進撃する綾小路   作:もと将軍

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宜しくです!

今、ちょい詰まってしまって、1話から読み直すついでに編集してます。もうちょいしたら、変わってるはずです。


奪還を目前に

 

 二か月後。

 調査兵団はウォール・マリア奪還のため、日々厳しい訓練に取り組んでいた。

 と言うのは、嘘である。

 まあ、忙しいが厳しくもなく、キツイ労働というほどでもない。

 地下街からヒストリアが子供を掻っ攫ってきて、牧場に放り込み、牛の面倒を子供に見させている。

 それとウォール・マリア奪還の作戦会議が、調査兵団の最近の仕事だ。

 

 口が悪いのは、あの独裁の女王様により、扱き使われているからだろう。

 ヒストリアが子供達と追いかけっこをしているため、今はこちらを見ていない。

 それを良いことにオレ達は小休憩を取ることにした。

 頑張れ子供達、願わくば一生捕まらないでくれ、と心の中で子供達を応援する。

 

「何か…」

 

「うん」

 

「思ってた女王と違うなぁ…」

 

 ジャンがそう言ってアルミンが同意する。

 オレもそれには同意だ。

 

「王冠を被ったのが2か月前か…今じゃ孤児院の委員長の方が板についてきている」

 

「実質この壁を統治してるのは、兵団だから…お飾りの王政は隠しようがないんだけど…ヒストリアが港で何て言われているか知ってる?」

 

「牛飼いの女神様だろ」

 

 オレも聞いたことはあったため、そう答えた。

 

「うん。親しみを込めてね」

 

「そりゃそうだ。民衆に襲いかかる巨人を葬った英雄がこれだけ慎ましく健気だときてる。いよいよ神様になっちまいやがったな…これじゃトロスト区を塞いだ奴のことなんて誰も覚えてねぇよ!オイ」

 

 ジャンがオレの横にいるエレンを煽るように言った。

 

「そう言えば、そんなこともあったな」

 

 オレはシンプルに忘れていた。

 もう過ぎ去ったことだ。

 

「おまっ…そりゃ可哀想だぜ!せめて俺達くれーわ!こいつの少ない功績を覚えておいてやらないとな!」

 

「おまえ…オレに何か恨みでもあんのか…?え?キヨン…」

 

「そうだな…いつも無鉄砲な馬鹿だからな…世話が焼ける」

 

「そーーーれは…悪いと思ってるが…………お前は…あ~何だ、その~あ~」

 

 エレンはオレの悪いことを探したが特に思い浮かばなかったようだ。

 

「何だ?お前に世話を掛けたことはないだろう」

 

「い~や、あるぞ!オレのお陰でお前はリヴァイ兵長達に悪く思われなかっただろう?」

 

「あれはペトラさんが否定していた気がするが?」

 

「そんなことねえよ!あれはだな…ペトラさんの記憶力が悪いだけで…」

 

「誰が記憶力が衰えたおばさんですって?」

 

 この場にいる四人とも、肩をビクッと震わせる。

 後ろからとてつもない威圧感を出して、声を掛けて来たのはペトラさんだった。

 

「お久しぶりですね。ペトラさん」

 

 鬼の形相をしていたペトラさんはオレを向くと途端に笑顔になり「そうだね!任務じゃなかなか会わなかったしね!」と言って、再び鬼の形相に戻りエレンを睨む。

 

「い、いや…おばさんなんて…」

 

 明らかにエレンはおばさんなんて言ってなかったが、全てはエレンの責任だろう。

 

「エレンはそういう時期でして、いろんな人をおばさん呼びするんですよ」

 

「はぁ⁉誰がそんなこと…ヒッ」

 

「そう…へぇ~一度任務で失態を見せたからって、よくも言ってくれたわね…エレン…」

 

 これ以上ここに居るのは不味い。

 そう感じたオレとジャン、アルミンは静かにここを離れる。

 エレンは今から特別実習だ。

 後ろから、聞こえてはいけない打撃音や悲鳴が耳に届いたが、気にしない気にしない。

 気にしなければ、平和でいられる。

 

