顔だけは良い妹が何故かバーチャルアイドルをやっているらしい   作:hikari kawa

142 / 151
時系列、本編に一切関係ないサザエさん時空です。ゲーム機の名前、作者の頭混乱しそうなので基本そのままかそれっぽい名前にしてます。


サブチャンネル、爆誕

 暗い部屋にはLEDランプの暖かな色がぼんやりと広がっている。寝る三十分か一時間前にはこんな風に部屋を暗くしておくとよく眠れるらしい。

 ベッドに寝転びながら、なんとなくお腹の上に置いた巨大マリリちゃん人形をドラムスティックでポコポコと叩くと『スティックで叩くのはやめなさい』とスピーカー越しのくぐもった声が聞こえてくる。この人形は不思議なものでなんと電源に接続すると不定期で喋り始めるのだ。きっと仕事ばかりで実生活が充実していない女の霊が憑りついているに違いない。

 

「ヘイ、マリリちゃん人形。明日の天気教えて」

『え? ええと、ちょっと待って。ヘイ、シリ。明日の天気教えて……。ええとね、明日の天気は曇り時々雨。ところによっては雷もあるかもだって』

 

 このマリリちゃん人形、大概の質問には答えてくれるけれど妙にレスポンスが悪い。まるで別の誰かに質問してその答えを教えてくれているかのようだ。

 ……と、実に無駄な時間の使い方をして眠気が来るのを待っていると。

 

「レー、大変だぁ。エリはもうダメかもしれない」

 

 妹のエリーゼが私困っています、みたいな表情を浮かべて僕の部屋に侵入して来た。表情を記号で表現するならば『><』といった感じ。

 妹はベッドの上に立つとマリリちゃん人形を無言で蹴り飛ばし僕の上にうつぶせになった。

 

「なにもう、僕そろそろ寝るんだけど」

 

 身体を捻っても妹は絶妙なバランス感覚で僕の上に居座るので、仕方なくその煌びやかな瞳を視線を合わせると……珍しく本当に困っている様子だった。

 

「エリ、メルキャリの画面から目が離せない……。今日なんて一日中見ちゃった」

「……」

 

 僅かにでも心配しそうになった自分が馬鹿馬鹿しい。

 メルキャリ、いわゆるフリマアプリで買ってみたけど使わないものだったり押し入れの奥で眠っているコレクションを気軽に売り買いできる……という良い面もあるアプリだ。

 

「はぁ。なら見なければいいじゃん」

「だってさ、見てこれ」

 

 僕からゴロンと転がり隣に並んだ妹はその手に持っていたタブレットPCの画面を見せつけてきた。メルキャリのアプリが開かれた画面には昔のゲームハードが並んでおり、妹はどうやらレトロゲーを買おうとしているらしい。

 

「ゲームって、昔のやつなら僕のがあるじゃん」

「レーが買ってたやつは古すぎるの。エリから見てのレトロゲーが欲しいの」

「んー?」

「配信だと昔のゲームってじゅよーあるし嫌いじゃないけど、そうじゃなくてプライベート用のレトロゲーが欲しいの」

「駄目だ、全然話が入ってこない」

 

 ほぼ動いていなかった頭を動かして妹の発言の意図を読む。僕が集めていたゲームというのは、記憶の隅にあるようなどこかの誰かが楽しそうに遊んでいたゲームで…………。

 確かに現代目線だと古すぎるモノかもしれない。スリープ機能とかも無いし、僕も集めるだけで遊んだことは殆どない。起動して満足というか、ちょっと足がぶつかっただけでチマチマ積み重ねていたセーブデータが消えるというのは中々に厳しい。

 で、妹が欲しがっているのは四十年前とかのゲームではなくて……。

 

「エリちゃんから見て古いゲームって。Willとか、ダブル……DSとか?」

「そうそう。エリってこっちに来て初めてやったのがWillUでしょ?」

「だっけ」

「だよ。で、それよりちょっと前のが欲しいの」

 

 言われてみると昔住んでいたアパートで小さい妹が大きく重そうなタブレットを持って楽しそうにしていたのを見た記憶があるような、無いような。

 

