天地無用!~いつまでも少年の物語~。   作:かずき屋

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やっぱり人外まっしぐら?

ま、でも今回は鷲羽ちゃんも、まあ同罪だろうし・・・。


広がる樹雷13

 「それじゃ、夢じゃないか、確かめましょ!」

あーあ、やっぱりいつものこと、なのね。本当に嬉し恥ずかしな時間が過ぎていく。明日には、樹雷に到着しているだろう。今度ばかりは、これだけの皇家の船を襲う海賊も居ないだろうし・・・・・・。

 

 

 う~、頭痛い。それと、喉渇いた。さらにおしっこ行きたい。と思ってベッドから起き上がった。今は・・・、午前2時半・・・。あれから4時間くらい経ったのか・・・、ベッドから足を降ろし、トイレに行こうとすると、スッと戸口にメイドさんが立ってくれる。

 「田本様、いかがなさいましたか?」

 「うん、頭痛いのと、喉渇いたので水をくれないか?」

 「この間のお薬をお持ちしましょうか?」

ああ、頼むよ、と言ってトイレに行く。・・・う、アルコール臭い。ついでに、慌てて出てきたのでシャワーも浴びたいな。トイレを出て自室に戻ったところでメイドさんに会った。

 「起こしてごめんなさい、水穂さん、お薬飲んでおきますか?」

う、うん、と水穂さんが目を覚ます。この人も珍しく深酒してるし。

 「・・・今、何時かしら?・・・・・・」

午前、2時半くらいですねと、時計を見せる。そう、と言ってメイドさんから二日酔い用の薬をもらって水で飲んで、そのまま水を飲み干して、ぱたっとベッドに倒れ込んでいる。

 「ごめんね、僕は風呂に入りたいんだけど・・・。」

こちらでございます、とあくまで平静なメイドさん。途中で水と薬をもらった。

 「柚樹さん、お風呂行かない?」

 「おお、行くぞ、水がたくさんあるところは好きじゃ。」

ベッドの足下付近で寝ていた柚樹さんも起きてきて、いっしょにだだっ広く、一人と一匹(一樹?)にはもったいないお風呂に浸かる。だんだんと薬も効いてきて、ホッとする。一樹に今どれくらい?と聞くと、樹雷まであと5時間くらいかなぁと返ってくる。大変だけど頼むよ、と言うと、みんな居るから大丈夫だよ!と元気に答えてくれる。あんまり見ないネコ掻きで柚樹さんもぷかぷかと泳いでいる。二十数年前に飼っていた黒いネコは、水を極端に怖がったよな、とつれづれに思い出した。

 「あ、でもね、さっきから福ちゃんの様子が変なんだ・・・。」

 「へ?またどうしたの?」

あのかわいい、守蛇怪のエネルギージェネレーター兼コンピューターユニットが?

 「聞くと大丈夫とは言うんだけど、何かに耐えているというか、苦しがっているというか・・・。」

 「そうだ、近くに居る、瑞樹ちゃんはどう言っている?」

 「瑞樹ちゃんも何か力を使っているようなんだ。答えが途切れ途切れで・・・。」

 「西南君は?」

 「さっき起きたみたい。」

う~ん、ちょっと見に行ってみよう。いまは艦隊組んでいるから、

 「うん、転送出来るよ。さっきから通信入れているけど、途切れがちで・・・。」

慌てて、身体洗って、外に出ると着替えがきっちり用意されている。これは、平田兼光さんが着ていたような樹雷の作務衣のような着物だった。こちらでは、これが寝間着?かな。とにかくそれを身につけて、柚樹さんと外に出る。外で待っていたのか、メイドさんが現れる。

 「この着方で良いんでしょうか?」

 「田本様、お待ちを」

そう言って、襟元やひもの結び方を直してくれた。簡単な防寒・耐熱フィールドも装備されている。185cmの天木日亜の体型にきっちり合わせてくれていた。それにある程度体型の変化に対しても柔軟に対応するらしい。さすが樹雷の技術。これだけでも、今の日本の百数十年先を行っていることだろう。

