進撃する綾小路   作:もと将軍

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宜しくです。

ちょっと…就活行ってきます!


操作された運命 参

「ウォール・シーナが突破されました!!」

 

その報告に調査兵団の全員が驚愕し、怪訝な面持ちをしていた。  

それも当然だ。

ウォール・ローゼではなくシーナだ。

当然驚くだろう。

 

「……言いたい事があるなら聞くぞ?」

 

後ろからの視線が痛かった。

主にミカサだが…

 

「キヨンがしたことなの…?」

 

ミカサがそう聞いてくる。

 

「そうだ」

 

「なっ…!また…何で言わないの!」

 

そう聞いた途端、更に機嫌が悪くなった。

 

「何故話さなければならい」

 

「キヨンは前に[これからは話すようにする]って言ったでしょ?」

 

「だから何だ?

話すとは言ったが、今回はミカサ達に何かをしてもらうつもりはなかった。

今回のことは、オレが原因を作ったが、オレも特に何かをした訳では無い。

そんな事をいちいち話す必要はないだろう」

 

「……」

 

かなり不貞腐れてるな…

隈が酷い為いつもよりも顔が怖い。

…良い感じに精神的にきてるな。

 

 

前から兵士を掻き分けてリヴァイ兵長とハンジさんがオレの方に近づいて来た。

 

「おい…どうせお前の仕業だろ…来い」

 

女の兵士に事情を聞いたのだろう。

巨人が扉を破壊したのではなく、住民による王政への反乱だと知り、オレが関係していると思い行ったのだろう。

周りから見られる中、先頭まで歩いていく。

ジャンやヒストリアも付いてきた。ミカサは当然のように。

先頭に行くと、エルヴィン団長やエレン、何故かアルミンも居た。 

そして、エルヴィン団長がオレに問いかける。

 

「先ず聞いておきたい事は…これは巨人が入ってきたのか…?」

 

その事は、さっきの女兵士に聞いただろうに…

 

「違います。住民でしょう」

 

「そうか」

 

オレから確認を取ったエルヴィン団長は、今回の件は巨人によるものではないことを調査兵団全兵に知らせ、一時帰宅を命じた。

オレたちが居るのは、東に位置するカラネス区。

破壊された門とは距離があり、馬で走ったとしても、もうすぐ日が暮れるため今から向かうのは不可能だった。

 

「一先ずは…これに乗って宿に向う。

乗ってから話そう」

 

エルヴィン団長が馬車…と言っても屋根が無い荷台のような物だったが…それに乗り、そこにオレも乗るように指示した。

オレが乗るとリヴァイ兵長とハンジさんが続いて乗り馬を出した。

その周りを皆が付いてくる。

何を聞かれるかはもう分かっていたのでこちらから話し始める。

 

「最初に言っておきます。

オレもどうなっているのかは分かりません。」

 

「は…?お前がやったことじゃねぇのか?」

 

真っ先にリヴァイ兵長が聞いてくる。

 

「確かに原因はオレです。」

 

オレがそう答えると、今度はエルヴィン団長が聞いてくる。

 

「なら…君は今回何をしたんだ?」

 

「オレがしたことは2通の手紙を書いただけです。」

 

皆の頭の上に?マークが浮かび上がる。無理もない。それだけでは分からないだろう。

 

「手紙…?」

 

「はい。

一つは中央第一憲兵に、もう一つは駐屯兵団のキッツ隊長です。」

 

「中央第一憲兵…!?えっ何でそんなとこに!?」

 

ハンジさんがそう慌てながら聞いてくる。

アニに聞いた情報から中央第一憲兵にしただけだ。それはハンジさんも少しは聞いているはずだったが…

 

「キッツって…?」

 

「ほら…あれだよ、トロスト区で僕ら四人に大砲を放とうとした隊長」

 

エレンは誰だ?と首を傾げ、アルミンが教える。

自分を殺そうとしたやつを忘れるか?普通…

 

「ああ…あの人か…でも、何でだ?」

 

「あの人は欲深いからな。

繊細であり、いつも怯えているが隊長まで上り詰めている。

だからこそ、今回のことには持って来いだった。」

 

オレがそう説明すると、エレンはほぉ~んと頷いた。分かってないな…

 

「今回…最優先事項は、王政がどう行動するのかの下調べの為だったのですが…上手いこと事が進んでしまったようですね」

 

