宜しくお願いします。
操作された者の独白 壱
『私はただ、羨ましかっただけなのだ。
エルヴィン団長のように皆を指揮する姿に…リヴァイ兵長のように巨人を倒す姿に…憧れた。
だから…頑張ったのだ…上を目指して頑張ったのだ。
しかし…私は臆病だった。
どれだけ勉学に励み知識をつけ、立体機動の練習も人より何倍もしたが…実践になれば、私の身体は思うように動かなかった…そして、兵団を逃げるように移った。
だが…そこでも私は上を目指してしまった。
その結果、臆病なのに人の上に立つ無能が出来上がってしまった…
隊長にまで上り詰めた私だったが、そこで止まらなければならなかったんだろう…更に上へなんて考えてはいけなかったんだ…
なぜなら、無能はいつだって言いように扱われ捨てられる運命にある。
せめて…私のこの臆病な性格を悟られないように努めていれば…
私は…私はまだ生きていられたのだろう…
あの化け物に悟られてしまった私は、その操作された運命を辿ることになるのだろう…
私は馬鹿ではない。
無能でも…ここまで成り上がったのだ。努力した。人との付き合いをごまの擦り方も学んだ。
色んな人を見てきた。
だから…分かる。
あいつだ…あのトロスト区襲撃時…エレン・イェーガーを追い詰めたとき…!1人だけ後ろでただ見ていた…その状況を楽しんでいた…あいつだ…!!
キヨン・ジェイルーン………』
望月まで10日となった頃…
調査兵団は今、エルヴィン団長の考案した長距離索敵陣形で巨大樹の森へ向けて移動していた。
オレの前方では、赤い煙弾が上がる。巨人がいた合図だ。オレはそれを確認した後、赤い煙弾を上に撃った。
暫くしてから、前方より左斜め前に緑の煙弾が上がった。進路変更をするための合図。馬を左斜め前へ向きを変える。巨人を見つけては避けてを繰り返し、壁外を進んで行く。
そうして、巨人と戦う事もなく巨大樹の森へ辿り着いた。
ここで、三班に分かれて移動する。
一つはオレやエレン、ミカサがいる班。この班は巨大樹の森の中を進み奥まで目指す。
オレ達の班は森の中に潜む巨人を見つけ次第、巨人を倒して進まなくてはならない。そのためここで少なくはない犠牲は出てしまう。
だが、この森の中にはかなりの巨人が潜んでおり、次の作戦のためにも今のうちに倒しておかなければならない。
そのため、この班は調査兵団の中でも精鋭で組まれている。
後の二班は巨大樹の森の両側から回り、これも奥の方でテント地を作る。
オレは巨人を見つけては倒しを繰り返して森の中を進んでいく。
そして、目的のポイントにまで来たところで、テントを一度降ろす。このテントは意外にも重かったため、降ろしたときの解放感が気持ちよく感じた。
オレは特に何もすることなくボーッとしていた。
この班にはエレンやミカサは居るが、一緒に居るわけではないため、話す相手が居ない。
ここの所、自然と周りに人が集まってきていたため、一人の時間が欲しい…なんて考えていたが、一人になったらなったで、意外にも物寂しく感じた。そんな感情がオレにとっては、少し可笑しく面白かった。
皆が建て終えるころには、日が沈みかけていた。そして、オレやエレン、ミカサの少数で更に奥へ進んでテントを張る。
張り終えて小休憩していると…
『パドォォオン!!』
突如、西の方から丸い雷が光った。
...この音は巨人になった音か…ライナーだろうな。
オレは作戦通りにリヴァイ兵長の下に向かった。
しかし、それだけでは無かった。
『パドォオン!!』
オレがリヴァイ兵長の下に移動していると、また雷の落ちる音が聞こえた。それもまた、西から。
...エレンはオレと同じ更に奥に進んだ位置にリヴァイ兵長と共にいる筈だ。
だから、エレンではない。
この森は80メートルの高さがある。
例えベルトルトが巨人になったとしても見えることはない。だが、ベルトルトが巨人化した時はかなりの爆風が起こると聞いているため、ベルトルトではないだろう。
なら…おそらくはユミルだな…ヒストリアに何かあったのか…
