天与呪縛【アリス】   作:[ゆーや]

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真実

月日が経ち、季節が巡る。

乙骨は日々の訓練や任務で呪力操作や里香ちゃんの力を理解し、その力を特級と言って相応しいものへと変貌させていた。

 

「この程度じゃもう相手にならないね。じゃあ、もっと強いのを追加しよう。術式はないけれど身体能力は高いから、油断しないようにね」

 

訓練の相手をしている夏油が更に呪霊を追加する。それは今まで使っていたような数で攻める用の低級ではなく、間違いなく1級相当の呪霊。それを複数。

この時点で並の術師ならば捌くことなど出来ずに押し切られるだろう。

しかし、乙骨は到底並とは言えない存在だ。

 

「いくよ、里香ちゃん」

《ゆ゛う゛た゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ま゛か゛せ゛て゛ぇ゛》

 

手と頭のみの限定顕現、そして刀に里香ちゃんの呪力を込め、身体強化を更に強くする。

そして言葉すら交わさない完璧な連携によって的確に攻撃。

呪霊も夏油が操っているが故に本来ならばありえないだろう高度な連携で攻めてくるがものともしない。

そして乙骨と里香の力は単純な力だけではない。

 

『動くな』

 

呪力で作られたピンマイクを通して放たれた呪言により呪霊が動きを止める。

無条件の術式模倣。それがこれまでの事で判明した祈本里香の術式だ。

完全顕現していない為本来より効果は落ちてしまうが、それでもその馬鹿げた呪力量や存在の格から放たれるソレは1級程度ならば効く。

 

そしてその隙を逃すような1人と1存在?ではない。

切り刻み、殴り、握りつぶし、全ての呪霊を祓う。

一息つけるかと気を抜きかけたところで横から飛んでくるが、咄嗟のところで里香ちゃんが防ぐ。

 

「最後は私が相手だ。さあ、遠慮なくやろう」

 

そう言っていつの間にか取り出したのか呪具で斬りかかってくる。

流石に前に見せてもらった游雲という特級呪具ではなかったが、今持っている呪具も相当なものだ。

里香ちゃんに対しても少し怯ませるほどの力だ、気をつけなければすぐ決着が付いてしまうだろう。

 

「いいね、申し分ないよ。1年も経たずにここまで強くなるとは私も流石に思っていなかった」

「夏油先生やみんなのおかげですっと!」

 

力任せに吹き飛ばして距離を取り、そのまま里香ちゃんと攻める。

牽制に飛ばされた呪霊を切り裂きながら里香ちゃんと交互に、時に同時に攻撃していく。

躱され、防がれ、時に呪霊を盾として使われながらも何合も交えていく。

しかしそれは飛ばしてきた呪霊を囮にした蹴りによって乙骨が吹き飛ばされたことで終わりを迎えた。

 

「ここまでだね」

「ケホッ。ありがとうございました。いてて…」

「すまない、強く蹴りすぎてしまったかな。熱くなりすぎてしまった」

 

蹴られたことで怒りかけた里香ちゃんを落ち着かせ、戻しながら立ち上がる。

周りで観戦していた者達も終わったことを悟り水を持ち近づいてくる。

 

「2人ともお疲れ様。いやー、中々いい戦いだったよ」

「いやー、憂太も強くなったな。あんなん俺には無理だわ」

「ほんとだよ。武具の扱いだけならまだ教えられるかもしれんが、それ以外は全部越されてる」

「しゃけしゃけ」

 

渡された水を飲み、熱っている体を冷ましながら答える。

 

「いやぁ、予想以上だったよ。あの呪霊達をあれほどスムーズに祓うとはね」

「あ、そういえばあれって祓って大丈夫だったんですか?貴重な戦力なんじゃ…」

「気にしなくていいさ。元は雑魚の集まりだし、貴重な術式持ちや便利な呪霊は出していない。むしろアレらは今回祓われる為に出した呪霊だからね」

 

そういう声は軽い。前に聞いた時は4桁以上の呪霊を飼っていると言っていたので、本当にそうなのだろう。

それを今までの経験から理解した乙骨は気にしない事にした。

 

「しかし、身体強化や里香の力もそうだが、術式のコピーというのは凄まじいものだね」

「ほんとね。術式持ちの呪霊を使役する傑が言うのは微妙だけど、呪術界の常識に喧嘩売ってるようなもんだよ。まあ有栖ほどじゃないけど…」

 

そう話す2人が見るのは棘に話しかけている乙骨だ。会話を聞くに、呪言のコツ等を聞いているのだろう。付き合いも長くなってきたからか、パンダの通訳が無しでも会話が成り立っている。

夏油が水を飲み終わり、乙骨と棘の会話もある程度追いついたところで改めて話しかける。

 

「んじゃ、改めて訓練再開といこうか。憂太はもう少し休んで傑からさっきの試合の事で色々聞くといいよ」

「へいへい」

「んじゃ、俺らも憂太に置いてかれないよう頑張るとするか」

「いくら」

 

そう言って立ち上がり、グラウンドの方へ歩いていく。

2人になった夏油と乙骨はゆっくり話を始めた。

 

「とは言っても、呪力操作や身体強化等はよく出来ていたよ。里香ちゃんの制御も出来ているし、武具を使った技術を磨いたり徒手空拳を鍛える程度かな」

「そう、ですか」

 

しかしそう答える乙骨は先程とは一転して暗く、ネックレスにしている指輪を握りながら俯いている。

 

「…何か悩みでもあるのかい?話してみるといい」

「いえ、悩みというか不安があって…。呪力の操作は確かに上達したし、里香ちゃんも言うことを聞いてくれてます。けど、肝心の解呪に関しては何も進展していなくて、このままでいいのかなって…」

