「……ノヴァ様、私は上手く出来ていますでしょうか?」
「……あぁ」
ノヴァは自身の白翼をティータに手入れされていた。
どんな鳥よりも気高く、どんな存在よりも美しい白翼。
しかし一つ一つは純白ではなく、何処か輝いている。
光が反射し、白く輝くその翼をティータは愛おしそうに梳いている。
「ノヴァ様の真の姿はきっとお美しい物です」
「そうだろうか」
「はい、ノヴァ様は塵芥共とは違います。地球という母が私達人類を救済する為に遣わした真の意味での『神』。ダムの者達も、貴方様に救われた私達もその気持ちは同じです。特に、ユウさんとは親しいようですね」
ティータは何処か頬を膨らませながら、ノヴァの翼を撫でる。
「友人だな、人間も悪くない」
「えぇ、同意します」
その時だ、ティータの部屋の扉が開く。
「誰です!私の部屋は不用意に開けるなとあれ程」
「あの、自由に出入りしていいって言われませんでしたっけ?」
「……貴方が僕を救ってくれたのか」
そこに居たのは私が救った神薙ユウとエリック・デア=フォーゲルヴァイデであった。
「…エリック。君は人間だよ。私達と同じ要素は精々ペイラーの言うX因子のみ。再生能力も、身体能力も変わっていない」
「……違う、ありがとうと、感謝しますと言いたかった」
「ナゼ?」
「死んでしまったら、誰かを救えない。死んでしまったら、妹や家族を悲しませてしまう」
「……そうか」
私は翼を隠し、部屋から出る。
感謝されるのは違うのだ、エリックへは特に祝福などはない。
「やぁ、ノヴァ君。どんな気持ちだい?」
「ペイラーか、不思議だな。何の能力も与えていない。ソレこそ、貴様の言うX因子以外は人間と同じなのだ。にも関わらず、エリックは私に感謝を述べる。自分が人間でないと受け入れ、それでも自身をエリックと。判らん、何故人間は」
「そうだね、でも君はそんな人間の守護者でもある」
「……難儀だな。私は」
救う事を正しいと感じている。だが、力も何も与えていないエリックに感謝される由縁は無かった。
「あっ!ノヴァさん!!」
「…ん?あぁ……なんだ」
「この前はありがとうございます!流石新型ですね!」
「仕事をしただけだ」
転生前の記憶はもう摩耗し、人間としての心はない。
ここからの未来は知識として知っているが、大まかな流れを変えるつもりはない。
今あるのは、ノヴァとして終末捕食ではなく人間を食物連鎖に再び組み込むことのみ。
そんな時だ、ノヴァの耳に新型である隊員アリサ・イリーニチナ・アミエーラを罵倒する声が聞こえた。
大声ではない、小声で聞こえないようにいや、バレないようにが正しいだろう。
「……」
「ノヴァ様、人間は醜いですか?」
いつの間にか、漆黒のスカプラリオを着たティータが背後に立っていた。その目は酷く冷たく、そして苦しそうに見えた。
「人間の本質、ソレは変わりません」
「何故、理解し合えないのだろうな。私は、救う価値はあると信じているが」
「えぇ。私も信じたい」
翌日、ノヴァは第四部隊としてアラガミの討伐を行っていた。
目標はヴァジュラだが、多数の中型アラガミ『シユウ』に『ヤクシャ』がいる。
「ヤクシャとシユウは私の食事にする」
「わかりました、ノヴァ様」
「そういえば、ノヴァの食事シーンを見たのってユウさんだけなのよね」
「ノヴァ様の……食事シーン?ノヴァ様、本当ですか?神薙ユウはノヴァ様の食事シーンを目撃したとは」
「あぁ、前に彼奴を救った時だが」
(羨ましい、羨ましい、羨ましい、羨ましい、羨ましい、羨ましい)
