天地無用!~いつまでも少年の物語~。   作:かずき屋

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やっぱり暴走してしまいますね(^^;;。

ちなみに、自分の仕事場ってまさにこんな感じです。5日間の夏休みまだとれてません(泣)。





日常への帰還3

「田本殿、天地殿。見事でした。」

そこには、水穂さんと樹雷の鬼姫こと神木瀬戸樹雷様の姿があった。

 「うむ、良い物を見せてもらった。」

さらに樹雷皇阿主沙様と船穂様、美砂樹様。そして天木舟参様に立木林檎様。

 「え、もうお帰りになったんではなかったんですか?・・・」

と言ったところで気がつくと、ううん、まだいるの。昨日は楽しかった。新しい仲間ができて本当に嬉しい。今度、いろいろお話を聞いてくれる? 等々また樹の声が聞こえてくる。

 「闘士としての技能や技術も充分だな。遥照に頼んでおくから剣術や棒術なども習って思い出しておいて欲しい。」

 「は。御意のままに!」

また、跪き、右手を左手で包むように一礼する。阿主沙様も一礼を返してくれた。

 「今度のお休みに、いらっしゃいな、待ってるわん。」

ちゅっと投げキッスする瀬戸様。まわりにいる人が全員もの凄く気の毒そうな顔で見ている。

 「それでは水穂、よろしく頼んだぞ。」

ちょっといたずらっ子のような表情で樹雷王が水穂さんに言った。そして、気がつくと霧封という樹から伝えて欲しいと言うイメージが伝わってきた。

 「樹雷王阿主沙様、霧封という樹が伝えてくれと申しております。魅月はいつもあなたと共におります。魅月は一緒に跳べて嬉しいと・・・。」

 「魅月が、魅月がそう言うのだな・・・・・・。」

今度は、樹雷皇阿主沙様が、はらはらと涙を流されている。船穂様と美砂樹様がそっと樹雷皇の涙をぬぐう。あの瀬戸様までもが後ろを向いて涙をぬぐっていた。

 「そうか・・・。田本殿ありがとう。そして伝えてくれ。どこまでも一緒に行くぞ、と。」

樹雷王は上を向き、力を振り絞るように言った。そのとき、霧封からの鮮やかな波動が

僕に伝わる。樹雷王が一瞬光に包まれたように見えた。一樹の中だが、どこからともなく薄く霧が出てくる。僕には理由は分からないが、深くそしてとても大事な物のイメージだった。

 そうして、樹雷皇の一行は帰国していった。時計を見ると昼休みの終了5分前だった。 「さあさ、昼から仕事だ。水穂さん、ごちそうさまでした。天地君、ありがとう。また頼むよ。」

 「そうですね。実は夜1時間程度、じっちゃんと練習しているので良かったら来てください。じっちゃんも喜びます。」

 「そりゃあ、ありがとう。」

またぼろっちい軽自動車車内に転送されて、昼からの業務に戻る。駐車場から役場に歩いて行く途中で光学迷彩をかけていないことに気づいた。慌ててトイレに入って柚樹に光学迷彩かけてもらって自分の席に戻ったところで午後からの始業チャイムが鳴った。

 

 お昼から、今度の民生委員の役員会の資料を水穂さんに手伝ってもらって、大きめの封筒に袋詰めしてもらう。10人分作ってもらったところで、午後3時になった。

 そこで、社会福祉協議会の牧田課長から電話が来た。山間部の生活保護を受けている、高齢の夫婦二人の家庭と連絡が取れないという。何度も時間を変えて電話をかけているのに出ないそうだ。ときどきタクシーに乗ってスーパー山田に買い物に来ていたはずである。何度もこの家庭とは話をしていて、今住んでいる家も安全な状態とは言えず、なんとか平坦部に降りてくるよう説得しているのだが、なかなか承諾しないのである。自己責任と言えばそれまでだが、変死でもしていたら、好奇心旺盛なマスコミはすぐに地域の民生委員は何をしていた!、行政は何をしていたと大合唱することだろう。

 とりあえずは、課長にその家に向かうことを言い、公用車に乗り現場に向かうことにする。社会福祉協議会の牧田課長とは現場で落ち合うことにする。さらに県民局のケースワーカーにも連絡を取る。現場まで車で30分程度かかる。

 30分後現場に着き、社会福祉協議会の牧田課長と落ち合って、その家に行く。その家までは、さらにクルマが通れる道から10分程度、細道を登らなければならない。

 「おおい、田本さん待ってくれ。いつもすぐばててるのに、今日はどうしたんだよ?」

ああ、もうホントにこんなに急いでいるのに!と思ったところで気がついた。そうだった100キロデブがこんなにするする山道を登ることは不可能である。

 「ああ、すみません、今日はちょっと身体の調子が良すぎて、その・・・。」

はあはあと息も絶え絶えの演技も入れてみる。

 「おい!、いま横の木の枝が田本さんの腹をえぐっていったように見えたぞ!。」

くっ、光学迷彩の弱点か!

