進撃する綾小路   作:もと将軍

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迷える子羊

翌年

 

「貴様は何者だ⁉」

 

と、教官の声が響く

声を掛けられたものは、右手の拳を握り締め、心臓にあてる。

そして、声を大にする

 

「ハッ!!トロスト区出身、トーマス・ワグナーです!!」

 

「声が小さい!!」

 

それでも小さいのかよ…

オレには無理だな…

 

「ハッ!!!トロスト区出身!!!トーマス・ワグナーです!!!」

 

もっと大きな声になるが、

 

「聞こえん!!!練習してこい!!」

 

まじかよ…

オレたちは訓令兵になり、今日は入団式?のようなものをしている。

だが、オレやエレンなどは何もしなかった。通過儀礼だろうか。

2年前の地獄を見てきたものには必要ないみたいだ。

続いて、5列目

 

「コニー・スプリンガー!!ウォール・ローゼ、南区ラガコ村出身です!」

 

馬鹿が現れた…全員が右手でやっていただろう…左手で右胸を押さえる

 

「逆だ!コニー・スプリンガー!最初に教えたはずだ!この敬礼は、公に心臓を捧げる決意を示すものだと…貴様の心臓は右にあるのか…コニー?」

 

と、顔を掴まれ持ち上げられている

だが…そこへ、本物の馬鹿が登場した

 

「サクッ」

 

なんと、この場で芋を食い始めた

 

「おい…貴様、何をやっている?」

 

それが誰に言っているのか理解できていなかったのだろう。周りをキョロキョロしながら芋を食い続ける

さすがの教官も動揺を隠せていない

 

「貴様だ!貴様に言っているんだ!何者なんだ貴様は!」

 

「ウォール・ローゼ南区、ダーパー村出身!サシャ・ブラウスです!」

 

と、芋を飲み込みながら、名乗った

 

「貴様が右手に持っているのはなんだ?」

 

「ふかした芋です!調理場に頃合いのものがあったので…つい!」

 

盗んだのかよ…

 

「盗んだのか…なぜだ…なぜ今芋を食べた?」

 

「冷めてしまっては、もともこないので…」

 

「分からないな…なぜ貴様は芋を食べた?」

 

「それは…何故人は芋を食べるのかと言う話でしょうか?」

 

周りが唖然としている。教官も同じだ

芋女は、なにかまずいと思ったのか「あっ」と言い

芋を三分の一ほどちぎり、舌打ちをしながら教官に渡す。

 

「半分どうぞ…」

 

「はん…ぶん⁇」

 

「死ぬまで走れ」

 

芋女は、今にも泣きそうになったが…

 

「あと、飯抜きだ」

 

と、言われさっきより悲壮な顔をした

 

そんなこんなで入団式は終わった。オレは立ってただけだ

 

 

みんなでご飯を食べていた

 

「だから…見たことあるって」

 

エレンはみんなから質問を受けていた

 

「超大型巨人は?」

 

「鎧の巨人は?」

 

「なら、普通の巨人は?」

 

と聞かれ、カルラを食べられたことを思い出したのか、食べる手が止まった

 

「みんな!もう質問はよそう…思いだいしたくないこともあるだろ」

 

「いや!違うぞ!巨人なんて実際たいしたことねぇ!オレたちが立体起動装置を使いこなせたらたいしたことねぇ。

オレは調査兵団に入って巨人を駆逐する!」

 

エレンはそう息巻いていた

 

「おいおいおい、正気か?お前、調査兵団に入るって言ったのか?」

 

と、割り込んで来たのはジャンと言う男だ

 

「そう言うお前は憲兵団に入りたいって言っていたか」

 

「オレは心底おびえながらも勇敢気取っているヤツよりかはよっぽど、爽やかだと思うがな」

 

エレンは、一瞬腹を立てたがすぐに深呼吸をし冷静になる

オレたちの修業でまず、冷静に判断できるようにと訓練したことがさっそく活きたな

 

「まぁそこはなんとでも言ってくれ。オレはオレのやるべきことをやるだけだ」

 

「おぉ~クールだ」

 

なんて、周りから言われている

 

[[カンカンカン]]

 

就寝の時間だ。

 

「まぁ悪かったよ、別にあんたの考えを否定したい訳ではないんだ」

 

そう言って、固い握手をし和解してその場は解散した

 

