田本さん、エラいこと言われてますけど、こういうキャラですから(^^;;;。
「す、すみません。田本一樹と申します。なにやらいろいろとご迷惑をおかけしたようで申し訳ありません。」
といいながら、入会申込書と言われた書類と見たこともない素材のカードを受け取る。
「あら、阿主沙ちゃん、その申込書はまだ早いんではなくって?」
「なに、クソババアが放っとくわけが無いと思って、だ。先手必勝とも言うしな。」
なにやら、仲が悪いのかそうじゃないのか分からないが、ふんっと言った感じで鼻を鳴らしてそっぽを向く樹雷皇。
「柾木阿主沙樹雷様、船穂様、美砂樹様、瀬戸様、白眉鷲羽様、お久しぶりでございます。」
その声の方を見ると、樹雷の服装だろうが、白を基調として緑を随所にあしらった服を着た、可憐な感じの女性が立っていた。直感的に、お嫁さんだったら良いなぁとか思ってしまう。
「あらら、ハイエナ部隊頭領登場だわ。」
また、何事が起こったのかと思うほど真逆な表現である。
「まあ、初対面の方がいらっしゃるのに、瀬戸様もお人がお悪いですわ。」
きらりん!とその可憐な女性の目が光ったように見えた。
「西南様関連で、キリル重工業からいただいたお金、ご報告頂けますわよね?」
こちらで見ていて分かるほど、瀬戸様と呼ばれた女性の顔色が青ざめるのが分かる。
とんとん、と背中を叩かれて振り向くと、鷲羽ちゃんが耳打ちしてくれた。
「田本殿、山田スーパーが大躍進しているのは知っているよね。」
「あ、はい知っています。地元でも有名なサクセスストリーですから。」
「実は、銀行に大規模店出展の足がかりにされそうになっていたのを事前に防いだ上に、その銀行の支持母体をガタガタにしたのが、あの立木林檎殿なんだよ。」
「おー、もしかして裏でうごめく白く可憐な林檎の花のような美女軍団って・・・。」
「通称ハイエナ部隊。樹雷有数の経理部隊さね。」
うわ、お金に厳しい人達なのね。ターゲットになったりすると凄く大変そう・・・。とりあえずはご挨拶から。
「これからいろいろお世話になります。田本一樹と申します。」
「まあ、嬉しいですわ。あの、・・・あなたの皇家の樹と同じ字なんですね。」
「ええ。こちらで生まれた樹ですし、勝仁様の船穂の樹が言うのは、僕の夢で育ったそうなので、同じ字で一樹(いつき)としました。」
なんて可愛い人なんだろうと思って、頭に何気なく手をやって掻こうとして、髪の毛の感触に驚いた。いつものちょっと腰のない油っぽい直毛ではない・・・。両手を頭にやって触ってみると、堅めの直毛というか、後頭部や側頭部は借り上げられ、頭頂部はピンピンと毛が立った感じと手触りは伝えてきている。ふと気がつくとウエストも緩くなっているし、立ち上がるとズボンが短くて膝下十cmくらいまでしかない。しかも上に来ているポロシャツの肩周りと首回り、腕部分がパンパンになってはち切れそうである。腕時計の部分など手首に食い込んで痛みまである。慌てて外すと赤く跡までついていた。
「あの、どうされました?」
小首をかしげて、鈴のような声で言う。少女マンガだと背景はバラとかかもしれない。
「ごめんなさい。鷲羽ちゃん、僕どう見えますか?もらった眼鏡かけてるし。金曜日に訪問したどこにでもいそうな太った公務員ですよ、ね?」
おろおろしたときは、とりあえず鷲羽ちゃんに聞いてみる。
「それで、剣や棒術用の棒などを持つと見事に樹雷の闘士だぞ。」
先に樹雷王が口を開く。
「は?」
「だから、田本殿のアストラルを基軸に天木日亜殿のアストラルを再構築して合併した状態と言ったじゃないか。アストラルに肉体は従うから、今はたぶんルックスは天木日亜殿だよ。ちなみに、眼鏡の機能は、あまりにもルックスが変わってしまったので、エラー起こして機能停止しているよ。」