 荷物を運んでいると子供たちがオレ達に群がって来た。

 

「しっふぁし…地下街の子達もよくわぁらうようになったものぁな~」

 

「そうだな…元気がありふぅぎぃる」

 

「いいふぁらいだよ」

 

 顔を引っ張られて思うように話せない。

 前からヒストリアが子供達を追いかけてくる。

 

「ふふっキヨンも随分と表情豊かになったね」

 

「これを見てそう思うふぁ?」

 

「思うよ」

 

「そ、そうか…それより、ふぉら、後ろでサボっているやつがいるぞ」

 

「はぁ~~まったく…エレンは」

 

 後ろで倒れ…寝ているエレンを指差す。

 ズンズンと歩いていくヒストリアを見送り、今日のノルマを達成したオレは、一人で食堂に向かった。

 

「なんだ、一人か?」

 

 一人で黙々と食べているユミルの席に食膳を置きユミルの前に座る。

 

「私はいつもこんなだろ?愛しのヒストリアがいねぇしな」

 

「ヒストリアは、あの時から常に成長し続けているな」

 

 オレがそう言うと、ユミルは食べるのを止めて言う。

 

「……何が言いてぇんだ?」

 

「お前も進まないと…と思ってな」

 

「余計なお世話だ」

 

「何が引っ掛かってるんだ?」

 

 再びオレが口を開くと、ユミルは頭を掻き、スプーンをこちらに向け言う。

 

「お前はあれか?エスパーってやつなのか?」

 

 残念ながらオレは普通の人間だ。

 

「そんな訳がないだろう。お前の雰囲気だ」

 

 勿論、雰囲気だけで判断したわけでは無いが。

 

「…はぁ……」

 

 長い溜息をついた後、俯きながら話し出す。

 

「…私はこれで良いのかと思ってな」

 

「何がだ?」

 

「私は…60年間巨人だった」

 

 秘密を告白するように言ったが、それは全員知っている。

 

「知ってるぞ」

 

「60年ずっとだ…!ずっと悪夢を見ているようだった」

 

 それも前に聞いたな。

 

「そうか」

 

「そっけねえな…可哀想だとか思わねぇのか?」

 

 同情を求めるように聞いてくるが、一ミリも同情の心が湧かない。

 

「巨人になったことはないし、それほど長くも生きていない。同情なんて出来ないからな」

 

「そうかよ…まぁ…それを開放してくれたのはライナーの仲間だ。

 敵だが…私はそいつらに感謝してんだよ。

 あんな綺麗な夜空を見たことはねぇ…こんな奴らと馬鹿したこともねえ!十分楽しんだんだ…笑いたきゃ笑えばいい」

 

 段々と声が大になっていく。そんな自分とオレの差に気付き、最後は顔を背けながらに言った。

 

「どこに笑う要素がある。それで続きは?」

 

「……私は…まあ、あいつらに恩を返さないとと思ってな…」

 

「ライナー達の味方になると?

 だとするなら、それは愚かな行為だと思うがな。

 マーレで待ち受けているのは『死』だけだろう」

 

「分かってんだよ!そんなこと…だがな「いいや、分かっていない」」

 

 声を荒げるユミルを制止させるように、被せて声を張った。少しの沈黙のあと、オレは続ける。

 

「恩を返したとしてどうなる?

 お前の巨人を継承した奴はすぐにこの島を目指して侵略してくるだろうな。そしてすぐに死ぬ」

 

「だからなんだよ」

 

 その先の事は、そいつら次第だとユミルは言いたいのだろう。

 

「お前はただ自分が満足したいだけだろう。

 だが…お前の巨人を食った戦士はどう思うだろうな。

 そいつは死ぬことはなかったかもしれない。だが、お前が来たことにより巨人にさせられて特攻し、すぐに死ぬ。

 これほど滑稽なことはない。そいつの人生は悲劇だな。オレから見たら喜劇的で笑劇的だが」

 

 最後に最近会得した笑みを作りながら言った。

 

「……」

 

 コップを握る手が更に強くなる。

 それを一瞥してから、オレは続ける。

 

「例え、お前がマーレで生かされ、戦士となったとしよう。

 マーレが今どこと戦っていると思う…「もう…いい」…この島、パラディ島だぞ?