その後、ジャンの前を歩くミカサにジャンは見惚れてミカサの後を追った

が、そこでエレンとミカサが仲良く話しているところを目撃してしまったジャンは、近くを通ったジャガイモ頭のコニーの服にさっき握手した右手を拭った。

 

「なに、拭ったんだ!お前!」

 

「人との信頼だ」

 

ジャンは絶望した顔でそう言った

 

その後、オレは未だ走り続けているサシャを見ていた。あの馬鹿は案外使えそうだど思考を巡らせる。

考え事をしていたら、サシャが帰ってきて地面に倒れた。そこへ、美少女がパンを持って近づいて行った。直後、パンの香りに気づいたサシャは美少女のパンを奪い取った。

まるで、猛獣だな。

 

「これは…パン!!」

 

「それだけしかないけど…とっておいたの…でも…まず先に水を飲まないと」

 

「ハッ…神様ですか⁉」

 

「え…ちょっ…」

 

「かぁぁぁぁぁあああみぃぃぃぃぃいいいい!!!!!!!!」

 

サシャは美少女に抱き着き発狂していた。

 

「おい…何やってんだ、お前ら」

 

今度はあまり可愛くない女が来た。サシャは近づいてきた女にパンを取られるのかと思ったのか、パンを急いでたいらげ、眠ってしまった。

 

「えっと…この子はずっと走りっぱなしで…」

 

と、美少女はそう返すが、なんだろうかこの子は前世の櫛田のように善人ぶっている気がする…もっともあそこまで性格が悪く見えないが…

 

「お前、いいことしようとしているだろう?それは、芋女のためにやったのか?お前の得たものはその労力に見合ったか?」

 

「…」

 

「まぁ…いい」

 

「とりあえず、こいつをベットまで運ぶぞ」

 

「あなたもいいことをするの?」

 

「こいつに貸しを作って恩に着せるためだ…こいつの馬鹿さには期待できる」

 

そこで、オレも出ていくことにして

 

「気が合うな、オレも手伝おう」

 

「あ?なんだお前」

 

「オレはキヨンと言う。

オレもこいつの馬鹿さは利用できると考えていた」

 

「ほう、なら手伝え

私は、ユミルだ」

 

「よろしく頼む、そっちは?」

 

「私はクリスタ…よろしく…」

 

そして、サシャをベットまで運んだ。その間、クリスタとも話していたがやっぱり自分を偽っている気がした。

 

翌日

「まずは、貴様らの適正を見る。これができん奴は囮にも使えん!開拓地に移ってもらう」

 

訓練場に教官の声が響き渡る

ここで、立体起動装置を扱うためのバランス感覚を養う訓練をする。しかし、こんな簡単なことに訓練が必要と思えなかった。腰にサイドから二本のロープをつなぎ空中でバランスを保つだけ。

ミカサはもちろんのこと、アルミン、コニー、サシャも簡単にできていた。だが…そんな中、逆さになって地面に頭をぶつけているやつがいた。そいつはオレがもっとも付き合いの長いやつだ…エレンだ…

まじかよ…

 

「あれ…」

 

エレンは訳も分からないという顔だ。周りからは嘲笑われている。そんな何回も頭をぶつけているエレンを見て…ん…?

みんながエレンに注目している隙を見つけて、ある男に声を掛けた

 

「お久しぶりですね…教官」

 

「お前か…久しぶりだな」

 

「覚えていてくれたんですね、教官…エレンの装備が壊れているように見えますが、教官は何もしりませんか?」

 

教官は少し動揺していたが、すぐにエレンの元に行かないあたり、教官がやったのだろう

エレンのことは以前から知っていたから、兵士にはなってほしくなかったのだろうか?

 

「お前の雰囲気は独特だからな、忘れられないさ。まぁ、後で確認する」

 

と言ってエレンのもとに行きカツをいれた

その夜

オレ、エレン、ミカサ、アルミンで話し合っていた。

 

「気にしても仕方ないよ…明日できるようになればいいから」

 

「なさけねぇ…こんなんじゃ、ヤツらを根絶やしにすることなんか…」

 

「もう…そんなこと目指すべきじゃない」

 

と、ミカサはエレンに諦めるべきだと諭すがエレンがそれを認めるはずもなく

 

「なんだって…」

 

「兵士を目指すべきじゃないと言っている」

 

が、オレは装備の故障だと知っている。だから、無意味な会話をするほど、時間を無駄に使いたくない

なにか。言いかけようとしているエレンだが、その前にオレが割り込んだ

 

