天地無用!~いつまでも少年の物語~。   作:かずき屋

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飲み会でいじられてるおっさん、っちゅ~のも面白いかと(^^;;。


※ボーイズラブ表現、ありますので嫌いな方は読まないでね。


広がる樹雷8

「みんなありがとう。急に思いついてごめんね。何となく今週末、こんなにゆっくり出来なさそうだから。」

こっちですこっちと、あやめさんたちが僕たちを引っ張っていく。席に着くとテーブルには見たこともないような料理がたくさん出ている。見た目和風のものも、洋風に見える物もあり、お酒も各種あった。とりあえず簡単でも何か言わないといけないのだろう。樹雷皇阿主沙様の真似して簡単に言おう。お腹もすいたし。

 「急な呼び出しで集まってもらって申し訳ない。今週末には樹雷に行かなければならないし、なんとなく瀬戸様がいろいろ画策していそうで、ゆっくりとこういう場も持てなさそうに思いました。皆さんに比べたら経験不足の若輩者ですが、なんとかよろしくお願いします。今日は無礼講で行こう!。」

わ~っと拍手が上がる。控えていたメイドさんやら執事さんやらが出てきて、飲み物が注がれていく。乾杯は・・・・・・。たまにゃいいでしょ水穂さんと、振ってみる。

 「しょうが無いわね~。・・・この人ぜんっぜん自覚が無いんだけど、私たちはこの人を支えるためにいます。みんな、共に頑張りましょう。乾杯!。」

乾杯~~っとみんな杯を持ってかつんかつんと杯をあてて、グッと飲み干す。そして、食べ物に手を付け始める。

 「実は、この一樹に樹雷王阿主沙様はじめ、瀬戸様や、内海様、船穂様や美沙樹様からご厚意で、さまざまな特選食材が積まれていました。さらに、今回皆さんからいろいろご提供頂きましたのよ。」

水穂さんがそう言って、リストを見せてくれる。立木謙吾さんから、船で採れた野菜をいただき、あやめさん達には、お酒や米をいただいていた。なんかもうそれだけで、涙ぐみそうだったりする。

 「ありがたや、ありがたや。」

手を合わせて拝んでしまう。

 「そして、本日の特選素材というか、お酒!。竜木籐吾様から、阿羅々樹の実から採れた、神寿の酒、しかも古酒でございます。それがなんと一樽!」

うおおお~~っと一人で盛り上がってしまう。

 「それってすごいお酒でしょ?いいの籐吾さん。」

確か一杯が惑星一個分とか何とか・・・。

 「こう言うときに出さないでいつ出すんですか?」

なぜか顔が真っ赤だったりする。結構恥ずかしがり屋さん?さっそく、謙吾さんがひしゃくで注いでくれる。旨さ脳天直撃。香りがフルーティなのはもちろん、瀬戸様のモノとも違って透明感と深み、そしてほんのわずかな酸味が極みと言って良い味わいだろう。嗚呼本当にありがたい。しかも料理が凄いとしか言いようが無い。結構黙々と食べてしまう。ノイケさんや砂沙美ちゃんの料理に負けていない。

 「あの、田本様、というかカズキ様、美味しいでしょうか?」

阿知花さんが、おずおずと声をかけてくれる。

 「うん、凄く美味しい。柾木家のお二人に勝るとも劣らないと思う。これ、3人で作ったんですか?」

 「はい!と言いたいところですが、阿知花ちゃんがほとんど作ったんですよ。私たちはお手伝い。」

こっちも真っ赤になってうつむいているし。そう言えば、数日前に爆弾発言していたような・・・。水穂さんの機嫌が良さそうだから、そっとしておこう。

 「わ、わたしは、好きだった日亜様にそっくりな田本様に食べて頂いて、本当に嬉しいです。」

びしいっっと音がしそうなほど、青筋が立ってる水穂さんに、籐吾さんに、謙吾さんだった・・・。なぜにこのタイミングで・・・。くっくっくとあやめさんと茉莉さんが笑ってる。もしかして、この阿知花さんって微妙に天然?。って、そうだ、いちおう田本さんの格好していなくても良いんだったと、思うと、スッと視線が上がる。でかいお腹も無い。うまうまと口に料理を運んで、ふと顔を上げると、皆さんこっちを無言で見ている。

