モンスターと仲良くなろう! 作:ポケモンにわか
「わざとだよね」
「え……と、言いますと」
「特級相手に一年の派遣はあり得ない。付け加えて、凛不在の状況と生死不明の人命救助……」
五条は出来るだけ感情を押し殺し、無味乾燥にただ事実だけを紡ぐ。
「僕と凛の居ぬ間に、特級を使って体よく悠仁を処理したってところかな」
「で、ですがッ! 派遣が決まった時点では、本当に特級になるとは……」
「どこかの誰かが事実を隠してたんだろ」
「犯人探しも面倒だ」
「いっそ、上の連中――全員殺してしまおうか」
ずるりと、感情に呼応して五条の呪力が漏れ出す。それはまるで、抑えられていた彼の怒りが器から溢れ出したかの如く。
伊地知には、その反応を怯えながら見守ることしかできない。
―――これから、悠仁たちの『青春』が始まるはずだった……他の3人が、これで潰れなきゃいいけど。
*
「悠仁が死んだって、本当?」
「……あぁ、本当だ」
千歳が
任務先で美味しいドーナツ屋さんを見つけて、補助監督と一緒に食べている時に、自分の好物の写真をグループに送る。
それは今回一人だけ単独任務だったが故に、友達の反応が欲しくて、もっと言えば虎杖の「俺も食べたい!」……というような反応を期待して送った。
しかし普段、返信が早い彼等が誰も既読すらつけないことに少々胸騒ぎがした千歳は、補助監督と一緒にすぐに店を出て、虎杖達の任務先に向かおうとした、その時だった。
「虎杖が死んだ」
そう、伏黒から簡潔にメッセージが送られてきた。
「……なんで、悠仁は死んだの」
「……特級呪霊と遭遇して、アイツは俺たちを逃すために一人残った。そして俺たちの避難が終わったタイミングで宿儺に代わって、その呪霊を祓う――予定だったが、逆に宿儺に身体を乗っ取られた。そしてアイツは……俺を守るために、自殺した」
伏黒はゆっくりと話す。それは聞き手のためを思っての行動ではない。自分のやり方には穴があったんじゃないか、と自分で分析しているのだ。
そして、伏黒にはやはりあれが最善でなくとも最良だった、という残酷な答えが浮かんだ。
「……………そっか。悠仁は、恵を守ったんだね」
「あぁ――俺はアイツに守られた」
「……一つ、聞きたいんだけど。もし、その場に僕がいたら、何か状況は変わっていたかな?」
「お前がいたら、まず特級呪霊なんて瞬殺だったろうな。そうなったら虎杖は死んでないだろう――あと、宿儺と対峙したから分かるが……あの宿儺より、お前の方が強かったと思う」
「そっか……うん、そっか」
「ちょっと、もしかしてアンタが後悔してんの? やめなさいよ、それ」
釘崎は、千歳の内心をずばりと言い当てた。それは彼の話し方、表情、なによりも短い付き合いだが“善人”だと分からされる数々の思い出があったからこそだ。
だからこそ、釘崎は千歳の
「アンタが言う“もし”なんて、あり得ない空想なのよ。それにいちいち後悔してんじゃないわよ……どれだけ想像したって、アンタはあの場所にいなかった。助けられなかった。だから――アンタが後悔すんな」
「……ごめんね」
―――後悔すべきは、私たちの方だから。
そんな内心を釘崎は下唇を噛んで、隠す。
その場の全員に、沈黙が刺さる。釘崎はそっぽを向いて、他の二人は何を言えばいいのか分からない。
「よぉ〜、恵。いつにも増して辛気臭ぇな……お通夜かよ」
そんな沈黙が痛いほどの空間に、陽気な声は目立った。
「……禪院先輩」
「真希先輩、ですか?」
「凛の方はいいが……恵ぃ、私のことは苗字で呼ぶんじゃ」
「真希、真希ッ!」
「んだよ、パンダ?」
―――え、パンダ?
