天地無用!~いつまでも少年の物語~。   作:かずき屋

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樹雷の政治構造がどうなっているかはわかりません。たぶん皇家を中心とした議会制民主主義かなあと思ったり。

たぶんこう言うセレモニーがあるのかなぁと・・・(^^;;。


離れていく日常3

「そうだ、外装デザインですが、樹雷の重戦艦に似ているんですが・・・・・・。」

そう言って、もう一回タブレットにしてディスプレイに映し出す。基本的には短い前方後円墳のような形で、前方部分は上に曲がって、鋭角にカーブを描いて立ち上がり、そのまま細くなる形状。その下には円環状の部材が左右に二つ、120度位開いて、まるで足のように斜めに付けられていた。そこから後方へ太い木材のフレームが続き、グッと丸く左右に枝分かれして、その枝分かれした中央部分にコアユニットが付くようである。最も太い中央部分に補機システムが搭載されるらしい。そのためコントロールルームのような部分もあるようだった。中央で枝分かれしたフレームは後方に向かって微妙に綺麗なラインを描いて、その途中でスパッと裁ち落とされ、斜め下を向くように取り付けられた木材の円環につながっている。

 「ほお~、シンプルでいいですねぇ・・・。これ、通常の大きさはどのくらいなんですか?」

 「そうですねぇ、長さは350m程度、幅は150m程度、高さは100mていどになりますかね。艦首は、僕の趣味ですが、田本様の奥の手が出しやすいような形状を取っています。」

ディスプレイ上に寸法が簡単に入る。

 「それが、これぐらいに?」

と両手ですくうように球状のものを描く。

 「ええ、これぐらいにまで小さくなります。」

立木謙吾さんも、同じように両手で丸く描く。

 「うふふ、うふふふ、うわっはっはっはっは。」

二人で肩を組んで思わず例の高笑いをしてしまった。柚樹と水穂さんが胡散臭そうに眺めている。近くにいた女性職員の声が聞こえる。

 「うわぁ、主任、嬉しそうだわね。」

 「ここ百年くらい、装飾だとか邸宅がどうとか言われてばっかりで、好きなように船作ったことなかったんじゃないかな。」

 「あの人皇家の人?」

 「そうらしいわ。でも何か凄くややこしい人らしいわよ?。」

 「へええ・・・。」

声をひそめても聞こえてるって。僕は良いのだ、けど・・・。

 「・・・ええっと、余計なことかも知れませんが、僕といると変な噂が立ったりするかも知れませんよ?」

 「大丈夫です。以前から、そう言う状態ですから。」

そう言って、白い歯を見せ両手でピースサイン。あかん、むちゃくちゃかわいい。その微妙な雰囲気を察したのか、若干般若顔な水穂さん。

 「そ、そういえば次のスケジュールは?っと・・・。」

と言いながらタブレット操作してスケジュールを見ると、もの凄くげんなりする。同時に大きなため息が出る。樹雷皇家および、樹雷各省庁、評議委員会合同昼食パーティーとある。ただ、これを乗り越えると、午後からは比較的時間が空いているように見える。しっかり夕食会みたいなものも入っているけど・・・。

 「あのぉ~、ちょっとだけ顔出して、すぐに抜けて、どこか近くの定食屋とか三人で行きません?」

三人で、のところに反応したのか、立木謙吾さんの目がキラキラしている。

 「ホントにもお・・・。いちおう、樹雷の皇族やら各省庁の大臣やらへのお披露目兼ねてるんですから・・・。」

 「ね、おねがい!」

と、頭下げて頭の上で手を摺り合わせる。

 「うふふ、私もお買い物したいし。それにつきあってくれるのなら、こっそり抜け出しましょう。」

 「よっしゃぁぁぁ!」

三人で拳をガッと合わせる。しかし、ふとかすかな不安がよぎる。何か忘れているような。とおおっても重要な何かを忘れているような・・・。ま、いいか。

 「それでは、よろしくお願いします。」

 「わかりました。そうだ、僕の個人端末の番号です。」

立木謙吾さんが、タブレットを操作してポンとタップする。僕のタブレットから電子音が鳴り番号は転送される。

 「おお、ありがとうございます。またあとで!」

スマホ形状に戻して、登録、そのまましゅるんと腕時計に戻す。水穂さんのタブレット操作で次の会場へ転送された。そこは赤いカーペットの敷かれた廊下で、周りの作りから迎賓館みたいな感じである。当然豪華絢爛。

