モンスターと仲良くなろう!   作:ポケモンにわか

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 過去編の最後です。

 次からは書きたかった原作に入ります。



過去編 玉折・懐玉 2

 

 ―――なんだコイツは………なんなんだッッ!!?

 

『はっはぁああああッ! テメェはオレサマのッ! サンドバックだぜぇええええええ!!』

「ぐっ、舐めるなぁああああああ!!」

 

 呪霊は“サル”に袋叩きにされていた。

 

 呪霊の術式は主に風を操るもので、中・遠距離に強いタイプだ。同じ遠距離タイプの“トリ”には術式の相性もあり格上として対峙できた。

 

 しかし―――

 

 

 

『拳にッ力が入ってねぇなぁああああああ!!!』

「がァアアアアッ!??」

 

 “サル”は超近距離格闘タイプのモンスターだ。術式の相性も、炎の熱で風が逸れるせいでいまいち効果が薄い。

 

 そして呪霊は、自分の不利な戦いを強いられることとなり、現在追い詰められているのだ。

 

 ―――この猿がッ! 一撃一撃が重すぎて、受け切れん!!

 

「クッ! 離れろ猿め!!」

『!? ぐッ!』

 

 呪霊は超至近距離から最大出力の風を当てることで、“サル”を大きく吹き飛ばした。これで仕切り直し―――

 

『――うっぜぇなぁああああああああッ!!!』

「ッ!! クソ猿がァッ!!」

 

 吹き飛ばされ地面に落ちた瞬間、大跳躍ですぐに戻ってきた。

 

 しかし、先ほどよりは戦況が呪霊側に分がある。

 

 それは、『空中戦』であること。

 

 呪霊は空を飛べる。“サル”は空を飛べず、ただ地を跳ねているだけだ。すぐに落ちるだけだろう。

 

 呪霊は落ちる、その瞬間を狙う。

 

 

 

「僕もいるぞッ!」

「がッ!?」

 

 しかし、“サル”に注意を向けすぎた呪霊は、もう1人の存在を失念していた。

 

 “サル”に遅れて跳んできた千歳は、ガラ空きの背中に拳をぶつける。前によろめいた呪霊に“サル”が蹴撃。

 

「アッ?!!」

 

 そして背後からは千歳が、前からは“サル”が次々と呪霊に打撃を加えていく。前門の“サル”、後門の千歳の布陣は呪霊を加速度的に追い詰めていく。

 

『おるぁあああああああッ!!』

「ぐっはァッ!!?」

 

 “サル”と千歳の滞空時間が限界を迎える前に、“サル”が呪霊に踵落としを喰らわせ、再び呪霊の苦手な『地上戦』に突入する。

 

 

 

『初めてじゃねぇか、凛? お前が呪霊(アイツ達)を殴るのは』

「そうだね、別になんとも感じない。でも、今はそんなことどうだって良いだろう?」

『違いねぇ。今はただ……あのクソ野郎をぶん殴るだけだ』

 

 

 

 呪霊は混乱していた。なぜ、どうしてと疑問を自身に問う。何度も、何度も。

 

 ―――コイツらが、私よりも強い? この台風を恐怖する人間達から産まれた最強の“呪い”たる、私が? ありえない、ありえないッ、あり得てはならないッッ!!!

 

 自信を揺るがす程の、産まれて初めて持つ激情。

 

 そしてそれでも尚、忘れぬ冷静な思考力。

 

 呪霊はいま、“進化”の扉の前に立っていた。

 

 

*

 

 

「何かが、変わった?」

『あぁ……上手く言えねぇがやべぇことは分かる。アイツにこれ以上時間をやる訳にはいかねぇな』

「……いや、もう遅いみたいだ」

 

 

 

「貴様らを……殺す。絶対にだ」

 

 呪霊の瞳には、殺意が渦巻いていた。

 

 その瞳を見た千歳は、判断を下す。

 

「……“サル”、交代だ」

『はぁ?? 何でだよ!』

「直感、でも信じて。必ずまた助けを呼ぶから」

『……分かった、やれよ』

「ありがとう……来い、“カメ”」

 

