天与呪縛【アリス】   作:[ゆーや]

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いいタイトルが思い浮かばないので、タイトルに真面目さは求めないでください。


ナナミンタイム

「僕出張行かないといけないから、悠仁の世話頼みたいんだよ」

「はあ、貴方が出張に行くのはいいとして、今年の1年の担任は夏油さんでしたよね?そっちはどうしたんですか」

 

そう話すのはいつもの黒ずくめの不審者である五条と、その五条に呼ばれて高専まで訪れた七海だ。

 

「それがね〜、今年の1年多いから美々子達に付いてて今いないんだよね。恵なら1人でも大丈夫だろうけど、悠仁って今は問題ないけど呪物食べてるから暫くは監視付けとけって言われてるし…」

「それで私に頼もうと」

「有栖や灰原にも話は通したんだけど、来れるのが明日以降なんだよね。だから今日だけでもいいから!」

 

珍しくしっかり頼み込んでくるロクでもない先輩を傍目に考える。

昔はもっと適当だったのに、今はある程度しっかりしている。恐らく有栖さんの影響だろう。それに、他にも高専所属の術師はいるのに自分達を頼ってくれているのは中々いい気分だった。

少なくとも有栖さんと名前が並ぶくらいには信頼されているのだから。

 

「今度、何か奢ってください」

「ってことは引き受けてくれるんだね。いやー、助かるよ」

 

ついでに恵も連れて行ってくれていいんだよ?とほざく先輩を殴る。

それは無限によって阻まれるが、元々あまり力は入れてないので無限があろうが無かろうが特に変わらなかっただろう。

悠仁とスマホで連絡している五条を見ながら独り言ちる。

 

「…はあ…労働はクソですが、これも大人の義務ですか」

 

 

 

 

 

 

 

 

「まずは挨拶ですね、初めまして虎杖くん。七海建人です」

「あ、はい。初めまして」

 

何やら適当な紹介をしてくる五条の話をスルーしつつ、改めて自分で挨拶をする。

 

「とは言っても、私は明日来るであろう有栖さんや私の同期までの繋ぎでしかありません。」

「ああ、前に話してた…。ってことは明日会えるの?先生!」

 

そう五条に聞く虎杖だったが、当の五条は何かに気付いたのか愕然としている。何やら耳を傾けると有栖と会った悠仁の驚く顔を見れないとかなんとか。

相変わらずの先輩にため息が出る。だが分からなくは無い、あの人に出逢えば誰であろうと大小はあれど必ず驚く。そんな光景をあの五条が笑わないはずがないだろう。

 

「まあ、それは置いておいてください。私はあくまで今日担当するだけです。有栖さん関連の話は同級生などとしてどうぞ」

「あ、ごめんごめん。ま、そんな訳だから悠仁は色々七海に教えてもらうといいよ。出戻り組のマトモな術師だから感性も近いだろうしね」

「おっす!よろしくお願いします!七海先生」

「私は教職じゃない、先生はやめてください」

「じゃあナナミンで!」

「やめなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、ナナミンはその有栖さんと仲良いの?さっき話してた時も色々知ってそうだったけど」

「そうですね。何せ高専時代の先輩ですから」

 

チラと外を見る。目的地までは少し時間がありそうだ。時間を潰すのにはいい話題かもしれない。

 

「では、何か聞きたいことがあれば答えましょう。まあ、私からの事しか話せませんが」

「じゃあじゃあ!有栖さんってナナミンから見たらどんな人なの?」

「簡単に言うならば信頼も信用も出来て、そして五条さんと違い尊敬も出来る人です」

「やっぱそうなの?伏黒とかに聞いてもみんな良い人って返ってくるんだよなー。早く会いたいなー」

 

明日になれば会えますよ、と返しつつ昔を振り返る。たまには懐かしむのもいいだろう。

同期の4人ではしゃいだり、自分達も巻き込んで色々遊んだりはしていたが、問題児達の様に喧嘩をする訳でもなく、素行が悪いわけでもない。むしろ夜蛾と一緒に仲裁をしている時も多かった。

その力とは裏腹に、傲慢になる訳でもなく本当に尊敬出来る人だ。

 

「それに、私は高専時代に有栖さんに命を救われたこともあります。もしあの人がいなければ私か、同期の灰原は確実に生きていなかったでしょう」

「お…おう…。急に重い話が…。で、でさ!助けられたってことはやっぱ強いんだよね!どんな感じ?」

 

その話ぶりからある程度聞いていることは想像できた。故に別口からの話をすることにした。

 

「呪術師というのはマイノリティで万年人手不足だ。それは知っていますね?」

「うん、でもそれがどうしたの?」

「人手不足というのは今も変わらない。けれど、およそ10年ほど前からとある人物のお陰でかなりマシになりました。」

「それが…有栖さん?」

 

頷くことで答える。自分が高専に入学したのは既に有栖さんが頭角を現し始めた後のことであったが、それでも1年の頃と4年の頃を比較すると目に見えて結果が違う。

本人に聞いた話では2年目くらいから補助監督や周りもそのシステムに慣れ始め、範囲指定から周りの呪術師に回る任務の調整など、かなり最適化されていったらしい。

 

「あの人は普通の術師が何十、何百人必要であろう結果を一瞬で出す。誇張抜きで今の呪術界は有栖さんが1人で何割かを負担しています。それでいて本人は特に無理をしている訳でもなければむしろ他の術師より気楽にしている」

 

理不尽なものですよ。と声に出たのは無意識だろうか。

規模が大きすぎてあまり聞いても実感が湧かないのだろう。虎杖は驚いてはいるが、どちらかというと首を傾げている方が大きい。

 