「どうした?ティータ」
「いえ、大丈夫です。ノヴァ様」
何処か、普段と雰囲気の違ったティータに驚き私は神機を構えた。
「ノヴァのその神機って」
「死んだ神機を私のオラクル細胞で再生した物だ。私との適合率を無理矢理調べさせられてな100%だった」
「それは……さすがですね」
「あの、凄いんですか?」
「えぇ、完全に適合している状態が100%です。神機に侵食されることもなく、神機が上手く機能しない事もない。過剰な適合率に悩まされない、完全な神機との調和。我々ゴッドイーターが目指し、叶わない極地です」
「そうだ、だから……私の自由自在に操れる」
私はイロハの前で神機を変形させる。
右腕にロングソードを取り付け、ガトリングを左腕に。
そして、2つが合わさりシールドが展開される。
「この様に、真に私の肉体の一部にする事もできる。だが、ゴッドイーターになっている間は封じるがね」
元の新型神機に戻すとイロハは呆けた顔をしながら拍手をした。
「所で、お前の愛する者との仲は」
「なんで皆聞いてくるのよ!」
「救ったからだ」
「ノヴァ様、その話は私も気になりますが目標が現れました」
「シユウ、ヤクシャ、……いただきます」
私はシユウとヤクシャの首を一刀した。
血を流しながら倒れるが、コアはまだ取り除いていない為再生するだろう。
「コレがノヴァ様の食事シーン……あぁ、カメラがあれば……」
私がコアや部位を捕食しているとティータが頬を赤らめながら熱い視線を向けてくる。
「イロハよ、ティータは」
「あー……別に知らなくていいコトだよ。ほら、ヴァジュラが来る前に食べちゃって」
私にも満腹中枢という物が存在するのか、ヤクシャとシユウのコアである程度腹が膨れた。人間の食事も娯楽という意味で良いが、やはり完全な食事という意味ではアラガミのコアを捕食しなければ意味はない。
「ヴァジュラか、たしかこのあたりから大型に分類されるのだったな」
「はい、しかし我々にとっては所詮雑魚ですが」
「あの、怖い物は怖いのですけど……隊長?」
「……ノヴァ様を穢す偽物め。せめて、私達の役に立つか、ノヴァ様へ献上するお食事の足しになれ」
ティータは神機と与えた力の両方を使う。右手には神機、左手にはモドキ。だが、性能は恐ろしい程に優れている。
ヴァジュラの雷球を斬り裂き、頭を結合崩落させた瞬間モドキで顔面を真っ二つに両断する。
「ふん、所詮ヴァジュラ。私達の敵ではありませんね」
「あの、私仕事してないんですど?!隊長!私も一応、恩人?に成長見て欲しかったのに!」
「なら、丁度いいです。グボロ・グボロが入ってきたらしいのでどうぞ」
「こんな……雑魚なんか!!!」
イロハはグボロ・グボロに自身のサイズ型神機を投げた。
ブーメランの様にグボロ・グボロの砲塔を切り落とし、手に戻って来る。ソレには流石に私も、ティータも驚愕した。
「何だアレは」
「いえ、あの……私も初めてみました」
「ぶち抜けぇぇぇぇ!!」
そして、スナイパーによるゼロ距離射撃でグボロ・グボロは倒れた。あまりにも予想外というか、印象深いのがオウガテイルに襲われていたあの時だからか、凄まじい成長だ。
「あっ、ノヴァ。グボロ・グボロ、食べる?」
「いただこう」
シユウやヤクシャとは違った旨味がある。
なんというか、臭みのない生魚を食べているようだ。
「沢山食べるわねぇ」
「えぇ、こんな時に言う台詞。たしか、沢山食べる君が好き…でしたか」
「それ、誰に?」
「オレーシャに教えてもらいました」
(美味!美味!)