「おい…その手紙の内容は何だ」

 

リヴァイ兵長が、早く話せと促してくる。

 

「中央第一憲兵には…調査兵団が壁外調査に出動する日にトロスト区のとある場所で、重要事項をお前に話す。と、その他にもこの壁の中から逃げる…や、秘密と書いて置きました。」

 

「それで…駐屯兵団は?」

 

「駐屯兵団隊長には、トロスト区で巨人の内通者が通るとの情報がある…と書きました。」

 

オレはそう言ったが皆は理解できていない。

コニーとサシャは、それでどうなるんだ?と、お互いが聞き合っている。この2人で話が進むとは思えない。

 

「それだけか…?」

 

「はい」

 

「それで…どうなるんだ…?」

 

「そうですね…可能性から鑑みるに…」

 

オレは皆に壁内で起きたであろう事を話すことにした。

 

 

 

▽▽▽

 

 

 

壁外調査で出動する日

 

トロスト区は巨人によって破壊された街である。

トロスト区内にある家は所々、大小の穴が空き、屋根が無い家が多数存在する。

そして、日中だと言うのに活気が無い。人通りも全く無い。

そんな廃れた街の中に1人の兵士が佇んでいる。

その兵士の着ている服には、背中に盾に2つの薔薇の紋章が大きく縫われている。駐屯兵団の紋章だ。

その兵士は若干笑みを浮かべ、誰かが来るのを待ち侘びていた。

 

『ジャリッ…ザッ…』

 

足音がした方向を駐屯兵団は見た。

ようやく来たか。待ちに待った昇格の時だ。そんな悦に入った表情が溢れ出ていた。

だが、振り返り現れた人達を見て、先程までの気味の悪い笑顔がまたたく間に消え失せた。

 

「ちゅ…中央第一憲兵…!?な…何故ここに…?」

 

その1人の駐屯兵団に2人の兵士が近付いていく。その2人は盾にユニコーンの紋章…憲兵団だ。

男は駐屯兵団で隊長を努めているが、現れた2人は階級の格が違う。

駐屯兵団は小刻みに身体が震えている。恐怖している。怯えている。

これこそがこの男の本質だ。

 

「何故ってなぁ…それはこちらのセリフだぞ?まさかお前だったとはな…キッツ。」

 

二人のうちの1人の憲兵団がニヤニヤしながら言う。

 

「まさか…中央第一憲兵が…!?と言う事は王家も…!?」

 

最も王家に近い存在の中央第一憲兵がここにいるのだから、王家が関係していると思うのは当然のことである。

 

「ほぅ…なかなか掴んでるようだな…誰にそれを教えてもらったのか吐いてもらおうか…」

 

「わ…私は…公の為にしただけです…!人類の為に…!」

 

近付いてくる憲兵団に後退りながらそう言う。

 

「それでもなぁ知ってはいけないことを知っちまったからな…誰に教えてもらったか吐いてくれたら…見逃してやるよ」

 

う…嘘だ…私にも…偶に聞こえてくる。黒い噂は…私はどうすれば良いんだ…?

わ、私は何も間違っていなかったはずだ。  

 

銃を突きつけられたキッツは鼓動が早くなり、汗がにじり出る。

 

「おい!さっさと行くぞ…!」

 

「い…行かない!私は行かないぞ!」

 

「あぁ…!?王政に逆らおうってのか?」

 

「私は人類のためにしただけだ!何も悪さなどしていない!あなた達のほうが人類の敵だろうが!」

 

緊張が限界に達し、喚き出すキッツ。

 

「あぁ?この狭い壁の中には知るだけで罪になることもあるんだ…お前はそれを知っちまった。それが罪だ。」

 

「貴方達にとって都合の悪いことを知られただけだろうが…

何故人類の敵になるんだ…!」

 

「これも全ては壁内の平和のためだ」

 

「人類を脅かしておいて!何が平和だ!!」

 

「あ?何言ってやがんだ、テメェ!」

 

「今だって!人類の進展になることを知ったものを殺そうとしているではないか!

そ…そうか!分かったぞ!!

王は偽物なんだな!?