今回はリヴァイ班がヒストリアの護衛に就くと言うことで、安心していたが…やはり、ライナーの鎧の巨人には兵士では無理だったか…ユミルが巨人化するということは、ヒストリアが連れ去られたと言うことだろう…
これは…急いだ方がいいな。
そして、また直ぐに
『パッッドォォォォォオオオオン!!!!』
今回はオレの後ろ…南からだ。この突風はベルトルトだな。
……やはり...あいつらは過酷な訓練を受けたとはいえ、精神的にまだまだ未熟だな。
どうやら...そっちは上手くいったようだ。
オレは一先ずリヴァイ兵長の下まで来ていた。
「リヴァイ兵長、作戦通りベルトルトは任せてもいいですか?」
「ああ...あいつらの事は頼んだぞ」
あいつらと言うのはヒストリアの護衛に付いているリヴァイ班の事だ。
オレも本来はリヴァイ兵長達と共にベルトルトの相手をするつもりだったが、西で何かあったためそちらに移動することとなった。
「はい」
オレは西へ向かって移動を開始した。
リヴァイ班にユミルも居て、一応コニーも西に居たが、それでもヒストリアが奪われたのか…
ライナーのことを少し見誤っていたのかもしれない。
少し急ぐか…
▽▽▽
壁外調査2週間前。
オレ達新兵は壁外調査まで、訓練よりも作戦を頭に叩き込んでいた。
そして、今日も今日とて先輩兵士が教鞭を握り、でかい声で壁外での説明をしている。
今は巨大樹の森での事についてだ。
「今回の壁外調査で最も問題となるのは、鎧の巨人と超大型巨人だ。」
先輩がその二体の巨人の名前を出すと、オレの周りの奴等の顔つきが変わった。
まだ、こいつらには受け入れたく無い事実だろう。
「今回、巨大樹の森を目指すのも奴らが仕掛けてくる前提で作戦が組まれている。
鎧の巨人の対処も難しいが、問題なのは超大型巨人だ。
奴は出現するだけで、爆風を起こし一つの街を破壊してしまうほど厄介な存在だ。
それを対処するために真ん中のキャンプ地から、更に奥へ移動し離れた位置に第四の拠点を作る。」
「それでは、その三つの拠点のどれかが囮になるという事ですか⁉」
対ベルトルトの策を聞いて、マルコが先輩に質問をする。
「そうだ。
だが、そもそも一人一人がテントを張る間隔はかなり広い。
そして、超大型巨人…ベルトルト・フーバーを見つけ次第。一斉に全方位にバラバラになって、逃げろとの指示を受けている。
奴らは、日没間近にエレンを回収した後、逃げるつもりだ。
だから、奴らは時間をかなり気にしているはず…時間を稼いでいれば、エレンを探すために焦って巨人化するかも知れん...」
そう説明する先輩兵士だったが、ジャンが疑問に思ったのかオレに聞いてくる。
「本当にそんなんで、巨人になるか?俺ならもっと静かに近寄って奪うがな」
「そのために、真ん中に残る兵士はフードを深く被ることになるだろう。
静かに近付けるかは、ベルトルト次第だがそう簡単に近寄れるとは思えない。
なら、ベルトルトは巨人化して辺り一面を吹き飛ばしてしまえば、探しやすくはなる。
テントを張る高さも丁度ベルトルトが巨人化したくらいの高さだしな。」
「だがよ。エレンが死んでしまったら、元も子もねえだろ」
「それくらいでは死なないんだろう。
巨人化できる奴らのしぶとさは凄まじいからな。
特にエレンは巨人関係なく、ゴキブリ並みのしぶとぅう!」
オレが頬杖をつきながら、ジャンに説明しているとミカサに脇腹を殴られた。
そうだった。いつも隣にはヒストリアが居るせいで今日は、ミカサが横に居ることを忘れていた。
「キヨン」
「はい、すいません」
「ま…まぁそう言うことか。納得したぜ」
ジャンとの会話を終え前を向く。
まだ先輩の話は続いていた。
「と言う訳で…
巨人化させてしまえば、こちらのもんだ。
最も...犠牲がゼロと言うわけにはいかないだろう…だが、俺たちは兵士で責務を果たさなければならない。
死ぬ覚悟はもうできているのだろう?」
そう言われてしまえば首を縦にふることしかできない。
▽▽▽
まさか…ライナーが立体機動を持っていやがるとはな…誰かが、殺られたってのか…?
