進撃する綾小路   作:もと将軍

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誘導

 

オレたちは訓練兵をしている。その訓練は過酷で訓練が終われば死んだように寝る奴らばかりだ。だが、オレはこの程度の訓練でへこたれはしない。

だが、日に日に疲れがたまってきていた。なぜなら、日が昇っている間は訓練をし夜は誰かの尾行をしている。

初めはユミル、次にクリスタ、ライナー、ベルトルト、他にも怪しそうな奴をつけていた。

それは、この訓練兵の中に壁を破壊した巨人が潜んでいる可能性があったからだ。

 

「キヨン…大丈夫?」

 

そうヒストリアが心配し、声を掛けてくれた

 

「ん?なにが?」

 

一応とぼけてみた

 

「顔色が悪いような気がして...」

 

「そいつはいつもそんなだぜ…キヨン、お前クリスタに心配されたいからって顔色を悪くしてんだろ?」

 

ライナーが厳つい顔をして割り込んで来た。嫉妬しているのが丸分かりだ。

 

「あぁ、少し寝不足だ。早いがもう寝ることにする…おやすみ」

 

「えぇ…おやすみなさい」

 

ヒストリアは少し物寂しさを出しながら言った

 

「おう…おやすみ、永遠にな!」

 

こいつは死刑決定だ

 

「そんなことよりクリスタ…ご飯食べながら話でもしようぜ」

 

「えぇ…でも、もう食べちゃったし...」

 

なんて会話が聞こえたがオレは食堂出て、本日のターゲットを尾行することにした。その人物はアニだ…アニは最も怪しかった人物であったため常にユミルにアニの動向を遠くで見て貰っていた。

そして、オレは他の怪しい人物の監視を終えたので、本格的にアニを監視することにした。それから四日目が経過した日、アニはある一人の男を尾行していた。

しかし、その男の方が一枚上手であり、尾行に気付かれた。

 

「よう嬢ちゃん…こんなジジイを尾け回すとは…」

 

と何やら話しているが、近付きすぎると気付かれる可能性があったので、会話は余り聞き取れなかった。

と、突如アニが男の顔を目掛けて蹴りを入れるが、男はそれを避けた。アニはその隙に全力で走り出した。アニが逃げきることに成功したことを確認し、オレも帰ることにした

 

帰宅後

皆が寝ていることを確認し、ある男に近付いた。この男の息の根を止めるために…

 

 

 

 

 

 

そして、翌朝

 

「おい!起きろライナー!お前が一番最後だぞ!」

 

「ライナー!お前のせいで教官に怒られるぞ!!」

 

「ライナー起きて…」

 

と、男子も女子も全員で起こしていた。ライナーとベルトルトはいつも朝が弱い

そして、今日はライナーが遅かった

 

「ん…あぁ…す!すまねぇ!!完全に寝過ごした!」

 

と、慌てて飛び起きた

 

「「「「「「…………………」」」」」」

 

全員の目がある一点に目が行く

 

「ん?なんだ??……………ふぁ⁉なんだこれは!えっ…ちがっ!」

 

自分でも信じられないと言った顔をしていやがる

 

「ライナー…お前…」

 

と、ジャンが哀れな顔しながらライナーを見る

 

「あぁ…それはいくら何でも…」

 

と、いつもべったりのベルトルトも引いている

 

「あぁ…さすがにオレでもしねぇぞ」

 

と、コニーが言う

 

「ライナー…後ろを向いて…」

 

と、いつも無表情のミカサが…

オレが昨日帰ってきてからやったことは単純である。ライナーの股間周りにたっぷりと水をかけておいた。若干黄色にして…

これが、最高傑作としての人間の葬り方である。実際に殺すなんてもったいない…人に恥をさらしてこそ人としての尊厳は死ぬ

ライナーは今日自らの身体をもってして、それを証明してくれた。

男だけならまだ良かっただろう...女でも、ミカサやユミル、サシャならまだ良かっただろう

だが、ここにはアニがいて、ヒストリアがいる。ライナーがヒストリアに惚れていることは火を見るより明らかだあった。その好意を寄せている女性の前で、お漏らしは堪えるな...

