「ノヴァ様、ダムも手狭になってきました。開墾等も行わなくてはこのままではいずれ」
「判っている、まったく……」
私の『血の祝福』を受けた存在はゴッドイーター(仮)になる。
肉体は強化され、神機のような物を生やし、戦闘する。
そう、第2世代ゴッドイーターモドキがダムには大勢存在する。
アラガミ化した樹木の家に住み、生活する。
電力はダムの発電によって賄っている。
発電機の整備員も存在し、整備方法を全員で教え常に最善を守っている。無論、パーツ等は何時か壊れてしまう。
いっそのこと、ダムをアラガミにすればと考える。
私がアラガミ化させた物は人間を襲わない。
私というオラクル細胞の親が敵とみなした存在を襲う。
樹木もそうだ、果樹や野菜類と言った植物達もアラガミしており、人間に果実を与える変わりにアラガミのコアを受け取る。
1種の共生関係である。それだけではない、一年中作物は実り、飢える事はない。アラガミのコアはどうやっているか?
私自身、原理は不明だが皆、神機(仮)の先端を触れさせると注射針の様に変化し、そこから渡っているようだ。
無論、私はこのような効果など知らない。
「水等も…我々は進化しているため問題ありませんが」
そう、今の彼等は人にしてアラガミ。言うなれば『アラガミ人』
水も汚染されていようと肉体がソレを分解し、ウィルス等に侵されることも無い。汚染されていても水と食料さえあればどんな環境にも適応出来る新人類。しかし、全員が全員そうではない。
進化する事に恐怖する人間も数多く存在し、『血の祝福』を宿さない物も居る。個人の尊重という意味ではあっているだろう。
だが、コミュニティが肥大化した今、必要な事である。
また、所謂警察組織に類するものも必要だ。
「やる事が多いな」
「全員が全員、善人と言う訳ではありません。しかし、」
「…仕方ない。『血の祝福』を全員に。一人残らずだ」
「はい、ノヴァ様」
私が行ったのは選別だった。
戦力、私の眷属が増えることはダムにとって有益であり
私の眷属となることで本来食べることができないアラガミ細胞入りの食材を食べることができる。
「いやだ!俺は人間の…人間のままで」
「ならば出ていけ!我々は血の祝福を持たない者を生かす余裕はない!」
ダムの代表である老戦士が叫ぶ。
元はよぼよぼの老人だった彼だが、今では肉体は筋肉質になり
姿はまさに歴戦の勇士である。
「そうよ、ダムに住みたいのなら私達と同じになりなさい!」
私は全ての人類に血の祝福を施す事を夢に見ている。
そして、ダムの住人達は初めこそ私を警戒した。
しかし、力を与え、救いを与えたのだ。
今では私を信仰し、崇拝すらしている。
「ふざけんな!アラガミと同じバケ」
移民の一人がそう叫んだ。
だが、私は最後までその言葉を紡ぐことを許さない。
「化物か、彼等は人だよ。お前達旧人類ではない、アラガミが蔓延るこの世界を生き抜く力を手にしたな」
一触即発だった雰囲気は消え、私の眷属達は下がり移民達は逃げ腰となっている。
「ダムの住人も元はフェンリルに見捨てられた者達だった。
私自身もそうだ、人間でありたい者に無理強いはせん。だが、ダムでの生活はできないと知れ。我が眷属による救いもなく、アラガミに対する力もない。ここの作物すべてアラガミ細胞が入り、ソレを食すには我が祝福が必要だ。拒絶し、苦しむ道を選んだ者よ。さぁ、去るとよい」
私は冷酷に言い放つが、その言葉に一人の少年が反論した。
「血の祝福を得れば、俺達は此処に居ていいんだよな!」
「無論、だがゴッドイーターに準ずる力を与えるのだ。アラガミの討伐など仕事はあるぞ?」
「関係ない!仕事ならやる!此処にいれば、俺も、妹も飢えないんだよな!」
「無論だ、私の血の祝福を得ればだが」
「うける!俺も、妹も!」
少年は10歳ほどであり妹はまだ4歳程度。
正直、よく此処まで生き延びたと感じてしまう。
「……受け取りなさい」
私の血を与えると、少年とその妹は手から神機モドキを出した。
「え…これ」