グボロ・グボロを完食したあたりで回収のヘリが現れた。
「ふぅ、少し眠る」
「おやすみなさい、ノヴァ様」
_______
「ノヴァ様の寝顔も凛々しい…あぁ、ペイラーに言われた日、私は自害する事も視野に入れました。でも、ノヴァ様と同室にした事だけは褒めて上げます。ベッドで常にこの寝顔を拝見できる。ふぅ……」
「ティータ隊長、あの……怖いですよ?」
「失礼」
ティータ隊長はノヴァと同室で生活してる。
ノヴァがアラガミだけど限りなく人類に近いのと、ティータ隊長がペイラー榊を脅したからだ。
「でも、凄いですね。本当に人間みたい」
「そうですね、肌のハリ、髪の毛、そして逸物まで」
「へ?」
「逸物です。ノヴァ様の隅々までお世話するのが私の」
「隊長、はっきり言います。ヤバいです、かなりヤバいです。ノヴァって人間の生活を理解してませんよね?」
「そうですね、ですから私がお世話を」
「あの、それ以上怪しい事するならレンカかユウ君と同じ部屋にしますよ?」
「何故です!イロハ!私はただ!」
「えぇ、ただのヤバい人です!変態です!」
私は理解した、ノヴァも守らないと。
色々とヤバい人が目の前に居るんだから。
________
「ん?」
「ここは何処だ?」
「私の研究室だよ」
「起きたか!お兄ちゃん!」
頭が動かない、目の前に眼鏡をかけた胡散臭い男と私の妹がおり覗き込んでいる。
「人型アラガミ、まさか……」
「うん、助けてくれたゴッドイーター」
「……」
「榊、どけろ。妹よ、元気か?」
「元気だ!」
「そうか、そうか、ところで……私はヘリで寝ていた筈だが。
何故此処にいる?」
疑問点を述べているとティータが発言する。
「緊急の要件といわれ、私がノヴァ様を運びました」
「そうか、感謝する。私の巫女よ」
「全てはノヴァ様の為、人類の為」
「なんだよ、なんだよ……これってどういう」
第一部隊の隊員たしか、コウタだったな。
彼が騒ぎ立てるが、ペイラー榊が話し始めた。
「まず、彼ノヴァ・デウスは私達が初めて邂逅した人型アラガミ。通称、『神』『天使』と呼ばれる存在だ」
私は純白の翼を広げると、ゴッドイーター達は息を呑む。
「彼は、第四部隊に所属するティータ君、イロハ君、第一部隊のレンカ君、ユウ君、エリック君の恩人いや恩神だね」
「違うな、オレーシャ、リディア、アリサとも会っている。ヘリが墜落した時以来だな」
「うん、あの時はありがとうございます」
やはり、人間でないアラガミだからか反応は悪い。
「アリガトウ?」
「ありがとう」
「ありがとう!」
「あの…そのなんでノヴァ…ひっ?!ノヴァさんと、その人型アラガミは喋り方が」
「それは個人的に私も気になっていてね、てっきり喋れる物かと思っていたのだが」
「そういえば、私がノヴァとであった時もこんな感じでしたよ?」
「それは私がアラガミだからだ。人型として意識が確立した際はまだ赤子だ。だが、何処かで人間を捕食したのだろう。知識があった。人間は困っている人を助けるものだ、何故かその心が私にはあった。そして、イロハと簡単な会話をし救った。その時、口の動き、肉体の反応等をラーニングし、完璧な言語能力を手にした」
「……人を食ったのか?」
「判らん、もしかしたら違うかもしれん。言ったろ、人型として意識が確立したのはイロハとであったあの時だ。過去のことなど知らん。それに、私は人類を進化させる。人類の味方だと自負している」
「彼の目的は人間を一人残らず、人型アラガミに進化させる事らしい」
「なっ!そんなの」
「コウタ君、落ち着いてくれ。話を聞くんだ」
「人間はかつて食物連鎖の頂点に君臨する存在だった。
だが、今は違う。ゴッドイーターになれない人間はこの壁の外に捨てられ、アラガミに食われるのを待つ毎日。私はそんな彼等に力を与えた。進化する力を」
「…力」
「そうだ、アラガミの木からなった果実を食べることができ、汚水をそのまま飲むこともできる。病気が絶対になく、傷も容易く回復する。そしてアラガミを討伐することもできる。そう、怯えることはない。進化は地球上で何度も起こった。今の人間も時が来たのだ。と、その男に話したのだがな」
そう、私はこの計画を一旦取り止めている。ペイラー榊のいった人間の可能性を待っているのだ。
「そう、私は会話できる存在とならば共存できると信じている。事実、ノヴァ君とは共存しているしね。だからこそ、待ってもらっている。彼の祝福を望むものもいる。その様な人に対して、ノヴァ君は力を与えるのさ」