 “サル”が姿を消すと、すぐにトラックのような大きさを持つ巨大な“カメ”が姿を現す。

 

『ボクの出番ってことは……』

「うん、最大防御でお願い」

『了解だよ、凛』

 

 草、というよりは樹木を操り、“カメ”は半円状に千歳と自分を囲む。

 

 そして呪霊は静かに、その権能を怨敵へと振り翳す。

 

「術式解放――『野分天鼓(のわきてんこ)』」

 

 風が、雲が、雷が天より舞い降りる。

 

 風は生木を切り裂き、雲は視界を奪い、雷は全てを蹂躙する。

 

 それはまさに天災、この呪霊の真骨頂は大群にこそ発揮する強さ。数がどれだけいようと、弱者達では手も足も出ない。

 

 特級に恥じない、規格外の範囲攻撃。

 

 

 

 しかし、ここにはそれに対抗できる“盾”を持つ者がいる。

 

「どうやら、僕の勘は正しかったみたいだ」

『うん、“サル”だったら危なかったね……でも、ボクなら問題ない』

 

 “カメ”の術式(能力)は草を生成し、操る。それは他のモンスターも、大枠は同じだ。

 

 しかし、この“カメ”だけ他のモンスターと違う点が一つある。“術式対象”だ。

 

『ボクの身体は、その程度じゃびくともしないよ』

 

 自身が術式対象であること。それが他のモンスターと違う点。“カメ”の身体はその術式によって強化されたものであるから、規格外の硬度を誇る。

 

 因みに、このことを“カメ”は知らない。

 

 

 

「……止んだみたいだ。“カメ”、これ消して!」

『うん! ボクが足止めするから、凛がアイツに攻撃して!』

「分かった!」

 

 周りに展開していた“盾”を消し、“カメ”の下から這い出た千歳は、呪霊がいるだろう方向を向く―――呪霊は、既に千歳の目の前にいた。

 

 

 

「えっ」

 

 黒い火花は、“呪い”に微笑んだ。

 

 

 

 

黒閃

 

 

 

「っがッッ!!?」

『――! 凛!!』

 

 血を流し、吹き飛ぶ千歳から視線を切り、呪霊は“カメ”に向かい、再度拳を振るう。

 

 

 

 

黒閃

 

 

 

『うわぁッ!!』

 

 トラック程の大きさを誇る“カメ”も、同じように吹き飛ばされる。

 

 呪霊はいま、“進化”の扉を開いた。

 

「これが……私なのか?」

 

 圧倒的な自尊心、それを揺るがされた呪霊はしかし、その自尊心を守る為に極度の集中状態に入っていた。

 

 そしてその集中状態の中、黒閃を放ったことで気づいた呪力の“核心”。

 

 呪霊は掌をかかげ―――圧(・)縮(・)し(・)た(・)台(・)風(・)を放つ。

 

 海に向かっていったそれは、海を割ってどこまでも進んでいく。

 

「……ククッ、クハハ、クハハハハハハハッ」

 

「なんだこれは! 世界全てが、私を祝福してくれているような全能感、万能感ッ!!」

 

「誰も私には勝てない! 私は、真の最強になったッ!! ハハハハハハハハッ!!!」

 

 呪霊がハイになっている時、“カメ”は自分の傷を無視して千歳の元まで向かった。

 

『凛! 凛ッ! しっかりするんだ、凛ッ!!』

「ぁ……いき、が」

 

 呪霊が黒閃を放った瞬間、千歳は呪力で防御することができなかった。こんな時にも、経験不足が足を引っ張る。

 

 黒閃は通常の打撃の2.5乗。そして膨大な呪力と出力を誇る特級呪霊がそれを行った。

 

 簡単なことだ。

 

 千歳の身体は、一撃でボロボロになっていた。そして、肺がどちらか潰れたのかもしれない。千歳は懸命に息を吸おうと足掻くが、満足には吸えない。

 