「エレン、焦ったときはまず深呼吸だ。冷静になるのが先だと言ったことを忘れたか?その次は現状の把握だ。

今のお前は焦っているだけで何も理解できていない。初めての体験だから分からないかもしれないが、周りをよく観察したら分かることだ。」

 

それだけを言い残して、オレは去った

 

翌日

ミカサがこちらに近づいてきた。

 

「キヨン…あなた何か知っているようだったけど、なんで教えてあげないの」

 

「いつもオレたちが一緒にいるわけではない。一人で戦わなければならない時が来る。

そんな時、考える力がなければ生きてはいけない」

 

「そう…」

 

「まぁ今回は、少しヒントを出した。あとはエレンしだいだ」

 

そして、緊張した面持ちのエレンが装備を付け、

 

「よろしく、お願いします」

 

と、エレンの挑戦が始まった。

一次的にバランスを維持していたエレンがなにかに疑問を覚えた

 

「あの…教官…ベルトの金具に違和感があるのですが…」

 

教官はかなり驚いていた

 

「おい…降ろせ」

 

エレンは降ろされ、教官が装備の確認をする

 

「本当だ…壊れているな…代わりを渡せ」

 

しらじらしい…しかし、よく気づいたなこれも成長か

周りは、驚愕していた。それも当然だろう、なんせ壊れた装備で一時とはいえバランスを保っていたのだから

その後、エレンは交換した装備で再度挑戦し、余裕でクリアした

 

「やった、これで…オレも…」

 

エレンは心底嬉しそうだ

 

「これが、キヨンが言ってたこと?」

 

ミカサがそう聞いてきた

 

「あぁそうだ、よく気づいたな…エレン」

 

「それは、こちらのセリフだ…なんでお前が気づいたんだよ」

 

と、今度はエレンがこちらに近づきながら言ってきた

 

「言っただろ、まわりを冷静に判断すれば分かると」

 

「どんな観察眼だ…お前ほんとハイスペックだよな」

 

「そんなことはない、できないことはある」

 

「はいはい…」

 

オレは夜、また世話焼きをしているクリスタを見かけ声を掛けた

 

「なぁクリスタ、辛くないか?そんな生き方?」

 

「なによ、別に…私がそうしたいと思ってしてるだけだよ」

 

クリスタは目を逸らしてそう言う

 

「そう言う立派なセリフを言うなら、ちゃんと目を見て話せ

嘘がバレバレだ」

 

「っ…」

 

「なんで、わざわざ疲れることをするんだ?」

 

「…あなたには、関係のない話よ…それに誰かを助けることが嫌だと言うわけではない」

 

「…?よく分からないな…昔の友達で人に自分を隠して善意を振舞っていた奴がいてな、そいつは結局、自分自身で壊れてしまった。そいつのようにならないか心配だった。

気を悪くしたなら謝る。」

 

「そう…ありがとう…ねぇあなたはどうして兵士に志願したの?」

 

突然クリスタからそう質問された。なにか悩んでいるのだろうか。

 

「そうだな…オレは自由が欲しい。そのためならなんだってやるさ」

 

「そう…目標があるんだね、羨ましい…」

 

最後の方は耳を澄まさなければ聞き逃してしまいそうなほど、小さく弱々しかった。

 

「なにか、悩みがあるなら聞くぞ?聞くだけならオレでもできる」

 

「…大丈夫…大丈夫だから」

 

そう言い、就寝室に行った。

だが、その次の日もまたその次の日も同じようなことを繰り返すクリスタ。

その偽った笑顔が、どんどんぎこちなくなっていくのを見て少し心配になった。

そこで、オレはクリスタと仲のいいやつに声を掛けることにした

 

「ユミル、ちょっといいか」

 

「ん?なんだお前か…どうした?」

 

「クリスタと仲いいよな?あいつ大丈夫か?」

 

「なんだ、お前…クリスタのこといっちょ前に心配してんのか?わたしのクリスタによっ!」

 

お前の…?

