進撃する綾小路   作:もと将軍

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多分ですが、今年最期の投稿になります。

多分ですが…


人質

 

「まあ…そのだ。人類に多大なる貢献してくれているキヨンには悪いが、規則は規則なんだ。

立体機動を無許可で使った罪は重い。

 だから、ほんの少しの間だけ、形だけで良いから牢屋に3日ほど入っていてくれ」

 

 ハンジさんにそう言われ、牢屋で謹慎することとなった。

 だが、朝昼晩の3食にトイレには行きたいときに自由に行けるし、ベットもふかふか。

 そして、見張りは無し。

 月明かりが少し見える程度の窓ではあるが、牢屋にしては快適すぎる。

 寧ろ、面倒くさい訓練をしなくて良いので、得をした気分になった。

 

だが…

 

「おまっ…ぷっ。お前!遂に捕まっちまったか!

え?何罪ですか?暴行罪?強要罪?いや、お前なら〜重婚罪とか有り得そうだぜぇ〜」

 

「ふっ世の中そんな甘くないんだぜ!きよぽ〜ん。 

俺のような紳士な男になるんだな!

だっはっはっはっ!」

と、馬鹿面と馬面が煽りに来た。

 牢屋の格子に顔を減り込ませて煽られる。

 正直なところ、マーレよりもこいつらを潰しておくべきだと思う。

 ベットに腰掛けていたが、余りにも腹がたったため立ち上がり牢屋の扉を開ける。

 

「えっ…何で…扉が…?開くのかな??あ、あれ…不味いぞ…顔がぬけねぇ、は、まぁ落ち着けよ、キヨン」

 

「おっと…?お、俺も…落ち着くべきだと思うぞ、キヨポン」

 

 二人とも顔を減り込ませていたため、顔が抜けないようだ。

 

「これはな、形だけなんだ。トイレに行きたい時は自由に行ける。歯を食い縛れよ」

 

「「あぎゃーーー!!」」

 

 二人の尻にタイキックをかましてからトイレに行く。

 泣き声が聞こえてくるが知ったことではない。

 

「ききききききよぽーん!!捕まったってどう言うことですか!?

 私のパンは!?あ、いえ、何か悪いことしたんですか?キヨポンが捕まったら私のパン……じゃなくて、パンが捕まったら、あ、あれ…………取り敢えずパンをください」

 

「ちょっと後ろを向け」

 

「え?あ、はい。

 

あぎゃーーーー!!」

 

 はぁ…全く…ろくな奴がいない。

 

 戻ってきてベットに腰掛ける。

 暇だな…

 あの部屋に居た時は、そんな事を考えたことなんて無かった。命令があるまでは待機。それが基本であった。

 何処か昔に戻った気分だ。

 小一時間ほど一人の時間を過すと、リヴァイ兵長とハンジさんがやってきた。

 

「フッ…似合うな」

 

 聞こえてるからな…ドチビが。

 

「やあ!元気にしてるかな?

 王政側が本物の王家を吐いた。

 いや~なかなか手こずったよ。

 中央憲兵に拷問しても一切吐かなくてね。

 偉そうに踏ん反り返ってた奴らを拷問したらすぐ吐いた。中央憲兵も可哀想だね」

 

「そうですか」

 

「それで…本物の王家はレイス家らしい。

 場所ももう分かっていて、兵も派遣している。

 ま、今日はエルヴィンが居ないから報告だけ。

 それじゃ楽しい時間を過ごしてくれよ」

 

「リヴァイ兵長」

 

 去っていくリヴァイ兵長を呼び止める。

リヴァイ兵長は振り返り立ち止まる。ハンジさんも同じようにこちらを向く。

 

「なんだ?」

 

「リヴァイ兵長の姓って何ですか?」

 

「さあ…知らねぇな」

 

「ケニーと戦ったときに、オレがアッカーマン家

なのか聞かれました。その時に、リヴァイ兵長の息子と勘違いされたのですが…リヴァイ兵長の姓もアッカーマンではないですか?」

 

「アッカーマン…?確かミカサもそうじゃなかったか?」

 

「そうです。アッカーマンと言うのが何なのかは良く分かりませんが、何か特別な家系なのかも知れませんね」

 

「そうかもしれねぇな」

 

 ハンジさんとリヴァイ兵長は去っていく。

 その事で、ミカサと話をしてくれれば良いが。

 それにしても…

 

 レイス家…か。

 