見ろ!隣にいるヒストリアの顔を…

さて…止めに入ろう。

 

「クリスタ…そんな顔をしてやらなくても…誰でもミスはあるぞ…」

 

オレがヒストリアに振ったことで、ライナーは肩をビクッと震わせ、錆びたロボットのように顔だけで振り向き、ヒストリアを見る

 

「えっ...あ…ごめんね?ライナー…」

 

計算通りだ、素晴らしいぞヒストリア...やはり使える

その謝罪は、ライナーに止めを刺すも同然

その言葉を聞いたライナーは、一気に顔を青ざめて灰のように散っていった

 

「ぷっ...ひゃっひゃっひゃっひゃっ」

 

と、固まっていたサシャが笑いだす。さすがは馬鹿...使える

それにつられて皆が笑いだす。

 

「ライナー!!お前!最高っだ!」

 

「ちょっ!みんな!やめようよ!」

 

ヒストリアは止めようとするが、その言葉でライナーは完全に心が折られただろう。オレは満足しこの部屋から出ていこうとしたが、顎と頭が反転した人物がやってきた。

 

「お前ら…何をやっている…減点だな…」

 

その言葉で、この場は一気に静まり返った。今回悪いのはライナーであり、みんなは関係ない。そしてオレも関係ない。兵士は連帯責任!とかよく言われるが、十代の...世間では大人扱いされる歳の奴がオネショをして、それを連帯責任なんて溜まったもんじゃない…

断じて、オレらには関係ないはずだ。だから、ライナーには悪いが、もう一度止めは刺させてもらう。安心しろ...今度の介錯はオレがする

 

「教官…あれを見てやってください。ライナー兵士たるもの自分の失敗と向き合わなければならない...ましてや、今回は自分の責任だろう。立って、振り向け」

 

ライナーは絶望し数秒固まったが、ふらふらと立ち上がり、こちらを向いた

それを見た教官は、一瞬口角が上がったが手で口を隠し

 

「ぷ...はぁ…ライナー…お前の評価を改めなければならないな…」

 

その言葉を最後にライナーは完全に停止した

オレたちはライナーを置いて訓練に励んだ。久しぶりにストレス発散ができて今日の訓練は今までよりも良い動きができた。

 

訓練中オレは考えていた。

 

アニが一人の男を尾行するために王都まで言った理由

 

この壁の中で二つの勢力、若しくはもっと多くの勢力があり、アニがその一つの勢力で尾行を命じられたから...

それともやはり、壁の外から来て何かを探っているのか…

 

壁の中での勢力なんて小耳にも挟んだことがない…強いて言えば、変な宗教団体くらいだ

なら、壁の外から来たと考える方が正しいか…

 

訓練中も訓練が終わってからも、抜け殻のようにぼーっとしているアニにオレは水を持って近づいていく

人は睡眠が取れていないと判断力が落ちる。それに加え、ストレスもピークを迎えそうだ。

 

「大丈夫か?アニ...」

 

「ん?あぁ…ありがとう」

 

アニは水を受け取ってお礼を言った。

 

「寝不足か?」

 

「それは…あんたもでしょ?」

 

「あぁ…実は最近、碌に休みもなく訓練ばっかしているからストレスが溜まってな、そのせいか寝つきが悪い」

 

「へぇ…あんたでもストレス溜まるもんなんだね」

 

オレの言葉に少し安心したようだ。

 

「どう言う意味だ…?」

 

「だって、あんた感情抜き取られたような性格してるから」

 

「感情はある…表情に出にくいだけだ。上手く行かないことが続くと誰だってストレスは溜まる。

ライナーたちを見ていると羨ましいと思うと同時に少し腹立たしい」

 

オレの言葉にアニは少し笑みを浮かべている。分かりにくいが…普段落ち着いていても、まだ年ごろの少女だ。同じことを思っている人がいると安心するんだろう

 

