天地無用!~いつまでも少年の物語~。   作:かずき屋

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えっと、また梶島さんにお説教くらいそうなネタです(^^;;;。

まあ、この作品が梶島さん執筆中(ですよね?)のGXP11巻に与える影響はまったくないんでしょうけど(^^;;;;、こっちはこっちで暴走中ですのでご勘弁を。

手乗り文鳥ならぬ、手乗り皇家の船・・・。そして、林檎様の弟君<はい一部の皆さん期待通りです。

これで、お気に入り登録者数ガタ減りの予感(自爆)。


離れていく日常(第6章始まり)

離れていく日常

 

 「そうだ、水穂さん、30分くらい時間は取れるかなぁ。」

 「そうですわね、それくらいなら何とか・・・。」

 「あのぉ、さっきから皇家の樹の皆様がお話ししたいってうるさいくらいで・・・。顔を出した方が良いかなぁと思ったんですけど。」

そうなのだ。朝食会の時もなかなか凄かった。ねえねえ聞いて聞いてとちいちゃい子からお年寄りまで。

 「そうか、田本殿の場合、皇家の樹に愛されておるからなあ。」

樹雷皇阿主沙様が頷いている。

 「樹選びの儀式ではないが、皇家の者がついて行かないのもおかしいだろう。竜木言申殿、瀬戸殿一緒について行ってやってくれぬか。」

さきほど、はらはらとやりとりを見ていた方と、瀬戸様が同意してくれる。

 「それでは、田本様、こちらへどうぞ。」

二人が先導して、転送された先は大きな見上げるような木の扉の場所だった。

 「わたくしは、ここから先には行けませんわ。樹に呼ばれていませんから。」

 「そうね、水穂ちゃんは、ちょっと待っていてね。」

瀬戸様と竜木言申様に促されその大扉を押すと簡単に開いていく。そこは、コアユニットのようなサークル状の物に植わった樹達の間だった。道がついていたり、所々転送ポッドがあったりする。見渡す限りの樹が、一斉に例の七色レーザー光を放つ。

 「まあ、なんて美しい・・・。」

 「これはどうしたことか・・・。樹という樹が歓迎の意を示している。」

竜木言申様と瀬戸様が驚いている。

 「わしもここから生まれ出でたのだ。」

ふわりと姿を現す、柚樹ネコ。さらに竜木言申様が驚いている。

 「このネコは、訳あって実は皇家の樹なのよ。この田本殿がややこしい状態なのはお分かりいただけたかしら・・・。ちなみに、初代樹雷皇の妹君、真砂希様のお付きで辺境探査の旅に出た柚樹という樹だそうよ。」

瀬戸様もかなりはしょってややこしいと表現する。

 「わたくしも、たくさんの、樹に呼ばれた者の樹選びの儀に立ち会いましたが、これほどの状態の人は初めてでございます。」

腕組みして、思い出すように言う竜木言申様。そんなに凄い状態なのか僕。

 「でも、守蛇怪で、マッドサイエンティストの高笑いをしたときは、柚樹さん非常に不安になったみたいですけどね。」

 「おお、わしの選択が正しかったのかどうか、大まじめに胸に手を当てて考えたぞ。」

皇家のお二人が引きつって笑っている。

 「さらに、マスターキー無しでどんな皇家の樹とも話せてしまうようよ・・・。」

さすがの瀬戸様があきれた顔をしている。

 「ええ、さっきからここの樹達がお話ししたがってるようで、今たとえるなら、大歓声が上がってるライブ会場のごとしです。ちょっと待ってくださいね。」

 そう言って、みんなありがとう。今日は時間がないから一通り見せてもらって、また必ず来るから!いろいろ聞かせてね。と伝えた。七色の神経光はゆっくりと落ち着いていく。

 「すみません、とりあえずさっと見せていただけますか?」

 「ならばこちらへ来るがよろしい。第2世代の樹の間です。」

転送ポッドに乗ると、転送された先はまたたくさんの樹が植わった同じような場所。ここもみんなが歓迎してくれている。

 「そして次は第1世代の樹の間であるが・・・。私たちは選ばれていないのでここまでです。田本殿が樹に承認されていれば転送ポッドが開かれるでしょう。」

二人と柚樹もそこで立ち止まる。一人で転送ポッドに入るとスッと次の間に転送される。今度はあまりたくさんの樹はない。そして、みんな大きな古い樹が多い。

 「皆さんに呼ばれてはいないのですが・・・見せていただいてよろしいでしょうか?」

七色神経光が乱舞し、ここでも歓迎してくれる。静かで、大きな力を感じるこの樹達の間であった。物珍しそうに見ているというのが本音だろうなぁ。そんなにたくさんの樹がないので通路真ん中に立ち、樹の声を聞こうと思う。あと10分ほどはここに居られる。