「なるほどね…。けどそんなに焦る必要はないよ。私や悟も色々調べているし、君も悟に相談したりしているんだろう?きっと見つかるさ。それに、まだ1年も経っていないんだ、これからだよ」

 

これは慰めではなく夏油としての本心だ。それに、夏油も高専の頃など色々悩んだこともあった。けど周りに支えられ、今ここにいる。だから今度は教師である自分が支える番なのだとそう思うのだ。

 

「そう…ですね。こんな所でへこたれてちゃ、むしろ里香ちゃんの解呪が遠のいちゃうかも」

「その意気だよ。それに、もしかしたら何かのきっかけで簡単に解呪出来るかもしれないしね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「五条さん、これが前に頼まれていた調査の結果です。」

「ふーん…。なるほどね。上は何やってたんだって言いたくなるよ」

「また伊地知に働かせたのね…。はぁ、私にも見せて」

 

そう呟く五条は手に持った資料をピラピラとさせる。

あまり詳細を聞かされていなかったアリスはそれを取り、内容を確認する

 

「乙骨憂太、遠縁ではあるが菅原道真の子孫…ね。」

「いやー、何かあるかもしれないとは思ったけど、僕と親戚だったとはね」

「おそらく、呪霊化した祈本里香の調査で何も出なかったため、呪われた方の調査を怠ったのだと。私としても、頼まれた時はこうなるとは思っていませんでしたし」

「僕も憂太から頼まれてなければもう少し後回しにしてたかもね」

「里香ちゃんに呪われたのではなく自分が呪ったのではないか、ね」

「もしそうだったら、憂太が主従制約を自分で解消すれば解決か。案外アッサリしたものだったね」

「それが当たっていたら、ではあるけどね。とりあえず伊地知、お手柄ね」

 

いつもいつも五条に振り回されているのだろう、その言葉に感動する伊地知。涙すら流しそうな雰囲気だ。

 

「それ頼んだの僕なんだけどー。伊地知は頼まれた事やっただけでしょ」

「あら、それでも色々頼んだのだから労らないと。2人で予約してたスイーツバイキングがあるから、それでいいかしら」

「え、ちょっと待ってそれ前話してたやつ。わかった僕からも労るから3人で、3人で行こ?」

「仕方ないわね、後で人数増えるって店に連絡しておくわ」

「相変わらずですね、五条さん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先生達、どうしたんだろ。大切な話があるって言ってたけど」

「なんか進展でもあったんじゃねーの?」

「ま、悪い事って感じじゃなかったから気楽にしとけばいいだろ」

「しゃけ」

 

昼食を取っている時に急にそう言われ、今に至る。

何か心当たりがあるわけでもなかったので、色々と話しながら教室に戻ると、そこには3人が揃っていた。

 

「や、来たね」

「えっと、何で呼ばれたんですか?何も聞かされてないんですけど…」

「ま、焦らす必要も無いし単刀直入に言おう。里香ちゃんの解呪が出来る、かもしれない」

 

軽く言われたその言葉に固まる。何を言われたか理解出来ず、無意識に聞き返す。

 

「えっと…今なんて…」

「里香ちゃんを解呪出来る可能性がある。それもかなりの確率でね」

 

「前に憂太が言っていた仮説、面白いと思ってね、家系調査を頼んだんだ。そしたらなんと超遠縁だけど菅原道真の子孫だったわけさ」

 

「呪われたのは憂太じゃなくて里香ちゃんだった訳ね。元々少し違和感はあったけど、その確認は手荒すぎて試すことが出来なかったから今回の事でわかったわ」

 

「呪いを掛けた側であれば、主従制約を破棄するのは簡単だ。相手に呪う意思が無ければ呪詛返しが起きることもない」

 

「里香ちゃんが貴方を呪うことは無いでしょう。呪力を込めて、里香ちゃんの解放を改めて望めば解呪は成されるわ」

 

その話を聞くことしか出来なかった。何も言葉に出来ず、けれど無意識に言われた通りにする。

その意識は、後ろから聞こえた憂太と名前を呼ぶ優しい声によって起こされた。

 

「里香…ちゃん…?」

 

振り向き、その姿を目に映す。けれど、その姿は溢れ出た涙によってすぐに見えなくなってしまう。

少しだけ見えたその笑顔に、胸が死にたくなるくらい痛くなった。

 

「全部…僕のせいだった…!里香ちゃんをあんな姿にしたのも!里香ちゃんに色んな人を傷つけさせたのも…!色んな人に迷惑をかけて、全部、全部僕の…せい…」

 

俯き、泣きじゃくる頭を里香がそっと抱きしめる。

 

「憂太、ありがと」

「時間をくれて」

「ずっと傍に置いてくれて」

「里香はこの6年が生きてる時より幸せだったよ」

 

「バイバイ、元気でね」

「あんまり早くこっちに来ちゃダメだよ?」

「またね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで一件落着…だね」

「ふふふ、内容が内容だからあまり言ってはいけないと思うけど、ロマンチックだったわね」

「終わり良ければ全て良し、でいいんじゃない?」

「憂太もしっかりしてるし、良かったなー」

「しゃけしゃけ」

「ま、ちゃんと解呪できたしいい事だろ」

 

 

 

 

 




里香はその死ぬな、という乙骨の呪いによってアリスの死ね、という即死の呪いを弾くことが出来ます。
最初はそれでアリスに気づかせようと思ってたけど、この平和な世界で里香に死んでくれる?打つのは手荒過ぎると思って平和に終わらしました。
部分的な妄想じゃなくてストーリー考えるとね…。

里香暴走ルートとかになるとやれるかもしれないけど。
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