 お前はオレ達と戦うのか?…「もういいって言ってん…」…その中にはお前が愛して止まないヒストリアもいる。

 今やあいつはこの壁の王だからな。

 殺せば幾万の富と名声が貰える。

 だが…お前に殺せるのか?」

 

「っ…」

 

 一向に止まる気配のないオレに対して、立ち上がり拳を振りかざす。

 オレは片手で止め、話を続ける。

 

「お前があいつらの元へ行って良かったと思う奴は、一人もいない。最初はライナーやベルトルトには感謝されるかもしれないが…すぐに地獄を見ることになる。

 分かっただろ?お前の考えている行動は誰の為にもならない。

 ただ全ての人間を不幸にするだけだ」

 

「……だったら…私はどうすれば」

 

「不満を抱いているのは何もお前だけではない。

 まあ。お前のような長年の苦痛から解放された喜びをオレは知らない。だから、当然お前が恩返ししたいという気持ちもオレには分からない。

 だが、そうやって悩むことができるのは…人間らしいんじゃないか?」

 

「は?人間らしい?」

 

「ああ。お前の長年の苦痛から解放された想いも、恩を返そうとしていた行為も全て巨人という特別な力があるからだろう?」

 

「……」

 

「お前は人間だろうユミル」

 

 ユミルの目を見て話す。

 ユミルは豆鉄砲でも喰らったかのように、一瞬驚いた表情を見せた。

 

「何も精神までも化け物になる必要はない。

 そうやって不満を抱き、思い通りに行かないことに苛立つ。

 それこそが人間だ。

 借り物の力に頼ろうとするな。

 どうしようもない不満があるなら、誰でも良い…相談しろ」

 

「人間か…」

 

 ユミルは落ち着いたのか席に座った。

 

「そうだ。お前もだぞ、アニ」

 

 オレは後ろで聞き耳を立てているアニに言う。

 

「あ、あんた…気付いていたの…?」

 

「当たり前だ」

 

「ふん…精神が化け物みてぇなキヨンに言われてもな、説得力に欠けるがな…」

 

「何を言う…オレは最も一般的な心を身に着けた…「アニもこっちにこいよ」「わかった…」「ホントにこいつは、レディへの言葉遣いがなってねぇんだよ」「キヨンだからね」…聞けよ」

 

 オレは空気になったのだろうか…オレを無視して会話が始まっていた。

 だが、まあユミルが向こうに行かなくて安心した。

 

「つっかれたぁ~あっ早いな三人とも…」

 

「マルコか…お疲れ」

 

「……それは君のほうだ。何があったんだ?」

 

「こいつらに化け物呼びをされてな」

 

「「本当の事だから…ね(な)」」

 

 マルコに同意を求めるような意見を言うのはやめて欲しい。

 

「そ…そうだ…な。

 あ、そう言えば聞いたか?調査兵団に憲兵団や駐屯兵団から編入してくるんだって」

 

「そうなのか?」

 

「なになに?調査兵団が増えるの?」

 

「あぁミーナ。お疲れ」

 

 マルコとミーナを交えて5人で話をすることになった。

 

「そうなんだ。ウォール・マリア奪還目前!集まれ!!っていう張り紙を見たよ」

 

「住民も皆がそれを望んでいて、最近の調査兵団はかなり活気に溢れてるだろ?だから大量に入ってくるって噂だよ」

 

「へ~っていうか…まだ調査兵団って人数多くなかったか?」

 

「うん…でもやっぱり減ってはいるよ?」

 

「確か…総員240名だったか?」

 

「いや、220だったはずだ」

 

 曖昧な表現になるのは仕方ないだろう。巨大樹の森の管理や中央憲兵の生き残りを探すために兵を派遣したりしており、大部隊で行動することは少ないからだ。

 それでもかなり多い。

 

