天地無用!~いつまでも少年の物語~。   作:かずき屋

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魎皇鬼ちゃんにごめんなさいプレゼントと、あの「種」との再会。


続いての章8

よくわからないけど、いろいろとご迷惑かけているようだし、ここは素直に着替えて家を出る。ジャージはさすがにまずいような気もするので、ベージュ色の綿のスラックスと白いポロシャツにしておく。体型以外ははっきり言って記憶に残らないような服装である。役場職員はこういうカッコが一番である(笑)。そうだ、魎皇鬼ちゃんにも迷惑かけたようだから、ちょっとしたお礼に、某アニメの小道具で、おもちゃだけど青く光る飛○石をあげようっと。これ衝動買いしたんだけど、さすがに自分で持つわけにも行かず・・・。あと木で出来た曲玉も・・・。簡単な箱に入れて持って行くことにする。あ、そうそう、さっきの激安SSDのコンビニ決済、番号確認して、と。キッチンに書き置き(友達の家のバーベキューに呼ばれたから行ってくる。晩ご飯はいらないよ。)おいて。

 愛車の青い軽自動車(古い方)のドアを開ける。真夏の熱気が車内から吹き付けてくる。暑いのをガマンして乗り込んでエンジンをかけると、快調にアイドリングを始め、ギアを入れて、ぶいいんと一路手近のコンビニへ。店内に入って、専用端末を操作して決済用レシートを発行してレジで支払い。これで、明後日くらいには届くかな。

 さて、ただいまの時刻は、午前11時半。柾木家、大人数だからお昼時に行っても大丈夫なのかな・・・。う~~ん、普通迷惑だよな。鷲羽ちゃん、ご飯用意しているとも言ってないし。よし、適当に食べていこう。

 役場近くの中華飯店でいつものラーメン焼きめしセットを頼む。ここの焼きめし、ご飯のパラパラ具合が最高で、出汁のきいたちょっと薄味のラーメンがうまい。餃子も美味しい。飾りっ気は無いけれどお気に入りのお店の一つだったりする。

 ゆっくり食事して、ホッとお冷やを飲んでると、スマホが鳴る。仕事の電話で無いことを祈りながら画面を見ると柾木天地君だ。

 「もしもし、今どこにいますか?。」

 「ああ、天地君か。今、中華の菊花楼で昼食ったところだよ。昨日は夜遅く申し訳なかったね・・・さらにいろいろなことを起こしてるみたいだし。」

 「俺的には、全く問題ないんですけど、それじゃ済まない方々が実はうちに、これからいらっしゃるようで・・・。」

 「は?。」

 「ええい、もうぶっちゃけます。樹雷皇家の現樹雷皇とそのお后様の船穂様と美砂樹様のお二人と、美砂樹様のご両親で神木家の方と、天木家からもお一人いらっしゃるそうです。そうだ、立木家からは別の用事だけど、「是非見たいわ!」ということで」

 「ほぉおお?。」

 「皇家の方々は今日の夕方到着します。」

 「ええと、お腹痛いから今日はごめんなさい、と・・・・・。」

 「お腹痛くても、胃がでんぐり返っても、這ってでも来てください。来ないともっとひどいことになりますよ、そういう人達です(笑)。まあ、怖い人達では無いと思うので、気楽に来てください。でも必ず来てくださいね。」

 クスクスとした笑い声が死ぬほど怖いんですけど・・・。いったいこのお宅は何と繋がってるのか?湧いて出ては積み重なる謎!田本レポーターは勇躍秘境柾木家へと歩を進めるのでありましたぁっっっって力んでもしょうがないし、取って食われる訳でも無いだろうし(笑)。町長だの町議さんだのの方がずっと実害、いや失礼!実際の影響は大きくあったりする。

 また暑い空気がもわっと出てくる、クルマのドアを開けてエンジンかけて、今度こそ柾木家へハンドルを切る。ほんの20分程度で到着した。木々も青々として、ホント夏である。田んぼは、もう水面は見えないくらい稲は大きくなっている。そろそろ稲の花の時期だなあ。暑いと良いなぁ。昨年は長雨で受粉がうまくいかず、例年よりも収量は少なかったのだ。

 