 たゆたうような、時間の流れが大河を流れる水のごとくにイメージとして流れ込んでくる。樹雷の十数万年に及ぶ歴史のイメージを見せてくれた。そのなかで一本の樹が泣いていた。最近マスターを亡くしたらしい。最近と言っても樹のスケールなので、人間に置き換えると数百年前と言うところだそうである。

 その樹に近づき、どうしたのですかと問うてみた。泣きながら、人の生はあまりにも短い。わたしはずっとあの者と居たかった、跳びたかったという。マスターはどなたなのですかと聞くと、先代樹雷皇の天木辣按様といった。その方とはどのくらい一緒に居られたのですか?と尋ねると、1万8千年あまりと言った。最期はほとんど話せない状態で、言葉を交わすこともできず、アストラルの海に沈んでいってしまったと言う。

 「人は、いろいろな手を尽くしても、いつかは死んでいきます。私だって、たぶん同じです。でもあなた方は私たちと一緒に居てくれるという。この広い宇宙にあって、それがどれほど心強くありがたいことか。いつかまた必ず跳べる日が来ることでしょう。自分で良ければここにまた来ます。いろいろ聞かせてくださいね。」

そう言うと、おずおずと七色の神経光が僕の額に当たった。本当に優しい樹。そして永き命を持つ者。静かに涙が頬を伝う。

 「それでは、また来ます。」

一礼して、転送ポッドに乗ると、転送先ではお二人が待ってくれていた。僕の涙を見て悲しそうな顔をする皇家の二人。柚樹は、あしもとでほほをすり寄せている。

 「先代樹雷皇の天木辣按様の樹と話してきました。まだまだ跳びたかった、一緒に居たかったと泣いていらっしゃいました。」

話したことを言申様と瀬戸様に報告した。

 「そう・・・。あの方が亡くなって、もう800年になるかしら・・・。」

 「そうですね、あの樹はまだ悲しんでくれているのか・・・。」

そして、瀬戸様はニッと笑って、例の扇子を取り出し、

 「ホント、田本殿はさっさと水穂ちゃんと一緒になって、ここに来てもらわないとね。」

 「いやあ、まったくです。まさか第1世代の樹の間に行けるとは思いませんでした。」

そう言いながら、樹の間の廊下を歩いて行く。大扉を開けると水穂さんが待っていた。

 「竜木・言申・樹雷様、神木・瀬戸・樹雷様、ご無理を言ってお付き合い頂きありがとうございました。」

 そう言いながら深く一礼して、顔を上げると瀬戸様が微妙に爬虫類顔でにんまり微笑んでいる。わざわざZZZの文字の方をこちらに向けている。

 「まだまだこんなもんじゃないわよ。あ・と・で・ね、田本一樹殿。」

竜木言申様は2歩下がった位置で、もの凄く気の毒そうな顔をしている。

 「さ、さあ、水穂さん、打ち合わせがあったそうですがっ。」

 「え、ええ、技術部主任が、ま、待っていますわ。急ぎましょう。」

黙っていても表情筋が引きつる。とにかく危険な場所から逃げなくては。自然と大股で歩いて行き、転送ポッドが並ぶ間に着いた。水穂さんが腕輪をタブレットに変え、操作すると一樹のいるドックに転送された。見慣れたコアユニットが、半分水のように見える物に浸かって、たくさんのマニピュレーターのように見える機械の手で作業を受けていた。ちょうど直方体のうっすら半透明な空間に囲まれている。これが加速空間か・・・。ここは他と違って、さすがに機械類のうごめく音がその場を支配している。この光景はまたSF好きなおっさんとしてはとても惹かれるものがある。向こうから細身だが、筋肉質でちょっと神経質そうな細面の男性がこちらに歩いてくる。僕よりちょっと背は低い。眼鏡というより作業用の防御ゴーグルのようなものか、目を覆う透明なゴーグル状の物を付けている。