 

「は?まぁ心配はしているが好きとかは関係ないぞ」

 

「ふーん…だが、悪いな私も元気ない理由を聞いても教えてくれないんだ」

 

「そうか」

 

ユミルにも話してないと言ううことは中々にシビアなことか

 

「まぁいいか、じゃあな」

 

「まぁ待てよ」

 

帰ろうとしたが、引き留められた

 

「なんでそこまであいつを心配する?可愛いからか?」

 

「…可愛いは関係ない…昔馴染みだったやつとかぶってな、そいつと同じようにならないかと思っただけだ」

 

「どんな奴だったんだ」

 

「人前では仮面をかぶった奴だった。そして、誰にでも優しく接していた。」

 

「なるほどな、その誰にでも優しくは確かにかぶっているな。

理由が聞けて安心した。もいっていいぞ」

 

鬼龍院みたいに自由な奴だ

そう思いながら帰ることにした。

それから、なにか気が合うと思われたのか、よく絡むようになった。ユミルの近くで話すようになってから気づいたが、ユミルのクリスタの絡みはほぼいじめだな。

 

次の日から過酷な訓練が始まった。訓練兵にとってはかなりハードで脱落するものも少なくはなかった。

オレにとっては前世のホワイトルームのほうが断然しんどかったし、効率がいい訓練をしていたと思う。なので、無駄なことをよくさせるなと思っていた。

しかし、ホワイトルームと決定的に違うのは、同じ訓練を受けているものは一緒に切磋琢磨していく仲間だと言うこと。

それは、訓練兵を作るというのであれば、よくない行為だと感じたが、訓令兵を成長させると言う意味ならいいことなのかもしれない…

オレにはどちらが正しいか、今はまだ判断できない…

そんな日々を過ごす内に無口なオレでも色んな人と話すようになった。エレン達と今でもよく一緒にいるが、クリスタやユミル、無口同士で会話はあまりないがアニとも一緒にいることがある。あと、だるがらみをしてくる馬鹿二人もだ…

 

そして、月日が流れ…

雪山の訓練が始まった。

キャンプ場にいくというシンプルな訓練

だが…積雪の中、山を越えるのは死にに行くも同然だ。

しかも、前世のような電池付きのコートやカイロなんかもない

暖かいコートを着てはいるが、指の感覚がなくなってきた。

そんな中、自分の体調管理もできていないダズが後方で倒れた。それを皆気付かなかったが一人だけそのことに気づき、ダズの方へ近づいて行った。

その人物はクリスタだった。

クリスタが後ろのほうに行ったのを気付いたのか、ユミルもそちらに向かった。

オレもそちらに向かうことにした。

結果的に、ほんの数距離離れるだけで、前を歩くもの達は見えなくなった。

取り残されたオレたちは、ダズを布でぐるぐる巻きにして交代で引っ張っていた。と言っても、クリスタが引っ張ていた。手伝わなかったのにはちゃんと理由があって、決してダメ男とかではない…ない

 

「クリスタ!なぁ…クリスタって…もう諦めろって」

 

ユミルは必死に引っ張るクリスタに向かってそう言った。

正直、オレもそう思う

 

「嫌だ…」

 

「ダズならすでに虫の息だ…自分の体調も把握できねぇ奴が、評価欲しさに来ちゃいけねぇ訓練を受けちまった。こいつの実力はここまでだったんだよ。キヨンからも何か言ってやれよ」

 

ユミルはオレに振ってきた。

 

「まぁ、正直に言えばオレもユミルの意見に賛成だな。ここで助けられたとしても、こいつの実力ならすぐに死ぬだろう」

 

オレはそう正直に話した。こうすることで、クリスタの真意を探れると思ったからだ。

 

「お、いいこと言うじゃないか!ほら見ろ、クリスタ!!いつも冷静沈着だけが取り柄のキヨン様がそういってんだぜ。諦めるしかねぇんだよ」

 

こいつシンプルにオレをディスりやがった。結構力はひけらかしているから、もっといいところあるはずなのにな…

 

「なんで、二人ともそんなこと言うのよ!二人とも先に行ってていいよ?私は必ずダズとともにたどり着くから…先行ってて」

 

そう言い、一人で歩きだした。

そんな、クリスタにオレは問いかける

 

「「なぁ何でオレ達(私達)に助けを求めないんだ」」

 

オレとユミルの質問が被った

 

「なんだキヨン、やっぱりお前とは気が合うな!」

 

「そうみたいだな」

 

クリスタは立ち止まり振り返った。

平静を装うとしていたクリスタだが、少し目を見開いていた。

オレはユミルを見てどうぞと、目で語った。それを理解したユミルはクリスタに近づき話始める

 

「お前さぁ、やっぱダズを助ける気ねぇだろ?」

 

クリスタは固まったまま、動かない。

 