回れ右して帰ろうとすると、襟首を水穂さんがつかむ。う、動けない。

 「ふふふ、行動パターンを読まれるようじゃダメよ。」

 「うう、ごめんなさい・・・。」

 「ほらそこ、もう始まるわよ!」

びゅるんと言う音と共に、お腹に何かが巻き付く。そして、また豪腕にたぐり寄せられる。

 「わははは、田本殿樹雷の服も似合ってるぞ!」

がしっと捕まったのは、平田兼光さんの腕だった。

 「あうう、お久しぶりです、こんにちは。数日前に会ったばかりですけど・・・そう言えば希咲姫ちゃんは?」

 「今日は、学校の文化祭でな。それに、まだこう言う公的な場に連れてくるわけには行かないしなぁ」

 「そりゃそうですね。」

そう言いながら早足で、会場に向かう。僕と水穂さんは横の控え室に、平田兼光さんと夕咲さんは会場に入っていく。僕も会場に入ろうとしたが、やっぱり水穂さんに捕まって控え室に連行された。

 「・・・その他大勢の中に紛れたいんですけど・・・。」

 「わかっていますけど、今日だけは主賓なんですから!式次第と、スピーチ内容を転送しておきましたからね!まだ、お披露目パレードとかないだけマシですわ。」

 またここでも挨拶かい。そう言えば今の職場に異動前に、ちょうど課長に昇格したばかりの上司がいて、4月にさまざまな会合や総会に引きずり回したときに、挨拶ばっかりだってぼやいていたのを思い出した。あのときは、若干サディスティックな気分になってしまったものだったが・・・。気を取り直して、タブレットを起動して昼食会の式次第を確認する。うわあ、皇家の皆さんとステージ上に座らされて、開式の言葉に、樹雷王阿主沙様の挨拶、来賓祝辞がひとり、ふたり・・・・・・、うわ十人いる。ひとり5分程度としてもそれだけで約1時間じゃん・・・。その後二人並んで、樹雷王阿主沙様からお言葉を頂き、そして僕のスピーチとなる。その内容も・・・うわぁ、これ言うのって言うくらい長い。まあいいか。内容を頭に入れて、見えている人はみんなカボチャやキュウリと思えっと、「の」の字を書いて飲み込むのも良いらしいし。

 そうこうするうちに、女官さんに壇上に案内される。指定されたところに座ると、隣に水穂さんが着席した。会場は1000人規模なのだろう。今は映画館のようにステージに近いところが低く、後ろに向かって高くなるようなイスが出ている。見える範囲を見渡すと、だいたい服装でどんな人々が座っているか分かる。ほとんどが樹雷各省庁の高官だろう。着席場所は、たぶん入場の折に指定されていると思われる。テレビ放送のようなカメラも十台を越えて入っていた。しばらくして、樹雷皇阿主沙様以外の樹雷皇家代表の6人が着席する。おお、あのさっきの天木家のお二人も居る。神木・内海・樹雷様、神木・瀬戸・樹雷様も着席された。今の時刻は、10時50分ほど。式典は11時に開会される。

 「水穂さん、やはり凄いですね、皇家って。」

 「田本さんは、こう言う場所は初めてではないんでしょ?」

まあ、人間45年生きていれば、そこそこそういう場所に行くこともあったりする。何せ地方公務員なので、こう言う堅い場所はそれなりに行ったことがあったり、式典司会の経験もあったりする。さすがに壇上は初めてだが。

 「会場側に座ることは良くありましたが、さすがに壇上はありませんね。」

 「そうそう、転送していたスピーチですが、だいたい言うべき内容が入っていれば、言いやすいように適当に変更していただいてかまいませんわ。」

そう言われて、もう一度タブレットモードにして確認する。言うべき内容は、エネルギーバーストを受けながらも第2世代皇家の樹に選ばれたこと、柚樹さんの件。辺境出身だが、すでにある樹雷ゆかりの著名な剣術家に教えを請うているおかげで、すでに海賊に襲われているが身を守ることができており、樹雷と共にあらんと決意した件。

 「水穂さん、鷲羽ちゃんや、遥照様のことは触れられていませんが、もしかして伏せて置いた方が良いんですか?」

水穂さんの表情が、ちょっと固い。僕としては、日常的に出入りしている柾木家だが、樹雷王阿主沙様のご子息の家でもあるし、触れない方が良いんだろうな。

 「ええ、そのお二方は実は存在そのものがトップシークレットなのです。後ほどの昼食パーティーでもうまく話題をかわしてくださいね。田本さんの出身星のことも辺境とだけ言っておけば良いです。」


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