「それで、あんな悪戯をしたと?イヤ…あなたなりの死刑ってやつ?あいつ、クリスタクリスタってうるさいからね、キヨンに嫉妬して絡んでたっけ」

 

「気付かれていたか…まぁおかげでかなりストレスを発散できた」

 

「そうね…いい気味」

 

「それで、何か思い悩んでいるのか?」

 

「まぁ…あんたと同じよ…上手くいかないことばかりね」

 

「そうか…聞くだけならできるが?」

 

「ライナーとベルトルトにムカついてね…」

 

ほぅ…

 

「なんであいつらに?」

 

「なんで私だけ…イヤ…何でもない」

 

まずったと思ったのか、途中で会話を止めた。

 

「ん?ライナーにストレスを抱くのは仕方ないと思うが?」

 

「それは…あんたの話でしょ」

 

と、小さい声で突っ込む。なら…この先三人で密会をする可能性があるな...その時を待つか。それが知れただけ良しとしよう

 

「なぁ…ちょっと付いてきてくれないか?」

 

「どこへ?」

 

「たまにストレスが溜まったら行くところがあるんだ」

 

「なら、行く」

 

そう言って、向かったところは、湖が月の光で綺麗に見える場所だ。

 

「綺麗だろ?ここで思い切り叫ぶと、ちょっとはストレスが発散できる」

 

「確かに綺麗だね…えっ叫ぶの?あんたが?」

 

アニが驚いている…珍しいな

 

「あぁ…叫んでみたらどうだ?」

 

「…じゃあ、先にあんたが叫んでみてよ」

 

「...オレが?」

 

まぁですよね…

 

「分かった…」

 

「あ~~~~~。よし、次はアニの番だ」

 

「…え?声量の欠片も出てなかったけど?」

 

「やったことに変わりはないだろ?」

 

「…」

 

ジトっとした目で睨まれるが、無視する

 

「次はアニの番だ」

 

「分かった」

 

アニは深く息を吸い叫んだ

 

「わーーーーーー」

 

アニにしては結構大きい声がでたな...

 

「ふぅ...案外スッキリした。また来ようかな」

 

「ああ、いいんじゃないか?」

 

それからしばらく星空を眺めてから帰った。

 

その次の日の夜オレは密会を聞いた。

 

「あんた達が遊び疲れてぐっすり眠るころ、私は王都のドブの中を這いまわった。黒いコートの男は他の連中と違う、実力者だ。危うく捕まりかけた。顔を見られたかも知れない。中央憲兵に入ったところであいつがいたんじゃ無理」

 

「そうか…」

 

「私たちが今まで集めた壁の情報を持ってマーレに帰ろう。あれから、もう5年が経とうとしている…どんな情報でも歓迎してくれるよ」

 

「本当にそう思っているのか?」

 

「じゃあ何?他にどうしろっての?」

 

「ウォール・ローゼを破壊する『不戦の契り』があるにしろ無いにしろ、『始祖の巨人』を炙り出す手段はもう他にないだろう...オレ達訓練兵のトロスト区滞在期間中に調査兵団が壁外調査で出払う日だ。壁内は混乱を極めオレ達訓練兵も現場に駆り出される

そこでオレ達が姿を消し死体が見つからなくても誰も生きてるなんて思わない。

その後王都になだれ込むなりして、王の動きに合わせて動きやすい位置に就くんだ」

 

「あんたらの大事な友達は大勢死ぬね…キヨ…全員死ぬかもね」

 

その言葉を聞いたライナーはアニに近付いて行き、目の前まで移動した

 

「キヨンって言いかけたか?アニ...最近あいつと良く一緒にいるよな?」

 

「え?」

 

先ほどから何も話していなかったベルトルトが反応した

 

「別に…」

 

「何度も言っているだろう...奴らは友達じゃない...エルディアの悪魔だ。」

 

「吐きそう、それ以上顔を近づけないでくれる?」

 

「...疲れたろ、いつもお前ばかり負担をかけてすまないと思っている。今日はこの辺にしておこう」

 

オレはそこで帰ることにした。

オレは食堂でパンと水を持って座席を確保し一人で食べ始める。

重大なことを聞いてしまった。

 

「キヨぽ~ん!ご飯を恵んでください!」

 

馬鹿が現れた。オレはいつも馬鹿からはキヨポン呼びをされる…

オレは、少し千切って渡した。

 

「サシャ...これで内密に頼みたいことがある。内容は一週間後に話す」

 

「分かりました!!なんでも言ってください!!」

 

内容も聞かないまま。オレと約束をし、目の前で食べ始めた。

そんなサシャを放置し、再度考える

 

[始祖の巨人][付箋の契]とはなんだ?