 「ちなみに、樹雷皇家の服はもっと多機能だぞ。必要とあらば闘士として戦うことも用途として入っておるからのぉ。」

このあたりの技術だの、ナノマシン技術だの、お持ち帰りすると、たぶん数十年で物にするかも知れないが、なんか人外の兵士とか兵隊とかできそうだし、焦土と化した国が今よりさらに増えそうで、はっきり言って過ぎたるは及ばざるがごとしだろう。地球の樹達もそれを望まないと思うし。例の腕時計端末ユニットを携帯端末に変えて、普通に西南君にかけてみる。超空間航行中だけど、つながるのがまた凄い。鷲羽ちゃんにどうしてって聞くと、たくさんの数式を床に書き始めて、数時間は離してくれなさそうだけど。当たり前のようにワンコールで西南君につながった。

 「西南君、福ちゃんの様子がおかしいって?。」

 「ええ、さっき気付いたんですけど、何かに苦しがっています。え、鷲羽さんの荷物?」

 「ちょっとそっち行っても良いかな。」

 「どうぞ、どうぞ、来てやってください。霧恋さんも心配して起きたんです。」

わかった、と言って、携帯端末を切って一樹に転送をお願いした。グリーンのフィールドに包まれ転送されたところは、守蛇怪の西南君が居室というか、寝所に使っているこれまた大邸宅。これでも艦長用じゃないんじゃない?

 「こんばんは~。」

と声をかけると、大扉が開き、こちらもバイオロイドの執事さんが迎えてくれる。

 「こちらでございます。」

通されたところは、守蛇怪の邸宅のリビング。西南君はパジャマだし、霧恋さんも、ちょっと目のやり場に困るネグリジェだったりする。うわ、スケスケ。胸でかい。っとそれはともかく。確かに福ちゃんが尋常じゃないくらい苦しんでいる。ちょっといいかい?と福ちゃんを抱かせてもらった。いつもは人肌のぬくもりより少し暖かいくらいの福ちゃんが熱いと感じるくらい体温が上がっている。

 「福ちゃん、インフルエンザとか、かからないよね~。」

 「鷲羽様から、守蛇怪ごと頂いたというか、受け継いで、もう十三年くらいになるんでしょうか?今までそんなに熱持って苦しがるようなことありませんでした。」

そりゃそうだろうなぁ、鷲羽ちゃんの作だし・・・。あれ、さっきよりも少し熱くなった。

 「福ちゃん、一体どうしたの?」

と、ゆっくり問いかけてみた。

 「え、もの凄いパワー?もう耐えられない?こっち・・・?」

み~、と絞り出すように福ちゃんが鳴く。

 「田本様、瑞樹ちゃんも、もう駄目って・・・」

霧恋さんが右手の指輪を見ながら、真っ青な顔で言う。何々、なにが起こってるのよ?とこっちも慌てる。柚樹と僕と福ちゃん、、西南君と霧恋さん、転送フィールドに包まれる。そして、着いたのは、倉庫のようなところ。その片隅に、赤い光を放つ1m四方くらいの箱があった。いまにも破れそうに光があちらこちらから出ている。

 「これは・・・。さきほど、鷲羽様から樹雷へ持って行くように言われて積み込んだ荷物ですわ。」

 「鷲羽ちゃんと通信出来る?」

だんだんまぶしく光が増えてきている。

 「だめです。この箱から何かしらのフィールドが無作為に出ていて、外への通信は、今無理です。」

ブルーブラックのロングヘアーの女性、そうリョーコさんと雨音さんもこちらに転送されてきた。うわ、ふたりともスッケスケのネグリジェじゃん。扇情的な下着だけしか着けていない。すぐにネージュちゃんと呼ばれた女性も転送されてきた。

 「福ちゃん、だいじょうぶ?・・・・・・田本さん、福ちゃんも、瑞樹ちゃんもその箱からのエネルギーを必死で押さえ込もうとしているんだけど、もう、持たないみたい・・・。」

