扉を開き教室の中へ入ろうとするが、中から漂ってきた明らかに場に相応しくない臭いに首を傾げる。
が、その疑問は教室の中を見ることによって直ぐに解消される。
「あら、未成年の学生なのに煙草を吸うなんてもしかして悪い子なのかしら?」
その言葉で此方の存在に気付いた彼女は吸っていた煙草を口から離す。
「うわちっさ…。いいじゃない別に、煙草を吸うか吸わないかなんて個人の自由でしょ」
「そういうものかしら…?あ、ワタシ、節国有栖。こんな見た目だけどちゃんと15歳よ。コンゴトモヨロシク、ね?」
「何その挨拶、ウケる。私は家入硝子、よろしく」
そう言って挨拶を終えた彼女はまた煙草を吸い始めたので、自分も彼女の隣の席に腰をおろす。
机の数を見たところ人数は恐らく4人だろう。呪術師に女性は少ないと聞いていたので同級生に女性がいるのは嬉しい。
彼女もそう思っていたのか、先程挨拶した時の声は柔らかいものだった。
煙草に関して色々と言われなかったのも大きかったのだろう。
「後の2人はどんな感じかしら。五条悟って人がいるって聞いたけれど」
「あ、私もそれ聞いた。でもなんか聞いた感じ色々アレらしいから近付かないほうがいいんじゃない、アンタ小さいんだし」
「折角の同級生なんだし、仲は良くなれるほうがいいじゃない。それに私、こう見えて強いのよ?」
ほんとかー?等と軽い雑談を交わす。見た目の差が目立てど、中身は同じ年頃の少女だ、話が合わないという事はないようだ。
「私のことはアリスって呼んで?私も貴方のこと硝子って呼ぶから」
「めっちゃぐいぐい距離詰めてくんね、いーよ、宜しくね有栖」
「おや、君たちが同級生かな?私は夏油傑、よろしく頼むよ」
そう言って教室に入ってきたのはボンタンズボンの制服を着た男だった。
身長は高く、アリスと比べると親と子くらい離れているだろう。
「うふふ、ワタシ、節国有栖、コンゴトモヨロシクね?」
「その挨拶やるんだ…。私家入硝子」
「うん、よろしくね。ところで節国さん、君は特別入学だったり?」
椅子に座っているのに足が地面に届いていないのを見てだろう、もしくはその金髪金眼といった日本人離れした容姿だろうか。
小学校くらいまでは見た目は兎も角身長は普通だったのだが、中学以降は止まってしまった身長故に年齢を聞かれることも増えた。
「小さいけれどちゃんとした15歳での進学よ?ついでに言うと純粋な日本人でもあるわ」
「え」「マジ?」
「マジも大マジよ?天与呪縛というものらしくてね、生まれた時からこんな色で、身長とかも止まっちゃったのよね」
同級生に人形のような見た目の少女がいたら気になるのは当然、本人としても別に話したくないような話題でもないので話が膨らむ。
3人とも非術師家系(施設)出身で今までそういう事を話せる様な人間が周りにいなかったからか、それなりに盛り上がっていた。
そして既に3人が揃っているということは4人目が来るのも時間の問題である。
ガラッという音と共に扉が開かれる。
それに気付き声を掛けたのはアリスだった。
「貴方が有名な五条悟?ワタシ節国有栖、コンゴトモヨロシクね?」
「は?俺雑魚にはキョーミねーから。勝手によろしくしとけ」
その瞬間、まだ出会ったばかりの3人の心は1つになった。
コイツ、クズだ、と。
教室にズカズカ入ってきた事により見えるようになった見た目は物凄く整っているものであったが、その言動に関しては酷いものだった。
先に口を開いたのは同じ男である夏油だ。
「五条悟だったかな?いきなり雑魚なんて言うものじゃないよ、それに僕達は同級生なんだから仲良くすべきだ」
「雑魚を雑魚って言って何がワリーんだよ。それに同級生とは仲良くするべきだ〜とかいい子ちゃんかよ、キッモ」
オッエーと舌を出す五条に夏油は言い返す。
それはどんどんヒートアップしてそのうち殴り合いでも始めそうな程である。
お互いに身長がとても高く、顔も整っているので傍から見た場合の圧やらが大きい。
女子2人は巻き込まれないように少し離れて2人で話していた。