 「あなた、いつ見てもびっくりしますわ。そう前触れも無く変わられると・・・。」

 「ここ最近、光学迷彩要らなくなったしなぁ・・・。そうだ、みんなには言っておいてもいいだろう。謙吾さん、そこの空いたお皿投げてみて。」

え、これをですか?うん、いいから。と投げてもらう。ひゅっと言う音と共に皿が飛んでくる。目前でガンっと言う音を発して弾かれ、テーブルに落ちる。目の前には、半透明に光る翼・・・。

 「ちょっと、こないだから出来るようになっちゃって・・・。鷲羽ちゃんの検査受けるようになってるんだけど、さ。もしかして、そう言う意味で、瀬戸様や阿主沙様が慌てているのかも知れないんだけど・・・。」

スッと光應翼は消える。

 「・・・。申し訳ありません、わたしのせいです。」

籐吾さんが、声を落として泣く。いや、僕は変わっていないから・・・。

いや、おれもだよ、と謙吾さんが肩を叩く。

 「まあ、特殊技能がひとつ増えたってことだよ。僕は何も変わっていないし。」

ふと隣を見ると、水穂さんが涙ぐんでいる。

 「わたしを、私たちを置いていかないで・・・。」

 「行かない行かない。置いていかないよ。まだまだ助けてもらわないと。」

いかんせっかくの場が・・・。

 「あうう、ごめんなさい。」

どんっっと杯を置く音がする。みんながそっちを向くと、さっさとできあがっている、阿知花さんがいた。

 「カズキ、つげっ!」

 「あ、阿知花、あんた、いつの間にそんなに飲んだの?」

とりあえず、こっちに逃げちゃえ。はいはいとひしゃくで阿知花さんに注ぐ。ぐいっと空けて、またどんと置く。テーブルに手を置き、立ち上がる。ふらふらしてる。そして、僕のところに来て、ぎゅっと抱きつく。

 「わたしも、籐吾様のように癒やして欲しい・・・。」

そう言って抱きつき、胸に顔を埋めて寝息を立て始める。あ~あ、と言う声が上がる。え~っと、と困っていると、メイドさんが、こちらのお部屋でお休みになれば良いですわ、と隣の部屋を案内してくれた。そうか、部屋はたくさんあった。

 阿知花さんをベッドに寝かしつけて、もどると、雰囲気重い・・・。とりあえず、謙吾さんの隣に行く。頂いたお酒はしっかりみんなに注いでいる。

 「ごめんね雰囲気重くして。でもさ、仲間を助けることは当たり前じゃない?そんなにすごいことなの?」

と、一番樹雷の一般常識に近いだろう(水穂さん除く)謙吾さんに聞いてみた。こちらをキッと見てゆっくりと話し始める。

 「カズキ様、あのとき、阿羅々樹艦隊の発見の一報だけで、我々の義務は済んだとも言えました。でもあなたは、自分の都合はさておき、樹雷への最短コースを取って、籐吾さんを始め、あやめ、茉莉、阿知花さんを抱えて樹雷外縁部へ跳びました。」

そこで、謙吾さんは一息入れて、お酒を飲み干す。のど仏が動き、あごの線と対比が美しい・・・。そう思ってしまう。

 「だって、あの段階で、僕がそうやるのが一番速いと思ったし。みんな大怪我していると聞いたし、もう1万数千年も亜光速で寒く冷たい宇宙空間を帰ってきていたと聞けば、一刻も早く樹雷に送り届けて上げたかった・・・。」

 「そう、あなたはそれで良いでしょう。しかし、樹雷は、はい、ありがとう、と済ませられません。皇家の樹、そしてそのマスターは樹雷の力の根源とも言えます。それを4名救った。しかも、自分の命の危険を冒してまで・・・。あなたは、もうほとんど、樹雷の伝説に近い位置にいます・・・。さらに、辺境の惑星を海賊連合から護り、GPに嫌みを言ったとあれば・・・。」