 やはりか。レイス家の生き残りがまだいればいいが、もう既に居なければヒストリアが女王になるな。

 そうなれば、ヒストリアが前線に出ることは今後無くなる。それは有り難いことだ。

 だが、ヒストリアがそれを受け入れてくれるかは別だが。

 

 それは…ヒストリアが決めること…か。

 

 暫く1人で考えを巡らせていると、夕飯の時となった。

 

「キヨポ〜ン。

ご飯を持ってきました!」

 

 オレのご飯をサシャが持ってきてくれた。

 それは良いが…こいつの頬には何が詰まっているのやら。そして、オレのパンが半分になっている理由。問いたださなくても分かるな。

 

「持ってきてくれるのは嬉しいが、パンが半分無くなってるな」

 

「ギクッ!」

 

 急いでパンを飲み込み平然を装うが、喉を詰まらせ咳き込む。

 

「はぁ…」

 

 オレはサシャに水を渡すと一気に飲み干す。

 これをエレンやジャンにされていたら、腹が立っていただろうが、サシャだからか、何も腹が立つことはなかった。

 

「あ、ありがとうございますぅ〜おかげで助かりました」

 

「それより、何で2つ分持ってきたんだ?」

 

「一緒に食べましょうよ!

ご飯は1人で食べるよりも皆で食べるほうが美味しいのですよ!」

 

「……」

 

 全くサシャらしい。

 満面の笑みでそう言われてしまえば何も言えない。

 何とも言えない感情に心を埋め尽くされ、サシャが持ってきてくれた配膳を黙って受け取り、無言で食べ始める。

 一緒に食べると言っても、サシャは食べる時は無言となるため会話はない。

 ただ一緒に居る空間がサシャにとっては良いのだろう。

 その気持ちは最近分かるようになってきた。

 

「ごっちそうさまでしたぁ!」

 

 食べ終わったサシャはバンザイしながら後ろへ倒れベットに寝転がる。

 そんな自由人のお腹はポンポンに膨れ上がっており、優しく撫でてみた。

 

「うぅ〜。エヘヘへキヨポン擽ったいですよ」

 

「そうか、悪い」

 

 そう返したが撫でるのを止めなった。

 サシャが嬉しそうでもあったし、何だか面白かったからだ。

 一度歯磨きやら身体を清めたりするため牢屋を出る。戻ってくると同じようにサシャも戻ってきた。そして、また無言でお腹を撫でる。

 暫くすると、いびきが聞こえてきた。横を見るとサシャは寝ていた。

 全く…どこでも寝られるやつだな。

 オレのベットを陣取られてしまった。仕方ないのでその横でオレも寝る。せっかくベットがあるのに床で寝るのは嫌だし、サシャなら良いだろう。何も起きない。

 

「サシャと何してるの?」

 

 蝋燭の火も消えた暗闇の中から冷たい声が聞こえてくる。それは最早恐怖以外の何物でもなかった。

 

「ヒストリア…」

 

 顔は見えないが声と圧で分かる。

 ギィ〜と言う音とともに牢屋の中へ入ってきた。

 

「何してたの?」

 

「サシャにご飯を持ってきてもらったんだ。

それでサシャがそのまま寝てしまってな」

 

「それで一緒に寝ようとしてたの?」

 

「仕方ないだろ?オレはここから出られないからな」

 

「じゃ私も一緒に寝る」

 

 言うと思った。サシャを連れて行って欲しいところだが、それを言えばまた怒られるだろう。

 

「分かった」

 

 そう言って、オレは一度立ち上がり、ヒストリアを抱きしめベットに寝転がる。 

 急な展開に固まり、耳が赤くなっている。

 この狭いベットに三人で寝るの窮屈だ。

 壁に追いやられたサシャは苦しそうな表情を浮かべている。

 

「ヒストリア。ハンジさんからはもう聞いているか?」

 

「うん。レイス家が本当の王家何だって」

 

「どうしたい?」

 

 率直に聞いてみる。

 

「私が女王になったら、王配になってくれる?」

 

  ん…?んん…??王配…?一瞬理解出来ないでいた。

  いや、女王になればそれが最も大事な仕事か。

 

「いや、それは…無理だ。オレは戦争に行かなければならない。一緒にいられることは少ないだろう」

 

「だったら、私も女王なんかなりたくない」

 

 と、俯き口を尖らせながら拗ねたように言う。

 

「…そうか」

 

「何とかして。これは女王命令よ」

 

