ノヴァになった   作:影後

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ノヴァ

「……気分はどうだい?ノヴァ君」

 

「……オナカ……ヘッタ」

 

ノヴァは目の前にいるペイラーに飛びかかろうとするが、ソレを自身の右腕が止めていた。オラクル細胞を組み合わせて作られたフェンリルをつなぐ楔、言うなればグレイプニル。

肉体は人間の様な形から異形へと段々変貌していく。

言うなれば、伝説の怪物『ワーウルフ』。

人のようでありながら、狼のようになっている。

しかし、背中にはそれに似つかわしくない純白の大翼が生え、

歪さが余計に際立つ。

 

「人間性というか、最期の鎖がその右腕か。

シオ君よりも本能が大きく出ている。

どうにかできないものか」

 

ペイラーは日に日に異形へと変貌していくノヴァに、

食事であるアラガミ素材を差し入れる。

捕食する様には知性は感じられず、

通常のアラガミを見ているようだ。

 

「……右腕への侵食も進んでいる。

ノヴァ君の人間性も残り僅かということなのか」

 

「……ノヴァ様」

 

 

 

 

 

数日後、第一部隊のメンバーはアラガミ

『ディアウス・ピター』の討伐を成功させた。

神機使いたる雨宮リンドウの仇のアラガミ。

そして、生きていれば雨宮リンドウに繋がる手掛かり。

リンドウの腕輪、そしてディアウス・ピターのコアを回収した

彼等はペイラー榊の研究室を訪れていた。

 

「やぁ、何かする前で良かったよ」

 

「……俺達を呼んで何のようだ」

 

「ソーマ、怒ってる、怒ってる!」

 

「シオちゃん、少しだけ静かに」

 

「大丈夫だよ、ここは防音でね。

内部の音が漏れる事はないんだ。だから」

 

ガシャン!ガシャン!と何かを壁に打ちつける音、

そして鎖を引き摺るような音が響く。

 

「……ティータ君、開けて良いかい?」

 

「……大丈夫です、神様。大丈夫です」

 

ヴゥゥゥゥゥゥ

 

そこはノヴァが隔離されている部屋だ。

ノヴァは既に肉体は人間でなく、

ヴァジュラ種等の4足歩行の狼型のアラガミだ。

 

「……正直、ノヴァ君に残された時間は少ない。

彼の為にも、元凶を早急に倒さなければいけない」

 

「…ソイツのコアを」

 

「その時、私はお前を殺すぞ。ソーマ」

 

「ちっ……」

 

「だが……喋れないだけだ。さて、ノヴァ君。

君の望んでいたコアだよ」

 

ペイラーから渡されたコアを人のみにするノヴァ。

接触禁忌種のコアは今まで与えられることは無かった。

 

「……何と……」

 

大型アラガミのコアでも治らなかったノヴァの変身。

それが直ぐ様変貌していく。

見た目は20代後半、

今までのノヴァは10代後半程度の見た目だったが、

一気に成長した。

 

「……ピターめ。私を一度捕食してから………よくも」

 

「やぁ、ノヴァ君。おかえりなさいというべきかな?」

 

「……ペイラー、そしてティータ。迷惑をかけたな」

 

「いえ、私はノヴァ様の巫女。

ノヴァ様がどの様な御姿になろうとも、

私は最期まで貴方様のお傍に」

 

ノヴァはその言葉に頷くと第一部隊、

そして秘密を知る者達に声をかけた。

 

「……リンドウは生きている」

 

「それは……」

 

「本当なの!本当に……」

 

「少なくとも、ディアウス・ピターが捕食したのは

『片腕と腕輪』だ。神機使いはその程度では死なんだろう。

特に、戦い続けて来た男は。ソレに、妹よ。お前助けたな」

 

「助け…る?」

 

「「なっ……」」

 

「お前達、妹を怒るな。

そもそも、知識を得始めたのは極東に来てからだ。

それまでは私とすら稀に合う程度なのだぞ」

 

ノヴァの言葉に不満そうだが、

何処か喜びある表情になる一同。

しかし、まだ話しは続く。

 

「妹よ、真っ黒の男を見たか?」

 

「拾った!」

 

「拾ったか……今は?」

 

「わからん…逃げた」

 

「……逃げた?逃げた?!」

 

頭を抱えるノヴァ。逃げるというはあまりにも想定外だ。

 

「つまり、シオ君に助けられたリンドウ君はその……

気付いたら居なくなっていたと?」

 

「リンドウなら…自分がアラガミ化する恐れがあったなら…

きっと一人で……」

 

「一応、良い知らせは終わりだ」

 

「悪い知らせかな?」

 

「私と妹以外に、もう一人居る。

ソイツは世界を喰らうつもりだ」

 