ぷっ、くくく、と隣の籐吾さんが笑う。

 「皇位継承権は、樹雷王阿主沙様の次席と言っても過言ではないでしょうね。それに、船穂の挿し樹まで一樹に刺さっているし・・・。遥照様がわしゃ、しらん、と言ったも同然。樹雷国民の感情としては、そのような皇族が樹雷にいないことは何をやっているか!とほとんど怒っている状態とも言えます。」

ぐ。ああ、はいはいと挿されてしまったあの挿し樹にそんな意味が・・・。が~~~ん、ショックみたいな顔をしていると、水穂さんが杯をくいっと開ける。

 「あなた、本当に知らなかったのですね。兼光おじさまが、遥照よ、おまえは皇位継承をどう考えておるのだと言っていたでしょう?」

 「いや、あれは遥照様の問題、ではないのね・・・。」

 「ええ、違いますね~。さらに、瀕死の樹雷闘士を皇家の樹の力を集め、その命をつなぎ止めたとあれば・・・。そして自ら光應翼が張れるなんてことを知られたら・・・。」

例の関わってはいけない系の笑顔全開の立木謙吾さんだった。

 「う~、よくわかりました。もうそれ以上言わないで。瀬戸様が、あなたの存在が巨大だといった意味がよくわかりました・・・。」

 「俺、水穂さんの次に愛してもらったと思ったのに・・・。」

両手を色が変わるほど握って、顔をしかめている謙吾さん。

 「・・・あのさ、あのときに謙吾さんが刺されていれば、僕は同じことをしたよ。迷うことなく。」

 「ええ、ええ、そうでしょうとも。わかっています。あなたはみんなを愛されている。・・・だから嫉妬の炎で焼かれるのです。」

水穂さんと、籐吾さん、そして神木あやめさん、茉莉さん、謙吾さんがゆらりと立ちあがり、ごわあああっと地獄の業火モードで一歩一歩、歩いてくる。僕は、その歩みに合わせて、一歩一歩下がって壁際に追い詰められる。さらに、そのあまりの恐ろしさにしゃがんで、持っていたお酒をグビッと飲む。怖い、むちゃくちゃ怖い。壁にみんな右手をどんと突き、

 「わたし(俺)だけの、あなたでいてとは言わないけれど、置いてだけはいかないでください!」

 「はいい~。」

ふっとその雰囲気がなくなって、みんな自分の席に帰っていく。言いたいこと言ってすっきりしたみたいな。籐吾さんと謙吾さんが振り返って、ふたりして笑顔で右手を差し出す。その手に両手でつかまって立たせてもらう。

 「私たちが、樹雷の病院船で意識が戻ったとき、今がいつか、あれから何年たったのかを聞いたときに、本当に絶望的な思いを味わいました。しかし、助けてもらったあなたの存在を聞いたときに、またあの楽しい生活が始まると期待で一杯になりました。」

 「正直、助けることができて良かった、あとは瀬戸様とかがうまくやってくれるだろう位の思いしかなかったんだけど、ね。」

竜木籐吾さんのこめかみに、びしいっと青筋が浮かぶ。

 「ああ、もうっ、ほんっっと~~に天木日亜様そっくりだわ。このちょっとぼ~っとしているとこなんか!。」

神木あやめさんが、き~って感じで言う。茉莉さんが、右手人差し指の先で眼鏡をスッと持ち上げ、ふっと薄く笑う。この人も怖い・・・。

 「ううう、なんだかごめんね~~。」

そう言うと、どっと笑いが出る。そうやって、東京(?)の夜は更けていった。今度の日亜様はいじられキャラなのね~~とか言われながら。壁ドン良いなぁとか思っていたけど、あれだけの人数に一度にされると、怖いのだ凄く。結局、僕はいろいろいじられながら、12時過ぎまでみんなと飲んで、一旦そこでお開きになった。


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