「で、外に出るのも面倒だからメルキャリでエリが生まれた辺りのゲームってどんなのがあったのかなーって見てたら……。時間が消えてった」

「いつも無駄遣いしてるんだから片っ端から買えばいいじゃん」

「最近おかーさんの目が厳しい時がある。少しは考えて買いなさいって。しかもさ、エリが試しに買ってみたDSminiがあるんだけど……。見てこれ」

「買ってはいるんだ」

 

 妹は部屋着のポケットから外見は白くて綺麗な折り畳み式のゲーム機、DSminiを取り出した。

 こうしてみる限りはレトロっぽい印象は無いけれど、少なくとも僕らが生まれる前のゲームである事は間違いない。

 

「見た目綺麗だね」

「でしょ? だからエリも深く考えずにポチったんだけど」

 

 妹がDSminiのスイッチをグイと押し上げると電源が入り…………。

 

「うわ」

 

 お目見えしたのはまっ黄色に変色した液晶画面。しかも、上下ともに黄色い。これでは流石にゲームをするのは難しそうだ。

 

「やばくない? そしてだからこそエリは学びました。メルキャリではしっかりと調べてから買わねばならないと。画面が表示されてないヤツには出品者に連絡して写真追加してもらったりしてね、で、そしたらさ。横から買われた」

 

 妹は苛立たし気に『SOLD』と表示された商品の画面をタップする。

 ああいったフリマアプリは基本的には買ったもの勝ちで、出品者からしても誰が買おうと構わないから取り置きなんて機能はない。

 

「あー、なるほど。だんだんと読めて来たよ。エリちゃん、状態良い商品探してずっとメルキャリの画面眺めてたんだ」

「それだけじゃないよ。ただずっと眺めてるのも暇だからDSminiの他にどんな奴があるのかなーとか調べてたら別のやつも欲しくなっちゃって。エリ、もう今五個くらい欲しいの見つけちゃってすっごい困ってるんだから」

 

 この妹、ほんとオタク気質というか収集癖があるというか……。

 

「エリちゃんさ、もしかしてそのDSも保管用と遊ぶ用で買おうとしてない?」

 

 僕の疑念に妹は諭すように頷いた。

 

「あのね、レーくんさぁ、こういう昔のゲームってもう販売されないの。じゃあ今あるうちに買っておかないとダメじゃん。理想は保管用二つと修理キットと遊ぶ用なんだから。しかもね、このDS手に取ってみて発見なんだけど、これすっごい軽いの。機能としては今のスマホとかShiftの方が良いんだけどそうじゃない良さがあるんだよねー」

 

 妹がキラキラとした目でDSminiを見つめている。

 なんなら僕もちょっと良いなと思い始めている。

 

「そんなに良いなら、こんどお店で探してこようか」

 

 なので、ついそんな提案をしてしまう。あわよくば自分用のDSminiを手に入れたい。

 

「さすがはエリのお兄ちゃん。と、言いたいところだけど。レーくん、そんなに甘くは無いかもよ?」

 

 ち、ち、ち、と妹は指を横に振り不敵な笑みを浮かべる。

 すっかり目が覚めてしまった僕は起き上がり、壁に背中を預けながら妹のセリフの先を促す。

 

「今、レトロゲームはとっても高騰しているの。例えばこれ。GBで発売された元祖モンスター収集対戦ゲームの赤と緑バージョン。これいくらだと思う?」

 

 妹の持つタブレットには今も新作が出続けている人気シリーズの初代のゲームカートリッジが標示されている。僕がレトロゲームを収集していたのは主に数年前だけど、当時は……。

 

「高くて五百円じゃない?」

「ぶっぶー、正解は、一個で五千円でした」

「たっか!」

 

 それ買うなら最新作買った方が良くないか? 

