ノヴァside
この日、私ノヴァは激しい飢餓感に襲われていた。普段なら問題ないアラガミ、中型から大型にかけてのアラガミが狙われているのだ。
「おかしいだろ、まだリンドウは消えてないし、大問題起きてないし、なのに……ちっ……流石にイレギュラーが多すぎる」
新型1号《神薙ユウ》、
新型2号《空木レンカ》、
新型3号《空木イロハ》、
新型4号《アリサ・イリーニチナ・アミエーラ》、
新型5号《ティータ・ハルキオ》
この内、ティータとイロハは第四部隊として此方と内通しているが、ユウ、レンカ、アリサの3名は第一部隊のメンバーである。
「まさか……狙ってきたか」
ディアウス・ピターの動きは特に無い、何か、それこそ原作の支部長殿が動いているなら別だが、オオグルマ・ダイゴという手駒は既に私が手を下すまでもなく、アラガミの胃袋へと消えた。
「冗談ではない……極東、まさか………」
姿を表し過ぎたというのが大きいか。
人間の食事を接種してもコアを捕食しなければ空腹は満たされない。
これはアラガミの性とでも言うのか。
しかし、私の偏食因子は既に人間のいわゆる構造物やスプーン等、資材や物資を食べれなくなっている。アラガミでありながら、食べれない物を理解してしまったのだ。
「……どうするか」
フェンリル極東支部のネットワークへ侵入を試みるが、データは愚かコンソールもない。
ダムでは空腹を凌げない。
あそこに居る出るアラガミは全て、植物性アラガミ防壁(アラガミ化した木)の餌となる都合上、使えない。
「………どうするか」
その時だ、私に向かい針が飛んでくる。
「ボルグ・カムラン……良い餌になるな」
神機を創り出し、奴を攻撃する。
動きは理解している、縦を構える瞬間、尻尾を振る瞬間、すべてを知っている。
「イタダキマス」
神機を突き刺す、外殻を破壊し中のコアを右腕で引き抜き、捕食する。
そして、残った身を喰らう。
「……ふぅ」
自分がこれだけ苦労しているのだ、妹の方は大丈夫だろうか。
私はそんな無意味な事を考える。
「これは……」
私はオラクル細胞の反応を感じた。
極東支部外部居住区のアラガミ防壁が抜かれたのだ。人類の叡智の結晶らしいが、あれなら私の進化させた植物達の方が優秀だ。
果実も落とす。
「アレは……ティータとイロハ」
ティータとイロハは舞うように侵入したアラガミを討伐していく。主に居るのは小型、大きくて中型だ。
「死んでいなかったのか」
そして、ブラストでオウガテイルを仕留める。
「エリック、どうやら第一部隊の新型が危ないようです。此方は私達がやります。空木レンカの援護を」
「あぁ!華麗にやってみせるさ!」
私はアラガミ防壁の穴から内部に侵入する。
「ちぃ…レンカ!」
「ソーマ!」
空木レンカのリンクバースト、ソーマと同じ班で防衛しているようだ。だが、やはり苦戦している。コンゴウがソーマの背後をとった。
しかし、あのエリックが吹き飛ばす。
伊達に狙撃兵曹長ではない……という事か。
「ソーマ!大丈夫かい!」
「エリック……エリック!上だ!!」
「なっ」
気を緩めていた訳では無いだろうが、流石に可愛そうだ。仲間を救うその精神。
「気に入ったよ、エリック」
エリック・デア=フォーゲルヴァイデ、君は生かす価値がある。
「……じゃあね」
「あっうぁぁぁぁぁぁぁぁ」
どう足掻いても助けられる位置には居ない。
だが……オラクル細胞は記憶する。
「死んだとは見せない方がいい」
偏食因子を動かし、新たなアラガミを呼び出す。これで、死体は見ていないな。
記録する、私はエリックのアラガミ細胞からもう一人を即座に創り出した。
血とともに流れ出る彼の体内にあるアラガミ細胞。
「……服も再構成されるか、安心しろ。お前は人間だよ」
私はエリックを抱え、アラガミが暴れる彼の地へと立つ。エリックの死体から神機と腕輪を奪い、
繋げる。
「後は殲滅だな」
ブラストで射撃を行う、ある程度数が減った所で傷が無いとおかしい事を理解する。
「悪く思うなよ」
仕留めたオウガテイル、勿論、コアを抜いてあり、私が自身のオラクル細胞を使い形を維持している。それで、噛まれたかのような傷跡を作る。