『ごめん、ごめんよ!! 凛、ごめん! ボクが、ボクが“盾”にならなきゃいけなかったのにッ!!』

「……いいんだ、友達が傷つくのを、少しでも防げたんならそれで」

 

 千歳は、動こうとしない身体に喝を入れる。

 

 そして、思いっきり反動をつけて立ち上がる。ガクガクと震える膝で、しかし1人で支えられずに立っている。

 

「まだまだ……へへっ、元気いっぱいさ!」

『凛……』

 

 それは明らかな虚勢、ハッタリ、誤魔化し。

 

 それを“カメ”は、見て見ぬふりをした。

 

 凛と“カメ”には、“サル”と“トリ”の声が聞こえていたが、無視をした。

 

「――聞いて、“カメ”。アイツを今倒さないと、多分収拾がつかなくなる。だから、僕たちが倒さなきゃいけないんだ」

『……うん、分かるよ』

「だから、なんて言うか――ここからは、命を賭ける」

『! どういう、こと?』

 

「おかしな話だけど、僕いままで皆んなに頼って戦ってたからさ、命なんて賭けたことないんだ――すっごく、反省してる。何やってたんだろうって」

 

「君たちが傷ついた姿も見たことあるのに、君たちの心配をするばかり。自分だけは大丈夫だって――そんな風に考えてたんだ」

 

「でも、今からは違う――僕も、君たちと戦いたい。君たちと、対等でありたいから」

 

「だから僕を守らないで――この戦い、『一緒に』勝とうぜッ!」

 

 ぐっ、と拳を突き出す。“カメ”は、嬉しそうにそれに頭をつける。“サル”と“トリ”も、想う心は同じ。

 

「今のところ、アイツに有効打を加えたのは“サル”――君だ」

 

 “カメ”は消え、“サル”が戦場に舞い戻る。

 

『待ちくたびれたぜッ! こんないい獲物、本当はオレサマが独り占めしたかったんだからな!』

「ふふっ、ごめんね。でもまた喚んだから許してよ」

『しゃあねぇなぁ! 許してやんよぉ!』

 

 “サル”はがしがしと千歳の頭を撫でる。

 

 そして、自分の世界に入っていた呪霊もここで“サル”の存在に気づいた。

 

「来たなァ! クソ猿がァアアアッ!」

 

 怨嗟と、喜色が入り混じったような声。それは、呪霊の早く嬲り殺したいという強い意志を感じさせるものだった。

 

「“サル”……僕のこと気にしないで、全力でやって」

『いいんだな、俺の炎は熱(あっち)ぃぞ?』

「うん、頑張るよ。その代わり、僕のサポートは最小限だからね」

『へっ! いっつも後ろにいた奴がなに言ってんだよぉ!』

 

 呪術を用いた戦闘の場合、呪力量と呪力出力というのは勝利する上で重要な要素(ファクター)である。

 

 今ここにいるメンツで言えば、呪力量を上から千歳→“カメ”→呪霊→“サル”→“トリ”、という順位になる。

 

 では、出力ではどうか。

 

『こっからはぁ……本気(マジ)モードだぁあああああッ!!』

「ッ!!?」

 

 “サル”を囲む火が、爆増する。一瞬、呪霊は爆発が起きたのかと錯覚するほどの出力。

 

 “サル”の呪力出力は、千歳の規格外の出力に匹敵する。そしてそれは、呪霊よりも上であるということだ。

 

 絶大な出力は、しかし炎を生み出すため火力が馬鹿上がりし、周囲の被害を生むため、使い勝手のいいものではなかった。

 

 だからこそ、今までは抑えていたのだ。

 

「ッこれほどの呪力出力……今まで隠していたのか!?」

『はっ! 別にそんなんじゃねぇよ! ただこのモードは馬鹿ほど疲れるのが早いからな、5分が限界だぜ』

「! 術式の開示か。いいだろう、受けて立つッ!!」

『?』

 

 “サル”は知らずに術式の開示をして、さらなる出力を得た。

 