「まあ、本人に会えば色々と分かるでしょう。任務場所に着いたようだ、この話は終わりです。意識を切り替える様に」

 

 

 

 

 

 

 

──ナナミン&虎杖戦闘中──

 

 

──改めて相談中──

 

 

──ナナミン戦闘中──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある地下、崩落した壁の瓦礫に足を運ぶ男が1人。

その存在に反応するように瓦礫の隙間から気持ちの悪いモノが出てくる。

それは瓦礫から出てくるやすぐに顔を始めとした人間の形をとった。

 

「あっははは。見かけによらず無茶するなぁ、あの術師!」

 

真人。人への恐怖から生まれた呪霊。先程戦った術師により瓦礫の下に埋められたが、その性質ゆえ無傷だ。

 

「随分派手にやったねぇ」

 

そしてその呪霊に話しかける男。中肉中背、黒髪黒目の何処にでもいそうな背格好をしているが、服は黒一色でいかにも怪しい格好をしている。

特徴は額に縫い目のようなものがある事だろうか。

 

「羂索、面白いやつだった。色々勉強になったよ」

「羂索と呼ぶのは辞めてくれ、今はこの体の名前で呼んでくれと言っただろう?」

「どうせ繋ぎって言ってたじゃないか。名前を覚え直すのはめんどくさいからね」

 

そう答えつつ、先程の戦闘で興奮しているのだろう。色々と発見した事などを聞いてもいないのに喋り出す。

羂索としてはあまり聞かなくてもいいことだ。故にとりあえず次の話題を口に出す。

 

「相手の呪術師は?」

「どうかな、1度退くと言っていたけど、瓦礫の下かも」

 

服をくれと言ってくる真人にやだと返しつつ考える。

普通なら別にこのままでも問題無いだろうが、今回は別だろう。

 

「真人、帰るよ。これ以上この周辺にいるのは危険だからね」

「えー、なんで?別にさっきの呪術師も俺に傷付けれなかったし問題無いと思うけど」

「その術師は七海建人だろう。彼自体は問題ないが、おそらく節国有栖が出てくる可能性が高い。今君を失いたくはないからね」

 

そう言って有無を言わせず連れていこうとする羂索に前から気になっていた疑問を投げる。

 

「前から言っていたけど、その節国有栖ってのはそんなにヤバいのかい?」

「ああ、とんでもないよ。君だけじゃなく、漏瑚や花御ですら何も出来ずに一瞬で祓われるだろう。生得領域内には彼女の力は届かないからあまり出ないことをオススメするよ。今回の事で君の事も知られただろうしね」

 

この男──羂索は時たま特定の場所には行くな、やら領域から出るな、など指示してくる事があるらしい。本人によるとそれは節国有栖によって”ついで”で貴重な戦力を失いたくないからだという。漏瑚達は最初こそ疑ってかかったが、その場所に後ほど訪れ蝿頭1匹すらいない光景を見てからは素直に従っている。

 

「いくら私や君達がどんな策を練ってどんな事をしようが、今の時代では何も出来ずに祓われるだけだ。何十年か、百年か、暫くは耐える時期だよ。向こうに祓われないように気をつけながらね」

 

その声は真剣で、本心からそう思っているのだろう。

流石に逆らう気も無く、その後ろを続き歩く。その途中、ある事を思い出し羂索に尋ねる。

 

「そういえば、順平はどうしようか」

「ああ、確か君が術師に変えた子か。彼は既に高専の者と接触しているからね、今更殺しても特に変わらない。放置しておけばいいよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

トイレで脇腹の傷を押さえつつ、スマホを操作する。

伊池知には既に連絡をした。虎杖と一緒に居ないというのが気になったが、今はそれより優先することがある。

連絡先の1つを選択し、電話を繋げる。

その相手は七海が最も信頼する人の1人だ。

 

「…もしもし。有栖さん、今大丈夫ですか」

『七海、どうしたの?例の虎杖くん関係で何かあった?』

「いえ、そうではありません。今日の任務の事で用がありまして」

 

そう答えると、真剣な話だと悟ったのだろう。声色が変わり、意識を切り替えたのが分かった。

 

『…何があったの?』

「おそらく特級の呪霊に遭遇しました。ツギハギの顔をしていて、人型。人間を化け物に変える力を持っていて、自身の姿も色々も変えてきました。問題は私の攻撃が効いていなかった」

『その感じだと未登録の特級かしら』

「十中八九そうでしょう。私は今から家入さんの治療を受けに高専に戻ります。有栖さんの力を借りたい」

『わかったわ。もう東京には戻ってきているから、場所を送って頂戴』

「すみません、助かります」

『気にしないで。貴方は早く傷を治してもらいなさい』

 

そう言って電話を終える。

あの人さえ居れば大丈夫だと思うが、戦った呪霊の事を思うとあまり安心する気にはなれない。

別に有栖さんが負けるとは思っていない。それどころか、あの術式では有栖さんに傷を付けることも出来ないだろう。

しかしあの呪霊は子供だった。貪欲に自分の成長を楽しんでいる。どんどんとその力を増し、そして比例するように被害も増えるだろう。

今現在の被害者数ですらこちらの予想を超えて遥かに多い。今この瞬間にも被害が出ているかもしれない。

一刻も早く有栖さんが祓ってくれる事を祈った。

 

 

 

 

 

有栖さんから周辺には既に姿は無く祓えた手応えも無かったと連絡を聞き、七海は爪が食い込むほど拳を握りこんだ。

 

 

 




羂索の口調がまんま羂索in夏油のままだけど気にしないでください。
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