天地無用!~いつまでも少年の物語~。   作:かずき屋

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伏線張りまくり~~、だけど使い切れるのか心配です(自爆)。


続いての章3

「晩ご飯のおかず買って、わんこの散歩行かないと!。」

ざばばと立ち上がって、洗い場に行く。しかし広くて綺麗な風呂である。基本的には木造のようだが、その木が結構太いのに微妙なカーブを描き、透明天井を支えるようなデザインになっている。結構健康ランドとか好きでよく行ったりするけれど、こんなデザインを見たことはあまりない。

 視線を感じ振り向くと、なぜかこちらを凝視する天地君。ちょっと寂しそうな、悲しそうな雰囲気もある。あんなにたくさんの女性に囲まれて何が不満というのだ!(笑爆)。

 「うん、どうしたの??。」

 「い、いえ、何でもないです。」

 「天地様、田本様、着替えをここに置いておきますね。」

ノイケさん完璧だぁ(爆)。

とりあえずは、身体洗って、元々着ていた服を洗ってくれたのだろう、丁寧にたたまれたジャージとTシャツを身につけて、慌ただしく風呂場を出る。

 「じゃあ、今度こそごめん、帰るわ。パソコン調子悪かったらまた言ってね。」

 「こちらこそ、済みませんでした。いちおう明日連絡入れます。」

ぺこり、と綺麗なお辞儀をする。身体鍛えているんだろうなぁ、動きがなめらかでスムーズである。作務衣の様な着物?越しにも引き締まった筋肉が綺麗に動いている。

 「ええと、やっぱり、こなきゃだめ???。」

なんだか、こう、最終防衛ラインとか太陽系絶対防衛ライン、みたいな予感がしまくってるんですけど・・・・・。

 「はい!お待ちしています。」

出るのはため息ばかりなり。なぜかうれしそうな天地君。今度こそ、鷲羽ちゃんにつかまると結構大変そうなので、天地君に頼んで荷物を取ってきてもらって、クルマに積む。

 「うちのわんこ、おしっこちびっちゃうといけないから、これで帰るね。皆さんによろしくお伝えください。」

 と言って、エンジンかけて脱兎のごとく飛び出す。とりあえず、お土産持って行ったし、借りは、ないと思う(笑)。ふうう、今日のところは逃げられたぜ!今日のところはったって二日だけど。

 ぶううういいいん、とちょっと古い僕の軽自動車は快調に走る。このクルマは、どこかで一〇万キロほど乗られて、近所の整備工場に引き取られ、代車として余生を過ごし、昨年3月に水漏れやら塗装の劣化やらがあって廃車予定で眠っていたクルマである。

 元々好きな形式のクルマだったので、整備工場に交渉してクルマ自体はタダで譲ってもらって不具合を直し、塗装も少し直してもらって乗っている。誰も見向きもしないクルマだけれど自分はこれで良い、し、好きで乗っている。

 左に方向指示器を出して、歩道を越えてスーパー山田の駐車場に入る。このあたりでは非常に人気のスーパーで盆・暮れ・正月などには駐車場整理のため警備員が出動するほどである。

 今日は、両親共に妹夫婦の家に行っている。晩ご飯は適当に調達しなければならない。別に全国展開しているお弁当屋さんでも良いし、コンビニでも良いけれど、圧倒的にスーパー山田のお総菜が美味しい。

 店に着いたのは午後6時過ぎだった。買い物かごを持ってお総菜コーナーに行くとやっぱりほとんどが売り切れている。3割引になるのは午後7時になのに・・・。ま、残り物には福があるとも言うし。

 お、でも自分の中で結構順位の高い「メルマス・カリー弁当」と「旨味ひじきの炒め煮」、「バルタ印のポテサラ」、「火煉の唐揚げ」が残っている。特にメルマス・カリー弁当はコクと辛みのバランスが良くしかも、鮮烈な辛みがあとから来る。それで480円というのがすばらしい。火煉の唐揚げは、これがお総菜??というほどジューシィであっさりとしていながらしっかりついている下味が美味で、そこらの中華料理店の唐揚げを遙かに凌駕している。コーナーに残っているものはすべて買い物かごに入れて、今度はスイーツコーナーに行く。ここもほぼ全滅であった(笑)。おお、なんとか一個残っている。「柾木家の冷たいキャロットグラッセ。」ぐっと詰まった甘みが作った人の人柄を感じさせる。しかもニンジン特有の草臭さのようなものをわずかに残してスパイスにしている。もちろんそれも買い物かごに入れて、鼻歌交じりにレジに並ぶと、昨日会った霧恋さんがレジ打ちしている。

 「あ、こんばんは。昨晩はお世話になりました。」

 「いえいえ、こちらこそ。」

ちょっと目を伏せがちに小声で言う。なるほど、立場上この場所で面識があると他人に思われるのもまずいのかもしれないな、と思い表示された金額のままにお金を払い、あとは特に目を合わせない。事務的な「ありがとうございました。」との言葉を背中に受けて袋に詰め、外に出る。

 帰宅すると、我が家の柴犬ポッキー君がうれしそうに待っている。おとなしくほとんど吠えない犬である。やかましくないので良いのだが、お腹がすいたときとおしっこの時はキュンキュン言って要求が通るまでやめない。