だから!人類を絶滅させようとしているんだろ!」

 

「お前!それ以上口を開くな!」

 

「まぁ待てよ…サネス。こんな廃家だ。」

 

1人の憲兵団が本気で撃とうとしたが、もう一人の憲兵団がニヤニヤしながらそれを止める。

 

「お前な…」

 

「キッツ…それがどうした?それでも我々が人類の平和を守り続けてやったんだろうが、それの何がいけない?」

 

「ふざけるな!!我々の王は巨人から人類を守るために壁を作って100年の平和を実現させた人だ!!断じて、貴様らのような偽物ではない!!本物の王を何処へやった!?」

 

「何も知らん奴が、囀るな。

俺達はな…」

 

キッツの物言いに段々と腹が立ってきた中央第一憲兵。

だが、キッツにはもう誰の意見も入ってこない。

 

「えぇい!黙れ!!貴様らのような巨人に味方をする人類の敵は私が葬ってやるわ!!」

 

そう言って、キッツは中央第一憲兵に銃口を向ける。

 

「ちっ…おい、サネス!」

 

「ああ…仕方ないな」

 

二人とも銃を構えてキッツに向けて発砲する。

キッツは腰が引けていたため銃弾が腕に当たっただけだった。

 

「ヒィィィ…!!く、くっそぉ…部下は何処へ…」

 

腕から、ドクドクと血がでてくるのを、手で押さえながら助けを求める。

 

「隊長!こっちです!」

 

そこへ、キッツの部下が隊長の逃げ道を確保し、キッツを案内する。

 

「あ…ああ!!」

 

「逃がすわけねぇだろうが…!」

 

足を撃ち抜かれ、キッツはその場に倒れる。

部下は我先へと逃げていった。

 

「お前はあいつを追え!!」

 

「分かった!」

 

サネスはもう一人の中央憲兵に逃げていったキッツの部下を追うように指示を出す。

 

「ちっ…手間取らせやがって…お前がさっさとはいておれば…」

 

「な…何故…お前達はトロスト区を破壊したのだ…?」

 

苦渋な顔をしながら、最後の方を振り絞りキッツは聞いた。

 

「はぁ?何言ってんだ…?破壊したのは巨人だろうが」

 

「何を今さら…!お前達が巨人か巨人の仲間なんだろうが!」

 

「…お、お前…さっきから何を…?俺たちはお前が知ってはならん事を知ったから消しに来ただけだ…」

 

「それが…お前達の正体が巨人だったからだろう…?」

 

落ち着き始めた二人。

お互いが少し意見が食い違っていることに今、ようやく気付いた。

 

「俺達が巨人なわけがないだろう…」

 

「ど…どういう事だ…何を言ってるんだ」

 

「キッツ…お前が言っただろうが…王家は偽物だと…」

 

「それは…私が…今気付いたことだ…だが…それを認めたってことは、やはり王家は偽物だったんだな!?」

 

「なっ…!何だと…!?何がどうなっていやがる…!?

お前…!お前が手紙を書いたやつだろう…!?

その手紙を俺達が回収して…」

 

「手紙…?書いてない…私も手紙でここに巨人の内通者が通る情報だけを…」

 

「だ…一体誰が…こんな事を!?く…くそっ…だが、知ってしまったお前は結局殺さねばならん…!」

 

「まっ…待ってくれ…!」

 

『パッァアンッ!!』

 

止めの一発を撃った。

 

「ガハッ……あぁ……」

 

キッツは逃げようとしたが、その脚では逃げることが出来ず、銃弾を食らってしまった。

仰向けに倒れたキッツは、何かを悟った目で空を眺め、ゆっくりと瞼を閉じた。

 

 

 

「中央憲兵が人を殺したぁぁぁあああ!!!

王家は偽物だぁぁぁああ!!!」

 

「中央憲兵が人を殺したぞぉぉぉおお!!!

王家が偽物だと、中央憲兵が吐いたぞ!!」

 

近くの家のベランダから見ていた人が居た。

二人で街を叫びながら駆け抜ける。

そして…

 

「本当だ…!!中央憲兵が駐屯兵団の隊長を殺した!!私も王家が偽物だと聞いたぞぉお!」

 

「なっ…何故ここに民間人が…!?」

 

訳が分からないなといった顔のサネス。

そもそも住民たちは、何故今まで出てこなかったのか…

 

「ここを廃村だと思ったか?だが、俺たちはこうなった所でもまだ過ごしてんだよ」

 

「私の家族にはね!調査兵団やってた馬鹿息子がいたのよ!少しの情報をつかめないまま、死んじゃった!あんた達が隠してたから!あんた達が殺したようなものでしょ…!!!」