 

アニは[マーレへ帰ろう]と言った。アニたちの国の名か

 

ライナーは[エルディアの悪魔だ]とオレたちのことをそう呼んだ

 

つまりオレだけが寝返ることは不可能...

 

そして、何より聞き逃せないのが、調査兵団が出払う日にトロスト区を襲撃か...

 

ここでの勝利条件を考える

優秀な仲間が生き残ることだな...オレの同期はなかなかの粒ぞろいだ。上位以外にも優秀な奴らは多い。だが、性格的に問題のある奴らばかりでまとまりがない。

ここは…成長の機会では?

巨人との戦闘は壁外に出ればいくらでもできるが、憲兵や駐屯兵団に行くと成長どころか退化するだろう。

だが、ここで巨人と戦闘をし生き残れると言う、希望的観測はするべきではない。

しかし、オレは巨人を駆逐し自由を得る目標がある

オレの勝利のためならある程度の犠牲は仕方ない。

そう、マルコやジャン、コニー、サシャ、ヒストリア、ユミル、エレン、ミカサ、アルミンが生き残り調査兵団にさえ入ればなんの問題もない

今回の襲撃で精神が不安定になる。当然だ。しかし、そんな時ほど漬け込みやすい。その時に調査兵団に誘導する。

しかし、さすがに全員を見て守れはしない..調査兵団..やはり必要になるか。

 

どうするか..

アニたちの存在を

あいつらは壁を壊してくれた、大切な存在。だからと言って、相対したとき容赦はしないが…オレが密告して、あいつらが捕まり死刑になれば外の世界のことは何も聞けない。つまり、勝負を捨てるようなもの…オレは取り合えず、アニたちのことは報告しないことにした。

 

そして、六日後…休みの日に調査兵団の団長の元に赴いた。訓練所から抜け出したのだ。だが、会いに行ったわけではなく、どのような人物なのかを確認をしに行っただけだ。思いのほか団長は簡単に見つかった。あの人は…以前ズタボロで帰ってきた調査兵団にいた人だ。あの人が調査兵団になったのか…あの人なら大丈夫だな、あの人がオレと同じ考えを持っていることを一度聞いた事がある。なによりも、あの人の雰囲気だ。憲兵のゴミ兵とは格が違う…

そこからは少し王都を見て回り帰ることにした。

 

帰ってきたオレは、手紙を書きサシャに渡し誰にも見つからないようにと忠告をし、調査兵団団長に渡すように言った

オレが行かなかったのは、団長の近くに行くのが二回目になることと、こう言った事ではサシャが最も優れていた。何せ、厨房に何度も侵入し盗んでくるからな…

 

 

調査兵団への手紙

 

三ヶ月後の壁外調査で調査兵団が出払ったとき、トロスト区、カラネス区、ユトピア区、クロルバ区のいずれかの門扉を超大型巨人が破壊するとの情報が入った。敵は内に潜んでいる。この情報は極秘事項だ。他の団にも話さないように

 

 

 

 

オレはそれだけを伝えた

トロスト区だけにすれば、調査兵団の全てが集まる…そうなれば、成長も何もできない。ギリギリで守りつつ成長させる。絶対ではないが、この絶望的な状況では多少の賭けは必要になる。

他の団を呼ばない理由は、後でこの手紙の捜索が開始されれば面倒だ。あの調査兵団団長なら大丈夫だ、信用できる。

 

オレは若干、この危機的状況に旨を高鳴らせていた。

ようやく、自由への一歩を踏み出せるのだから…

 

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