 お散歩セットを持って外に出て、いつものコースをぐるっと回って帰ってきた。

う~~、やっと自由な時間だ。ま、でも天地君のうれしそうな顔が見えたから良いか。

 買ってきたお総菜をレンジでチンして、テレビつけて、グルメ番組を漫然と見ながらお食事。うん、今日はそこらのグルメリポートよりもこっちが勝ってる、と思えるほど美味しい。これだけで1500円少々である。スーパー山田には足を向けて寝られないなぁと思う。食べ終わり片付けして、自室に引きこもることにする。明日は、とりあえず午後からちょっと心も重い柾木家訪問があるが、ま、なるようにしかならないでしょう、結局のところ。

 愛用しているメッセンジャーバックをクルマから降ろして、パソコン復旧スペシャルセット(笑)を片付ける。メールの確認してネットサーフィンしようと自分のパソコンをポチッとな。

 Linuxとのデュアルブートなので起動途中で一時停止して、どちらを起動するかメニューが出てくる。あれ、見たことないメニューが追加されている。昨日か一昨日アップデートを試したんだっけか・・・・?とりあえず、いつものウインドウズを選んで起動。メールチェックして、新手のスパムメールをメールソフトに認識させて振り分け対象にする。ひととおりWEBをサーフィンしてシャットダウン&再起動。さっきの気になるメニューを起動してみる。

 一瞬真っ暗な画面になり、小さな白い矢印が出て、「JYURAI_OSversion3.47」の文字が点滅し始める。その後、どこかと接続してダウンロードバーが現れ、見たこともない速さで何かのダウンロードを始める。うわっやられたウイルスか!と思って、電源ボタンを長押しするがシャットダウンしない。くっそ~~、システム崩壊は何とか回避せねばと、ACアダプターを抜き、バッテリーを外しても画面が消えない。万事休すと、しばらく画面を眺めていたら電源に接続してくださいと明朝体の日本語で出た。

 大丈夫なのかなぁと、バッテリーとACアダプターを戻す。だいたい、ウイルスだと、文字化けしてしまうか、変な英語の画面になるとか日本語でも無理矢理訳したような言葉になる。でもおかしい、バッテリーがないのになんで動くんだろう・・・?

 そういえば、あのねとねと君4号にのしかかられて、天地君ちのお風呂で気がつくまで2時間半の空白時間がある。しかも鷲羽ちゃんの目の前に起きっぱなしだった訳である。なにやらおかしなことをされていても不思議はない・・・。

 でもなぁ、今まで何の接点もなかった一介のおっさん公務員になぜそこまで手を尽くすというか気にしてくれるのだろう。金曜日にまずいものを見たというなら、記憶を消して、役場の情報をわからないように改ざんし、処置の終わった僕をクルマに乗せて、道ばたに駐めておけば誰も気づかないだろうに。

 そうでなくても、昨日のお酒に何か混ぜておいて、今朝の目覚めと同時に記憶を消すとか何とか・・・。それにナノマシンとか当たり前に使ってそうな気もする。そういうものをどう使えばどうなるかは、SFのお話の中のことしか知らない。実際2014年の日本にはまだそういったテクノロジーはない。

 柾木天地君を取り巻くあの家には、何らかの謎がある。そして、金曜日の柾木神社訪問が何か大きな出来事の引き金になってしまったらしい。あのみんなの驚き様から彼らにとっても想定外で、しかも僕の身体まで巻き込むあの熱気バーストのようなものは、さらに上を行く想定外のようだが、彼らは何らかの手段で押さえ込むようなことも出来ること。

 そして、皇家の樹、コアユニット、というキーワード。そして、僕にだけ見えた赤ん坊とその母親の様なビジョン、謎のクルミの様な種とそれの発芽・・・。う~~~む、じっちゃんの名にかけても何も出てこんし、座禅組んで口でぽくぽく言ってもなんもでてこない(笑)。やっぱり明日誰かさんのぬるぬる君だかべとべと君だかの襲撃を覚悟で行くべきなのか・・・。

 眼鏡を外してみると、お腹のお肉もない。冗談で以前職場の人に言われていたが、「夜になると後ろのジッパー開けて脱ぐんだろ?その肉襦袢。」を脱いじゃった状態なのである。本当にあの「エネルギーバースト」の修復に余剰細胞が動員されたのか・・・。洗面所の鏡に映すとアスリート体型とは言えないが、脂肪に隠れていた筋肉がそこそこ出ていて、まあ、うえのTシャツ脱いでも見せられる体型になってしまっている。腕を上げたり下げたりしながらしげしげと見ていると、首の後ろの肩胛骨の上ぐらいにうっすらと正方形の傷跡があり、同じものが両脇の下にもある。はて、何だろう、痛みもないし腫れもないしもちろん痒みもない。

 今日一日、身体を動かしてみたが、ちょっと階段上がっただけで息が上がっていたのもそんなことは起こらなくなっている。まあ、これだけでもみっけもんだろう。何せ健康診断で「要医療」とか出ていたし(爆)。


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