 冗談なのか、真剣なのか…

 

「女王にならないのに、女王として命令するのか?」

 

「女王にならなくても本物の王家であることに変わりはない。そう言ったのはキヨンだよ。

何とかしなさい」

 

 覚えていたか…ニッと笑いながら命令をされた。

 

「分かった。だが、死なないように行動してくれよ」

 

「うん!」

 

 そう満面の笑みで頷き、オレを抱きしめる力が強くなった。

 表情がコロコロ変わるな。そんなヒストリアを見ているのは面白い。

 戦争に行けばオレも絶対に生きて帰れる保障はない。それはヒストリアも分かっているのだろう。だが、それを承知の上で一緒に居ることをヒストリアは選んだ。なら、オレはそれを尊重する。

 

 

▽▽▽

 

 

 心臓の音が良く聞こえる。

 人の温もりをこの歳になってようやく知ることが出来た。

 ここから離れたくない。そう思える場所だ。

 

 やっぱり…キヨンが好き。

 

 キヨンは私のことをどう…想って、いる、のだろう…キヨンは…もう、最近…なんかもう、凄いモテてる!

 アニもミーナも他の女子達も…ミカサもなんか、キヨンを見る目が前と違う…でもでもキヨンは私にキ、キキ…スゥしてくれたんだから、他の女に興味なんてないよね…?

 ミカサと寝たと言ったって家族だからだよね…??

 ふと、温もりの場所を離れて仰向けになり、上を見る。すると、横でマヌケな顔をして寝ている女子が目に入った。

 

 サシャ…

 

 サシャはキヨンの家族ではない。なのに、一緒にご飯食べて、当然のように一緒に寝ている。

 それに、サシャは一番キヨンに頼られている。

まっ、駒だけどね!…でも、私にはそんなサシャが羨ましい。

 ……………これでも喰らえ!

 

「んぅ〜〜」

 

 サシャの鼻を摘まんでやったら、苦しそうに顔を顰めていた。私はクスッと笑いキヨンの方を向く。

 

 キヨンは私を守ってくれる。それは素直に嬉しい。

 でも、それだけじゃ何故か駄目な気がする。そう考えると一気に不安になる。キヨンに頼れば頼るほど離れられていきそうで…

 だけど、結局今回もまた頼っちゃった。女王になんてなりたくないし、キヨンとは一緒に居たい。

 それに、他の皆と一緒に居る時間も私にとっては掛け替えのない時間だ。こんな幸せな時間を減らされてなるものか!

 私は私に出来ることをやってキヨンに頼られるようになる。今はまだ、頼ってばかりだけど…そうした方が良いと女の勘が働いた。だから私はまだまだ頑張り続ける。 

 

 もう一度キヨンの胸に顔を埋める。

……

 そうだ…起き上がりキヨンの顔を真正面から見つめる。ゆっくり、近づけ唇を重ねる。

 

「おやすみ。キヨン」

 

 ま、まぁ!おやすみのキスをするのは当然よね。

 横にずれ……そこにはパチクリ目を開いたサシャがこちらを見ていた。サシャと視線が交差し、どちらも微動だにしない。

 

「かっ…か、か、可愛いですね!クリスタは!」

 

サシャにそう言われ、顔が真っ赤になっていくのが分かる。ものすごく熱い。 

 

「今更だな」

 

「ふぇっ!?」

 

 思わず声が漏れる。

 キヨン…!?起きてたの…?

 い、今更!?えへへへへ。

 

「お、起きてたのですか?」

 

「まぁ…な。」

 

 そう言って、キヨンは私の腰に手を回し抱き寄せ、唇を奪われた。

 

「ヒョオ!」

 

 サシャが変な声を出す。

 そして、サシャのおでこにもキスをするキヨン。おでこであろうとそっち要らなくない? 