ほとんど皇家の樹と言って良い、福ちゃんと第2世代の瑞樹が押さえ込もうとして、白旗って、どないなエネルギーやねん!と突っ込んでも良いけど、ことは急を要する。

 「船外投棄は出来ないんですか?」

西南君が、だんだん強くなる光に、右腕で目をカバーしながら怒鳴る。

 「・・・・・・シミュレーション結果出ました。今通過中の星系がいくつか、いえ、下手すると銀河のオリオン腕が消滅するそうです。」

もしかして、こないだやった手なら・・・。皇家の樹の力を5樹、曲がりにも受け止められた・・・。とにかく、何とかしないと・・・。

 「水穂さんと、籐吾さん、謙吾さん、神木あやめさん、茉莉さん、阿知花さん、そして瀬戸様を呼んでください。なるべく早く。」

 「なんで、わたしが最後かしらねぇ・・・。」

扇子でペシペシ肩を叩きながら、苦笑しながら瀬戸様と平田兼光さん、天木蘭さんが転送されてきた。

 「瀬戸様、良かった・・・。このままでは守蛇怪他この艦隊が全滅します。一つ、案なんですが・・・。」

僕が、この荷物を、と言うかエネルギーを受け入れ、どこか安全なところで放出すると申し出た。瀬戸様の顔色が変わる。しかし、この方法しか最も安全な方法は無い。

 「守蛇怪の皆さん、そして瀬戸様、超空間ジャンプアウトし、この星域周辺で赤色巨星や滅びかけた文明など、生命エネルギーのような物を必要とする物、すべてリストアップしてください。」

生命エネルギーというのは、単純に直感である。籐吾さんを救った力、認知症のお婆ちゃんを少しでも元に戻した力だし。

 「一樹、柚樹さん、迷惑かけるけどいいかな?」

 「なにを言う(んだよ)か、我らは共にある存在ぞ!」

よし、樹が共にあるならば心強い。

 「・・・全員、この部屋から待避ください。」

 「イヤよ(だ)!」

何人もの、そんな声が聞こえたような気がする。後ろを見ず手を振って、その今にも破裂せんばかりに光を放っている箱に向かって歩いて行く。あと、2m程度まで近づいたときにバンっと箱が破れる。中心に赤く輝く球体があった。右手で光を防いでと思ったら、目の前に三枚の光應翼が現れる。半透明のエネルギーの羽が赤いエネルギーを吸収しているのか大きくなっていく。左手でゆっくりとつかみ取った。なんと光應翼を透過してつかめた。それを抱きしめる。しかしエネルギーの増加は止まらない。あかんわ、これ。むちゃくちゃ強力だわ。

 「一樹、柚樹、付いてこい!。さっきのデータ、一樹に転送しておいてください!」

とにかく、外に出ないと!その想いばかりがある。想いに答えたのか、一瞬で宇宙空間に自分が在った。左手の甲あたりにさっきの球体がとりあえず定着しているようだった。しかし、まだエネルギーは上昇を続けている。まずは、ええと、数光年先に赤色巨星化した星、十数光年先に褐色矮星、と近くに一樹と柚樹の気配を感じて、それごともらったデータの座標へ空間転移する。そしてその恒星に向かってエネルギー放出を試みる。

 「死に行く星よ、迷惑だろうが、受け取れ!」

左手を胸の前に持ってきて、左手の甲にある赤い球体をその星に向ける。余剰というか溜まり溜まったエネルギーが死に行く星を包む。するすると、目に見えるようにそのサイズを小さくして、若々しく青白い光を強く放つ星に戻っていった。まだまだ、エネルギーは湧いてくる。この球体なんなんだろう?しょうがないので、十数光年先の褐色矮星へ跳ぶ。

 「死に行く星よ、迷惑だろうが・・・。うりゃ!」

というか、ほとんど死んでしまった星かも知れない。同じようにエネルギーを放つ。一瞬赤黒く大きくなり、それがまたするするとしぼんでいき、黄色く光を放つ恒星に戻っていく。僕のすぐ近くに焼けただれた惑星を発見する。ちょっと気が向いたので、そこにも・・・。赤く焼けただれた惑星は、みるみる青く、水を取り戻し白い雲に覆われていく。何億年かあとにまた会おう!と思ったりする。死に行く運命を受け入れている者にとって、ある意味「時の拷問」かも知れないが、もうひとがんばりお願いしますよ、と。

