顔だけは良い妹が何故かバーチャルアイドルをやっているらしい   作:hikari kawa

20 / 150
幸福の天秤が揺れる

「やったー、エリが一番だっ」

 

 コメントを見ると、おめでとー、だとかそう言ったものが流れていく。

 

「レー、エリ一番っ」

「はいはいおめでとー、最後スペースボンビーさえ居なければ僕が勝ってたのになー」

「妹より優秀な兄はいないってわけ」

 

 肝心なところで不運なあたり僕らしい顛末だった。

 

「……お二人、ヤってました? わたし、ダントツの負けなんですけど」

 

 あまりの負けっぷりに顔をひきつらせたトネリコさん。

 

「トネリコ、運悪すぎ。あははっ、借金一京だっ」

「うぅ、エリさんもレーさんも、妖精カードに恵まれ過ぎですよー」

 

 妖精カード。様々なお助け効果をランダムに授けてくれるカードなのだが、どういう訳か僕ら二人は妖精カードの引きが滅茶苦茶強かった。

 

「じゃあ、トネリコ。罰ゲームだ」

「え、そんな話ありましたっけ」

「じゃーん、エリ、今日はルーレット用意して来ましたっ」

 

 妹はそう言うとパソコンを操作してルーレットを表示させる。

 

「なななんですかこれ。いつのまにこんなの用意したんですか」

「マネージャーが一晩でやってくれた。トネリコ、クモ苦手らしいね」

「ひぃ」

 

 画面に映るエリオットちゃんが楽しそうでなにより。

 

 ルーレットの中には『ホラーゲーム36時間実況』『生タランチュラ実食』『プライベートでスカイダイビング(感想は配信で言ってはいけない)』などがあり悪辣極まりない。

 

「あ、でもこの一番小さなやつ! これ、これをわたし狙います!」

 

 さすが配信者というか、トネリコさんはゴネることなくルーレットには前向きらしい。

 一番細い項目には『エリとトネリコもう一回コラボ』と書かれている。

 

「一応、希望を与えてあげたんだっ、ほらいくぞー!」

 

 ポチッとマウスをクリックする妹。

 

「あわわわわ」

 

 両目を瞑って祈るトネリコさん。

 

 くるくる回るルーレット。

 そして。

 

「あー、これかー」

「え、なんですか。どうなったんですか!」

 

 未だ目を瞑っているトネリコさん。

 

「トネリコさん、残念な事になりました。自分でご確認ください」

「ええええ。タランチュラやだタランチュラやだ、でもホラゲーもスカイダイビングもっ」

 

 開眼。

 

「やったあああああああ! 勝ちです、これ、わたしの勝ちです、みんなーやったよ!」

 

 ルーレットが止まったのは『エリともう一回コラボ』で、妹を見れば少し照れくさそうな顔をしている。

 

「……なるほどね」

 

 そんなこんなで四時間に及ぶゲーム配信は終わりを迎えた。

 帰りのタクシーの中、キャップマスクサングラスを装備した妹に質問する。

 

「ルーレット、あのマスしか指さないだろ」

「……」

 

 妹はこれで案外、多少、優しい性格をしている。

他人に罰ゲームを企画するというのは考えられない。いや、その割にルーレットの項目が随分と攻撃的だったような。いったい誰に似たんだか。

 

ともあれ。

 

あのルーレットは妹なりの好意。

もし、トネリコさんを気に入ったら罰ゲームを装いつつもう一度遊ぼうと思っていたのだろう。気に入らなければルーレット自体出さなかったに違いない。あのルーレット、恐らくは動画に近いものだ。決まった場所しか指さない。

 

「ま、妹が成長したようで兄としては一安心だけど」

「そんな事無いし。それより、帰る前にマネージャーとなにか話してたけど、デビューするの?」

 

 妹よ、ちょっとした雑談は一般人の礼儀なんだ。

 

「デビューってそんなのあり得ないよ。ただの雑談。業界も大変なんだなって」

 

 ついでに連絡先も交換しておいた。好き嫌いは置いておいて、当面は保護者代わり、必要になるタイミングもあるかもしれない。

 

「そっか。ねえ、レー、今日はつまらなかった?」

「いや、そんな事はないけど。少し疲れたかな。人に見られながら遊ぶのって大変なんだなと思ったよ」

「そっか。あ、コンビニ寄りたい」

 

 妹の一言で僕らはタクシーから降りた。コンビニの外でボケッと立ちながら待っていると。

 

「おまたせっ」

 

 駆け寄って来た妹の手には肉まんが握られており、その半分を渡される。

 

「ねえ、レー」

「なに?」

「今日は楽しかったね!」

 

 あまりにも純粋で健全な笑顔。

 まるで昔の妹に戻ったかのようだ。

 思わず、どうか、このまま傷つかずにいて欲しいと願うほどで。

 

 ああ。

 

 世の中、そんな上手くいかないと分かっているからこその願い。もしくは、動物がいち早く災害を察知するような感覚で。

 僕は不穏な気配を感じていたのかもしれない。

 

 ――だからきっと、トネリコ・ルリカが殺害されたのも偶然ではない。

 








引き続き日間ランキングに入っておりました、読んでくださった方、評価下さった方感謝です!

(調子に乗って『1位になったらPS5と4Kモニター買っちゃお☆』とか書かないで良かった) 

感想も全て有難く読みつつ、GOODポチポチ押させて頂いております!


書くのが孤独なのでリアクションは励みになりますっ
無限に出てくる誤字報告も助かるラスカル! 


いいね、評価いただけると喜びます!ワンワン!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。