天地無用!~いつまでも少年の物語~。   作:かずき屋

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第三章を始めてしまいます。

さすがに書きためておいたのも底をつきました。これからゆっくり更新していきます。


柚樹との対話1(第三章)

~第三章~

 

 マスターである天木日亜が眠ると、柚樹は周辺探査モードを駆使して情報を探査し始めた。生き残っていた探査プローブを打ち出し、現在位置および目標惑星の情報を集める。 このG型恒星系で軟着陸したのは、第三惑星の衛星。この惑星と衛星の関係は結構珍しい。衛星が少し大きすぎるのである。また惑星の方は、樹雷本星と比べ重力は、少し弱い程度でほぼ変わらない。液体の水が存在し、衛星からの眺めでは水色に見えるが、濃い雲に覆われている。地表の温度は絶対温度で平均300度程度。湿度はかなり高く70%~80%程度ある。大気組成は酸素20%、窒素75%、あとは希元素だとか二酸化炭素であり樹雷本星と変わらない。バクテリア、病原体も現在の医療用ナノマシンで対処可能であった。ほとんど何も手を加えずとも移住可能な惑星で、この広大な銀河で非常に希な惑星と言えた。

 樹雷本星に比べると、かなり蒸し暑い気候と言える。また、温血動物と冷血動物の中間のような大型動物が惑星の各地に見られることからかなり繁栄しているようであった。ヒューマノイドタイプ、外観ではほぼ人類と言って良い生物も確認出来た。個体数は数十億人レベルで、樹雷人と変わらない体格で肌の色も大きな差異はなかった。文明としては、恒星間航行能力はおろか惑星間の移動もままならない状態で、樹雷で言うところの初期文明の段階だった。樹雷の伝説にある「シード」を行った文明の結果である可能性がある。超空間通信が行える状態であったならば大発見と言えるものであったが、現在の状態では情報を精査、記憶し来たるべき時にデータとして受け渡せる状態にする必要がある。

 現段階で、この第三惑星上の知的生命体に発見される恐れがあるため、全プローブと真砂希姫の船そして自分に不可視フィールドを張る。また同様のフィールドを張った、電波傍受および偵察プローブ2機を惑星上に降下させ厚い雲から下の情報を集める、が何もしなくてもかなりやかましい種族(笑)のようで、電波は大量に惑星外に漏れ出ており、情報ネットワークも発達している様子で、柚樹にとっては簡単に読み解ける情報だった。

 最初の2時間程度で、樹雷言語との対訳辞書が完成し、この惑星の概略歴史も収集完了する。途中、不可視フィールドを張ったプローブがこの星の個人用飛行機械と接触しそうになるがかろうじて上空へ逃れた。重力制御を行える科学技術があり、かなりそれは普遍的にこの星の種族は使っているようである。

 惑星上を行き交う情報より得た概略歴史によれば、この星には大きな大陸が二つあり、その大陸二つとも低くなだらかな丘がある程度で高い山脈はない。小さい方をアトランティス帝国、大きい方をムー帝国と言い、戦争等のいざこざは絶えないながら、何とか種族絶滅の危機は回避している、そんな状態らしい。文明を支えるエネルギーシステムについては、電力が中心で、それを得るのは巨大建造物を特殊な形に構築し、その莫大な重量をうまく電力変換出来るシステムがあるらしい。その電力に変換されたエネルギーは、世界各所にある無線送電システムにより様々な場所に潤沢に届けられている。樹雷で言うところの核融合エネルギーの大きさに匹敵するが、この星では現段階では惑星上から出ることに関しては消極的であるようだ。

 この重力エネルギーを電力に変換するシステムに関しては完全なクリーンエネルギーといえ、樹雷としてもかなり有用な技術と言えた。プローブから得られた情報を解析し、船内の大容量ストレージに保管する。エネルギーシステム詳細は、四角錐の建造物を決まった比率で建造し、生じた莫大な重力を一種の地盤との圧電効果によって抽出、それを無線送電システムにより全世界に給電するらしい。

 また、多神教の宗教のようで他者に対しては比較的寛容な種族であるらしい。真砂希姫の性格上、この星に降りると言い張ることであろうから、その候補地もいくつかピックアップする。柚樹もマスターの癖や苦労性を見事に受け継いでいた(笑)。

 あとは、船二隻にあるもので、この地の通貨と交換出来そうなものを情報の海からリサーチする。さらにこの星に降りたって、目立たない服装もリサーチし船内工場で生産を開始する。綿や絹、麻のような素材であるらしく、このあたりも樹雷とさほど変わらないのがありがたい。金や銀、レアメタルの類いは結構お金になるらしい。結構情報が集まったところで天木日亜の設定した時間が来て、治療ポッドの扉が開く。