「にいちゃ!」
「ふむ、おめでとう。これでダムの住人さ、しかし10歳と4歳か、孤児院に連れて行け」
少年達は優しく抱かれ、去っていく。
ダムの住人は同じ祝福を受けた者を迫害や拒絶したりはしない。
「さぁ、君達はどうする?」
私は、支配者であり神である。
私は、全てを支配するつもりも救うつもりもない。
「決め給えよ、その道を」
だが、この一件が波紋を呼んでしまう。
それこそ、極東支部が介入してしまう程に。
「……まさか、このような事があるなんてね」
「ペイラー、私が話す事はありません。それとも、ここで処刑しますか?」
「隊長!」
イロハが心配そうに漆黒のスカプリオを着たティータを見ている。だが相対しているペイラー榊も顔には冷や汗が浮かんでいた。明確な殺意に当てられ、神機がないにも関わらずナイフが喉元にある気がする。
「人型アラガミの巣窟、第一部隊に保護された民間人が言った言葉だ。生憎、その民間人は何故か亡くなってしまい、それ以上の情報が得られなかった。一つ、神薙ユウ隊員いや第一部隊長が神を見たと救出時に話していたと聞いてね、そして精密検査で私の知らないオラクル細胞が出たんだ。そしてこの前の臨時検診だが」
ペイラー榊の鼻先に神機が突きつけられた。
だがそれは神機ではない、生物的で、刃物でありながら生きている生命体の一部という印象を受けた。
「落ち着いてください!ティータさん、一度ペイラーの話を」
「頼むよティータ君、私は君達、いや君の『神』と争うツモリはない。だが、この件だけはどうしても君たちの『神』に確認を取りたいのさ」
それはティータとイロハも混乱していた。
謎のアラガミ因子『X因子』と名付けられたそれを所持しているゴッドイーター。神薙ユウ、ティータ・ハルキオ、空木イロハ、エリック・デア=フォーゲルヴァイデ。中でも、エリックは肉体の全てが『X因子』に成り代わっており、人間ですらない。
「……何時からなのか、エリックはこのままでいられるのか。
確かめる必要がある。どうか、彼を連れてきてはくれないかい?」
そして、ゴッドイーター達が私の前に現れた。
「……人型アラガミか」
「神様、申し訳御座いません」
ソーマ・シックザールとティータ・ハルキオ。
私は自身の眷属を殺させるつもりはない、それにソーマも私が導く子供なのだ。
「良いだろう、時間の問題だったのだ」
アラガミ細胞を抑える特殊なアンプルを打ち込まれた私は、意識を失いそして極東支部の一室に送られた。
「やぁ!始めましてと言うべきかな」
「ペイラー榊だったか、随分と私達に詳しいようだな」
「ほう、私達か。君には同種が居るという事だね」
ミスをした、そうだろう。私達と言ったのだ。
「もし、君が私をただの研究者であると知っているなら、アラガミと言うべきなんだ。しかし、私達と言った。つまり……君は人型アラガミは一体じゃないという事かな」
「その通りだ」
このミスは挽回できやしない、ならば受け入れるだけ。
「君は人類をどう思っているかな?」
「食物連鎖から外された憐れな生命だ」
「ほぉ、何故だい?」
「アラガミは人間を喰えるが、逆はない。それはお前たちの作り出したゴッドイーターも同じだ。アレはアラガミのなり損ない。食料が尽きればいずれ倒れる」
ペイラーは私の言葉に頷く。
「そうだね、でも民間人の言っていた人型アラガミの巣窟とは」
「私の、血の祝福を受け入れた者達の楽園だ。アラガミと人間のハイブリッド。ゴッドイーターという紛い物ではない、真の新人類。神機等を必要とせず、自分の力で戦い、アラガミ細胞の宿った物すら捕食できる」
「…どう言う事かな?」
「木はアラガミとなる、そしてアラガミとなり光合成を行う。
実を実らせ、子孫を残す。それは本来の木と何ら変わらない」
「そうか、アラガミ細胞の宿った果実を君の……そうだね眷属と言うべきかな?彼等は食べる事が出来る」
「そうだ、タンパク質は流石に無い。しかし、人工肉位なら作れる設備もある」
そう、それはアラガミの学習能力を活かした物。