突如現れたライナーに立体機動で、間近くまで一瞬で迫まれ、巨人化しヒストリアを奪われた。
リヴァイ班が救助に向かうも兵士の刃は通らないため、ライナーは無視して逃げていった。
だがな…私も…ヒストリアを奪われることだけは許せねえんだよ。
それだけは駄目だ。
そう思うやいなや、巨人化しライナーに飛びついていた。
私が巨人化することにより周りにいた奴らも驚いて固まっている。
リヴァイ班も一度ライナーから離れ、木の上まで退いていた。
だが、一番驚いていたのはライナーだ。
こちらを見て、停止する。
まぁ…当然だろうな…この巨人は5年以上前にお前の仲間を食べたやつだからな…
ライナーは逃げるのを止めてこちらに向かってきた。
キヨンが言っていたのはこう言う所だろうな。戦士として訓練されたが、心はまだ未熟。感情を優先し任務に支障を出す。
ライナーの攻撃を躱して、顔を引っ掻く。
ちっ…兵士の刃が聞かないのはまだ分かる。
だが、私の爪も全然効かねぇとはな…まさか…ここまで硬いとは思わなかった。
アニから聞いてはいたが、想像以上だ。
なら、膝裏だ。
タイミングを計らい、躱して膝裏を引っ掻くと、ライナーは崩れた。
少し手が緩くなったのを見逃さず、手を抉じ開けヒストリアを救出することに成功した。
一度木の上にヒストリアを寝かせて、コニーの方を見ると怯えながらも近付いてきた。
コニーにヒストリアを任せて、私はライナーの方へ向き直り臨戦態勢を取る。
っ…!?速いっ…!?
全力でこっちに向かって走ってきた。
私の方がスピードはあったが…そのさっきまでのスピードの違いに思わず固まってしまった。そうか…ヒストリアを気にする必要が無いから全力を出せるのか…!
ゴフッ…
腹の底から出てきた。
ライナーのタックルをもろに喰らってしまい、気が付けば数十メートル吹き飛ばされていた。
そして、私を先に倒すべきだと判断したのか、またしても私に向かって突撃してくる。
余りのその威力に身体が動かねぇ…
そのままタックルをされ、地面に押さえつけられて何度も殴られた。
ヤバイな…朦朧としてきちまった。
「今だ!かかれ!」
「ああ!!」
ようやくリヴァイ班が動き出した。ったく…おっせぇよ…
それでも、やはり…兵士の刃では勝てない…
鎧の隙間を狙って切ろうにも、ライナーが動けば狙いはズレてしまう。
私もライナーの力に抵抗できねぇ。
「ぶぅっ…!」
「グンタぁぁああ!!」
ライナーが動きながら兵士が飛んでくるタイミングで、蚊を払うように腕を振ると、リヴァイ班の1人にもろに直撃してしまった。
リヴァイ班が一度退いた隙に何度も殴られ続け、抵抗する力はなくなり意識が遠くなっていく。
…ヒストリアが何か叫んでいる…さっきまで気絶してたのに…元気だな…
私の意識はそこで途絶えた。
▽▽▽
くそっ…!
オレがあの時…殺していれば!
ライナーが巨人になる前に刺せていれば何か変わっていたかもしれないのに…躊躇ってしまった。
ユミルまで倒された…
キヨンに言われていたのに…
あっ…!
うなじを食いちぎられている…ライナーの野郎…ユミルを食べやがった…!
「ユミル〜!!」
起きたクリスタが、ユミルを助けようと飛び出そうとするのをオレが止める。
「コニー!どうして止めるの!?」
「落ち着け!クリスタ!あれはオレ等では無理だ!ユミルはもう食われちまったんだ!」
「そんなのまだ分からないよ!絶対口の中にいる!」
その時、ライナーの目に刃が突き刺さった。
リヴァイ班の皆だ。
…そうだ、1人欠けたってまだリヴァイ班はいる。
オレも一緒に戦えば…!
「おい!坊主…!お前は下がってろ!連携を取ったことのない奴ならまだいない方がマシだ!」
「よくも…!グンタを!」
リヴァイ班の3人で一斉に斬りかかる。
筋肉が見えている部分を削いでいくも…致命傷は与えられていない…しかも、削いでもすぐに修復してやがる。
ライナーが1人めがけて突進して、一人の兵士を木ではさみ潰した。
一瞬だった。
殺したと同時に一気にこちらに向かって走ってくる。
「クリスタ!!逃げろ!」
「っ…!」
また奪われてしまった…
オレがクリスタを抱えて逃げようと動こうとしたが、間に合わなかった。
ライナーは森の外へ向かって走っていく。
逃がすものかと、オレは追いかける。
だが、そんなオレを一気に追い越して、茶髪の女の先輩がライナーに斬りかかった。
だけど、やっぱり兵士では駄目か!