 そして“サル”はいざ攻撃に移る―――というタイミングで顎に手を当て、いわゆる考える人のポーズをする。

 

『何か知らねぇけど、お前……あの黒閃(黒い光)放ってから調子いいよなぁ。“トリ”もだけどよ』

 

『ゲームでいう“クリティカルヒット”みたいなもんなんだろう、あれ? だったらよぉ〜』

 

『オレサマもそれぇッ! 出してやるぜぇえええええッ!!』

 

 瞬間、爆発。

 

 呪霊は―――気づけば目の前に“サル”がいた。

 

 

 

 黒い火花は、炎を纏いし猿に愛を囁く。

 

 

 

黒閃

 

 

 

 

「ぐっはァッ!!?」

『はっはっはぁッ!! やれば出来るじゃねぇか!!』

 

 恐るべき才能。“サル”は、見様見真似で黒閃を放ってしまった。それは偶然か、はたまた必然か。

 

 呪霊は“サル”の黒閃と炎で大ダメージを負った。しかし、それでも祓えない。だからこその、規格外(特級)。

 

 呪霊が吹き飛ばされる先には―――千歳が立っていた。

 

 

 

 ―――回せ、回せ、エネルギーをもっと流れるように回せッ!!

 

 今日、初めて行った本物の戦闘。呪い合い(殺し合い)。そして、死を想起させる出来事(記憶)。

 

 それらは全て千歳の血となり骨となり―――今まで緩やかだった成長曲線は、今、この場の誰よりも直角に伸びようとしていた。

 

 そして、そんな折に呪霊が飛んできた。

 

 千歳の呪力出力は、本来“サル”と同じレベルである。

 

 しかし、今まではその稚拙な呪力操作が邪魔をして、本領を発揮したことはなかった。

 

 飛んでくる呪霊に対し―――千歳は自分も突撃する。

 

 その推進力は、“サル”に勝るとも劣らない。

 

 破壊力とは、“速さ”で決まる。

 

 飛んでくる呪霊(速さ) × 出力全開の千歳(速さ)

 

「絶対にッ! お前はここで倒すッッ!!!」

「がッはァッ?!?!」

 

 = 破壊力

 

 呪霊の身体はくの字に折れ曲がり、そのままずるりと千歳の腕から落ち、沈黙した。

 

「はぁ……はぁ……」

『アイツは!?』

 

 

「……イテテ、そこだよ」

 

 呪霊は“倒れていた”。

 

『そうか、倒したのか……やったなッ! 凛!』

「……うん!」

 

 

 

 ―――パスッ

 

 

 

「……え」

『は?』

 

 

 

「クッ、クハハハハハハッ! ただで死ぬものか! お前は道連れにしてやるぞ、弱き者よ!」

 

 それは呪霊の圧縮した台風によって、千歳の胸に風穴が開いた音だった。

 

 パタリと前向きに倒れる千歳。

 

 そして、何故か突如召(・)喚(・)さ(・)れ(・)る(・)3(・)体(・)の(・)モ(・)ン(・)ス(・)タ(・)ー(・)。

 

『どういう、ことですか……?』

『凛……凛ッ!!』

 

「なんだ、まだ手札を隠していたのか……。それならば、私に最初から勝利などなかったわけだ」

 

「しかしッ! 最早いまはどうでもいい! これは引き分けだッ! 私は負けていない! 弱き者は既に死んだ! 私は生きている! 誰が見てもこれは」

『黙れカス』

 

 ブンッ、と“サル”は腕を振るい呪霊を祓う。

 

 

 

『どうなって、いるのですか? 凛はモンスター(ワタシ達)を1匹しか召喚できない筈……なのに、ワタシ達は今3匹存在出来ている。これはどういう』

『今そんなこと、どうだっていいだろ!』

『!』

 

 “カメ”は千歳の服を捲り、心臓の部分を触り―――完全に鼓動が停止しているのを確認した。

 