 

「ヒョエ!?」

 

「おやすみ。二人とも」

 

「お、おやすみ」

 

「お、おやすみなさいぃ…」

 

 ドキドキと心臓が煩い。 

 キヨンの胸に顔を埋め、目を瞑る。

 

「あれ、私何でこんなところで寝てるのでしょうか?」

 

 サシャがまた、何か馬鹿なこと言ってる。

でも、まぁ良いや。今日はこの温もりを堪能しよう。

 

 

▽▽▽

 

 

 目を覚ますと身体のあちこちが痛かった。

 なぜならば、オレは床で寝たからだ。

 サシャの寝相の悪さに端っこにいるオレは床へ押し出される。2、3回目から下で寝ることにした。

 だが、この床は木ではなくレンガでできており、ゴツゴツとしている。そのため、非常に痛い。

 

「あれ…?キヨン……?」

 

 ヒストリアも起きたようだ。

 

「なんだ?」

 

「 えっ、何処に居るの?」

 

「床だ」

 

「な、なんで?」

 

「サシャの寝相の悪さで何度も床に落とされてな、もうベットで寝るのは諦めたんだ」

 

「そ、そっか。それは…何と言うかごめんね」

 

「いや、ヒストリアが謝る必要はない」

 

「まあ取り敢えず、ベットに来てよ。

今はもう死んだように寝てるから大丈夫だよ」

 

「そうさせてもらう」

 

 起き上がりヒストリアの横に寝る。身体の痛さが和らいでいく。ベットとはこんなにも気持ちの良い物だったんだな。また、新たな発見をした。

 オレの肩におでこを当て離れようとしないヒストリアの頭を撫でる。すると、また眠ってしまった。

 暫くするとハンジさんがやってきた。

 

「ちょっと〜ここはそう言う場所じゃないんだけどなぁ〜。

 全く…君たちが初めてだよ。牢屋でお泊りなんて…」

 

「ふげっ!?」

 

「ん…?はっ!?」

 

 二人とも飛び跳ねるように起きた。

 

「おはようございます。何か用ですか?」

 

「ああ…君さ、まぁ〜た我々に何か隠してないか……?」

 

 値踏みするような視線を向けられる。

 大方レイス家のことでだろう。

 王家の誰かがレイス家の生き残りが名前を変えて調査兵団に入ったと口を割ったか。

 オレが答えないでいると、ヒストリアが代わりに答えた。

 

「ハンジさん。それは私のために言わなかっただけです」

 

「君の?君は確か…クリスタだっけ?」

 

「はい…でも、私の本当の…名前はヒストリア・レイスです」

 

「ええっ!?君がレイス家!?」

 

 驚くハンジさん。

 

「で、でも!私は、その…女王になんか、なりたく、なくて…」

 

「あ、ああ…そう言うことか。その事はまた今度話そうか。だが、少しは話を聞かせてくれないか?

レイス家に赴いた兵士が1人も帰ってこないからね」

 

「わ、分かりました」

 

「あの〜私はどうすれば…」

 

 置いてけぼりだったサシャが、恐る恐る手を上げ問う。

 

「お前は何もしなくていい。無関係だ」

 

「では、もう少し寝ましょう」

 

 そう言って横になるサシャだが…

 ヒストリアの無言の圧が飛んでくる。

 

「や、やっぱり私も戻りますぅ〜」

 

 ヒストリアとついでにサシャが、ハンジさん達と共に牢屋を去っていった。先程まで煩かったわけではないが、一人になったことで余計に静かに感じた。

 トイレに行ったり、朝食を食べ歯を磨くなどをして暇な時間を過ごす。

 小さな窓から漏れる光が黄金色となり太陽が沈む頃だと分かった。そんな時に、また人が来る気配を感じた。

 この気配は、複数人だ。エルヴィン団長達か。

 

「やあ。すまない。少し、話をしたくてね」

 

 エルヴィン団長は牢屋の前に椅子を持ってきて座る。

 

「はい。何でしょうか」

 

「私は子供の頃から夢があった」

 

「夢ですか?」

 

「ああ。私は私の父が建てた仮説を証明することが夢だった。

 そして、現在、王政を打倒することに成功し、その夢が叶ったのだよ」

 

 何処か子どものような笑みを浮かべ、そう話すエルヴィン団長。

 

「それで、その夢とは?」

 

「ああ。それは今から107年前、この壁に逃げ込んだ人類は王によって統治しやすいように記憶を改竄された。

これを証明することだった。

そして、今、人類が滅びていないこと。王政の嘘を証明することができた。

まだ記憶を改竄された証明は出来ていないが、殆ど確定的だろう」

 

 記憶を改竄か。そのような事が本当に起こりうるのだろうか。

 オレもその考えに至ったが、あり得ないと考え直ぐにその考えを放棄した。

 だが、それくらい出来なければこの壁の中で人類が生存することなど不可能だろう。

 

「そうですか。それで何故オレにこのような話を?」

 

「さあ…何故だろう…ただの私の勘だ。

話すべきだとそう判断した」

 

 それからは少し雑談と今後を話し合い戻っていった。

 なかなか有益な情報だったな。

 

 

 その日の夕飯は、ミカサが持ってきてくれた。

 ミカサもサシャ同様に一緒に食べるつもりで、わざわざ牢屋の中に入ってきた。

 

「ここで食べなくても良いんだぞ?