「さっきお前…危ないって言ったが…このままじゃ自分も死ぬって自覚があるんだよな?お前このまま死ぬつもりだったんだろ?なぁ、そんで私に女神クリスタ様の伝説を託そうとしたんだろ?イヤこれは考えすぎか」

 

ユミルは脅し口調で、話す

クリスタの今の顔を見ると、前世で櫛田が追い詰められたときの表情にそっくりだ。

そして、ユミルの断罪は終わらない。

 

「ダメだろ…クリスタは良い子なんだから、この男が助かるためにはどうするべきか…私やキヨンに聞いたりする姿勢を一旦は見せとかないと…なぁ…自分が文字通り死ぬほどいい人だと思われたいからって人を巻き添えにしちゃあ…そりゃ悪い子だろ?」

 

止まらないユミルにクリスタが胸倉を掴みながら

 

「違う…私は…そんなこと…」

 

そう言いかけたが、手を下ろし項垂れてしまった。

そんなクリスタにユミルが今度は優しく質問した

 

「お前だろ?家から追い出された妾の子ってのは…」

 

「なんで…それを…」

 

ユミルはオレの方を向き、

 

「キヨン…私はお前を信じるぞ。だから誰にも話すな」

 

そう言って、真っすぐにオレの目を見た。これは裏切れないな…

 

「安心しろ、オレは口は堅い方だ」

 

「たまたま耳にしただけだ…内地のとある教会で生活のために金品を借りて回ってた時にな」

 

ユミルはその時のことを思い出しながら話し始めた。

 

「物騒な話だな…偉いとこの跡取りの位置にお前がいた…血は直系だが不貞の子に不相応だのでもめた挙句…いっそ殺しちまえばすべて解決すると話は転んだが…せめて名を偽って慎ましく生きるなら見逃してやろうと…そうやって訓令兵に追いやられた少女がいるって…安心しろ…誰にもこの話をしてないしこの情報を売ったりしない」

 

「じゃあ…私を探すために訓令兵まで来たの?そうだとしたらなんで?」

 

「さぁ?似てたからかもな…」

 

ユミルが?とてもじゃないがユミルは良いとこのお嬢様には見えないな…

 

「お前、失礼なこと考えたな?」

 

なんでばれる…

 

「…いいえ、考えておりません」

 

オレとユミルの会話を無視し、クリスタはユミルに問いかける

 

「私とユミルの生い立ちが?」

 

「まぁ大体な…」

 

「それだけで兵士に?」

 

「さぁ…よくわからん」

 

「私と…友達になりたかったの?」

 

クリスタは少し口角を上げて聞いた。同じ環境で生きる者同士で通じ合いたかったのだろうか…

 

「は?違うね。それは無い」

 

少し戸惑ったがユミルはそうはっきりと答えた。

 

「まずな、お前と私は対等じゃないんだよ!偶然にも第二の人生を得ることができてな、私は生まれ変わった!だが、その際に元の名前を偽ったりはしてない!ユミルとして生まれたことを否定したら負けなんだよ!私はこの名前のままでイカした人生を送ってやる、それが私の人生の復讐なんだよ!!生まれ持った運命なんてねぇんだと立証してやる!!それに比べてお前は何だ⁉自殺して完全に屈服してまで…お前を邪魔者扱いした奴らを喜ばせたかったのか⁉なんでその殺意が自分に向くんだよ⁉その気合がありゃ自分の運命だって変えられるんじゃないのか⁉」

 

ユミルの嘘偽りのない言葉、その言葉はクリスタだけではなくオレの心にも深く響いた

オレは、ただ嫌になって自殺してしまったからな…

 

「できないよ、今だって…ここから四人で助かる道はないんでしょ…」

 

「ある」

 

そう言い切るユミルだが、オレの方をチラッと見た。

オレが邪魔なのか?だが、オレはユミルと少し話をしたかったため、クリスタに近づき首を手刃で叩き気絶させた

 

「おい…何やってんだ」

 

「ユミル…お前に聞いておきたいことがある。お前、いつも一人でいるときにたまにメモを取っていたが、あれはこの壁の中で使っている文字じゃないよな?それにさっきの会話から考えれば、誰でも疑問に思うことだが、お前どこから来たんだ?」

 

ユミルは驚愕していた。

まさかメモを見られていたとは思わなかったんだろう。

いつもひけらかす性格のユミルがメモを取るときだけ、様子がおかしかったからな。

 

「…」

 