 

「ま、これは秋葉原とかの外国人観光客をターゲットにした価格だけどね。メルキャリなら千円しないくらいで買える」

 

 それでも高いだろ。

 

「つまりね、レー。今、お店に買いに行ってもすっごい高いのしかないの。このDSはメルキャリで二千円ちょっとで買ったんだけど、ブッコフとかハードフで買おうとしたら今は少なくとも八千円くらいするらしいよ」

「やば。流石にそれは気後れするなぁ」

「なので。話は最初に戻るのだった」

 

・・・

 

「エリちゃんって、配信でレトロゲーやるんだっけ?」

「やるよ? でもこのDS系は改造したヤツじゃないとパソコンの画面に出せないからさ、会社のアレコレで配信ではやれないんだってさ」

 

 机の前。妹を膝の上に乗せて座り、僕はパソコンで妹はタブレットPCでメルキャリの画面を眺める。

 DSかぁ。けっこうカラーバリエーションがあるんだ。どれ買うか悩むなぁ。

 

「レーはDSでやりたいゲームあるの?」

「DSの形が気に入ったからフィギュア的な感じで欲しいだけ」

「美品が欲しいんだ」

「だね。ただ外装だけ綺麗でもエリちゃんの奴みたいに黄ばんでるのもイヤだから……」

 

 クリック、スクロール、ブラウザバック。

 出品画面を行ったり来たりしながら状態の良さそうなDSminiを探す。

 

「ちなみに中華の怪しいサイトだと替えの液晶パネルとか新しいシェルが売ってるらしいよ」

「へぇ。んー。どうだろうなぁ。コレクションとするなら純正の方が良いけど」

 

 雑談しながら妹が教えてくれた中華の怪しいサイトを開き『DS、シェル』と調べると純正品にはないクリアパーツで出来た外装が販売されていた。これはこれで恰好良い。

 そして液晶パネル。

 正規品ではないだろうけれど、上下揃って四千円ほどで買えるようだ。こういうのアフターマーケット品って言うんだっけ。素人でも直せるものなのだろうか。

 

「というかエリちゃん、液晶パネルだけ買ってそれ直したら?」

「えー」

 

 妹の外装だけ綺麗なDSminiを小突く。

 

「エリちゃんそれなりに器用なんだし、配信とかで直してみたら?」

「えー。大変そうじゃん」

 

 妹は面倒くさそうに目を細めながらもDSminiをパカパカと開閉すると電源を入れ、黄ばんだ液晶を見つめた。さすがに使い物にならないものを手元に置いておくのも居心地が悪いらしい。

 

「んー。でも確かにたまにはそういう配信も悪くはないかも……。レーも一緒にやる?」

「僕?」

 

 期待するような目を向けられる。

 普段であればすぐに断るのだが。

 ……壊れたものだったり故障したものを修理するという作業自体には興味がある。壊れたものを直すというのは、きっと良い事だ。

 

「…………」

 

 思案する僕を妹はジッと見つめてきて、何かを閃いたようにタブレットPCの画面に何かを打ち込み始めた。何をしているのかと聞けば「内緒」との事だったので深くは聞くまい。

 

「ま、配信とか関係なく一回くらいなら一緒にやっても良いよ」

「ふふ。そう言うと思った」

 

 妹は柔らかに微笑み――。

 

「あ! レー! これ、この出品ぜったい良い! 画面黄ばんでないし外装綺麗っぽい!」

「買っちゃえ!」

 

・・・

 

 後日。良さげだと思われたDSminiが届いたのだが……。

 

「レー、この液晶画面。なんか端っこ白くて変じゃない?」

 

 なんともいえない状態のものだった。

 そして僕らは再びメルキャリに潜るのだった。

 

・・・

 

 ついでに、本当に余談なのだが。リオネット家なるチャンネルが新たに開設されていた。 




 
 小説だとゲーム実況とか実際の配信の描写は構造が複雑になって読みにくいなと、基本的に書いていなかったのですが動画なら作れそうだなと思いまして。
 youtubeチャンネル『リオネット家』→ https://x.gd/Sm8y7
 試しに作ってみました。今月中に修理動画一本くらいあげてみようかと思います。事前に登録していただけると嬉しいです。ゆっくり動画風に作れたらなと思います。

 new→ リオネット家第一話 https://youtu.be/LhVYF_U7OcQ

 Xの方で( https://x.com/hkrkwmsg )こんな感じ、みたいなサンプルありますので覗いてやってください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。