ノヴァになった   作:影後

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シオとノヴァ

「美味い」

 

ボルグ・カムランの針をボリボリと齧っていると第一部隊のゴッドイーター達が現れた。レンカとサクヤとか言う女だ。

 

「勝手に出撃はしないように言われなかったかしら?」

 

「緑の女、俺はお前達を観察し、研究する。と言った。それに、ゴッドイーターとして仕事しているだけだ」

 

「通信機が切れてるから確認お願いしますって、ヒバリさんが言っていた。ノヴァ、帰るぞ」

 

「まだ、ボルグ・カムランを食べ終えて無い」

 

「食事ならあれだけ食べて」

 

「妹の食事だ。俺は食わん」

 

「なんで」

 

「家族に分け与える物だ。兄は我慢し、家族を食わせる」

 

「……ふっ……ふふ」

 

「何がおかしい」

 

私の話におかしなところはない。だが、サクヤは笑い、レンカは微笑んでいる。

 

「サクヤさん!レンカさん!大型種の反応です!」

 

「ヴァジュラ……イタダキマス」

 

ロングブレードでヴァジュラの頭を擦れ違いざまに斬り落とし、アサルトに変形させ美味くない場所を撃ち削る。コアは回収しなくてはいけないが、他は食える。

 

「……(もぐもぐ…ウマ…ウマ…)」

 

「いっぱい食べる君が好きだったか」

 

「レンカ、イロハもソレを言っていた。なんだ」

 

「気にするな」

 

私はそう言われ、ヴァジュラを捕食していく。

 

「食べ方も兄妹よね」

 

「上品なのはノヴァですけど」

 

「なんだ、お前達も食うのか?」

 

「いや、人間はアラガミを食べない。ほら、帰るぞ」

 

「満腹だ、人間の食事は腹持ちが悪い。美味いが、私はアラガミを捕食する方が良い」

 

「そうか」

 

ヘリコプターで満腹感から寝てしまう。

流石にアナグラに付けば起こしてもらえるだろう。

 

_____

 

「人型アラガミ」

 

「まぁ、生まれたばかりらしいし……なんというか、良い教育を受けた子供と言うか」

 

「そうですね」

 

寝ているノヴァは俺より歳上に見える姿だが、ソレは人間を学び擬態した姿。大人なのは人間の社会で動きやすい様にだろうと、ペイラーは結論づけた。

 

「そういえば、効きましたか?コウタが新型に適合したんです」

 

「えぇ、ショートブレード、アサルト、タワー、基本的に前のサポートをする為らしいです。ノヴァの偏食因子のおかげらしいんですけど……」

 

「正体不明のオラクル細胞X。次世代を生み出す始まりを意味して、Pα因子と命名されたらしいわね。」

 

「……Pαがあれば」

 

「でも、使わないでしょう。新型を無闇矢鱈に増やす事は無い筈よ」

 

「確かに」

 

「………かあ……さん」

 

「母さん?」

 

「おかあ…さん」

 

その時、うわ言のようにノヴァが言葉を言い始めた。

おかあさん、お母さん…アラガミに母が居るはずはない。

 

「……ペイラーの所に連れて行くわよ」

 

「機嫌悪くなったりしないかな」

 

 

 

___

 

「やぁ、起きたかい?」

 

「……最悪の目覚めだ」

 

2度目の酷い目覚め、だるい頭を起こし座る。

何故か、第一部隊と第四部隊が勢揃いしているが知ったことではない。

 

「実は、君とシオ君の食事量が増えていてね。その確認をしたいのだよ」

 

「確かに、この頃は飢餓感を感じる頻度は多くなった。それが、何かしたのか」

 

「お腹減ったぁ……お兄ちゃん……ゴハン」

 

「……食え」

 

「ノヴァ様!」

 

「イタダキマス!」

 

私は自分の羽を剥ぎ、シオに、妹に与える。

 

「この……ノヴァ様の妹でなければ……ここでコアに」

 

「ティータ君、止めるんだ。っと、この様にシオ君は君達が狩るアラガミ素材だけでは足りなくなっていてね。……ソレは君もらしいが」

 

「……」

 

ペイラーの言葉に頷く。

無意識だが、私はペイラーの書籍の一つを捕食していたようだ。

あり得ない、私の偏食因子はアラガミだけを……

 

「その顔、つまり君自身その飢餓感の原因が掴めていないね」

 

「………」

 

自分の口にオラクル細胞の枷を作り、捕食できない様にする。

 

「ねえ、ノヴァ。お母さん……貴方、心当たりはある?」

 

「「お…母さん」」

 

サクヤにそう言われ、意識した途端、左腕がシオに向く。

ソレを右腕で抑え、叫んだ。

 

「シオを離せ!私から……私から距離を取れ!」

 

「うん!」

 

私は自分の妹を捕食しようとした。あり得ない……あり得ない。

 

「今の行動は、無意識だね。理性はあったが、君はシオ君を捕食しようとした」

 

「……お…母…さん、心当たりがある。全てを食べろと、声がする。一つに帰れと声が………私にとって母とは………いや、アラガミにとって母親とは………」

 

「まさか、君達アラガミは」

地球の免疫細胞とでも……

 