ユミルは答えず、どう言えばいいか考えていた。

オレはユミルの返事を待たずに問いかける

 

「ユミル…単刀直入に聞こう、お前は敵か?いや、壁を破壊した巨人…若しくは、その協力者か?」

 

オレは全力で威圧を込めてユミルを見る。

ユミルは後ずさりながら答えた

 

「ッ…なんだお前…本当にキヨンか?あぁ、そうだな、お前とクリスタなら話してもいいか…私は確かに巨人だ。だが、壁を壊した巨人でもなければ、仲間でもない」

 

ユミルは、はっきりと答える。

 

「そうか、ならいい」

 

オレはそういい、威圧するのを辞めた

 

「なんだ…すぐに信用するんだな?」

 

「まぁ、お前のことは前から怪しく思っていたが、壁を破壊した奴らとは違うと思っていた。奴らは、複数人できているし、お前を尾行してもクリスタ以外と話しているのをみていないからな」

 

「は?尾行していやがったのかよ」

 

「あぁ悪いな、でもそれでお前の疑いは晴れた。さっきまでは確証を持てていなかった。だから、試させてもらった。」

 

「まぁいい、と言うか巨人になれる人間がいるこを知っていたのか?」

 

「あぁ、推測だったがユミルの証言で、オレの考えは正しかったと証明できた。あと、少しわかったこともある」

 

「なにが?お前本当に何者なんだ?お前のそのような目をした奴を見たことがねぇ」

 

「まぁ、信じると言ってくれたからな、話してもいいがそれは今じゃなくてもいいだろ、巨人になってオレたちを下まで運べるか?もうすぐクリスタは起きるぞ?」

 

「あぁできないことはないが、降りた衝撃でクリスタは起きるかもな…クリスタなら教えても構わないが…イヤ、まだやめておこう。お前ならクリスタ運んで来れるだろ?そういや体力化け物だったしな」

 

「化け物は言い過ぎだ。なら、ダズは頼んだぞ」

 

「あぁ、分かった…」

 

そう言ったユミルは傷を作り巨人となりダズを担ぎ、下へ降りて行った。以外にユミルの巨人は小さかったな…それに巨人になるのは傷をつけることが条件なのか…

オレはリュックを背負っているため、クリスタをお姫様抱っこで持ち上げ、歩き出した。

数分でクリスタは起きた。

 

「んっ…えっ…?」

 

状況を理解できていないようだ。

 

「起きたか、ユミルはダズを連れて先に行ったぞ…」

 

「どうやって?あ…もう大丈夫だよ、ありがとう」

 

クリスタは降りて一緒に歩き出した

言い訳が思いつかなかったので

 

「それは、後で聞いてみればいい、吹雪ですぐ見えなくなった」

 

無理があるが、全てユミルに託す。まぁ実際ユミルのことだし、いいだろう…

 

「?…そう」

 

雑談をしながら歩くこと一時間、目的地までもう少し休憩をとることにした。

 

「なぁクリスタ…話してみたらどうだ?」

 

「…何を?」

 

「決まっているだろう…お前自身のことだ。お前は過去にどのようなことをされたんだ?ずっと不安だったんだろう?まだ幼い少女が一人で抱え込んで、こんないつ死ぬか分からないところに放りだされたんだからな。」

 

「…」

 

「オレはお前のことを多少なりと知ってしまったんだ。お前は自分のことを話すのが苦手なのだろう。他人は救えても自分を救えない。そんなタイプだ。だからオレはここにいる」

 

「…」

 

本当は吐き出したいのだろう。

 

「どうするクリスタ。今がお前の正念場だぞ?

お前は人のことを考えすぎだな…少しくらい仲間に迷惑をかけてもいいんじゃないか?」

 

偽善者であろうと裏では悪人と言うこともなく、ただ単に他人に自分の進む道を決められただけなのだ。

 

「…でも、これは私のお家の問題なの…関わればきっと消されてしまう…」

 

「かまわない、お前が望むならお前の関わる全ての奴を排除しよう」

 

そう言い切った。クリスタは驚き、初めてオレと目を合わし…固まった…

 

「闇を持つものは惹かれあう。そして、より強い側が相手を包み込んでいく。お前の家庭の事情をオレは知らないが、オレの方がまだまだ深い。お前の闇を背負うくらいどうってことない。」

 

「な…なんなのあなたは」

 

「約束してやれることが一つある。お前を今後守ってやることだ。だから、安心して話せばいい」

 