 

「ああ!俺の息子もだ!」

 

「私の娘もよ!」

 

「僕のお兄ちゃんだって!」

 

ここに住んでるよりも明らかに多い人数が、そして調査兵団に入って殉職した者の家族が、一部始終を目撃していた。

そして、先程逃げていった駐屯兵団を追いかける中央憲兵を見た街の人達は駆け巡る噂を信じていった。

 

ウォール・ローゼ、そしてウォール・シーナの少数の貴族に、王家が偽物だと言うことが一日もせずに伝わっていった。

 

それを聞いた、ピクシス司令、ザックレー総統までもが動き出した。

 

「ピクシス司令!どうなされるのですか…?」

 

「部下が殺されたらしい。

ワシが出ないわけにはいかんだろう…

お前は今すぐカラネス区で調査兵団が返ってくるのを待て。」

 

「わ、分かりました。」

 

 

▽▽▽

 

 

「どう言った事を目撃したのかは知りませんが…住民が中央第一憲兵と王家の闇を知ったのでしょう。」

 

オレ推測を皆に聞かせた。

皆は、まじか…といった顔をしてどこか呆れているように見える。

王政、中央憲兵が普段からそのような行動をしているから、今回の事を招いてしまった。ただ、それだけのことだ。

 

「たった…2つの手紙でそんな事が…」

 

ハンジさんは頭を抱えている。

 

「これはあくまでオレの想像です。

後程、手紙を渡してくれた本人に聞くしかありません」

 

「それは誰に頼んだんだ?」

 

ジャンがそう聞いてきた。

 

「馬鹿夫婦だ。

中央第一憲兵にはアニだが…」

 

「「「馬鹿夫婦…」」」

 

馬鹿夫婦は他人を自分達のペースに乗せるのが上手い。いや…あれは天然か…

エレンでさえ、あいつらのペースには突っ込む気力を奪われていく。

オレもあいつらのペースに乗せられそうになったことがよくある。

住民が馬鹿夫婦のペースに乗せられ、そのまま馬鹿夫婦のお願いを聞いてくれたのかもしれない。

 

「えっ…誰?」

 

知らないハンジさんは首を傾げて聞いてくる。

 

「オレたちの同期で、駐屯兵団にオレが入るように言いました。」

 

「そんな前から今回の事を考えてたの?」

 

ミカサがそう聞いてくる。

 

「ああ」

 

「っ……そう…」

 

オレとの視線を逸らして、俯く。

どうやらまた、ストレスを与えてしまったようだ。

 

「一先ず、エルミハ区まで行かないと分からないと…」

 

エルヴィン団長がそう呟いた。

どうやら、報告しに来た駐屯兵団の女兵士は、余り詳しい事は知らなかったようだ。

 

「はい」

 

「そうか、分かった。」

 

「あぁ〜…そう言う事はもっと早く言ってね…?」

 

と、ハンジさんがオレに不満を言う。

 

「ハンジ…俺もこいつも人を簡単に信用したりしない。

情報が漏れるかもしれないなら、話さないのは当然のことだ。

俺達はまだ…数回しか顔を合わせていない仲だからな」

 

なんと…リヴァイ兵長がフォローしてくれた。

有り難い事だ。

 

「そ…そうか。なら、これからは信頼関係を作っていかないとね。」

 

「ええ、そうですね」

 

オレもそう返しておく。

 

もう日が暮れたため、宿に帰る事になった。

オレ達同期は皆で食堂に行くことにした。

 

「てめぇ…まぁた1人でやってやがったな…」

 

ジャンがオレを責め立てる。

それに答えたのはオレではなく、アルミンだった。

 

「仕方ないよ…僕達は僕達のやるべき事をやらなければならなかったんだ。

キヨンも今回は上手く事が進んだだけって言ってただろ?

そんな事を僕達に言って無駄なことを考えさせないようにしてくれてたんだよ。」

 

今日はやけに誰かがフォローしてくれるな…

有り難い。

 

「はっ…本当にこいつがそんな俺達のことを……あぁ…何でもない。」

 

ジャンはオレが言ったことを思いだし、途中で言い留まった。その顔は少し赤くなっていた。

 

「まぁ今日くらいそんな事考えずにいようぜ!

反乱は起きてるみたいだけどよ。俺達は生きて帰ってきたんだ!