 そうやって近傍のと言っても半径数百光年程度の広さに散らばる、死にかけた恒星達、十数個にエネルギーを分けたというか、投棄したところでようやく赤い光が収まる。いんやぁ、すごかったのだぁ。とホッとすると、身ひとつで宇宙空間に浮かんでるし!。

 そう思ったら、一樹のブリッジに転送された。なんか、つかれた~というか気疲れしたぁと、どっと一樹のいつもの席に座った。

 「何とかなったなぁ。一樹、柚樹さん。」

 「ほんっとうに無茶するやつじゃのぉ・・・。」

 「また水穂さんに怒られるよ。」

ぐ、痛いところを突く。あきれた顔の柚樹さんだった。しかし、この球体なんなのよ、とみると左手を見ると左手の甲にめり込んでいる?しかも縦に少し楕円形になって手の甲にきれいに埋まっている。

 「うわあああ、これ、外れないよぉ。」

右手で引っ掻こうがなにしようが外れる気配はない。

 「ほんっっっっとうにバカな子だねぇ。まったく・・・。」

目の前に半透明のディスプレイが出て、鷲羽ちゃんのドアップが映る。

 「ここで、エネルギー暴走するとはね~、いんやぁ、参った参った!」

あーはーはー、と頭を掻いている鷲羽ちゃん、突然ごいん!と言う音がして画面から消える。

 「大丈夫ですかっ、田本さん。なんか鷲羽ちゃんの物が暴走したとか・・・。」

ちょっと作務衣に似た作業着姿の天地君が出る。

 「うん、艦隊ごと、と言うか、オリオン腕ごと消えて無くなりそうだったんで、この辺の死にかけた星に余ったエネルギーをばらまいてた。」

 「・・・天地殿も、最近手加減しないから・・・。」

そう言って、頭にでかいバッテン絆創膏を貼った鷲羽ちゃんが画面下から現れる。すぐに真っ赤になりうつむく。天地君もそっぽを向いていた。

 「あのさ、田本殿、何か着ておくれな。」

へ?と思って視線を下に向けると、うわ、着ていたモノが無い!。またばささっと頭から何か降ってくる。

 「ま~た、服と、携帯端末、消し飛ばしているよ!」

一樹がやれやれと言った口調で言った。うっっわ~~と慌てて、転送された服を身につける。あれ、これ樹雷の服だな。

 「水穂さんが、あっちで着られるようにと準備していた、樹雷の普段着だよ。式典用はまた着せてくれるんだろうと思うよ。携帯端末は、僕の工場で以前のデータを使って作っているからちょっと待ってね。」

ありがとう一樹と声をかける。いやそれどころじゃない。

 「鷲羽ちゃん、これ、この赤いのなに?」

右手で、左手の甲に埋まっている球体を指差す。

 「天木日亜殿が撃破した、海賊艦隊の旗艦に使われていた、エネルギージェネレーターさね。そう、火曜日に籐吾殿が木星から引き上げた残骸に眠っていたものだよ。」

どうも、守蛇怪に頼んで樹雷に輸送中だったらしい。

 「あ~あ、見事に、綺麗に融合しちゃってるね~。実は、さ。」

シャンクギルドが研究していた、赤い宝玉と呼ばれるエネルギージェネレーターらしい。皇家の樹に匹敵するパワーを出せるが、ある物のコピー品のため、制御が難しく、天木日亜さんの時も暴走した形跡があるそうである。