そうクリスタの目を見ながら宣言した。

ようやくオレの目から解放されたクリスタは小さく息を吐き、語り始めた

 

「…分かった。私はウォール・シーナ北部の小さな牧場で生まれたの。そこは、貴族家・レイス卿の領地内にある牧場で、物心ついた時から手伝いをしていた。母はいつも本を読んでいて家の仕事をしている姿を見たことは無かった。夜になると誰かが馬車で迎えに来て派手にに着飾った母を載せて街に行ってたから、家業とは別の収入があるようだった。私にとって、それがいつもの生活だった。でも、字の読み書きを覚え母の真似事で本を読みだしたとき、私は自分が孤独なのを知った。どの本にも母は子供に関心を示し、話しかけたり抱いたり叱ったりするものとして書かれていたから…また、他の子どもは近所を自由に歩いたり、同じ年ごろの子供同士で遊んだりしていることにも気が付いた。私にとっては、子供たちは石を投げてくる危ない生き物だったから、言われなくても私が牧場の敷地の外へ出ることは無かった。ある日、私は好奇心から母に抱き着いてみた。母がどんな反応をするのか興味がでたから…そしたら母は私の顔を鷲掴み、ぶん投げたの。それでも、母が私に何かしたことは、初めてだったからそれが嬉しくかった。しかし、母は「こいつを殺す勇気が、私にあれば…」とそう私に発した。それが、母の最初の言葉だった。それ以来、母は家をでて、他の場所で暮らし始めた。ようやく私にも理解ができた。祖父や祖母からもこの牧場で働く人もこの土地に暮らす人、その全ての人間から私が生きていることを快く思われていなかった。一体私が何をしたのか、なぜそんなことになったのか、聞ける相手はいなかった。この土地が私の世界そのものだったから…動物だけが友達で、一日の殆どは牧場の仕事でしたが私が孤独を忘れられる時間でもあった。そして壁が壊されたあの日の夜、私は初めて父と出会った。その男性はロッド・レイス、そして私の父親と名乗った。この土地を収める領主の名前だったの。その後ろには数年ぶりの母の姿もあった。父はこれから私と過ごすぞと声を掛け三人で外へ出ることになった。その時、母が悲鳴を上げた。気付けば、多くの大人に囲まれていた。そして、一人の男性が母の首に刃物をあて「困りますなレイス卿、このようなマネはご容赦いただきたい。ウォール・マリアが破られたことで不安に襲われましたか…」と言った。私は咄嗟に「母さん!」と言ったが母は「違う、私はこの子の母ではありません」と言い放った。それを男性が父に確認をし、父は「この二人は私となんの関係もない」と言った。男性は「やはりそうでしたか、お前は存在しなかった」と言い、母の首を切り裂いた。母は切り裂かれる前に「お前さえ生まなければ…」と後悔の念を抱えながら死んでいった。私も殺されそうになる直前で父はある提案をした「君の名は。クリスタ・レンズだ」その名を名乗り、遠くの地で慎ましく生きるのなら見逃してやると言う意味だった。それで私は今ここにいるの…」

 

「ねぇ…私はやっぱり生きていちゃダメなんじゃないかな…」

 

消えてしまいそうな声でオレに問いかける。ずっと不安だったんだろう。ならば、オレも本音でかたろう。今回は本音で語ることが有効的である。

 

「そんなことは無い。何一つとして、お前が死ぬ理由はない。なぁ…クリスタ…お前はその狭い敷地の中で生きていたから分からないかもしれないが、全ての人間に好かれることなど、まず不可能だぞ。自分のことを認めてくれる人達と関わりをもつべきだ」

 

「そんなこと…だれが」

 

「クリスタ、人はな余裕を持っていないとき、全く周りが見えなくなる。そして、誰も信用できなくなり完全に孤立していく。そうなったときは、引き返すのにかなりの時間がかかる。だが、お前はまだ間に合う。お前は今オレに自分の過去を話すことができた。人を頼ると言う行為ができたんだ。そして、お前にはユミルがいて、オレがいる。それにお前がこれまで助けてきた奴らはお前のことを信じ仲間だと思っているはずだ。オレたちは誰一人として、お前に死んでほしいなんて思っていない。」

 

そう言うと、クリスタは避けていた目をこちらに向けた。本気で言っているのかを確認したかったんだろう。生憎と、そのような心理戦でおれは崩せないし、今回は紛れもなく本心だ。