人工肉でも、肉に近い食感と味を楽しめる。大豆ミートだけじゃ物足りないのだ。
「……君の使命はなんだい?」
「この世界の神として、人類を再び食物連鎖の中に組み込む事だ」
「ソレは君が願う事かな?」
「願いではない、お前達ゴッドイーターが事実。食物連鎖に食らいつく存在であるだろう。私はゴッドイーターの上位種を生み出しているに過ぎない」
「無理矢理ではないのに?」
「ペイラー、無理矢理する意味がない。時代が、世界が決めた自然の摂理だ。古きものは淘汰され、新しい世代に繋がっていく。私はソレを行っているに過ぎない。何故理解しない、私は今の人類をステップアップしているんだぞ。それに、私の血を受け入れるだけで再生能力は上がり、アラガミ細胞に侵された食材も食べられる。デメリットなど何処にもないだろう」
「……わかったよ、君が真に人類を想っていることを。でも、人類は自分で選ぶ。君の眷属が選んだように。いかにして滅びるか、いかにして繁栄するかを。それは、時代が証明している」
「そうか、受け入れよう。して、他にあるか?」
「あぁ!エリック君は」
「お前達の拠点に大多数のアラガミが侵入した事件があったろう。あの時、エリック・デア=フォーゲルヴァイデはオウガテイルに襲われ死んだ」
「では、今生きている彼は」
「アラガミ細胞は捕食した存在の性質を受け継ぐ。だが、私は違う。性質と記憶すら受け継いだ」
「……君は人を捕食してその姿に至ったのか?」
「さぁ?記憶にない、意識が確立したのはイロハに出会った少し前だ。つまりだ、ペイラー。理解できるだろう?」
「あのエリック君は本当の意味で人型アラガミなんだね?」
「正解だ、私が死んだエリックを捕食し記憶と肉体をラーニングした。そして、自分の細胞からエリックと同一の個体を生み出した。記憶、仕草、会話、何一つ変化のないエリックだ。だからこそだ、何故バレた?」
「通常の検査ではわからなかったよ。人間と同じだったからね。でも、X因子はこの羽根に反応したんだ」
そう言ってペイラーは私に黒い羽を見せる。
私の羽根に生えた羽根に似ているがサイズは50cmにも及ぶ。
大きすぎる、私が捨てたのはせいぜい20cmほどだ。
「コレは謎のアラガミXの物だ」
「前に捨てた羽根に似ているが…大きすぎる。なんだ」
「わからない、偵察部隊が幾つか発見したらしい。その偏食因子は今までのどのアラガミとも似つかない物であってXと名付けられた。私が実験で持っていたんだがね、こうしてX因子を持つ者が近くにいると……」
羽根は激しく動いていた。
「動くんだ、まるで呼応する様に。何度か隊員とであった時に動いてね。私は検査の時、コレを懐にしまい誰と誰に反応するか確かめたんだ。そこでX因子を持つゴッドイーターを見つけた次第だ」
「発見方法はわかった、もう良い。エリックが今どういう存在かだな」
「そうだ」
「人間だ、人間というアラガミだ。無論、人と子を為す事も、人と同じ時を生きることも、人と死ぬ事もできる」
「君は、エリックの記憶はあるのかい?」
「私は他のアラガミと違い記録の消去が可能だ。エリックの記憶など、私には必要ない。私はただ、仲間の為に戦う一人の戦士に敬意を評し、助けたに過ぎない。ソレがどのような方法だろうと、私は謝罪もしない。ソレがお前達に必要不可欠であるからだ」
「……わかったよ。だが、君にも言いたいことがある。人間を、知ってみようとは思わないかい?」
「人間なら理解している、理解できない存在である事も。それに、お前が話すなら私の妹だ。探せ、日本の寺の様な場所にいる筈だ」
私は抵抗する意志を見せず、そのまま目を閉じる。
「君は、人間に憧れて居るのかい?」
「どうだろうな、ただ極東支部のメンバーを観ていて欲しい。君なりに、そして感想を聞かせて欲しい」
「……わかった、俺はノヴァ・デウス。今から第4部隊の新型ゴッドイーターだ。良いな?」
「うん、よろしく頼むよ。ノヴァ君」
こうして私は一時的ながらゴッドイーターになった。