 「皇家の樹と違って、そいつは意思のない、ただのエネルギージェネレーターだからね。そう、力に善悪はないから・・・。でも良かったよ、田本殿で。」

なっはっは、と額から冷や汗を流しながら笑いとばす鷲羽ちゃん。背後で、ふるふると拳を握って、うつむいている天地君。

 「いんやぁ、守蛇怪だから、まず大丈夫だと思ったんだけどね~、しかも皇家の樹の艦隊だし。まさか暴走しちゃうとはね~~、安定してたんだけどね~~。」

 「最近、鷲羽ちゃん、瀬戸様に似てきてますよ。」

ジト目で、鷲羽ちゃんを見る。びしいっっっとなぜか石化する鷲羽ちゃん。さらにピシッと亀裂が入って、そこからぱらぱらと破片がこぼれるビジュアル付き。

 「ええと、その石化ビジュアルはどうでも良いので、これ、どうしたら良いか教えてください。」

天地君が、ごめんね~と木槌で鷲羽ちゃんの頭をコンコンと叩くと、表層が落ちていつもの鷲羽ちゃんになる。あんたは、沈没戦艦に偽装してたのかい!と思ったり。

 「とりあえず、こっちに帰ってきたら、検査するから。今のところ身体に変調は無いんだろ?あんたの意思という極上の制御ユニットが出来たしね。」

 「もしかして、僕がこれを制御しろと、しかもこの子達も居るのに?」

とりあえず、目の前の柚樹さんを見る。右手を上げて顔を洗っていた。

 「そうだね~。たぶん大丈夫だよ。あんたは、その力を破壊に使わなかった・・・。それだけでもう充分だよ。ちなみに、守蛇怪、福の額の赤いやつに似た力を出せる物だから。あれほどの力は無いから安心しとくれな。」

 「ちなみに、どれほどの力があると?」

額に青筋が立つのが分かる。左頬が引きつる。

 「う~ん、こないだのこともあるし、それも含めると、もしかして第1世代の樹を越えるかもね~。あっはっはっは。」

またも、ごいんっと激しい音がして、鷲羽ちゃんが画面から消える。田本さんの代わりに殴っといたから、じゃ、気をつけて行ってきてください、と天地君ごとディスプレイは消えた。はあああ、とため息をつくと、周りに水鏡他の艦隊がジャンプアウトしてきた。ブリッジにみんなが転送されてくる。

 「あなた!、大丈夫ですか?」

席から立つと、水穂さんが泣きながら胸に飛び込んでくる。その次に瀬戸様、あれ、天木蘭さんまでいる。

 「ええと、ごめんなさい。また服と携帯端末消し飛ばしちゃいました。」

狭いわね、あなたどきなさいよ、瀬戸様は内海様が居るじゃないですか。ウルサいわね、わたしだってこの人が好きなんだから、あんた、関係ないでしょ、うふ、わたしも好きになっちゃった、と3人の女性がぼそぼそ、もしゃもしゃ言っている。3人が右手を伸ばして、ぴしゃりと頬を叩かれた。ううう、痛いのだ。

 「俺、やっぱりね、この人に首輪付けようかと思うんですよ。」

うんうん、とみんなが頷いている。そう言った謙吾さんも籐吾さんも涙目だった。

 「田本さん、ごめんなさい。まさかこんなことになるとは・・・。」

福ちゃんが、申し訳なさそうな顔でみゃああ・・・、と西南君の腕の中で鳴いている。

 「あ、そうだ、福ちゃん、もう大丈夫?」

みゃああんと、西南君の腕からジャンプして、瀬戸様の頭に飛び乗って、そこから僕の肩に乗る。そして一生懸命スリスリしてくれた。とってもかわいいのだ。

 「あら、福ちゃんに一本取られちゃったわね。」

瀬戸様が上目遣いに、こっちを見る。これ幸いに、ご報告である。

 「鷲羽ちゃんの話では、これ、福ちゃんの額の物と似たものだそうで、守蛇怪に頼んで樹雷に運ぶ途中の物だったようですけど・・・。どうも途中で暴走したようです。」

引きつった笑い顔で、左手にはまった赤い球体を右手で指し示す。

 「この間の木星から引き上げたやつでしょ?それ。シャンクギルドが研究していた物というウワサの。なんか見事に融合しちゃってるわね。」

しげしげと瀬戸様が左手を見ている。

 「鷲羽ちゃん、とりあえず力の善悪は無いと、それで皇家の樹並みの力を頑張ってあんた制御しなさいと、言われちゃいました。」

 「あなた、それで赤色巨星とか、褐色矮星に行ったのね・・・。」

ええ、まあ、死に行く星ならエネルギーを投棄しても良いかなぁって。まさかオリオン腕を消すわけにはいかないし、と言うと、にっこりと微笑む。

 「まあ、いいわ。あなた、これでまた逸話が増えたわね。あの英雄守蛇怪の危機を救い、皇家の樹の艦隊をエネルギージェネレーターの暴走から救った・・・。それにオリオン腕の崩壊も食い止めた・・・。」

 


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