『ッ! か、回復手段とかないかな!? ゲームの万能薬(エリクサー)みたいな!』

『そんなもん、あるならとっくに使ってるぜ!』

『それなら、病院へ連れて行きましょう! こう言う時はまず119番に電話して』

『それじゃあ無理だよ! 心臓を貫かれたんだ、病院じゃ死(・)者(・)は生き返れない!』

 

 モンスター達は、大いに混乱し、大いに怒った。攻撃した呪霊と、不甲斐ない自分自身に。

 

 “サル”は己を呪う。今より少しでも注意深ければ、アレが生きていることは気づけた。これは自分の責任だと、呪う。

 

 “トリ”は己を呪う。まず最初に逃げ切れていれば、千歳が傷つくこともなかった。これは自分の責任だと、呪う。

 

 そして“カメ”は―――

 

 ―――ボクがこの中で、一番役立たずだ。

 

 ―――皆んな、凛の役に立った。でもボクは、“盾”なのに凛を守ることすら出来なかった。

 

 ―――知ってる。“亀”ってよく、不器用で鈍くて、愚図みたいな比喩表現で使われるって。

 

 ―――まるでボクみたいだ。呪力(エネルギー)は皆んなの中では一番多いはずなのに、何もできない。何も………守れない。

 

 

 

 “カメ”は、凛の顔を見る。それは後悔が色濃く残った顔だった。

 

 呪術師に、後悔のない死はない。

 

 千歳の物語はここで潰え、これからはモンスターの物語が―――

 

『なんとか出来る!』

『! “カメ”……?』

『なんとかなるさ! やればなんでも出来る! ボクってすごい! なんてカッコいいんだ!』

『ど、どうしたってんだよ“カメ”?』

 

 “カメ”は、己のネガティブな姿勢を呪った。

 

 だから、今―――はっちゃける事にした。

 

『ボク皆んなには黙ってたけど実は人間の女の子好き! 好きなタイプはボクを好きになってくれる人! ボクを好きになってくれる人なら皆んな大好き! ハーレム希望! もちろん凛も“サル”も“トリ”も大☆大☆大♡好きッ! よぉおおおおしッ、なんか力湧いてきたぁああああああああ!!! ファイットー!! ボクーッ!!!』

『お、おう……そっか』

『……これが凛の友達が言っていた、後の“黒歴史”になるんでしょうね』

 

 すると、“カメ”の身体から淡く白い光が発された。

 

 その光に千歳が包まれ―――目を開く。

 

『『『嘘ぉッ!! 本当になんとかなったぁあああああああ!??』』』

「うわっうるさい……え、僕生きてるの?」

 

 反転術式―――それは呪術を扱う者の中でも更に希少な技術。その効果は生命には癒しを、“呪い”には苦痛を与える。

 

 そんな高度な技術が今できたのは、あの特級呪霊を倒したことでモンスターがレベルアップしたからだ。

 

 今回、“サル”は出力と身体能力が上がり、“トリ”は呪力操作に磨きがかかり、そして“カメ”は反転術式を覚えた。

 

 そんなにシステマチックなものではないし、他にも色々変化しているが大枠はこのような進化を遂げた。

 

 そして、千歳が目を覚ますと、モンスターはすぐに消えた。

 

「うーん、なにがなにやら……取り敢えず助かったし、今はいっか!」

 

「さぁ皆んな! 今日は帰って休もう、明日じっくり話を聞くよ!」

 

 

*

 

 

「つまんないな〜」

《何がです、凛?》

「ンー、僕ってさ……皆んなと比べて戦えないじゃん? だから中学の間に武術を習って戦えるようになろうと思ったはいいけど……誰も相手にならない」

 

「だから、つまんないな〜って」

 

 中学2年の春、もうすぐ千歳も3年生へと上がるという頃。

 

 特級呪霊との戦いの後、モンスターと色々話し終わった千歳は、自分には圧倒的に実践経験が足りないことを悟った。

 

 そして、それを補うために空手、ボクシング、柔道、剣道、喧嘩(?)という様々なジャンルに手を出しては辞めた。何故なら、千歳はここでも天才だったから。すぐに何でもできてしまった。

 