「だが、力を悪しき事に使うのなら私が処す」
「悪しき事?」
「殺人、脅迫、私はアナグラで人間を観察し理解できた。性悪説と性善説、人間には両方が備わっている。人間はアラガミより、難解だ」
「……お前達には理性がある。にも関わらず、本能で争う様にも見える。人間とは……本当に難解な生物だ」
ノヴァの言葉にペイラーは頷き、言葉をかける。
「そう、彼はその難解な人類の守護者なのさ。だからこそ、共存できる」
「それにお前達のアラガミ防壁だったか?アレに私の細胞を使うといい。コアは……そうだな。せめて再生できるようになるまで待て」
「おや!コアまでくれるのかい?」
「お前たちで言う心臓だ、何時かコアも再生出来るようになれば……お前達の言う防壁外の人間も救えるさ。きっとな」
「……あの!さっきはごめん、アラガミだからって俺」
「気にするな、そう言えば黒いやつはどうした」
「黒い奴?」
「チェーンソータイプのロングブレードを」
「……死んだ」
ソーマの一言で暗くなる空間。だが、私は力がある。
「…そうか、アラガミ化しているなら救えるんだが死んだのではどうしようもない」
「なに?」
「……ノヴァ君、それは」
「ティータに一度した事だ。腕輪を無くし、神機も無くし、自身のアラガミ細胞に捕食されんとした。その時、私は血を与えた。アラガミ化は抑えられ」
「はい、今の私が生まれました。思えば、あの日、あの時が転換点。私はノヴァ様に出会う為に」
「はいはーい!隊長、少し静かにしてねーー!」
「むーー!ん!!!う!!」
「つまり、君は」
「…もしだ。アラガミ化した黒い奴を見つけたら私に言え。救ってやる。だが、死体だったら諦めろ」
私の言葉にペイラーも驚愕しているようだ。
「無論、人間の意識が残っていればな。アラガミに乗っ取られているのなら、殺してやるべきだ。無論、ソレも私に任せろ」
「わかった、そうだ。一つ、聞きたい。彼等、君の眷属達だが」
「そうだな、ゴッドイーターとして派遣しても良いだろう。そのかわりだが、色々と対価は受け取るぞ」
「うん、ただより高いものはない。と極東では言うしね」
「ふっ……懐かしいな。……何故、私は懐かしいと……」
私は謎の感覚に陥りながら、腕を組む。
「あの…ノヴァさん」
「なんだ、バガラリー」
「ぶっ…」
「ん?違うのか、バガラリー、バガラリーと言っていたから名前かと」
「名前知らないのか?!」
「ジョークだ。人間はジョークを言って場を和ませると聞いた。コウタ、何用かな?」
「あの、ノヴァさんの血を受ければ新型使えるようになったりしないか?」
「……確かに。ティータ君も元は旧型神機だが、急に新型神機に適正が生えた。だとしたら……それに、考えてみたらノヴァ君の血液は血液型を問わず力を与えている」
「待ってくれペイラー!なら、この僕も新型を」
「実験してみる価値はある」
「……あの、俺にノヴァさんの血の祝福をくれませんか!」
「コウタ?!」
驚いたのはユウだ。チームメイトかつ、友達だから驚いているのだろう。
「俺、強くなりたいんです!アリサもユウと訓練して、接近戦も出来るように戻った。他の皆は俺より経験豊富だし」
「経験なんてソレは」
「人間を止める事になるぞ」
「構いません!家族を、皆を守れるなら!!」
私は自分の手に傷をつける。
「手を出しなさい」
コウタは手でコップを作り、私の血を溜めていく。
「ん……ん………うげぇ……まじ」
「血に美味しいもない、吸血鬼か」
「コウタ君、一度検査をしてみよう。コウタ君のバイタルチェックの為に、一度解散するけど皆、良いかい?」
「えぇ、私は問題ありません。ノヴァ様共に」
「隊長は駄目です!多分、私が監視してないとノヴァに対して___したり___してたりしますよね?ノヴァは人間社会を知らない子供なんです!変な事教えないで下さい!」
「何を!私はノヴァ様をただお世話したく」
「ドン引きです」
「あはは……そうだ、リディア姉さんに呼ばれたんだ。行くよ、愚妹、アリサ」
「その愚妹って呼び方!」
「あの…ユウ」
「そうだ、言ってなかったね。可愛いと思ってるから」
ピンク色の空間を出して消えていく兄妹恋人の3人。
そして、残るのはサクヤだけだった。
「リンドウは……生きてると思うの?」
「話に聞く限りは随分と精神も強そうだ、アラガミになっても意識があるかも知れん。無論、生きてたら必ず救ってやる。私の使命は人類を救う事だ」