「あの2人、出会ったばっかりなのにあんなに喧嘩するなんて、仲がいいのかしら」
「さあね、夏油の奴も取り繕ってはいるけど結構クズっぽいとこ出てたし、気が合うんじゃない?なんにせよめんどうだからあーなったら関わんないほうが良いね」
「そろそろ担任の夜蛾先生も来るだろうし、そうなったら流石に収まると思うわ。それまでは離れていましょう」
ウンウンとお互いに頷き教室の端に退避する。
そして数分もせず担任の夜蛾が入ってきて男2人に拳骨を落とした事によって無事収まったのであった。
「改めて、俺はお前らの担任の夜蛾正道だ。俺の言うことは聞いてあまり騒ぎを起こすなよ、特に五条と夏油」
ため息を吐いてから教卓についた夜蛾は空気を切り替えるように切り出す。
が、その空気を読まないのがこの男共である。
「先生、それは酷いですよ、原因はこいつのせいなんですから」
「ふざけんな、お前のせいだろ。雑魚は雑魚って言ってるだけの俺は悪くありませーん」
自分は悪いことをしていないと言い張る夏油とヒラヒラと手を振る五条に頭を抱える夜蛾。
もう既に問題児達が頭角を現してきてこれからが憂鬱になる。
「はあ、五条、お前は雑魚と言うが他の3人もお前に劣らない逸材なんだ、仲良くしろ」
「いやいや、雑魚じゃん。特にそこのチビ、変な天与呪縛に役に立たねー術式のダブルコンボで雑魚オブ雑魚でしょ」
「?五条、お前にも資料は行ってるはずだが読んでないのか?節国は―」
「先生」
急に言葉を遮られた夜蛾はアリスを見る。
件のアリスは片目を瞑り、人差し指を口元に立てて微笑んでいる。
所謂シーッ、のポーズに口を閉じるが、その理由が分からない。
理由を聞こうとするがその前にアリスが口を開いた。
「折角だから、実際に見せてあげるのはどうかしら。五条は色々戦い慣れてるらしいし、私もそこそこ自信はあるわ。何よりも百聞は一見にしかずっていうじゃない」
「いや、しかしだな…」
「いーじゃん、センセー。俺が怪我する訳ねーし、ちゃんと手加減はしてやるからさー」
「五条…お前まで」
何故かノリ気な2人に更に重い頭をかかえる。
問題児は五条と夏油だけかと思ったが、節国もそうなのかもしれない。
いや、教室に入ってきた時から微かに臭うのは煙草だ、3人は特に吸っている感じはしないから、今は傍観してる家入も問題児なのかもしれない。
これが終わったら胃薬を買おうか本格的に迷ってきた。
まあ4人の問題性は置いておいて、今考えるのはアリスが言ったことをどうするか、である。
確かに悪くはない。本人が言ったように自分の目で見ることは言葉を尽くすよりもわかりやすいだろう。同級生なのだから1、2年は合同で行う任務や実習は多い、お互いの実力や術式を知っておくことは必要だ。それに怪我をした所でここには家入がいる。軽い怪我なら問題ないだろう。
問題は今が登校初日かつ最初の時間ということだが…。
「…まあ、いいだろう。だがお互いにあまりやりすぎるなよ、あくまで自分の出来ることを見せる感じだ。あと家入は見学だ」
「話分かるじゃん!じゃあグラウンド行くか!」
そう言って歩き出す五条を先頭に全員が動き出す。
それに、今回の事はこちらとしても有難いのもだ。五条の無下限は有名で、夏油の呪霊操術もわかりやすいものだが、節国の術式は未知のものだ。六眼を持つ五条は役に立たない術式と言っていたが、それならば報告書にあった呪殺というのがわからない。本人は自分の術式の事を理解しているようであったし、ここである程度こちらも理解しておきたいのだ。
「大丈夫なん?あいつ結構有名らしいし、言うだけの事はあるんじゃない?」
「うふふ、大丈夫よ、さっきから言ってるでしょう?私、これでも強いのよ?」
「私も君の力は気になるからね、じっくり見せてもらいたいかな」
後ろの会話はそんな夜蛾の思考とは真逆の和やかなものであったが、それを気にすることは無かった。
アリスの口調はこんな感じで。
他キャラ、特に硝子の口調とかが合ってるのかわからん。