い聞き流していた。
しかし、廊下を歩いている時に美々子や菜々子と同じくらいの少女が虐待のようなことをされているのを見てブチ切れたのである。
その場で男どもを殴り倒し、当主やその側近などに喧嘩を売りに行ったが、帰ってくる言葉は女は役に立たないや相伝の術式を産むことだけが生きている意味など、訳の分からないことをほざくばかり。
そして女は弱いなど色々と言い始めた辺りで、夏油は携帯を取り出した。
「それで、私が呼ばれたという訳ね?」
「すまないね、有栖。こんな事に巻き込んでしまって」
そういう訳で呼ばれたのはアリス。五条が言い出した女が強かったらお前らは何も言えないだろという言葉にとっさに夏油が呼び出したのである。
「それで、私は模擬戦か何かをすればいいの?」
「そーそー。禪院家vs有栖な。あいつらちょーと煽ったらすぐにキレて言い返してくるから滅茶苦茶スムーズに進んだぜ」
「ははは、折角だし、力の差というものをわからせてやるといいよ」
その言葉に周りにいる禪院の者が騒ぎ出す。
五条に関してはこんな事など慣れているのかケラケラ笑っているが、夏油は目で人を殺せそうな顔をしている。相当頭に来ているのだろう、わざと周りに聞こえるように声を出している。
「それだけじゃ駄目ね、ルール追加をお願い」
そしてそれだけではない。
「私からは一切手を出さないわ。精々私に傷を付けれるように頑張りなさい?」
話を聞いて怒っているのは、夏油だけでは無いのだから。
「で?もう終わり?」
死屍累々。そう表現するのが正しいであろう光景を作り出したアリス。
周りで倒れている者達はみな絶望して、攻撃をしなかった…いや、出来なかった故に立っている数人も既に戦意は無く、化け物を見るような顔をしている。
それも当然だろう。自分達がこんな事になっているというのに、それを成した当の本人は手を出すどころか、後ろ手を組みその場から一切動いていないのだから。鼻歌を歌うその姿は傍からみるととても可愛らしいものであったが、彼らの目には恐怖しか映らなかった。
「つまらないわね」
いつもの物理無効を物理反射に変えたのを始めとして、火炎反射、疾風反射、衝撃反射、8枠全てを反射に変えたアリスは、一切をすること無く禪院家を壊滅させた。
元々持っていないスキルで8枠埋めたためステータスはかなり下がったが、そもそもステータスを必要とする行動をしていないのだ、何の関係も無い。
一仕事とも言えないような試合を終えたアリスは、後の話を五条と夏油に任せ、来る途中に買った和菓子を堪能していた。
因みにけしかけた五条と夏油もあまりの有様に流石に少し引いた。同情はしないが。
それからであろう。非術師に対する態度はともかく、女性に対する態度が禪院家全体で改められることとなったのは。
禪院の男どもが金髪の女性に対しトラウマを抱くようになったのは。
「そういえば夏油、美々子ちゃんと菜々子ちゃんは最近元気?」
「ああ、元気にしてるよ。かなり肉も付いてきたし、身長も伸びてる」
美々子と菜々子は窓や補助監督によって運営されている施設で過ごしている。
夏油としては自分が側に居たかったのだが、まだ未成年であることや高専の学生であることから今は預けているのだ。といっても毎日のように訪れているのだが。
有栖もちょくちょく訪れてはいるのだが、最近は少し間が空いたので夏油に尋ねたのである。
高専を卒業したら正式に保護者として引き取る話もつけており、2人もそれを望んでいるのでスムーズに決まった。
「あの子たち、どうするの?呪術師になる?」
「そうだね、本人達は私と同じ呪術師を目指しているよ。あと9か10年もすれば高専にも通うことになっている」
「もしかして、五条と一緒に教師になるって言い出したの、それが理由…?」
「そんな訳ないじゃないか、それは半分くらいだよ」
「逆に言うと半分はそれなのね」
そうなのだ、五条と夏油は教師になると言い出した。
五条がその口調や一人称などを直したことからその本気度が伺えるであろう。
「有栖もなるかい?」
「私は任務の関係で呪術師として集中してくれってお願いされてるのよね。まあ、暇な時間の方が多いからOGとして入り浸ろうかしら。硝子も高専所属の医師になろうかって言ってたし」
「それはいいね」
私達4人がいればなんでも出来るよ、という言葉は微かに呟かれたものであったが、アリスの聴覚は確かにそれを拾った。
次からは呪術0になるかな。
アリス視点というよりかは原作キャラから見たアリスに対するアレコレみたいな感じで書くかも。