釘崎は己の目を疑った。目を擦っても、そこにある
「そいつら、マジで死んでるんだよ! 一年坊がッ! 一人!!」
「おかか!」
「は・や・く・い・え・や!! これじゃあ私が血も涙もねぇ鬼みてぇだろ!」
「いや今実際そんな感じだからなッ!」
「ツナマヨ……」
その2年トリオの掛け合いを傍から見ていた、1年トリオは釘崎だけ頭にハテナマークが浮かんでいた。
「何……あの人(?)達」
「2年の先輩だ」
「眼鏡をかけた
「途中までしっかり聞いてたけど、最後雑ね。一番欲しい
「付け加えるなら、この中にはいないが『乙骨』先輩。唯一、手放しで尊敬できる人だが、いま海外にいる」
「聞いてないわよ。そんなことよりパンダについて説明!」
「? パンダ先輩はパンダだよ」
すっかりパンダを見慣れてしまっていた伏黒と千歳は何も思わない。釘崎はいまだに、パンダの謎について考える。しかしどれだけ頭を捻っても、納得する答えは出てこない。
「京都姉妹校交流会ぃ〜?」
「そっ、京都にもうひとつある高専との交流会に1年も出て欲しいんだよ」
「めんどくっさ!」
「そう言うなよぉ。交流会って案外大事なイベントなんだぞ〜、推薦とか俺たちの将来に関わってくるしぃ」
釘崎は面倒に思い、他の二人は疑問に思った。それもそうだろう、そのイベントは例年ならば2、3年生がメインの催しなのだから。
しかし真希の話では3年が停学しているため、代替として1年を参加させたいという話だった。
「つーか、正直――私達としては凛が一人でも参加してくれればいいんだけどな」
「……まぁコイツ出鱈目ですもんね」
真希としては、交流会に出るならば必ず“勝ち”にこだわる。それは2年全員、熱量は異なるが同じ想いを持っている。
そして、“勝ち”にこだわるならば強い仲間が欲しい。
入学してすぐ『一級術師』になった千歳は、あちらの『最高戦力』の当て馬として条件が良かった。
「あははは……そう期待してもらっているのに申し訳ないんですけど……僕、交流会で術式と手持ちの呪具は使わないと思います」
「は? なんで?」
「んー………」
千歳は、彼等が
「……僕の術式はとても“殺傷性”が高くて、相手を殺しちゃうかもしれないんです。呪具は、まぁ……“特級呪具”なので本当に危険なんですよ。それを仲間の呪術師相手に使えません」
「呪具はともかく術式って、お前
「あー……これはオフレコでお願いしたいんですけど、“縛り”があるんです」
「! そうだったのか」
無論、千歳の説明には嘘がある。
術式は“殺傷生”のないモンスターを使って戦えばいいし、そもそも限定的な“縛り”など結んでいない。“特級呪具”が危険なのはその通りだが、千歳の呪具は特殊で“縛り”を結んでおり、その“縛り”の条件を達成するまでは何の効果もない呪具である。
しかし、もちろんこれには真実も同居している。
千歳のモンスターはその全てが規格外であり、万が一手加減できず殺してしまう可能性があるのは本当。ただの呪具でも刃物なので、仲間相手に振るうものではないと千歳が考えているのも本当だ。
では、なぜ千歳はこれだけ嘘を並べてでも術式、そして呪具を使わない選択肢を選んだのだろうか。
―――五条先生が言っていた通りだった……上の連中は“信用できない”。
―――あの不可解な『三級呪霊の討伐』出張任務は、僕を悠仁たちから遠ざけるための理由付けとして考えれば辻褄が合う。
―――だから、もう手札は見せてあげない。
―――もしもまた……僕の友達を傷つけるようなら、その時は………
―――少しだけ痛い目に遭ってもらう。
既に、呪術界上層部を