それを喜ばないとな!」

 

「何だ、コニー珍しく良いこと言うじゃねぇか!」

 

「そうですね!そうですね!ここはパーッと行きましょう!

そうだ!ここに丁度カードがありますので、ゲームでパンを賭けましょう!!

むふふふふ」

 

「おう!良いぜ!」

 

と、皆はそれに乗ってゲーム。賭けをすることにした。オレもそれに乗ることにした。

 

「ああ…偶にはそう言うのもありだな」

 

「デュフフフっ…キヨンの負けっ面が拝めそうですねぇ〜…」

 

「ああ!俺等にこのゲームを挑むとは自殺行為だぜ、キヨン!」

 

「地獄の訓練兵時代の唯一の娯楽だったこのゲームで負けることは許されん。

俺の素晴らしき技術を見るが良い」

 

と、サシャやコニー、そしてジャンも余裕を見せている。

ゲームはブラックジャックのようなものだ。

こいつらが訓練兵時代、それに熱中していたのは知っている。

こいつらはイカサマ技術を極めていた。

だが…残念だったな…

イカサマでくるならオレも全力でイカサマをしよう。

 

「な…何故だ…俺達の地獄の訓練が…」

 

「地獄の訓練は兵士になるための訓練だろう。」

 

「そんな馬鹿な!!わわわ私のパンがぁああ!!」

 

「パンは貰っていくからな」

 

「おおおおお前!!イカサマしただろう!!」

 

「当たり前だ。

お前達がイカサマしてるからオレもしたんだ。

見破れなかったやつが悪い」

 

「くっ…!くそっ…!!くそぉぉお」

 

と、言ってコニー達は走って寝床に向かっていった。コニー…ヒストリアを奪われたときよりも悔しがってないか…?

 

「大人げねぇなキヨンは…私もそろそろ寝る」

 

「うん、おやすみ!ユミル」

 

「ああ」

 

ユミルに続き皆も続々と寝床に向かった。

残ったのはオレとヒストリアだけだった。

ヒストリアには、オレの考えていることを話すために、残ってもらうように言っていた。

まだ仮説の段階だが、今回の事でより一層確信に近付いた。

その事をヒストリアに話し、もしそれが真実であっても受け入れる心を持っておいてもらうためだ。

 

「ヒストリア…これはまだ確証は持てていない話何だが…」

 

「…うん」

 

「お前が本物の王家なんじゃないだろうか」

 

「……えっ…?私が…?」

 

目を見開き、驚愕している。

少し落ち着いたのを確認し、オレはその理由を話す。

 

「ああ…

一つはライナー達がヒストリアを狙ったこと。これはアニに聞いたが、ヒストリアは壁の情報を知る重要人物だと言う事。

もう一つは、ヒストリアが貴族家を追い出された日。

そして最後に現在の王家が偽物だと確定した。

さっきも言ったが、まだ確証は得られていない。

だが…もし今後、ヒストリアを攫いに来たときは、ヒストリアが王家だったことが確実になる。」

 

「そっ…そんな…私が…」

 

当然の反応だろう。

誰しもが、行きなりお前が本物の王家だと言われ、それをすんなり受け入れられるわけがない。

 

「お前は女王になりたいか?」

 

「それは…嫌だ、私には到底できそうにない…」

 

だろうな。

 

「そうか。ならやらなければいい」

 

「ねぇ…女王になって欲しい…?そしたら色々と楽に…なるの?」

 

ヒストリアは自分を使って欲しいと言っていた。

オレがそうだと、言えば女王になりそうだ。

だが…

 

「……そんな事は無い。

お前がやりたくないならやらなくて構わない。

だが…例え女王にならなくても本物の王家だと言う事に変わりはない。

だから、お前には死地に立つようなことは余りしてほしくない。」

 

オレは一先ずそう言っておくことにした。

 

「そ、そう…

でも、私はキヨンと一緒に居られれば良いのだけど…」

 

安全よりもオレと一緒に居るほうが良いと言うヒストリア。

 

「……そうか。そうヒストリアが判断したなら、オレは何も言わない。

今日はもう寝よう。疲れただろ?」

 

オレはやるべきことがまだある。

そのため、ヒストリアにもう寝るように促すことしにした。だが、ヒストリアはオレの腕を掴んで引き止める。

 

「も…もう少しだけ話していたいのだけど…」

 

「…悪い、少し行かなければならないところがあるんだ。」

 