「そんなに居ても必要かねぇ~実戦経験のないあいつらじゃ何も役に立たないだろう…なぁ?キヨン」

 

「オレに聞かれてもな…」

 

「お前なら使い方はもう頭に浮かんでんだろ?」

 

「……そうでもない。だがまあ…捨て駒程度にしか今は思いつかないな…それ以外は邪魔されそうで任務に支障をきたしそうだ」

 

「キヨンらしいな、まさに化け物だ」

 

「いや、悪魔でしょ」

 

「傀儡子のほうが合いそう」

 

「はは、僕もそう思う」

 

「今はって言ったのが聞こえなかったのか?」

 

「キヨンのことは一先ず置いといて」

 

 ミーナが話を進める。都合のいい耳をしているよな…こいつら。

 

「私たちが引っ張って行かないとダメってことだよね?」

 

「そうなるね」

 

「ってことは…もしかしたら班は別になるってこと?」

 

「そうかも…」

 

「それはない」

 

「「「「どうして??」」」」

 

「エルヴィン団長がオレに無い考えを持っているなら別だが、オレと同じようにただ数が欲しいと思っているだけなら、捨て駒に使うんだろう」

 

「え?エルヴィン団長が…?」

 

「あの人はウォール・マリア奪還のためならなんだって出来る人だ。用のない無駄死にはさせないだろうが…相手の戦力分析のための駒なら使いがっては良い」

 

「う……うむ」

 

「だから、今まで通り班は同じだろうな」

 

「それは良かったぜ…」

 

「ふぅ…」

 

 一安心したのか、食事を再開する。

 

 

 中央憲兵との一件が終わって行こう大きく変わったことがある。

 中央憲兵団が秘匿してきた技術は、今回の一件で世に広まった。

 電気の様なエネルギーを使用した技術は民の生活を助けた。このエネルギーはオレも知らなかった。

 そして、ヒストリアとリヴァイ兵長の力により、地下街の孤児も支援により子供たちが太陽の下で暮らせるようになった。まあ…その計画にオレもかなり手伝わされたわけだが…。

 

 エレンとアニの硬質化により、トロスト区にて対巨人用に兵器が開発された。

 これにより、なんのリスクもなく壁に近付く巨人を殺すことが出来た。

 

 まあ、変わった点と言えば…それくらいだ。

 

 

 

 今日も一日の仕事が終わり、オレは寝室に向かった。

 『ガチャ』と扉が開きオレの部屋に入ってきたのはヒストリア。

 色々と突っ込みたいところはある。

 女王がなぜ、兵士の宿にいるんだ。

 一日早ければ、ミカサと寝てたことがバレていたな…

 だが、様子がおかしかったため、とりあえず何をしにきたのか聞くことにした。

 

「どうした?」

 

 オレは灯かりをつける。

 そこに立っていたヒストリアは、顔に青あざを作っていた。

 

「本当にどうしたんだ?」

 

「ユミルと喧嘩した」

 

「ユミルと…?」

 

 ユミルと言われ理解した。オレがユミルに皆に相談しろと言ったからか…

 それで、ヒストリアと話して言い合いになった。

 それにしても…女王の顔をよく殴れたな、あいつ…

 

「そうか…ユミルはなんて言ってたんだ?」

 

「取り合えず…ここに居るって」

 

「それは良かったな」

 

「うん」

 

 オレはヒストリアを抱きしめベットに横たわる。

 

「ユミルが泣いてたよ」

 

「お前に殴られてか?」

 

「キヨンに人間って言われて」

 

 そう言ってオレを抱きしめる力が強くなる。

 

「そうか」

 

「キヨン…いろんな人に好かれるよね。お昼も先輩と話してたよね」

 

「話してただけだぞ」

 

「それが問題なんだよ」

 

 これは冗談だとオレも分かっている。だから突っ込まず、ヒストリアの頭を撫で続けた。

 暫くすると、かわいらしい寝息が聞こえてきたため撫でるのをやめオレも目を閉じる。

 

 

 

とある休日。

 

「よしサシャ。肉をやるから教官室から肉を盗んで来い」

 

 オレはいつものようにサシャに命令する。

 