 しかし、それは途中までしか学んでいないからというのも千歳は理解している。それでも意味がないと理解した。

 

 なぜなら、それらは全て“スポーツ”でしかないから。殺しの技術ではない。

 

 千歳が学びたいのは、そういう血生臭い技術(もの)なのだ。

 

「どこかに達人でもいないかな〜」

《そんな都合のいいこと、ありませんよ》

《ボク知ってる。こういうの、『フラグ』っていうんだ》

 

 

*

 

 

「いらっしゃいませ〜。ご注文は何になさいますか?」

「うむ、ではパイを一つ」

「ありません。ここハンバーガーショップです」

「冗談じゃ、達人ジョーク。面白いじゃろ?」

「ははっ、そーですねー。ではご注文を」

「じゃあショートケー」

「無いっつってんだろクソジジイ。早くしねぇと金玉蹴り上げるぞ?」

 

 ―――ふぅ、ユニークの足りん娘じゃ。

 

 儂、シン・陰流の最高師範、超すごい。元・一級呪術師でもある。

 

 結構前に、水色の髪をしたマジ一般ピーポーの娘を呪術師に推薦した、ノリで。

 

 いやー、呪術界にはあーゆー娘が必要なんだよなー。色々門弟とか後輩とかから文句言われたけど、全部突っぱねてこう言ってやったわい。「此奴は大成するじゃろう……貴様らには分からんか? 此奴から滲み出す、“強者”の覇気が…!」……ってね!

 

 いやーマジ気持ちよかったわ〜。あの「こ、この人がそこまで言うなんて……今すぐ手続き致します!」……って言う、皆んなの顔! マジ草生える!

 

 いや、そんなわけないじゃん?

 

 あの娘、どう見たって弱くない? だって術式持ってなくて、しかも呪力ミジンコレベルなんじゃよ? それをあそこまで信じさせるって、儂Sugeeeeeeeeee!!

 

 はぁ〜、また路上にスカウト出来そうな呪術師の卵転がってないかなぁ〜。今度は「此奴は……五条悟を越えるやもしれぬ…!」……とか、言ってみてぇええええええ!!

 

「店内をご利用ですか?」

「はい」

「承りました。では、ご注文は?」

「エビフィレオとコーラ、あとポテトください。セットでお願いします」

「承りました」

 

 でも、流石に五条悟は吹かしすぎか? じゃあ「此奴は……一級では収まらんほどの器…!」とかならいけるか? いや、いける!

 

 儂、自分を信じよ! 今まで儂がどれだけ呪術界に貢献してきたか!

 

 そんな儂が言うんじゃ、みんな蟻を見ても儂が象と言えばそれは象になるんじゃ!

 

「こちらになります」

「ありがとうございます」

「それでお客様、すみませんが現在店内は満席となっておりました。お伝えするのが遅くなってしまい、大変申し訳ございません」

「いえいえ、大丈夫ですよ。あ、僕あそこのおじいさんの正面に相席させてもらうので。気にしないでください!」

「ありがとうございます」

 

 まぁ、出来れば蟻じゃなくて野生の象が居ればいいんじゃがなぁ。すっげぇ呪力持って〜、出力も半端なくて〜、術式も最高で〜、あとあと〜………

 

「すみません、おじいさん。相席いいですか?」

「……小僧、儂はおじいさんではない。お兄さんとよ……べ………」

「? あ、あの〜どうしました? そんなに、僕の顔じっと見て」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――え、野生の恐竜いるんだけど?

 

 





 はい、最後の老人はみんな大好き三輪ちゃんをスカウトしたシン・陰流の最高師範―――を、オリキャラで作ってしまいました。ええ、話し方から分かるように本来こんなキャラは出さない予定でした。でも……でも、ギャグって書いてて楽しいんですよ。
 因みに三輪ちゃんはシン・陰流の最高師範にスカウトされた、というのは原作の設定だそうです。作者は調べるまで知りませんでした。

 あと本当に今更ですが、特級呪霊もオリキャラです。すみません、タグにオリキャラって入れます。
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