オレがそう言うと死んだ魚のような目でオレを見てきた。

 

「どこに…?」

 

「それは…」

 

「もしかしてアニ?それとも帰って来る時言ってた先輩?」

 

オレは普通に言おうとしたのだが、ヒストリの追撃は止まらず、話すことをさせてくれなかった。

 

「いや…違う。

ミカサだ。

ミカサもミカサでストレスを溜めているから、家族として話を聞きにいかないと駄目だろう。

さっき、食堂に居た時も一言も話していなかっただろう?」

 

この世界ではプロポーズをすることはあるが、告白の文化がない。

そのため何度もデートを重ねた後、いつの間にか恋人になっている…と、母親から聞いたことがある。

オレはヒストリアとは恋人では無いと思っているが…もしかしたら、ヒストリアは既に恋人だと思っているのかもしれない。

 

「ミカサはいつも余り喋らないけど…

でも…」

 

そう言い淀むヒストリアに尋ねる。

 

「…心配か…?」

 

「うっ…だって…私は…私はね。

初めてなんだよ…?私を理解してくれる人なんて居なかった…皆と壁を作って距離を取っていた。それはとても…寂しくて……怖かった。

でもキヨンはそんな壁を強引に壊して私を理解してくれた。」

 

ヒストリアは自分の想いを話す。

オレは黙って続きを待つ。

 

「そんな人は絶対に今後出会えない…

私は…キヨンを失うのが怖い…

離れていかれるのが…怖いんだもん…」

 

ヒストリアは微かに震えている。

そして、その震えは大きくなっていった。

 

「ミカサは大丈夫だって分かってるよ。

でも……キヨンは…色んな人に人気だから…

心配になるんだよ…」

 

俯きながら話すヒストリア。

 

オレはヒストリアの顎を掴み、こちらを見るように顎を上げる。

そして、ヒストリアの唇にオレの唇を当てる。

ヒストリアは初め、視線を何処かに逸らしており、こちらを見ていなかったが、オレがヒストリアの唇を奪ったことにより、ゆっくりとオレに目を向ける。

まだ、何をされたのか理解できていないようだった。

だが…数秒も経てば理解する。

 

自分の右手をゆっくりと唇に持っていき、唇を擦ってから、キスをされたことに気付いた。

 

「へ…えっ…キス…?」

 

すると、みるみる顔が赤くなっていく。

 

「ふぇっ!?ななな何で!?えっ…!私…初めて…」

 

「オレも初めてだ」

 

「うぇええ!?」

 

驚き、あたふたしているヒストリアを優しく抱きしめ耳元で言う。

 

「信じてもらえるか?」

 

「うっ…!うん…」

 

一瞬ビクッとしてから何度か首を縦に振る。

 

「だったら今日はもう寝るぞ」

 

「わ…わかっ…った」

 

オレはヒストリアから離れたが、まだヒストリアはオレの顔を見てボーっとしている。

顔はほんのり赤くなっている。

 

「ヒストリア?」

 

そんなヒストリアにオレが名前を呼ぶと…

 

「うっ!うん!おやすみ!!」

 

と、そう言って足早に去っていった。

やはり、こう言う時は言葉で安心させるより行動するものだな。

オレはその背中を見送った後に歩き出す。

ミカサはもう寝てしまっただろうか?

それでも一応行くだけ行ってみるか…

ミカサの部屋まで行き、ノックする。

 

「はい」

 

良かった。まだ起きていたか…

 

「オレだ」

 

「入って」

 

ミカサの部屋に入る。

ミカサはベットの上で体育座りをして自分の膝に顔を埋めていた。

相当溜まっているようだ。

扉を閉めてから話しかける。

 

「ストレスが溜まっているようだな」

 

「キヨンのせいでしょ」

 

「今回は何もしてないだろ?

エレンの隣にも居られるようになっただろう。」

 

それはミカサも分かっているのだろう。

それ以上何かを言ってくることはなかった。

オレはベットに腰掛けてから言う。

 

「お前が悩んでいることを全部吐き出してみろ」

 

「……エレンはペトラさんのことが好きなのかな…?」

 

またエレンか…

 

「そんな訳がないだろう。

ミカサの勘違いだと何度も言った筈だ」

 

「分からないでしょ…エレンがどう思ってるのかなんて…」

 

「分かるさ。

どれだけ長い事一緒にいると思っているんだ?