ライナーに簡単に手で払われ、態勢を崩した所へライナーが女先輩を蹴る。
…?空を切った!?
「キヨン!!」
思わず声が出ていた。
キョンに気付いたライナーは慌てて逃げ出すが、キヨンがそれを許すはずもない。
▽▽▽
「大丈夫ですか?」
オレはかなり飛ばして立体機動でここまで来たため、ガスの余力はあまりない。
一先ず救出したペトラさんの無事を確認する。
「あ…う、うん。ありがとう」
「木の上に避難していてください。」
ゼロからMAXへ。
離れていくライナーだが…一瞬で追いつく。
走っている最中で、タイミングを合わせづらいが、構わず飛び込む。
先ずは膝裏を削ぐ。
態勢が崩れたライナーだが、右腕を庇うようにコケた。なるほど、右腕にクリスタがいるのか。
右腕の前腕筋群の見えている部分を切り刻んでいくと、手が緩みヒストリアがこぼれ落ちた。
オレは、ヒストリアが地面に落ちる前に助け木の上に着地した。
「っ…ん…?キヨン…?」
「遅くなって悪かったな。」
「キヨン!ユミルが!ライナーの口の中いるの!」
不味いな…
何とか、ガスが持ってくれれば良いが。
「…分かった。コニーと共に下がっていてくれ、ユミルを奪い返したらやることは分かっているな?」
「うん!お願い…!」
オレはもう一度ライナーへ目掛けて飛ぶ。
目も足も修復されてるか…
なら、また何度も斬れば良い。
修復すればするほどオレに斬られる回数が多くなるだけだ。
巨人のように大きくなることは決して利点ばかりではない。的が大きくなるため、オレにとっては寧ろやりやすい。人体の構造を理解していれば、割と簡単に倒すこともできる。
だが…ライナーのような急所に刃が通らなければ倒すことは不可能だ。
立ち上がろうとする脚を斬り、目に刃を突き刺す。一度目玉の上と瞼の隙間に刃を通しグリグリしたが特に変化はなかった。実験失敗か…
膝裏を削がれ、立っていられなくなったライナーは、座ったまま右腕で殴ってきた。
振りかざしてくる右腕を避けながら、見えている筋肉の部分を削いでいく。そして、脇の部分を削いでいき、抵抗する力がなくなったところで、最後に口の筋肉を削ぐ。
すると、口が開きユミルが出てきた。
うわっ…汚…くさ…
だが…そんなことを考えてる余裕はないため抱えて逃げる。
もうガスが尽きたか…だが、何とか間に合った。
ヒストリアにガスを交換してもらい、オレがヒストリアを担ぐ。ユミルはコニーに担いでもらった。
決して臭いからではない…そう。汚いからではないのだ。
オレたちは全員でこの場を離れる。
ライナーは後ろからしつこく追いかけてくる。
ライナーの方がエレンよりもゴキブリみたいだな。
作戦通り、オレは上に緑の煙弾を打った。
すると、超大型がいる方向から巨人化する時の音が聞こえてきた。更に巨人化したやつの声も。
『パッドォォオン!!』
「ウォオオオオオオ」
ライナーはそれに気付いたのか分からないが構わず付いてくる。
余程焦っているのだろうな。
この状態を保ちながら移動をし続けること2分。
オレたちは一斉に所持している全ての信煙弾をライナーの目辺りを目掛けて撃った。
ライナーは突然の出来事に停止する。
オレ達は一斉にこの場を離れ、全力で自分が生きる為に立体機動で逃げる。
何から逃げているのか…それは…
上から倒れてくる超大型巨人からだ。
そして、煙で周りが見えないライナーは超大型巨人の下敷きとなった。
その瞬間、周囲には激しい突風が吹き荒れた。
遠くまで逃げた筈だが、それでもここまで突風が押し寄せてきた。
その時、意識を取り戻したユミルがもう一度巨人なり、オレたちをその突風から守ってくれた。
▽▽▽
「緑の煙弾を確認!」
作戦が成功した合図。
流石はリヴァイ班だ!リヴァイ兵長がいなくても強い!