「え~~。家に帰れないし、明日仕事に行けないじゃないですかぁ」
「逆に、知らぬふりして役所に行って、書類の請求したりするのも楽しいかもよ?」
瀬戸様と言われた女性が言う。さっきの青ざめた表情はもうない。もしかして静かな水面にわざと大岩落として波風起こすの好きな人だったり・・・。
「実際の背はともかく、なんとか以前の見た目のように工夫するから。」
ひらひらと手を振って、とりあえずまかしとき!って感じではあるが、非常に不安である。
「それに、不用意に劣化して情報欠落のあるアストラルなんか触ろうとするからいけないんだよ、田本殿。」
人差し指たてて言う鷲羽ちゃんに諭されてしまってぐうの音も出ない。
「皆様、ご夕食の用意ができました・・・。ええと田本様がいらっしゃったはずですが・・・。それに、お母様そちらの方はどちら様でしょうか?それにその銀色のネコは?」
柾木家の必殺家事職人ノイケさん登場だが、誰かを探すように周囲を見渡して、僕を見て、瀬戸様と呼ばれた女性にお母様と呼びかけた。
「田本殿とは、もしかして、この前、遥照殿の社務所に通信したときに居たお客様?」
「霧封が新しい友ができたと言ってきたとき、遥照に通信した折に社務所に居た者か?」
と言いつつ、一斉にみんなが僕を見る。
「ええ、あのあと一樹のエネルギーバースト受けて、さっき、不完全なアストラルに触って融合した結果が僕です。」
「うむ、間違いないよ。この人が田本殿だ。ちなみに、その銀色のネコは魎皇鬼と一樹が連れてきた柚樹コアユニットと亜空間生命体の融合体だよ。」
「ええ~~~~~~~~~~~~~~!」
そんなにびっくりせんでも良いじゃないですか・・・、と言いそうになって当事者だから説明出来るけど、知らない人から見ると、全くの別人状態じゃないか・・・?しかも、これって樹雷でもそうそう起きることじゃないこと?
「すみません驚かせてしまって。でも宇宙だとこういうことが結構起こったり・・・」
「しないな。」
「まず見たことも聞いたこともないわねぇ。」
「お姉様、もう一回ネコ抱いていい?。」
「私と同郷の人だと伺っておりましたけれども・・・。」
「さっきまで別人だったんですか?。私の初恋の人と似ていて、ちょっとときめいてしまいました。」
若干一名、論点が違うような気がするが、見事に金曜日の自分とは繋がらないらしい。
ちょっとまて、クルマの免許証・・・。財布を慌ててポケットから取り出して入れてある免許証を取り出す。
「ぜんっぜん本人確認書類にならない~~~。」
って言いながら見ていると、横からひったくられて、そこに居た全員に回し見される。
「おう、社務所に居たのはこの者だな。」
「ええ、間違いありませんわね。」
「今の方がイケメンですし、モテますわよ。」
「なんなら、うちのお局部隊でもなんでも紹介するわよ?。」
「田本様って、瀬戸様にオモチャにされる前に、自分でやっかい事に突入するんですね。」
「もしかして、西南殿よりもたちが悪いかも知れないねぇ。」
なんだか言いたいように言われているような気がする。
「とにかく、ご夕食の用意ができました。とりあえず、リビングへどうぞ。」
また、ノイケさんに気の毒そうな目で見られた。
柚樹を連れて、リビングに戻ると、そこに居た全員の視線が自分に来る。
「あら、お父様、樹雷の警護の方をつれていらっしゃったんですか?。」
食卓に着いている阿重霞さんから第一声。
「いやね、いろいろあって、この人が田本殿なんだよ。さらに、このネコは柚樹殿。」
「ええ~~~~~~~~~~~~~~っ。」
やっぱり、みんなで驚愕の一声があがる。