 「皇家の船専用ドック技術部主任の立木謙吾です。」

ゴーグルを取って挨拶してくれる。右手を握手の形に差し出してくれたので、こちらも同様に握手する。つぶらな瞳と言って良いだろう。ちょっと小動物系の顔立ちである。

 「さきほど、四皇家でしたっけ、に承認された田本一樹です。どうぞよろしくお願いします。ちなみに、このネコは第2世代皇家の樹、柚樹の変化したものです。」

さすがに驚いている。動物の形を取っている皇家の樹など前代未聞だろう。柚樹は素知らぬ顔をして顔を洗う仕草をしている。

 「噂には聞いていましたが・・・。なにやらややこしいですねぇ。」

 「あなた。あまり時間がありませんわ。さっそく一樹の艤装プランについて打ち合わせしましょう。」

水穂さんに、あなたと言われるとまだ顔が赤くなる。くすぐったいような恥ずかしいような・・・。立木謙吾さんは、にっこり笑ってすぐに本題に移ってくれた。

 「そうですね。いちおう、皇家の樹もしくは皇家の船というものは、このコアユニットを指すことはご存知ですか?」

立木謙吾さんは、そう言うと左手の腕輪をA4位の大きさの薄いタブレットに変えて、操作する。しゅるりと腕輪は軟体動物のように形を変えて、左手を走り、手のひらで薄く大きく変化した。あれ、もしかして樹雷で使ってくれているのかな。そのタブレットをタップすると、眼前に大きめのディスプレイが現れ、艤装プランを説明してくれる。

 「このコアユニットだけでも問題はないのですが、光應翼はともかく、第2世代の樹でもエネルギーを全開放すると一つの恒星系が吹っ飛ぶようなエネルギーを軽く出してしまいます。実は、船の艤装はある意味リミッターなのです。武装することによって、効率的なエネルギーの使い方ができますし、様々な機能を付け加えることもできます。」

立木謙吾さんがするするとタブレットを操作すると、目の前のディスプレイに今回のプランが大きく映し出された。

 「通常、皇家の船は内部に亜空間固定された広大な空間を持つ物ですが、今回は、その亜空間固定の範囲を内部方向には欲張らず、船の外部にその空間の境界を張り出させることで船の大きさを縮小方向に自在に変えられるようにすることを提案したいと思います。」

ちょっとドヤ顔の立木謙吾さん。もしかして、携帯可能な皇家の船?ちっちゃくできるのか?。

 「まだ、地球で偽装した生活がしばらくは続くと思うのでこの機能はありがたいですね。ちなみに大きさはどれくらい変わりますか。」

 「はい、人のこぶし大から通常の皇家の船の大きさまで変化可能です。内部空間は、その状態でも、一樹君の力が大きいので周囲1000kmほどの島程度の空間が固定可能です。」

 「内部空間については充分です。家やら、畑やら、そう言う造成も可能なんですか?」

 「問題なく可能です。小さな閉鎖空間として生態系を構築しますよ。」

樹雷の科学技術は、SF好きな人にとってはまさに夢のようである。まさにやりたい放題。

 「外装については、樹雷特産の木材を特殊加工した物を使いますね。伝統的に、金属外郭は皇家の船ではあまり使われません。」

そう言えば、他の皇家の船を見たことないことに気付く。

 「とりあえず、デザインはお任せします。昔っから絵を描く方はあまり得意ではないもので・・・。」

 ここで、なぜか、例の関わってはいけない系の笑顔に出会ってしまった。

 「実は、瀬戸様から、直々にくれぐれも頼みますよ、と言われております。」

に~~っひっひっひ、と扇子を扇ぎながら笑う瀬戸様のビジョンが脳裏で踊っていた。ううう、瀬戸被害者の会に通告しようかな。隣を見ると、水穂さんが、ああやっぱりとあきれ顔でもあった。

 「さきに、この大きさを変えられる件も相談しておりますが、いいんじゃない?田本殿の警備の手間も省けるし、だそうです。」

立木謙吾さんのドヤ顔その2。これだけじゃないわよ、と言っていた瀬戸様の思いの深さが若干怖い。

 


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