食堂には皆がいるだろう」

 

 正直なところ先程のエルヴィン団長の話を整理したい。

 

「……嫌、なの?

サシャは良いくせに…」

 

 まるで子どものように拗ねるミカサ。

 仕方ない。ミカサと雑談しながら、整理していこう。

 

「嫌ではない。ミカサがここで食べたいなら居れば良い。」

 

 多分帰れと言っても、居続けたな…

 返事を聞く前に、ベットに座ってご飯を食べ始めた。

 

「キヨンは…戦争が終わったらどうするの?」

 

「そうだな。色んな場所に行きたいな」

 

「そう…私も行きたい」

 

 オレが行く所に付いてくるつもりだろうか?

 まあ、それは構わないが…

 以前は、エレンへの依存から抜け出せるようにオレにその想いを向けさせたが、今ではオレの方に傾いているのではないだろうか…

 エレンが怒りそうだな。

 一度距離を置くべきだろうか…

 

 いや…違うな。

 

「オレに付いてこなくても良いんだぞ?」

 

 オレがそう言うと、ムスッとし口先を尖らせる。

 

「……やっぱり、私とは居たくないの?」

 

「そうは言っていない。オレとしては戦争が終わってもミカサには横に居てほしいと思う。

ただ、オレ個人の気持ちでお前を縛ってしまわないかと思っただけだ」

 

「……そう」

 

 オレの言葉に頬を赤らめ俯く。

 

「なら……それなら、一緒に居ても良いんでしょ」

 

「ああ。ミカサがそれで良いならな。

オレもそれを願っている」

 

 ご飯を食べ終え身体を清めた後、再び牢屋に戻ってくると、ミカサもまた戻ってきて、ベットに座った。

 今日はヒストリアがハンジさん達に捕まっているため、ここには来ることはないだろう。

 だから、怒られることはないな。

 

「私もお肉食べたい…」

 

「肉か……もしかしてサシャから聞いたのか?」

 

「うん。二日前に」

 

「あーあれは…サシャの馬鹿さを理解するためにしたことなんだが…」

 

「どういうこと?」

 

「サシャに肉をやるから教官室から肉を盗んでこいって命令したんだ。

あいつの馬鹿さは利用できるが、その限度は知っておかなければならないだろう」

 

「それで、サシャは盗んできたの?」

 

「ああ。その肉をサシャに褒美と言って食わせてあげたら感謝されてな… 

結局、あいつの馬鹿さを理解できなかった」

 

「ふっ。サシャらしい。

なら、私も今度サシャにそれをやってみる」

 

 哀れサシャ。 

 お前はまた、飯抜きの日が来るだろうな…

 

 そんな雑談をして時間を潰す。

 そろそろ就寝時間となり、蝋燭の火を消す。

 月の光が小さい窓から入ってくる。その光を頼りにベットに移動する。

 

「じゃ、じゃあそろそろ帰る」

 

 そう言い、ベットから立ち上がろうとしたミカサの腕を掴み止める。

 強めに掴んだことにより、若干バランスを崩した。その隙を見計らい強引にオレの方へ引き寄せる。

 

「え…」

 

 抱きしめ、そのままベットに寝転ぶ。

 ミカサの耳が赤くなっているのが分かる。

 

「一緒に寝たかったんだろう?」

 

「っ…で、でも誰か来るかもしれないから…」

 

「気配で分かるだろう?」

 

「……」

 

「まぁ…ミカサがエレンに対して罪悪感を抱くなら帰ったほうが良いのかも知れないな」

 

 オレがそう言うと、ピクッと肩を震わして少し離れようとした。

 だが、オレはそれを阻止するため抱きしめる力を強める。

 …

 ……

 何も言ってこないミカサの頭を撫でる。

 

「悪い。意地悪を言ったな。」

 

「ううん…」

 

 ミカサの反応からオレとエレンで天秤に掛けてしまっているのが見て取れる。

 今まで決められない。決めたくない。

 そんなことを考えないようにしていたのだろう。

 それをオレが指摘したことで、ミカサの中でこれで良いのかと葛藤し始めたのだろう。

 だが、オレが止めたとは言え、結局ミカサはこの場に居続けた。

 

