顔だけは良い妹が何故かバーチャルアイドルをやっているらしい 作:hikari kawa
四月が終わろうとしている。
少しばかりヤバい悪魔に掴まってしまいそうになったもののSNSの通知設定をのきなみオフにする事で問題は解決した。
どうせ小林と大場は学校で会うし、日常生活特に問題は無い。
『グレゴリーのオールデイジャパン』
ベッドに寝転がり天井を眺め、ワンワンニュースのコーナーを聞き流す。
今日はスペシャルウィーク。普段は生放送だけれど、今日は録音放送。しかもゲストは隠されたまま。これは大物ゲストの予感、寝オチしないようにしなければならない。
『さあ、今週はスペシャルウィークですがその前に恒例の――』
『はいはーいッ、マリリもワンワンニュース持ってまーす!』
「ひぃっ」
心のテリトリーを無遠慮に踏み荒らされた!
え、幻聴!?
『ちょっとちょっとお、出番まだでしょっ』
『乱入って昭和芸人じゃないんだから』
『今日はマリリのオールデイジャパンでーす! ミュージックカモン!』
流れるボサノバスウィートスウィート。タイミングはバッチリだ。
『乗っ取られてる!?』
『はっはっはっはっ、という事でスペシャルゲストのマリス・リリス・リードこと』
『マリリちゃんでーすっ』
あーあ鳥肌が立ってらぁ。
これは一般的にいう所のマリリアレルギーの初期症状。
・・・
マリリ怒涛のトークが進んでいく。本職の芸人の前でよくもまあツラツラ淀みなく喋れるものだ。
音を普段よりも小さくしながらも聞き続ける。マリリ砲を集中砲火されるのが嫌なだけであって別にマリリが嫌いになった訳ではない。多分。
「そういえば」
あの企画。
あれ自体はどうなったんだろう。
深夜の回らない頭で考えた案がたまたまマリリの琴線に触れたみたいだけど。バーチャルアイドルの実母、勝手にデビュードッキリ。
拙い案ながら我ながら酷い。これをもし自分がやられたらと思うとダメージでかい気がする。
『えー、マリリちゃんホントにこのラジオ聞いてくれてたんだ』
『作業中によく聞いてるんだー。しかも今まで聞く専だったんだけど、今回出るって決まってからメールも送ってみて、ドン!』
『ええっ、これウチのステッカーじゃん』
ステッカー!?
オールデイジャパン。読まれた投稿者にはグレゴリーステッカーが送られるのだが。まさかマリリ。やったのか。
『マリリよくゲームするから、プロゲーマー田中は相性バッチリだったんだなあこれが』
『やるなあマリリ。それじゃあ今回はマリリにメール選んで貰っちゃおっか』
『よしきたっ、このマリリちゃんのメール選択センスが炸裂するぞー』
『じゃあさっそく、プロゲーマー田中。姑息だけどどこか憎めないプロゲーマー田中の今週の出来事をリスナーが教えてくれるという事なんですが』
『んー、じゃあこれだ。ラジオネーム アメとムチムチ。先日プロゲーマー田中が引退詐欺をしてスパチャを荒稼ぎした翌日に復帰配信したのですが……。何て酷いやつなんでしょう!』
訪れる沈黙。
『え。終わり?』
『酷い奴ですねー』
『酷い奴だねー』
『いやいやいや駄目よこんなメール選んじゃ!』
『何でですか?』
『つまらないから!』
『マリリのメール選びのセンスは良いですねえ』
『やったー褒められたぜ』
『褒めるんじゃない! もう次はしっかり選んでくださいよ』
『オッケー。じゃあ続きましてラジオネーム。ああ、いいのみーつけた。ラジオネーム、ふぐり。マリリ、この人知ってるー』
あーあ。
『けっこう前からメールくれてるよね』
「おお!」
認知されてる!
『でもふぐり君は読まなくていーや。マリリこの人にアカウントブロックされてるしー』
『え、マリリブロックされてるの!? してるんじゃなくて?』
『そうなんですよー。なのでメールはポイッ!』
「僕のステッカー!」
ステッカーを十枚集めると限定キャップが貰えるというのに、許せねえ……。
『ふぐり君の分のステッカーはマリリが貰っちゃいまーすっ。じゃ、次の人』
あの悪魔。次会ったら祓ってやる!