いや…もしかしたらキヨンのお陰か…
しっかし…良く考えてるもんだな…と、オレは感心していた。
この策を考えたのはキヨンとエルヴィン団長によるものらしい。
この信煙弾だって、森の中で上に撃っても離れたところからでは見えない。だが、超大型が出現した衝撃で辺の木は吹っ飛んだ。その結果、上空を確認することが出来るようになり、離れた場所の信煙弾を確認することができた。
それを、事前に考えつくのも凄いな…
オレはそんな事を考えながら巨人化する。
オレが巨人化したことにより、ベルトルトはオレの方に向かってきた。
オレは木から木へと跳んで移りベルトルトから逃げる。
だが、ベルトルトの一歩がでかいため直ぐに追いつかれた。
だが…それが作戦だがなぁ!
オレは巨人から抜け出し、立体機動に移る。
そして、ベルトルトの後ろに移動する。
当然ベルトルトはオレの方を向き、腕を伸ばしてオレを捕まえようとしてくる。
その瞬間、地面で待ち構えていたリヴァイ兵長達が動き出す。
「やるぞ!」
「「「「了解」」」」
ミカサとリヴァイ兵長、ミケ分隊長達精鋭中の精鋭で超大型巨人の脚を削ぐと狙った方向へ背中から倒れていった。
キヨンが言うにはここでは捕らえる、若しくは倒す必要はまだないと言っていたが、オレはここで捕らえておきたい。
あいつらとちゃんと話がしたい。
▽▽▽
オレの隣にはいつの間にか東の班の奴らも応援に来ていた。とは言っても、ジャンやサシャだけだったが…
爆風により辺は砂埃で見えなかった場所が晴れていく。
「まじかよ…」
「元気ピンピンじゃねぇか!!」
「流石に…これで倒れないとは厄介だな…」
「どうするんだ?キヨン」
「お前らはここにいろ。戦闘になることはない」
オレはライナーの近くまで移動する。
ライナーは巨人からでて来て、ベルトルトを引っ張り出すのに必死になっていた。
やはり、巨人になれる人間でもあの高さから後頭部に衝撃を与えれば行動不能になるんだな。
そんなライナーにオレは話しかける。
「なあライナー…始祖ってなんだ?壁の中にあと何体の巨人がいるんだ??」
「ああ!?何言ってやがる!アニにもう聞いてんだろうが!!」
ライナーは怒りを露わにしながら叫ぶ。
「残念ながら、アニはそう言った事を教えてくれないんだ…アニはオレ達と戦いたくないと言うだけで、裏切った訳では無いようだ。お前が教えてくれたらアニを返してやっても良い。」
「それをオレらが信じるとでも!?」
「これは事実だ。それ以上でもそれ以下でもない」
「俺等にはもう関係ないことだ。
アニは裏切ったんだ。
だが…お前たちに教えてないことを知れて良かったよ。」
「そうか…なら、巨人になった奴を殺す方法くらい教えてくれ。できればそれを移す方法をな。情報を吐かない敵など邪魔でしかないだろう?」
「っ……」
やはり、甘いな…まだ、アニの事を諦めていないんだろう。
「それも駄目なのか?」
「てめえ!?お前らと戦いたくないためにアニは俺達を裏切ったんだぞ!?人の心ってもんがねぇのか!?」
「敵であることには変わらないだろう。
オレは生憎と簡単に人を信用できる人間ではない。
情報をくれるのなら、すぐにアニを殺しておくぞ?お前らも裏切り者は邪魔だろうからな」
「テメェ…!この悪魔がぁ…!」
「お前らに何と思われようがどうでもいいな。
アニは本当に要らないんだな…?」
「っ…!」
ライナーはそれ以上何かを言ってくることはなく、気絶しているベルトルトを巨人から出して、逃げていった。
後2つ3つ目の策に移行しないと行けないかと思っていたが、案外すんなり行ったな…
今はあいつらを寝返らせることはオレには出来ないし、捕らえて閉じ込めておく場所など無いからな。
かと言って、マーレに帰られるのは最も困る。
これなら、アニを奪い返そうとここに残るだろう。
これが今できる最大限だ。
これで…今回の壁外調査での戦闘は終わりだな。