 

 

ーーー

 

私がディアウス・ピターのコアを捕食したと同時に、

奴の今までの記憶が鮮明に映し出された。

何を襲い、何を喰らい、何を殺してきたのか。

ディアウス・ピターの始まりはヴァジュラに捕食された時。

第零世代のゴッドイーターがヘマをし、死んだのだ。

人間を喰ったヴァジュラは進化した。

知能を得て、優れた統率能力と人間に対する戦略を得た。

そして、群れを作り、時に同族を殺し、新たな知識の為に

人を喰らい、今の力を得た。そして、人型アラガミにであった。

当時の私は捕食を怠っていた為に、

能力は半分以下にまで落ち込んだ。 

だが……生き延びた。ディアウス・ピターは苦戦したが、

殺せる事を理解した。

強くなる為に再び人間を喰らおうとしたのだ。

その時に、見た。純白の翼ではなく漆黒の翼を持った堕天使を。

 

「……その堕天使、見た目で言えば」

 

「シオ寄りだ、だが……翼は私だな。

シオにそんな物はない」

 

「……つまり、この翼は件の『アラガミX』。

第三の人型アラガミのものという訳か」

 

ペイラーの出した羽根をノヴァは受け取る。

 

「待って…それは貴重なサンプルで?!」

 

そして、パクリと一息で食べてしまった。

 

「……まさか、いや……なんという」

 

「ノヴァ、どうしたの?」

 

ユウが仲間に話し掛ける様に話す。

 

「お前達、人間は繁殖行動を行う事で増えるのだな?」

 

「繁殖行動……まぁ、確かにそうね。で?」

 

口籠ってしまった後輩の変わりに

一番の歳上たるサクヤが話す。

リンドウが生きているという事実に

気持ちが軽くなったのだろう。

 

「では繁殖行動をしない我等に『子』や『子孫』

という概念は存在するのか?ペイラー」

 

「アラガミは細胞が結合して生まれる生命体だからね。

それはなんとも言えないけど………」

 

「例えばだ、昔。純白の翼に似つかわしくない黒翼が一本。

何故か生えてきていた。

それを見栄えのために捨て、

それから新たな生命が生まれたとしたら?」

 

「無性生殖もあるし、一重に……待ってくれ。まさか……」

 

「娘だ」

 

「は?」

 

 

 

 

「つまりですか、貴方が捨てた羽を取り込んだザイゴートが

進化し、更に人を捕食した結果知識を確立し、

数多のアラガミを捕食し、強くなったと?そもそも、

自分の種を蒔くとかドン引きです」

 

「言い方止めろ、俺は人類の味方のつもりだ!」

 

「でも、子供を認知してないんだろ?」

 

コウタのその言葉に俺は疑問を持った。

 

「娘と言ったのはお前たちで言う、

女性型アラガミである為だ。

そして、言うがアレは私以上に特異点として

捕食行動をしている。アレはお前等にとって敵だぞ」

 

「オニイ、家族じゃないのか?」

 

「家族じゃないだろ、俺は人類を進化させたい。

シオは友達といたい。アレは、地球の、母の意思に従いたい。

つまり敵だ」

 

「そんな言い方無いだろ!お前の」

 

「私達の敵だぞ?藤木コウタ、お前は馬鹿なのか。

敵ならば殺す、それがお前達人類が繋げてきた歴史だ。

親でも、子でも、簡単に殺せるお前達人間が言う台詞か?」

 

「ノヴァ君、君はやはり人間を極端に見ているね。

まぁ、そもそも人間のコロニーで生活していないのだから

当たり前なのだろうけども」

 

「ペイラー、私は人間を導き進化させたいのだ。

それは神としての、私自身の役目だと前に話たろうに」

 

「うーん、価値観が違い過ぎる。

伊達に君が上位者レベルの存在だからなぁ……」

 

「まぁ…方法が無きにしもあらずだ

仮に娘と呼称するが、娘は私の細胞を捕食したザイゴート。

つまり、私の知識、記憶も少なからずある筈だ。

そこを付けば、娘を此方つまり人類の守護者の側に

連れてこれる筈だ」

 

「そうだね、言葉が出来るのなら対話が可能だ。

まぁ、価値観の相違は否めないけど」

 

「そうだな、私は人間をあくまでも庇護対象。

導きが必要な者達と認識している。

シオ、お前は人間をどう思う?」

 

「人間?ソーマ達はトモダチ!」

 

「……」

 

「………シオちゃん」

 

価値観は違う。これは仕方がない事だ。

 

「だが、それで良い。妹と、お前はそれで良い。

そうして、この世界で生きろ」

 

そう、私と同じ考えは必要ない。

世界に変革を起こすのは私の細胞なのだから。

 

 

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