「ほ、ほほほ本当ですか!?嘘じゃないですよね!?」

 

「お前には一度も嘘を吐いたことは無いだろう?」

 

「確かに…!!」

 

 オレのどこを見れば、そんなに信用できるのだろうか。だが、サシャの分析は完了した。こいつの脳のサイズはダチョウの脳みそ程度しかない。

 

「頼んだぞ」

 

「はい!!」

 

 元気よく駆け出していくサシャ。今日も平和である。

 日が沈み、オレ達は森の中へ入っていく。

 

「いやぁ~ほんとキヨンは優しいですね。ぐへへへへ」

 

 この頼みは何回もしたことがある。

 だが、教官はいつも保存場所を変えない。教官もなんだかんだサシャを気に入っているのかも知れない。

 その後、満腹とまではいかないが、肉を二人で食べた。

 翌日、サシャはまた教官に怒られたらしい。

 あれほど、凹んでいた教官が…。

 なるほど。教官は教官で前を向き始めている。

 

 

 

 ウォール・マリア奪還前夜、オレ達全兵は食堂に集まらされた。

 

「今日は特別な夜だがくれぐれも民間人には悟られないようにしてくれよ。兵士ならば騒ぎすぎぬよう英気を養って見せろ」

 

 サシャとオレは最近食べたばかりだ。だから、肉を見たからと言ってサシャも騒ぎ立ては…

 

「え…?なに?これ…肉?」コニーが言った。

 

「マジかや…うぉおおおおおおおおおお!!」ダメだった。サシャは発狂し肉に齧り付きやがった。

 

 この肉の量は確かに多いからな…

 

「「「「「「うおおおおおおおおお」」」」」」」

 

 皆も叫んだ。

 

「てめぇふざけんじゃねぇぞ芋女!!」

 

「んーんー」

 

「自分がなにしているのかわかってんのか⁉」

 

「やめてくれサシャ…俺…お前を殺したくねぇんだ…」

 

 コニーはサシャの首を絞め落そうとしている。

 だが、サシャは意識がないにも関わらず肉に齧り付いている。

 

「一人で全部食う奴があるか!!」

 

 ジャンがサシャから肉を奪取するが、サシャはジャンの手に齧り付いた。

 

「ああああああ食ってる食ってる食ってる」

 

「サシャ⁉その肉はジャンだ!!分かんなくなっちまったか⁉」

 

「調査兵団は肉も食えなかったのか…?不憫だな」

 

 肉を齧りながら言ったのは……誰だこいつは。

 妙に腹立たしい顔をしやがって…。

 

『バキッ』サシャが気を失いながらもおかっぱを殴った。

 なんだかよく分からないが、よくやったサシャ。

 

 全員でサシャを柱に縛り付け放置する。 

 これで落ち着いて飯が食える。

 

「だからお前はまだ何の経験もねぇんだから後衛だって言ってんだろ?」

 

 ジャンがおかっぱに言う。どうやらこのおかっぱはマルロと言うらしい。

 

「確かに俺はまだ弱いが…だからこそ全線で敵の出方を探るにはうってつけじゃないか?」

 

 何やら、自己犠牲を真剣に語り合っているが…これから死に行く奴の話など何の興味もない。

 オレは肉を持って席を離れる。

 

「んーーんーー」

 

 足をバタつかせてこちらに訴えるように叫んでいるのはサシャ。

 丁度いいな。

 

「ぷっはぁ…ありがとうございます。なんで私がこんなことに…キヨポン、お肉をいただけませんか?」

 

 口だけ解放してやるとサシャは肉を寄越せと言い、口を大きく開いた。

 ここに肉を入れろということだろうか…。

 相変わらずのアホ面でバカ面だ。

 

「仕方ないな…ほら」

 

 オレがサシャの口に肉を運んでやると、勢いよく口を閉める。

 『カン』という音が響く。

 サシャはえ?なぜ?という顔をしてこちらを凝視する。

 

「キ…キヨポン??」

 

 オレは肉を自分の口に持ってきて、漫画のように噛み、引きちぎる。

 それを何度か繰り返すと…

 