時間だけならミカサよりも長い」

 

「…じゃあ何であんな反応したの?」

 

「ペトラさんがオレに対して気があることに残念に思ったんだろう。

気配りのできる良い人だからな」

 

「なら…エレンがペトラさんを好きになってるかも知れないじゃない…」

 

「そんな事は無いと思うがな…

そんなに気になるなら、明日エレンに聞けば良いだろう。」

 

「っ……」

 

聞きに行きたくないのだろう。

だがらこそ今悩んでいる。

 

「悩みはそれだけか?」

 

「……」

 

それだけでは無いことは見れば分かる。

そして、その悩みがオレに対してなのも…

 

「キヨンは…私のことをどう…思ってる…の?」

 

ミカサに似つかわしくない震えた声で聞いてくる。

オレがミカサに頼ることをしなかった事が少しずつ溜まっていき、エレンのことも重なり今一気に限界が来たという感じか…

 

「どう…とは?」

 

「決まってるでしょ…家族と思ってくれてるの…?

……

キヨンは…私に何も話してくれないし…最近は一緒にいることも少ないから…遠くに離れていってる気がする…私だけ…いつも1人でいる。」

 

不安の余り返事を聞かず、1人で話し出す。

15歳の少女には、寂しかったのだろう。

アルミンとは、よく一緒にいた気がするが…

そう孤独だと感じてしまえば、人間というのは更に自分を孤独にさせるものだったな…

返答を待てないミカサは更に聞いてくる。

 

「どうなの…?本当は…もう私のことなんて…どうでも…へっ…?」

 

オレはミカサを軽く突き飛ばした。

ベットに仰向けで倒れるミカサ。

普段なら抵抗できただろうが、精神的な面でダメージを負っているミカサは反応できず、そのままベットに倒れた。

オレはベットに膝を乗せミカサに覆い被る。

左手でミカサの右手を押さえ付け、右手でミカサの顔に乗っている髪を払う。

ミカサはギョッとし、オレの右手を左手で掴んだ。だがオレがそのまま頬に右手を添えると、段々と落ち着き右手を掴む力が弱くなっていった。

それと同時にミカサの右手も力が弱まったので左手を開き開放する。

ミカサと目が合う。

そのまま暫く見つめ合った。

 

「ミカサ」

 

オレが名前を呼ぶと、ミカサはドキッとして固まる。

オレの言葉の続きを黙って待つ。

緊張しているのがこちらに伝わってくる。

 

「オレはお前が好きだ」

 

「ふぇっ…?」

 

目を見開き、素っ頓狂な声を漏らす。

本当にミカサらしくない。

目を逸らさせはせず、沈黙の時間がまた流れる。

 

「お前はオレの大切な存在だ。

だから、お前をどうでもいいとは思ったことがない。」

 

何か反論しかけたミカサだったが、オレはそれを許さない。

ミカサの頬に添えていた右手の親指を唇に乗せ、開こうとした口を止める。

そして、ミカサの背中に手を回しオレの胸に寄せ、強めに抱きしめる。

そのままベットに横たわる。

 

「今日はもう寝ろ。

オレもここで一緒に寝る」

 

「っ…勝手すぎ…」

 

オレの胸の中で、そう言ったが嫌がる素振りは見せなかった。

オレはミカサの背中をトントンと優しく叩く。

すると、安心したのかすぐに寝てしまった。

オレが2歳くらいの時、母親に優しく叩かれたのを覚えている。確かに心地よく感じた。

 

ミカサはエレンへの想いが強すぎる。

それで良いときもあるかもしれないが、それで判断を誤るときも必ずある。

そうならないためにも、エレンへの依存を解消させなければならない。

まぁ好きであることには構わないんだが。

 

その後…オレも疲れていたため、直ぐに眠ってしまった。

 

 

 

…あだだだ。

数時間が経ち眠りに就いていたが、急にミカサの抱きつく力が強くなり、目を覚ます。

 

「な…何だ?」

 

「………寝たら落ち着いた。

嘘でしょ…好きといったこと…」

 

いででで…

 

「あ、あの…大切な存在であることは本当だ。

だから、離してくれ」

 

ほっ…抱きつく力が弱まった。

 

「別に好きと言う必要はなかったでしょ」

 

「…まぁ…普段見られないミカサの顔を見たかったんだぐっずいません」

 

また、抱きつく力が強くなった。

ヤバイ本当に何本かアバラが折れそうだ。

 

