天地無用!~いつまでも少年の物語~。   作:かずき屋

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うふふ、宇宙船っすからね。

小さいと言っても結構大空間を固定出来ますからね・・・。

良いなぁ、おらも欲しいな皇家の船(自爆)。


離れていく日常2

「まあ、そうなんですけど、ね。実際、海賊の転送してきたアンドロイドに襲われましたし・・・。ここに来る途中も、ねえ・・・。」

そう言って水穂さんを見ると、大きく頷いている。

 「ああ、そうだ、忘れるところでした。姉からメッセージを預かっています。」

 「は、お姉様ですか?」

水穂さんと顔を見合わせる。自分はこちらの知り合いなど数えるほどしかない。そう言えば、その知り合いが皇家の人ってのが、ある意味肩の荷がずずんと増えたような気がしてさらにプレッシャーを受けた。立木謙吾さんは、またタブレットを操作して、大きなディスプレイ上に一部ウインドウを開き、そこでメッセージを再生した。

 「田本一樹様、水穂様、おはようございます。立木林檎でございます。」

あ、天地君ちで瀬戸様を青ざめさせた人だ。可憐で、かわいらしいという言葉が先に出る。それと同時にハイエナ部隊という言葉も思い出される。たしか、えっと、パテントなどの管理してくれているんじゃ・・・。

 「まずは、樹雷財務省を代表してお礼申し上げます。」

いきなり目が点になる。迷惑をかけることこそすれ、何か樹雷に貢献するようなことをした覚えがない・・・。そのメッセージによると新しい超空間航路によって、樹雷の経費削減がめざましいこと、例のガジェット、腕輪は腕時計状の物から形態を変えて、携帯端末にもなり、タブレット、棒状の護身用具に変化する物についても、安価で大量生産可能でしかも、確実性、汎用性に優れるため、樹雷やGPで、おのおのカスタマイズして採用になった件などが報告された。

 「・・・、また瀬戸様からくれぐれも、と依頼されておりますので田本様の財産管理もさせていただきます。とりあえずは、勝手とは思いながら、現在の資産の5%ほどを樹雷国債購入にあてさせていただいております。もしもお時間がございましたら、後ほどご連絡をいただけると光栄に存じます。」

ひくっと、顔の表情筋がひきつる。ぬおお、ここも瀬戸様・・・。すぐに電子音が鳴り、左手の腕時計が点滅している。携帯端末モードにして見てみると、個人端末の番号通知があった。

 「ここ最近、姉の顔が明るくて助かっています。以前は家に帰ってきても、古い樹雷の予算書とか決算書を見て恍惚としていたり、一人含み笑いをするようなことも多かったんですが、鼻歌を歌いながら料理や家事をしている姿もよく見るようになりました。」

ホッとしたような表情の立木謙吾さん。そうか、あの林檎様の弟さんかぁ。

 「そう、あの林檎様の経費削減通告は、微に入り細にわたり、まさに乾いたぞうきんからさらに水を絞るがごとしだったわ・・・・・・。」

す~っと遠い目をする水穂さん。何かトラウマ?

 「そうですねぇ・・・。本当に死ぬかと思いました。我が姉ながら真面目に暗殺してしまおうかと思いましたもん。」

ふたりして、大災害が過ぎ去ったような顔をしている。こちらも自分の端末をタブレットモードに変えてスケジュールをいちおう確認してみた。いまは午前10時を回ったところで・・・、あと30分ほどはここに居ても良いのかな。そう言えばこういう艤装などの代金は?そう思うと不安になってきた。

 「あのぉ、一樹の中に、僕の荷物は転送されていたんですよね?一時的に中に入れますか?」

 「はい、少々お待ちくださいね。」

数十秒後、一樹を包んでいた半透明の空間は消え、一樹を呼ぶと即座に一樹のブリッジに転送される。

 「一樹?どうかな。だいぶ診てもらっている?」

 「うん、外装のダメージはもう直ったよ。あとは武装や内部空間の調整だって。」

そう言いながら、持ってきていたMMDのカードと通帳を服のポケットのようなところに入れる。何となく安心した。

 「それじゃあ、明日の地球帰還はなんとかできるな。それに今度は大きさが変わるから、ずっと一緒にいられるらしいぞ。」

 「柚樹さんみたいに?」

 「そう。」

大きく頷くと、一樹は、歓喜のイメージで答えてくれた。なんとなく、ひもでくくって飛ばしているカブトムシのイメージが浮かぶ(よい子はやっちゃダメだぞ)。

 「僕は虫じゃないやい!」

ぷんぷんと怒ったイメージである。

 「ごめん、ごめん。これからは、置いているうちにイタズラされるようなこともなくなるしな。それじゃあ、またあとでな一樹。」

そう言うと、一樹の外に転送された。水穂さんと立木謙吾さんが待っている。

 「ごめんなさい、お待たせしました。何か凄い技術なので、一体いくらかかるのか心配になって通帳とカードを取りに行ってました。」

ププッと二人に笑われる。立木謙吾さんは、口に手を当てながらタブレットを操作して、一樹を元の半透明の空間でつつむ。

 「あー、すみません。言ってませんでしたっけ。こういう艤装はすべて皇家の予算でまかなわれますよ。」

水穂さんが、腕輪をタブレットにして、説明してくれる。

 「皇家の船というのは、樹雷にとって最も重要な戦力なのです。他勢力に対してこの皇家の船の優位性で樹雷の強さをアピールしていると言っても過言ではありません。実際に田本様も、これからは重要な作戦への参加を求められる立場になりますよ。」