ペイラーはその言葉を押し留めた。

だが、ノヴァは言葉を続ける。

 

「我々アラガミは……地球が母が生み出した。これ以上、自分の体を苦しめない為、解放されるために生み出した」

 

「……アラガミが………地球の免疫細胞」

 

「人類は……母星から見捨てられた?」

 

「……そうだ、お前達の環境破壊、資源を湯水の様に使う生活に母はもう限界だった。だが、お前達は生き延び、あろうことかGODEATERを創り出した。それに、アラガミとの共存を謳う愚か者も居る始末。私の血の加護で強制的に新人類にしたほうが速いと言うのに」

 

「判っている、でも今こうして君とシオ君と共存できている」

 

その言葉に反論をする。

 

「馬鹿言うな、俺も妹も呼ばれている。母に…喰らえと、判るか?頭の中に声がする。しかも、本能から従わざる得ない声だ」

 

「……場所は判るのかい?」

 

「エイジス……あの場所に何かがある。だが、まだその時では無いだろう」

 

「何故?」 

 

「……まだ、来いと言われていない。力がいる……彼処には『母』がいる。なら、母を殺す力がいる」

 

「まってくれ、ソレは親殺しという」

 

エリックが叫ぶが、私はそれどころではない。

 

「人類を導き、進化させると誓った。食物連鎖の中に組み込む事を誓った。判るか、私は既に母と敵対している」

 

「シオも、皆と一緒が良い」

 

「……つまり、エイジスに全ての鍵があると」

 

「でも、まだ足りない。私の力が……」

 

「……ゴハン食べるか?」

 

「…だな、食べる。食べて…食べて……喰らえ……喰らえ…

喰らえ………喰らう………喰らう」

 

「おにい?」

 

「うぅ……ぅ……ヴゥゥゥ」

 

「シオ!」

 

「おにい!」

 

「捕まえろ!」

 

 

____

 

「ノヴァは……彼はどうなって」

 

「シオ君よりも感受性が高いのか?いや……だが」

 

ノヴァはペイラー榊の研究室の一室に隔離されている。

アラガミ防壁の技術を応用した鎖に繋がれ、その姿は余りにも惨めで酷い。

 

「ウロォォォォォ」

 

「幸いにも、この研究室は防音だ。そこの扉も許可のある者しか開く事はできないだろう」

 

「グルルルル」

 

ガシャン、ガシャンと鎖を食い千切らんと暴れる様は囚われの獣。かつてのような意思はなく、本能で動くアラガミだ。

 

「おにい…泣いてる」

 

「わかるのか?」

 

「おにい……痛いって……苦しい……ゴハン……欲しいのか?」

 

「ウォォォォォ」

 

「……おにい」

 

シオは目の前で苦しむノヴァに涙を見せている。

先程まで人間に近しいのはノヴァだった。

しかし、今の姿は兄を敬う妹の様にしか見えない。

 

「ソーマ……おにい……治るのか?」

 

「…俺に聞くな」

 

アラガミのことなどわからない。

飢餓感から暴れているのか、それともまったく別の問題なのか。

 

「…ディア…ピター……」

 

「ノヴァ君?」

 

「ディアウス・ピター」

 

「ディアウス・ピター?ソレは」

 

「!!!!」

 

今度は声にならない叫び声をあげる。鎖につながれながら彼等を襲うように手を伸ばそうとする。

 

「……ノヴァ君」

 

ペイラーはノヴァへの扉を閉めると静かに席に着く。

 

「ディアウス・ピター…彼はそう言った」

 

「あの黒いヴァジュラ種ですね。リンドウさんを襲った」

 

ユウは殺したとは言わなかった。

リンドウが、あのゴッドイーターが希少種程度に殺される等は信じていないのだ。

 

「……ディアウス・ピター、あのアラガミを討伐したとき謎が解けるというのかい」

 

ペイラーは封鎖した扉の先をじっと見つめた。

自身に憎まれ口を叩きながらも、人類を心の底から愛したアラガミ。現人神の姿は今はない。。

 

「……ノヴァ様を救うのは私です。イロハ、ディアウス・ピターを追います。ユウ、エリック、手伝いなさい」

 

「ちょっと、ティータ君?!」

 

「なんですか、エリック?ノヴァ様に救われておきながら見捨てるとはなんという!ユウ、貴方もノヴァ様を見捨てる等と」

 

「見捨てない、でもティータ。落ち着くんだ」

 

「落ち着いてなど居られるものか!ノヴァ様は私の全てだ!あの日、神機も失い仲間は誰も居なかった!ノヴァ様だ、ノヴァ様が私を救い、力をくれたのだ!お前もそうだろう!そこの新兵の発狂のせいでリンドウさんとお前は」

 

「……ティータ、俺は大切な物を失った。でもソレはどれも」

 

「隊長、ユウの言う通りだと」

 

「イロハ…貴女もか。なら、私は勝手にやらせてもらう」

 

「おい、ティー」

 

止めようとするソーマの手を振り払い、漆黒のシスターは研究室を去った。

 

「……ティータ君の事もあるが、今は普段通りに過ごして欲しい。良いね、君達」

 

ペイラーは解散を宣言すると静かに隔離室の電気を落とした。

 

 

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