 それで良い。

 

「明日、早めに帰れば誰にも見つかることはない」

 

「…うん」

 

 優しくミカサの背中を叩く。

 数分でミカサは寝てしまった。

 

 ミーナやヒストリアを始め、皆の成長は順調だ。それはミカサもだ。ミカサがエレンだけを考えずに周りを見ることができるようになったのは良いことだ。

 

 ……だが

 

 これからは、ミカサに対しては成長よりも優先すべきことがある。

 

 この世界には個人で人の力を逸脱した力を持つものがいる。

 エレン達のような力や記憶を改竄する力。

 

 そして、アッカーマン。

 人間の姿で異様な力を誇る一族。

 ケニーはあの老体でオレと渡り合えた。リヴァイ兵長の全力はまだ見たことはないが、相当なものだろう。そして、ミカサの力は昔からよく知っている。

 アッカーマンはこの世界では特別な一族なのかもしれない。

 

 リヴァイ兵長はオレには制御することは不可能だ。

 

 なら……

 

 

 

 ミカサだけでなく、同期はオレにとって大切な仲間であり、戦争が終わった時には、生きていてほしいと思うし、その後も一緒に居られればと思う。

 ヒストリアやエレンにバレれば怒り悲しむだろう。もう今の雰囲気には戻れないかもしれない。

 

 だが、それはそれだ。

 

 エレンには悪いがミカサのオレに対する依存を強めさせてもらう。

 

 ミカサの行動で世界が変わる可能性が少しでもあるのなら、それはもう仕方のないことだろう。

 

 ミカサの消長の手綱はオレが握る。

 

 

▽▽▽

 

 

 目が覚めると、また温かい何かに包まれていた。

 いや…何かではない。もう分かっている。

 

 キヨンに抱きしめられているのだろう。

 前回と違い、落ち着くというよりかは少しドキドキする。

 

 キョンの性格の悪さは、私が一番良くわかってる。だから、キヨンの思うがままにされたりはしない。

 

 ふっ…そうだ。分かってる。

 

 キヨンの思い通りにはさせない。

 

 私が好きなのはエレン。

 キヨンはただの家族。

 

 うん。分かってる。

 

 だから、キヨンがヒストリアやアニと…

 ………

 …

 

 チクッと胸が痛む。それと同時にズキッと頭が痛くなった。

 キヨンの胸に頭を押し付け、痛みを紛らわす。

 キヨンの私を抱きしめる力が強まった。

 そのためか、段々と痛みが和らいでいく。

 

 やめてほしい。

 

 そうやって心地の良い音を聞くたびに、理解させられる。

 考えないようにしても、自然と考えてしまう。

 

 分かってる…

 このチクッとする胸の痛みをもう理解している。

 認めたくない。

 

 けど…

 

 私はキヨンが好き。

 

 でも、エレンも同時に好きだ。

 

 はあ…最低だ、私。

 

 ねぇ…キヨン。

 私はどうすれば良いの?

 

 キヨンの口端を指で上に上げてみる。

 ふっ…キヨンの笑った顔。怖い…

 

 寝てるときならキヨンを思い通りに動かせるのに……

 結局、キヨンの思い通りにされている。

 

 気に入らない………けど、もう良い。

 

 好きだから…

 

 そんなことを思いながら、キヨンの顔で遊ぶ。

 

「何してるんだ?」

 

 ちっ…キヨンがもう起きてしまった。

 思い通りに動かせる時間は終わり。

 

「何も…ただの仕返し」

 

「そうか。もうそろそろ帰ったほうが良いな」

 

「う…うん。じゃあ帰る」

 

 でも、ここから出たくない。

 こんなに温かい場所、一人で寝るときは味わえないから…

 そう思い、ベットから出ないでいるとキヨンは察してくれたのか、優しく抱き寄せてくれた。

 …温かい。

 そして、そのまま持ち上げられ歩くキヨン。 

 お姫様抱っこというものを初めて経験し、少しドキッとした。

 ん…?でも何処へ…

 私は牢屋の外に出され、キヨンは牢屋の中に戻っていった。

 ……

 …

 ムカッ

 そう…そんなにも人に見られたくないってこと…?

 やっぱり、キヨンなんて嫌い…もう嫌い。

 でも…次はいつ寝れるのかな…

 結局…キヨンに感情を揺さぶられてばかりだ。

 

 




良いお年を
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