 例によって、呼び鈴をぴんぽ~~んと。

 「こんにちは~~。」

奥のキッチンから、どたたたたと駆けてきたのは魎皇鬼ちゃんだった。走ってきてちょっとふくれっ面をして、腰に手を当てて玄関に仁王立ち。

 「あ、魎皇鬼ちゃん。昨日はごめんね。それにいろいろお世話になったそうだね。はい、これ簡単なものだけどプレゼント。」

ちょっと不機嫌そうな表情が少し柔らかくなる。

 「みゃあぁ、じゃない、ありがとう田本さん。」

青く光らせて両目を寄せて、見入っている魎皇鬼ちゃん。かわいらしい子だなと思う。でも微妙に誰とも似ていないような気がする・・・。

 「こんにちは。田本さん。早速ですが、こちらへ。」

ノイケさんが階段下の扉を開けて呼んでいる。

 「はい。」

小さめの扉をくぐってはいると、そこは大研究室の様相である、というか、なんだかアニメに出てくるような大研究所であった。巨大なディスプレイが真ん中にあり、その下に様々な機器に埋もれるように座っているのは、妖怪砂かけおババ、じゃない鷲羽ちゃんである。

 「ようやく来たねえ。昨日からホント驚かされっぱなしだよ、あんたには。」

にかかっっって人を食ったような笑顔がやっぱり怖い。

 「ちょっと、樹雷の方がエラいことになっていてね、今夜は大変なことになりそうだ。」

 「何がエラいことかわからんだろうから、まずはその一、あんたが選ばれちまったあの種のその後だよ。」

 指さす方向を見ると、赤い楕円形のラグビーボールのようなものの上部を切り取って丸いキャノピーをつけたような物体がある。大きさは長さ20mくらいで、奥行きは暗くてわからない。

 「これが皇家の樹のコアユニットで、別名皇家の船と呼ばれている。」

 「・・・船って、も、もしかして宇宙船ですか?。」

役場のおっさんには想像を超える代物である。SF好きでなければちょっと耐えられず発狂しそうな感じ。

 「ああそうだね、航行エネルギーは無補給でOK。航続距離はほぼ無限大。超空間航行も可能。最大出力で攻撃すると、これは身をもって知っているね。」

 「外壁に触ってごらん。あんたが生体認証キーになっているはずだから。」

スッと視界が暗転し、次の瞬間には明るいところに出る。直径2mほどのサークル状の真ん中に小さな若木が植わっている。と思ったら、ぱあああっと金曜日のあのときのような光が僕の全身をサーチするように駆け回る。なんだかちっちゃい子犬がたくさんじゃれつくような、くすぐったいような、一匹一匹モフモフしたいそんな愛らしい感触である。

 「やっとお話し出来るね。」

小さな若木に向かって話しかけてみる。

 「うん、待ってたんだよ!。昨日は楽しかったんだ!。」

驚くほどの情報が、高速ダウンロードといった感じで頭に流れ込んでくる。

 「も、もうちょっとゆっくり言ってくれるかなぁ(笑)。」

さすがに人間の処理能力を超えている。頭痛になりそうな一歩手前でゆっくりと映像が流れ出す。樹雷でたくさんの樹と話したこと、教えてもらったこと。魎皇鬼ちゃんと、近くまで帰ってきたらスターボウを見たいと急に思ったこと、でも暗くてそんなものはあまりよく見えなかったこと。そのあとは、大西洋に潜ってかつて大陸だったものを探してみたくなったこと。そしたら隣のクリスタルのようなものに入っている、白く光る樹を見つけたこと。ほとんど一瞬でいろいろ話してくれた。こりゃ、魎皇鬼ちゃんにちゃんとしたお礼をしないとね。

 お、またスマホが鳴る。今度は鷲羽ちゃんだ。

 「そろそろ中に入れてくれないかねぇ。」

 「ええ?でもどうすればいいんですか?。」

 「樹に話しかけてくれるかい?お友達だから大丈夫って。」

 「今そこに誰々いますか?。」

 「わたしと、魎皇鬼と、ノイケ殿と、天地殿と砂沙美ちゃんだねえ。」

目の前の若木に話しかける。すると、五人が即座に転送されてきた。

 「さて、まず名前をつけてもらおうか・・・。この若木の名前さね。」

 「ああ、それなら安易ですが、自分の名前が一樹(かずき)なので同じ字なんですけど、一樹(いつき)と言う名前にしたいと思います。」

 「そうかい、一樹殿か、良い名前だと思うよ。」

 「おめでとう。これでみんな家族と一緒だねっ。ね、天地兄ちゃん。」

 「そうだね、砂沙美ちゃん。」


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