 

「…うっ…」

 

涙が溢れ出すが必死でこらえようとするクリスタに

 

「泣きたいときは泣いていいんだ。約束しただろう。お前のことは必ず守ってやると。お前を縛るものはもう何もない。感情を偽る必要はない。お前は笑うことも、怒ることも自由だ…だから今は泣きたいだけ泣けばいい」

 

「うぅぅぅああああああん」

 

クリスタは、オレの服を握り締めオレの胸で泣き始めた。オレは何も言わず、腰に手をまわし背中をさすった。

とここで重要なことを思い出いした。小休憩のはずが、かなりの時間休んでしまっていた。

ユミルは確実に心配しているだろうな…泣き出したクリスタに「よし、行くか!」なんてことは言えず、どうしたものかと思考を巡らせていた。その時、オレたちの方へ灯かりが近づいてきた。真っすぐオレたちの方に来る。クリスタの鳴き声で気付いたのだろうか…

 

「「「お~い、クリスタ!キヨン!」」」

 

と叫んでいる。間違いなくエレン達だ。どうしよう…この状況を見られたくない…この寒空の中、若い男女が抱き合っていて女の方は号泣している。なんて、言い訳しようか…

クリスタは自らの声で周りの音が聞こえないようだった。あぁ…これは…終わったな

オレは大人しくその時が来るまで待つことにした。

 

「あ!いた!クリスタ!キヨ…ン?」

 

「え⁉ほんとか!お前ら心配したんだ…」

 

「おっ…」

 

最初にオレたちを見つけたのは、サシャだった。さすが型破りの勘の良さを持っているな。しかし、オレ達の状況を見て理解できず固まった。続いて来たのはエレンだが、エレンもまたオレ達を見て固まる。その次もまたその次も同じ反応だ。だが、ライナーだけは以上に怖いな。いつもの優しいライナーはどこへ行った。

オレ達の捜索に来たのは、エレン、ミカサ、アルミン、ジャン、コニー、サシャ、ライナー、ベルトルト、ユミル、マルコ、アニの11人で来ていたが全員が固まったことにより、謎の静けさができた。オレもクリスタの背中をさするのを辞めてしまっていた。すると、クリスタがこの奇妙な雰囲気に気付いたのか、顔を上げ目を擦りながら、後ろを振り向きクリスタも固まった。どうしようか、これは…と数秒固まったクリスタが真っ先に飛び上がりオレからものすごい勢いで離れた。

 

「あっ…これは…その…違うの!…違うの!!」

 

と言って、顔を赤くしながらユミルの後ろに隠れた。さてと、ここはオレの正念場だ。頑張れ…最高傑作。頑張れ…5秒後のオレ

 

「ん~よし。帰るか」

 

オレはすくっと何事もなく立ち上がり帰ることを促した。

そしてオレはみんなの間を抜けようとしたが、一斉に肩や背中を掴まれた。ミカサだけは首を掴んでいる。こいつ殺しに来てやがる。誰もなにも言わないしこちらを誰も見ない。

 

「…なんでしょうか?」

 

「どうする?ジャン」

 

と、エレンが

 

「どうしようか、エレン」

 

と、ジャンが…こいつら仲悪かったよな?

 

「イヤ…ここは、どうしてやろうか?だろ、みんな?」

 

と、ライナーが…こいつが一番怖い

 

「あんた根暗の癖にやることやってんだ…」

 

と、仲のいいはずのアニが軽蔑の目を向ける

 

「はい…そうですよね、私たちはこの吹雪の中、命がけで二人の捜索をしたはずですよね。なぜ…二人は外でおっぱじめようとしているのですか?これは、二人の食事を後で徴収しなければなりませんね」

 

と、馬鹿の片割れ…

 

「いや、待て、違うぞ。何も…「黙りなさい」…はい」

 

とミカサが…どうやらオレは反論すらできないらしい

 

「まぁ…とりあえず、一度帰ろう。先輩たちが心配する」

 

おぉ神アルミンが現れた。お前のことはこれからなんでも聞こう

 

「帰ってから縛り上げたら、もう逃げ場はないんだから」

 

堕天使アルミンが現れた。お前のことは顔も見たくない…

 

「そうだな、一先ず帰るか」

 

エレンがそう締めくくって帰ることにした。

 

 




休みが終わったので、毎日は不可能になりましたが、頑張って投稿していきます。
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