その日、極東支部は荒れていた。
「今すぐリンドウさんとユウの救出に」
「リンドウとユウはお前達を撤退させるために残った。その意志を無駄にするつもりか!それに、今は捜索班が」
「捜索班なんて神機の回収だ」
「サクヤ!」
原因はアリサが誤射した一発の弾丸。
教会の壁が崩落し、雨宮リンドウは取り残された。しかし、それだけでは終わらなかった。
白いヴァジュラ種に追撃されていた第一部隊を救うために、神薙ユウは殿を努めた。
「……馬鹿野郎が」
「ねぇ、コウタ!嘘だよね、リンドウさんや、ユウが戻ってないって!」
「……オレーシャ」
同年代のゴッドイーターであるオレーシャも、自身の義理の兄がMIAという事態に戸惑いを隠せない。
「騒ぐな!捜索隊は既に派遣されている、今は待て」
極東は氷河期の様に冷たい、希望的予想を持つものは今のところ居なかった。
__神薙ユウ
「……僕は」
傷だらけのフェンリルの制服と自分の体。
装備の回復錠改を飲み込み、体力を回復させる。
既に夜となってあたりは暗い。
「神機は生きてる……他は」
自分のビーコンは壊れているけど、通信機は生きているはずだと。
「此方……神薙ユウ。アナグラ、誰か……」
繋がらないが、何度も、何度も呼びかける。
『此方、フェンリル極東支部のアズマ。どなたで』
「第一部隊、衛生兵曹長神薙ユウ。緊急回収を……」
『!了解です、その場から動かずに』
「……!無理だな、アラガミ達だ。戦闘音で見つけてみせろ、頼んだぞ」
『ちょっと!貴方は!!』
僕の前に大型アラガミが姿を見せる。
ボルグ・カムラン堕天、雷属性のアラガミだ。
「相性は最悪だな、まぁ………殺れなくはない」
僕は愛用のクレメンサーを構える。
「接近戦より、射撃戦なんて言ってらんないからな!」
小型アラガミの攻撃も邪魔だ。
「まったく………お仕事ってのは大変だな」
アナグラでは急ピッチで神薙ユウ救出作戦が行われようとしていた。
「良かった、生きてたんだ!サクヤさん!ユウが一緒ならリンドウさんも」
「えぇ、そうね」
「お前達!現在、神薙ユウ救出作戦だが、本人はビーコンが機能していない!また、作戦区域に大型アラガミ4体が近づいている!」
「つまり、死に行くような物か」
「……なら、来なくて良い。私は行く!私の……私のお兄ちゃんだから」
オレーシャはそう言いながらソーマを睨む。
「オレーシャ、ソーマは何も計画なく突撃すべきでないと言っているんだ!私達も戦友を見捨てるなんて考えていないさ!」
「エリック」
「それに、この僕エリック・デア=フォーゲルヴァイデは一人でも戦友を救うために」
「ありがとう、エリック」
アナグラにて救出作戦か行われようとしている中で、神薙ユウは迫るアラガミを肉塊へと変えていく。
「ふぅ……まだ来るのか」
「よぉ、良くやるな」
「……貴方は」
「ノヴァだ、久しいな」
神薙ユウはこの前と武装が違うノヴァを警戒しながら見つめる。
「おいおい、俺はただのゴッドイーターだぜ?」
装備しているのはブレード派生でも、最高ランクである極と即座に見破り、さらに銃身がついているのを見る。
「俺も新型ってやつだ、それよりも……来たぜ」
「おいおい……クアドリガ、サリエル、ボルグ・カムラン…やれるかい?」
「……いけます、ノヴァさん!」
「それじゃあ……お仕事開始だよ」
ノヴァとユウは共に駆け出す、クアドリガのミサイルをノヴァは空中で捕食する。
「こんな芸当もな…お返しだ!」
そして、アラガミバレットとし、クアドリガのミサイル砲塔を破壊する。
「邪魔がないなら」
続くようにユウが距離を詰め、クアドリガの開いた全面装甲にクレメンサーを突き立て、抉る。
「おっと!危ない、危ない、」
ユウの背中を剛炎タワー極で防ぎ、攻撃してきたサリエルを狙う。
「んん……美味そうだなぁ、腹が減ってるんだ」
「やっぱり……そうなんですね」
「まぁな」
サリエルを一撃で仕留めると、ボルグ・カムランを終わらせたユウが武器を担いで現れる。
「ありがとうございます、もうすぐ部隊が来ます。ここから退避を」
「……サリエルのコアは貰うぞ」
「えぇ、わかりました」
サリエルの肉体に喰らいつく。
ユウはこちらを見るような事はせず、じっと俺が食い終わるのを待っている。
「はぁ…美味」