「エリック!」
アラガミ達を抜けてきたソーマとレンカ、エリックの傷の具合を即座に見ている。
「回復弾を撃つ」
「エリック!」
「……ソー…マ」
意識が目覚めたようだ、記憶の混濁はあるだろうが、自分が死んだことは覚えていないだろう。
私がそう、操作した。
「仕事は終わりだ……しかし、良い食事が取れん」
「ゴハンか〜?」
「うぉ?!妹よ、驚かすな。そうだな、ゴハンだな」
「いくぞー」
何故か背後に妹がいた為、そのまま動く。
オウガテイルではなくヴァジュラテイルがいる。
炎属性のほうか。
「妹、アレ食べるぞ」
「ゴハン!」
ロングブレードもどきで切り裂く妹とスナイパーもどきで撃ち抜く私。
「ゴハン!ゴハン!!」
「頂きますしろよ」
「イタダキマス!」
ゴッドイーター達は警戒で動けない。
私達は付近の廃墟でヴァジュラテイルを食べる。
オウガテイルよりはマシだが、やはり中大型に比べると劣ると言わざる得ない。
「ん〜オイシカッタ!」
「そうか」
結局、仕留めたアラガミの大半を妹に与えた。
自身の空腹は収まらないが、まさかここまで妹に肩入れするとは……
「じゃあな」
「またな!」
飢餓感に襲われるが、食べられるのはアラガミ。
しかし、腹が減っても死ぬことはなく、ただ苦しいだけ。
「居たな」
それはアラガミ、プリディマータ。
いや、違うか。プリティヴィ・マータ。
前世から間違えてプリディマータと呼んでいたが、この際だ。きちんと正式名称を覚えよう。
お前は、プリティヴィ・マータ。
「……名前は覚えたので……頂きます」
私の一撃は即座にコアを引き抜く。そして、私自身が捕食する。
「美味い」
肉を、マントを、肩を、胴体を…余すことなく捕食する。
プリティヴィ・マータがこれだけ美味いとなれば、ディアウス・ピターはどれ程の味なのだろう。私は想像しつつ、まだ収まらない飢餓感に次の獲物を探す。
「不味いな、これは……ゴッドイーターでは対処できんぞ」
ボルグ・カムラン、そしてその堕天種の群れ。
大型アラガミが進み続けているのだ。
「ふざけるな、殺させてなるものか!」
私は喰らう、目の前のアラガミ達を。
人間を守る為に、人間を、新たなステージに引き上げるために。
「まだだ、まだ……」
戦いながらコアを抜き取り、捕食する。
段々と強化されていく、五感すべてが進化し、動きが見える。
「まだだ」
動きが見えても、肉体が伴わなければ意味がない。この肉体はアラガミを喰らうことでしか進化できない。
「なっ!」
左腕が持っていかれる。
ブチュリという生々しい音と共に鮮血が溢れる。
「結合崩落か……やってくれる」
霧散した左腕の代わりにアラガミの様な腕が形成される。どうやら、私の肉体は結合崩落すればするほどアラガミに近付き、強固になるようだ。
「治している余裕など無いか……貴様等………」
神機もどきを振るいながらコアを捕食していく。
もどきが斬り付けるたびに段々と吸収したアラガミ細胞が私の肉体を再構築していく。
結合崩落が意思とは別に修復していきながら、より肉体が強固になっていく。
「捕食する!」
目の前のボルグ・カムラン堕天のコアを抜取り喰らう。空腹感はまだ残っているが、まだ餌は居る。
「貰うぞ…貴様らのコアを!!!」
食事が終わるまで、命の削り合い。
殺し合い、死ぬか生きるか、その瀬戸際を今私は生きている。
「美味だ……そして、生きるか死ぬかの瀬戸際、楽しい。そして……貴様らを殺して勝つのは……私だ!!!」
数分、いや何十分、判らない。
激しい戦いだった、傷をつければ攻撃し再生する。結合崩落は2度も起こらない、起こさせない。
止まらない、肉体が進化していく。
あり得ない速度で、凄まじい力となって。
「何か、色々混ざったな」
白い肌と白い神は変わらず、服はボロボロになっている。
「はぁ……外で服は大変なのに」
ダムでならアラガミの素材から衣類を作っているはずだと、私は翼を広げる。
「……なぜ?」
白翼の中に一つだけ黒い羽根が生えていた。
ソレを握れば、再び白い羽根が生える。
「やはり、白は良い色だ」
私は黒い羽根をその場に捨て、ダムへと飛んだ。