 「いや、気のせいですよ。この辺妖怪伝説もあるっしょ?」

ほら、と大きなお腹を揺らす仕草をしてみる。皇家の樹が作る光学迷彩の凄いのは、波打つ脂肪たっぷりのお腹も再現しているところだ。先に立って歩くと、まずいことが多いと思って、

 「牧田課長、ごめんなさい、僕ちょっと急ぎすぎました。足がつってしまって・・・。」

と言って後ろに下がる。

 「おお、そうか上で待ってるよ。」

適当に距離をおきながら、ゆっくり登っていってその家に到着した。

 「ごめんください!。○中さん、○中さんいらっしゃいますか?」

ガンガンと扉を叩く。

 「はい、・・・どなた?」

 おお、返答があった。名前を名乗って扉を開けてもらう。家の中は半分ゴミ屋敷状態だったりする。二人とも元気そうだが、若干認知症が心配されることと、精神的にも落ち込みがちで電話に出ることが億劫だという。心配してこうやって駆けつけることになるし、生活するのが大変だったら平坦部に降りてこられるように準備すると提案しても、今回もやはりまだこの家にいたいとのことである。とにかく電話は出てもらわないと困る旨伝えて帰ることにする。

 「何とか無事で良かった。でもやっぱりこの場所が良いのかねぇ・・・。」

どんな事情か知らないが、どうしてもこの地で暮らしたいと言うのがこの家庭である。

 「そうですね、でもいつまでもこの場所では生活ができないでしょう。町営住宅管理部と話を進めておきます。」

 「そうですね。それでは、帰りましょう。」

またいろいろボロが出ても困るので、牧田課長に先に降りてもらう。無事下の道まで降りて、それでは、と公用車に乗ろうとした。またクルマの屋根部分の開口部で頭をぶつけてしまう。あだだだと頭をさすると、

 「田本さん、今頭の上の何もないところで、ぶつけていませんでしたか?しかも何もないところをさすってるし。」

クルマを横付けして牧田課長が心配そうに言う。

 「ああ、大丈夫ですよ。最近ちょっと首が変で、頭ぶつけたんだけど変に動いたんでしょう。大丈夫、だいじょぶ。」

にこにこ~っと笑顔で答えて、クルマを出す。あぶないあぶない。県民局にも電話を入れて、二人とも無事なのを伝える。ちょうど出ようとするところだったらしいけど、今のところ大丈夫のようですと伝えた。

 それやこれやで役場に帰ってくると、午後5時前。顛末を課長に報告し、覚え書きのような簿冊にまとめてやりかけていた仕事に手を付けると午後5時15分の終業チャイムが鳴る。それから30分ほどかかって、いろいろまとめたところで気がつくと僕ひとりしか福祉課には残っていなかった。今日は月曜日だし、早めに帰るかと思って、そうだ天地君は、と思って内線電話をかける。

 「はい、総務課です。」

 「福祉課の田本です。お疲れ様です。ああ、まだいたのね。」

 「そろそろ帰ろうかと思っていたところなんですよ。」

 「指導監査はうまくいった?」

 「何とか乗り切りました。結構いろいろ突っ込まれて、焦りましたよ。」

あはは、お疲れ様と言って、夜の剣術の練習時間を聞く。8時頃には始めているそうである。お邪魔させてもらう旨伝えて電話を切る。

 「柚樹、いる?」

ふわっと姿を現す銀毛ネコ。何となく仕事が終わってホッとして、膝に抱えて撫でてみたくなる。僕はネコの方が好きだったりする。ちょっと犬のニオイは苦手だ。

 「たいへんだのぉ。」

 「そうなんですよ、結構毎日何が起こるかわからないし。」

こうやって撫でていると、ネコだよなぁと思う。

 「さて、今日は帰ろうか。」

またふっと姿を消して膝から飛び降りる。

まだ残って仕事している、税務課や企画課などに声をかけてタイムカード押して、宿直員に出ますと伝え外に出た。大きくのびをしたらやっぱりズボンが短い。ウエストゆるゆる。それに、肩と首回りがきつい。出費がいたいけど洋服の緑山行こうっと。

 駐車場に行くと、水穂さん、他の職員と談笑している。え~、もう6時前だぞ。女の人は話すことがいろいろあるんだなぁ。

 「お疲れ様でした。」

声をかけてクルマに乗ろうとすると、水穂さんと話していた職員の森元女史から声がかかる。

 「水穂さん、カズキさんを待っていたようよ。最近越してきたばかりでこの町のことがよく分からないんだって。」

 「え、僕を待っていてくれたんですか?」

 「もう、本当に気がつかない人だねぇ。」

この人いつもそうだから、あはははと華やかな笑い声が駐車場に響く。

 「あ、そうだ今日はちょっと服の腹回りが合わなくなったので洋服の緑山行ってこようかなぁと・・・。」

 「ま~た太ったのかい!。特定健診でいろいろ指導受けたでしょう?保健師さんにも怒られていたじゃない。わたしだって最近歩いているんだから。」

そう、この人もすこし太り気味。

 「え~~、ひとりだけおデブ脱したりしないで、仲間のままでいましょうよぉ。」

 「やあだ。じゃ、わたし子ども迎えに行かないといけないから。それにちょうどよかったじゃん。着る服も選んでもらえば!じゃあね!。」

 竜巻トークを残し、森元女史は自分のミニバンに乗って去って行った。総務課の人事担当だから気を遣ってくれたのかも知れない。

 「水穂さん、ごめんなさい。まさか待っていてくれるとは思っていなかったもので。」

 「あら、森元さんと話していると楽しかったですわ。田本さんは役場ではカズキさんなんですわね。」

 


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