「ボルグ・カムラン来ます!」
「美味しい奴じゃないな……食いすぎたか?」
ノヴァはボルグ・カムランの棘をブレード極で何度も弾き返す。
「ハァァァァ」
そして、ユウが切り裂く。
実力には驚かされたノヴァ。なんと、ボルグ・カムランの肉体が真っ二つになっているのだ。
神薙ユウの実力はそれ程なのだ。
(知っていたが、この時点でここまでの実力者だとは)
「終わったか……あの、ノヴァさん」
「第一部隊が近付いてるな、じゃあな。俺達はまだ出会ってない。いいな」
「……あの、また会えますか」
疲れ果てたのか、ユウは神機を地面に刺して座り込む。
「会いたくないねぇ……まぁ、俺の妹には会うかもな」
「貴方みたいなアラガミが」
「……まぁな、俺達はお前達を見ているぞ。ゴッドイーター、お前達が価値ある生命なら俺の庇護下においてやるさ」
ノヴァは翼を広げると上空へと浮き上がる。
「……人が神になるか、神は人に堕ちるか」
「……彼女が言った意味が判りましたよ。貴方は神だ、人に寄り添い、導く」
ノヴァは大翼を広げ、鳥のように飛び去った。
__神薙ユウ
「……疲れたな」
ボロボロの体で神機を地面に刺して寝そべる。
ユウはノヴァの血を飲まされた為に他のゴッドイーターよりも強くあるが、疲労は限界を越えていた。
「……随分と派手に暴れてたな」
「あぁ、ソーマの言う通りだよ戦友!」
「ソーマ、エリック」
前回、共に組んだ仲間が手を伸ばしてくれている。
だが、ユウには既に伸ばされた手を掴む気力も体力もなかった。
「肩を貸すさ」
「しょうがねぇ奴だ」
神機を掴みながらも、エリックに肩を借りながら歩く。
ソーマが警戒をし、一歩一歩大地を踏み締めていく。
「……皆は神を信じるかい?」
「どうした?頭でも打ったのか」
ユウは目を瞑り、ゆっくりと話し出す。
「神が人になる……それってとても良い事の気がするんだ。だから……彼を見つけても………武器を」
「……戦友?しっかりするんだ!戦友!!」
「…エリック、安心しろ。呼吸はある」
ソーマのその言葉でエリックは安心するが、末恐ろしいと感じてしまう。たった一人で戦い続け、生き残った。
自分達を救ってくれた恩人でもある。
「だが、まぁ医務室で安静にしていたまえ」
「同感だ、家の隊長はアッチが探してるだろうよ」
だが、二人を待っていたのは凶報であった。
雨宮リンドウはMIA判定、未だKIAではないだけマシだが、第一部隊の主力ベテランが二人も医務室に入ってしまっている。
戻った面々の顔は暗く、笑みはない。
「……もう3日よ、ユウ。起きてよ」
「ごめんなさい……ごめんなさい…ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「アリサ」
リディア、オレーシャ、アリサは未だに眠り続けるユウの隣に立っていた。
アリサは自責の念から激しく自己嫌悪し、ただごめんなさいと泣いている。
リディアは医者でありながら救えない義弟に涙し、オレーシャはただ目覚めない義兄の手を握っている。
「私が…私が悪いの……お願い……ごめんなさい」
只管に謝罪の言葉を述べるアリサがユウの手に触れた瞬間、ユウの記憶が見えた。
何者かに救われた瞬間、自分を打った時自己嫌悪し血が出るまで鏡を殴り続けた事、ただ家族を愛していた事がわかった。
「んっ……んん~…よく寝た!あれ!オレーシャ義姉さんに義愚妹」
「義愚妹言うな!馬鹿兄!」
「痛っ?!殴るなよ、てか…何で医務室に?さーて、お仕事、お仕事」
「ユウ…あの」
「……君は戦場に来るべきじゃない。良いね?」
ユウはそう一言だけ告げるとベットから起き上がり、歩き出す。
ユウが立ち去り、アリサが少し悩みなからリディアに話す。
「……リディアさん、実はさっき」
「新型同士の感応現象かしら?」
「ねぇ、難しい話してるとこ悪いけど……ユウって寝起きよかったっけ?」
リディアとアリサはオレーシャの言葉で思い出す。
普段は自身を律し、先頭に立つ人材である神薙ユウだが、一つだけ問題がある。
「……流石に自室に行くわよね?」
「……ユウだよ?」
「…忘れていました」
10分後、ヒバリから連絡を受けた第一部隊がユウを捕獲。
入院服のままミッションに行こうとした所を取り抑えられた。