「別に…もういい……でも…偶には一緒に居て…」

 

「ああ…そうだな。オレもお前を放ったらかしにして悪かったな」

 

そう言いながら、ミカサの頭を撫でるとオレの胸の中で小さく頷いた。

 

「うん…」

 

そう言ってまた抱きしめる力が強くなったが、痛くはなかった。

ミカサはまたすぐに眠りについた。

もう大丈夫そうだ。

これからのミカサの成長に期待できる。

 

 

 

▽▽▽

 

 

ドクンッ…ドクンッ…と、とごか懐かしく安心する音が聞こえる。

私はゆっくりと目を開けた。

目を開けたのに暗かった。だけど、温かい何かに自分が包まれているのが分かった。

段々と寝る前の事を思い出す。

と、同時にその温かく居心地の良い場所から少し顔を離す。

 

あぁ……

 

寝ぼけていて、まだ視界がボヤけてる。

でも…自分の眼の前に寝ているのは、間違いなくキヨンだ。

うん…間違いない。

そして、完全に寝る前のことを思い出した。

 

ホントに嫌だ。

 

見透かしたような行動…

急に押し倒され、好きだと言われる。

こんなにも心臓が煩かったのは初めてだ。

エレンじゃないのに…

 

どうして…昨日はあんなにも心に余裕が無かったんだろう…

どうして…今はこんなにも落ち着いているのだろう…

 

でも、今落ち着いていられるのは……キヨンのお蔭だ。

 

気に入らない…

 

何でこうもキヨンの思うがままにされているのか…

そして、何故そう私のベットで私の隣で爆睡できるの…

………昨日好きと言ったこと…

嘘だ。

昨日は色々と悩んでいたから分からなかったけど…今は分かる。

キヨンもすぐバレると分かっていながらそんな事を言ったんだろう…

本当なら…最低な行為なのに…何故か腹が立た無い。

いや…少し腹が立っている。

私がドキドキしたならキヨンも少しはするべきだ。

 

抵抗するべきなのに、抵抗せず顔をキヨンの胸に押し付けられて、心地の良い音と共に寝てしまった。

まだ…外は暗い。

窓から入ってくる月明かりで、キヨンの寝顔が何とか見れるくらいだ。だから…まだ…寝れる。

もう一度、温かく心地よい場所に戻る。 

 

何でこんなにも落ち着くのだろう。

 

キヨンがモテるのも分かる気がする。

 

……何かムカッとしてきた。

 

それに、キヨンの思い通りに事が進むことにも少し腹が立つ。

キヨンの腰に手を回し力一杯抱きしめる。

私の全力にも耐えてくれる数少ない存在。

そこもキヨンの良いところ。

 

「な…何だ?」

 

キヨンの胸に顔を押し付けているため、顔は見えないけど、声から察するに苦痛な表情をしているのだろう。

起こしたのは良いけど…どうしよう…何て言おう。

 

「………寝たら落ち着いた。

嘘でしょ…好きといったこと…」 

 

取り敢えず、落ち着けたことを伝える。

これでも有り難いと思っている。

多分…感謝していることは伝わらないと思うけど…

それと、文句を言う事にした。

 

「あ、あの…大切な存在であることは本当だ。

だから、離してくれ」

 

その言葉を聞けて、更に安心する。

でも…少しドキッともした。

大切な存在…フッ…

抱きしめる力を弱める。でも、なぜだか寝起きの顔を見せたくない…それに今自分がどんな顔をしているのか分からない。

だから、キヨンの顔を見たりはしない。見たら見られるから。

軽く抱きしめたまま、胸の中に居続ける。

 

「別に好きと言う必要はなかったでしょ」

 

私は悟られないように、また文句を言う。

 

「…まぁ…普段見られないミカサの顔を見たかったんだぐっずいません」

 

ムカッ…

もう一度強く抱きしめると、即座にキヨンは謝った。

 

「別に…もういい……偶には一緒に居て…」

 

最後に本音を言ってもう一度寝る。

 

「ああ…そうだな…オレもお前を放ったらかしにして悪かったな」

 

そう言いながら頭を撫でられる。

また…子供扱い…

 

「うん…」

 

文句を言いたかったけど、この温かさと睡魔が相まって、何も言うことは出来なかった。

キヨンが私の頭を撫で続ける。

心地良い。

朝なんて来なければ良いのに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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