「あーーあーー!!!?」

 

「何だ?言葉で言わないと伝わらないぞ?」

 

 そう言ってまた肉を口へ持っていく。

 

「キキキキキキヨポン!あの…肉をください!」

 

「最近…お前を使う事が減って来ているんだ」

 

「え…?」

 

 この世の終わりみたいな顔をしている。

 

「だから、オレもお前に何か良いことをしてあげる必要はないと思ってな」

 

「そっそそそんなことはないでしょう⁉私はまだまだ使えますよ!!!」

 

「ほぅ…使えるか」

 

「当たり前でしょう?ね、ねぇキヨポン??」

 

「さあ、オレに言われてもな」

 

 と、また一口齧る。

 おっと最後の一口になってしまった。

 

「キヨポン⁉くだっさい!肉肉ー!」

 

「これを食べたらオレの言うとおりに動くか?」

 

「もっちろんですよ!」

 

 何度も何度も高速で首を縦に振る。

 

「厳しいことだが、お前にやれるか?」

 

「はい!」

 

「返事が小さい気がするが…」

 

「はい!!!」

 

「まだ小さいな…」

 

「はいい!!!!」

 

「よしならこれを食べたら…」

 

「はいい!!!!」

 

 まだ言い終わってもいないのに返事をするサシャ。

 

「教官を連れ出して来い」

 

 オレは肉をサシャの口元に持っていく。

 

「はいい!!!!」

 

 返事をしながら食べるサシャ。

 相変わらず、美味しそうに食べるな…オレももう一度肉を取に行こう。

 サシャは食べ終え、落ち着きを取り戻してから気付く。

 

「え…きょうかん…??共犯…?きょう、はん…今日の飯…今日のご飯ですか…??」

 

 必死に現実を受け止めないようにするサシャにオレは現実を突きつける。

 

「教官な」

 

「ど、どうしてですか…⁉」

 

「それはお前が知らなくていいことだ」

 

「ま、ままままってくださーーーい!!!!」

 

 サシャの叫びはこの騒がしい食堂の小さな叫びとして消えて行った。

 オレは肉を取ってから夜風を当たるべく外に出ていた。

 暫くして、エレンはアルミンの肩を借りて腹を抑えながら歩いてくる。そこにはミカサもいる。

 

「おうぅ…キヨンもきてたのか」

 

「ああ」

 

「いててて…」

 

「お前はケガをしてもすぐに治るだろ?」

 

 何があったのかは知らないが、そう言っておく。

 

「ひでぇな…」

 

「ウォール・マリアを取り戻して…襲ってくる敵を全部倒したら…また戻れるの?あの時に」

 

 ミカサが言った。

 

「戻すんだよ。でも…もう全部は返ってこねぇ…ツケを払ってもらわねぇとな」

 

「…そう」

 

「それだけじゃないよ…」

 

 アルミンが目を輝かせながら続きを言う。

 

「海だ。商人が一生かけても取りつくせないほどの巨大な塩がある!壁の外にあるのは巨人だけじゃないよ。炎の水、氷の大地、砂の雪原、それを見に行くために調査兵団に入ったんだから」

 

「あ…あぁ。そう…だったな」

 

「キヨン…あなたはどう思ってるの?戻れる…よね」

 

 今度はオレに聞いてくる。

 

「戻れないし、戻る気はない」

 

「どう…して」

 

「オレは進まないと…奪還して終わりじゃない」

 

「キヨンは変わらねぇな。なんでそう強く生きられるんだ?」

 

「この鬱陶しい壁、どこにもいけない不自由さ。

 なんと言い表せばいいだろうか…気持ち悪い…か。

 分からない。

 まだ、はっきりとしないが…その感情がある限りオレは止まらない」

 

 オレもこの感情を何と言い表せば良いのかが分からない。

 

「そうか…」

 

「まずは海を見に行こうよ!」

 

 アルミンが叫び立ち上がる。こいつは聡明でありながらも子供のように無邪気な目をする。

 羨ましいとオレは思う。

 きっと後ろで聞いているリヴァイ兵長もそう思っているだろう。

 