 

 「おはよう、柚樹。銀の葉の具合はどうだい?」

 「特に問題ありません。依頼されていたこの第三惑星の情報です。」

いくつかのホログラフィ・スクリーンが開き、情報を表示する。

 「おお、さすが柚樹だな。・・・ふむ、環境は驚くほど樹雷と似ていて、ウイルスや細菌類も医療用ナノマシンで対処可能か・・・。結構な文明があり、50億人ほどの樹雷人と酷似したヒューマノイドがいる・・・。まだ初期文明段階だな。」

 「そうですね。私たちが生活するのには、ほとんど問題は無いです。」

 「逆に、我らが宇宙から来たことなどを偽装するのが難しそうだな。」

ふわりと七色の神経光が天木日亜にあたり、三次元映像を天木日亜に重ねる。

 「いくつか人里離れた地域をピックアップしておきました。しかも、この惑星のファッションをリサーチ済みで比較的目立たない服装もご用意してあります。」

 「さすが、柚樹だな。外見はほぼ変わらないから、言語・習慣などをナノマシンに乗せてインストールしてくれ。まずは降りてみてヒューマノイドの遺伝子などを調査しよう。」

 「了解しました。また、物々交換も可能なように、船に乗せてある物品のうちで比較的かさばらず、この星の通貨に換えられそうなものをご用意してあります。それもお持ちください。」

 「わかったよ、柚樹は本当に賢いな。まず、真砂希姫をこの船にお迎えし、我が家にお招きしよう。そして、惑星に降りるときに目立たないシチュエーションと場所をいくつか考えておくれ。」

 はにかむような笑顔で天木日亜が言う。左ほほの刀傷に似合わない優しい言葉が出る。

 

 

 「そんなわけで、天木日亜と真砂希姫は、この地に降り立ったのだ。」

ふわりと現実感が増す。長い物語を見ていたそんな感じ。静かで銀色の明滅する光は柚樹のユニットの中であることを思い出させ、そしてわずかに香るのは柚の香りが今居るという感覚をはっきりさせた。時間は、あれから5分と経っていない。

 「・・・やっぱり、すごいじゃないですか。と言うか、軽々しく凄いなんて言えない記憶ですね。NHK大河ドラマを一気に見たような重みがあります。」

 「そうか。これほどの情報を話して聞かせたのも1万2千年ぶりか・・・。田本とやら、疲れとか身体に変調とかはないのか?。」

 そういえば、大迫力大長編映画を見たような快い疲れ、みたいなのはあるが、一樹がバックアップしてくれているせいか特にそのようなものはない。

 「そういえばそうですね、数日前まではこんなこと、やったことが無かったんでした(笑)そうだ、一樹、バックアップはとれている?」

 「大丈夫だよ。田本さんとのリンクを使って情報処理そのものはこっちで肩代わりしているんだ。」

 「鷲羽ちゃんやみんなは?」

 「今夜の用意があるからって、コアユニットから出て行ったよ。鷲羽ちゃんは隣の研究スペースでモニターしてくれているみたい。」

 「柚樹さん、でいいですか?ちょっと電話かけさせてください。」

 「おお、いいぞ。」

 鷲羽ちゃんに電話を入れると、いままでの出来事は一樹経由でモニターしていて、今夜の皇族ご一行様用に編集を同時進行らしい。

 「今夜は、現在の柾木・阿主沙・樹雷皇の他、神木家、竜木家、天木家の四家がお忍びでいらっしゃるようです。行方不明だった柚樹さんが見つかって非常に喜ばしいことだそうですよ。」

 「そうか、ここにみんな来てくれるのか・・・。」

 「楽しい方々らしいですが、皇族の方でしょう?なんかもう胃がでんぐり返りそうです。」

 「わははは、わしが天木日亜と共に出た頃とそう変わらないなら、そんなに気にすることは無いと思うぞ。お主も第二世代の樹のマスターだと言うし。」

 「うー、二日前にそうなって、想定外が大規模デモしてるんですから(泣)。まあ、僕の場合は、まだどっちかというと町長さんだの町議会議員さんの方が現実味のある畏怖対象ですけど・・・。」

 「おー、そうかそうか。ならば良い。お主はそのままで良いと思うぞ。」

 「そういうもんでしょうか??。」

 「そういうもんだろうのぉ(笑)、何か言われたらわしも口添えしてやるから。」

 「ほんっっとぉ~~によろしくお願い申し上げます。」

一樹からも楽しそうな波動が返ってくる。

 「一樹も頼むよぉ、ホントに。」

 「うんっ。」

 


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