うーん、そうなのか。実感湧かない・・・。

 「皇家に入ったと言うことは、そう言う義務も生じますし、その見返りも大きな物があります。」

 「ということは、完全に公用扱い?」

 「そうとも言い切れません。お客様を招くことも多いので、趣向を凝らした別邸を皇家の船の中に皆さん建てておられますよ。田本様もあんまり好まれないかも知れませんが、まあ、そう言う付き合いが増えると言うことですよ。」

 立木謙吾さんが、微笑みながら参考映像を見せてくれる。様々な様式の邸宅が映し出される。もちろん、邸宅維持は自動化されていると言っても、人の手を使うことが贅沢だとか言われて、執事だとかメイドさんとかを雇うんだろうなぁ。たぶん最近言う、セレブとかいうやつだな。こういう生活って慣れるのは早いけれど、そうじゃなくなると転落も速いよなぁ。

 「まあ、必要に迫られれば追々そろえて行こうと思います。今はホントに全然実感わかないもの。」

頭をかきかき、ごめんなさい状態で言う。

 「あはは、ちょっとホッとしました。他の皇家の方だとそう言う装飾だの邸宅だのうるさい人多いし。」

そういう、ふんわりした笑顔が、お姉さん似でかわいらしい人である。

 「どちらかと言えば、船としての機能面を重視しておきたいと思ったり・・・。あの守蛇怪のような試作工場を伴った研究開発施設と工場も一樹に積んで欲しいなぁとか・・・。」

きらりんと立木謙吾さんの目が光る。

 「そういえば、田本様は、この変幻自在な万能端末の開発者でしたね。ちょっと、こちらは公費というわけにはいきませんけど・・・・・・。」

声をひそめて、そう言うセットプラントがあることを教えてくれる。

 「様々なオプションを追加して・・・、今なら某球団が優勝したセール中なので・・・。このお値段ならどうですか?」

結構凄い桁数の金額が並ぶ。通帳を見ると、以前見た数字よりも明らかに桁数がひとつ増えている。その数字の1%程度の値段であった。

水穂さんを見ると、あきれ顔でこちらを見ている。

 「ねえ、買ってもいい?」

その時の僕は、おもちゃ屋さんでおもちゃをねだる子どもの目だっただろう。

 「・・・もお、あなたの船ですからお好きになさって良いですよ。」

 「でもさ、一緒にいる時間もこれから長くなりそうだし・・・。」

ボンっと音がしそうな勢いで顔が赤くなる水穂さん。僕も耳が熱い。

 「それじゃあ、家は私が選んで良いですか?」

 「その辺、僕は分かりませんからお好きなものや居心地よさそうなものをどうぞ。」

そう言うと、水穂さんはタブレットにかじりついて、様々なデータをもの凄い勢いでダウンロードしている。ちょっと引き気味で聞いていた立木謙吾さんだったが、思い出したように話し始める。

 「武装ですが・・・、どうします?さっそく海賊には目を付けられているようですが・・・。」

 「もちろん、最強で。」

だって、こう言うしかないじゃん。どんな武器があるのかわからないし。

 「あはは。わかりましたエネルギービーム兵器部門はこちらから、ミサイル、魚雷、砲弾も今回工場プラントを積むので搭載可能で、この部門です。ただ、こういった実体弾系の武器は原材料の補給が必要です。」

説明してくれながら、様々な選択肢を示してくれる。うわ、縮退弾とかあるし。でも当面は柚樹のリフレクター光應翼もあるし、とりあえずは一般的なセットでお願いしますと言った。

 「あと、普通は皇家の樹がエネルギージェネレーター兼コンピューターなので、皆さんあまり搭載しませんが、補機や補助コンピューターなどは?」

 「そうですね、万が一のために積んでおきたいと思います。基本的にメンテナンスフリーで、お願い出来たらなぁとか・・・。」

ちょっと困った表情の立木謙吾さん。ちょっと考えて、またタブレットをタップする。

 「皇家の樹のエネルギー規模から言って、数万分の一程度の出力しかありませんが、大型常温縮退炉があります。これは、樹雷の皇家の樹ではない戦艦に搭載されるものです。そして、それと対になる最近アカデミーで開発された、皇家の樹をまねたバイオニューロコンピューターがあります。皇家の樹と比べたらそれこそ・・・ですが。基本的に、こういったものはバイオボーグや専用ナノマシンがメンテナンスをするので大破した等のことがなければメンテナンスは不要です。」

 「緊急バックアップと、一樹が休む、ことがあるのか分かりませんが、そう言うときに工場プラントなどを使いたいので性能的に充分だったら良いです。それこそ柚樹もいるし。」

 「わかりました。この補機は外装部分に搭載されます。これも公費外ですが。お値段はこれくらいで。」

さっきの工場プラントセットの2倍くらいだろうか。水穂さんを見ると、まだ必死におうちを見ていた。こっそり・・・。

 「いいですよ。支払いは、このカードでいいですか?」

と、MMDカードを見せる。立木謙吾さんが自分のタブレットを操作すると、カードは通ったようだった。こちらのタブレットに生体認証が出て、認証すると決済完了と出る。

 「それでは、急ぎ各種プラントの手配と内部空間の調整、搭載にかかります。」

しゅるんとタブレットを腕輪に戻して立ち上がる、立木謙吾さん。水穂さんもだいたい決まったようで要望を入れたデータを送信し終えたようだった。


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