 皆が就寝したころ、オレは外に出て行く。

 

「行くか」

 

「うん」

 

「本当に良いんだな?明日に支障をきたさないか?」

 

「巨大樹の森で一日泊まるからね、大丈夫だよ」

 

「そうか」

 

 オレ達は馬を走らせる。

 寒いな。

 風が痛いと感じる。

 それでも30分ほど走らせ、目的地に着いた。

 

「結局ここに落ち着くんだよね」

 

「だな」

 

 草木をかき分け、森の中に入っていく。

 

「ふぅ…」

 

 息を吐く。寒くても白い息にならないのは空気が澄んでいるからか。

 切り株に腰を下ろす。

 

「叫ばなくて良いのか?」

 

「別にストレスは溜まってないし」

 

「そうか。なら聞こう…ライナー達と戦えるか?」

 

「あんたさ…つくづく思うよ…性格、ほんっと…悪いね」

 

「今更か?」

 

「はあ……前線に私とユミルを置いといて聞く?…やめてほしいよ。戦えるかって?戦うしかないでしょ…」

 

 ユミルやアニがライナー達と戦うとなれば、躊躇する可能性があることを理解しながらも、前線に二人を置いた。

 こいつらが死ぬことは、殆どないだろう。目が取れようが、内臓が飛び出ようが修復する。それはエレンの実験を通して知っている。

 寸前で躊躇するなら、纏めて新武器を放つまで。

 戦闘不能になるかもしれないが、時間が立てば治るからな。

 

「それは悪いな」

 

「いいよ…そんな気持ちの籠っていない謝罪は…」

 

「……」

 

「あんたこそ…私たちが裏切るとは考えなかったの?」

 

「思わないな」

 

「どうして…」

 

「アニの性格からして…自分だけがずっと戦いから顔を背けることは出来ない。

 なら、どちらを選ぶかだ。

 アニの絶対の目標である父に会うことだって…アニ次第だって分かってるんだろう?

 オレは敵となったら容赦はしないからな。アニの父が居なければ全ての人を滅ぼしてるかもしれない」

 

 エルディア人関係なく。壁の外の人間は全て敵として。

 アニは少し顔を引き攣った。

 

「そして、アニ自身がここに居ることを悪いと思っていない。」

 

 これは確かなことだろう。

 アニはうんと頷く。

 

「あとは…お前がオレのことを異性として好感を持っているからだ。 

 これが結構決め手となったんじゃないか?あのトロスト区の時だってそうだったしな」

 

 アニは顔を赤くしてこちらを睨み、恥ずかしそうに言う。

 

「それをあんたが言うな…!」

 

「悪い」

 

「謝らないでよ…!」

 

 そう言われ、オレは黙った。

 

「確かにそれは否定しない。あんたのこと好きな子は結構多いからね…もう隠す気はないし。でも覚えておきなよ、女の子は結構飽き性だから」

 

「それは肝に銘じとく」

 

「まあ…ほんっとその通りだよ。だから私は裏切らない。

 ヒストリアやユミル、ミーナ…皆の成長を見て私も何かやらないとってなってるし…今更裏切るなんてことはしない。

 相手がライナーやベルトルトだろうと…容赦しない」

 

「だろうな」

 

「分かってるくせに聞く理由は?」

 

「なんとなくだ」

 

 それは当然、その意識を強めさせるため。

 言わば責任感だ。

 当事者意識を高めることで責任感は強まる。

 私はこうだとしっかりと理解させておく。

 

「はあ…あと何回ここにくるだろうね」

 

 適当に返したオレに呆れたのか、溜息を吐き、話を変えた。

 

「さあな。来たい時にこればいい」

 

「うん」

 

 会話はそれ以上なく、オレもアニも湖の方を向く。

 

 この冬の終わりの季節。

 夜。月の光に照らされた湖、その色は青色。

 反射した青色の光はアニの目を神秘的に見せていた。

 

 いつかオレもこのような光を自分自身で感じ取りたいものだ。

 

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