天地無用!~いつまでも少年の物語~。   作:かずき屋

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また何か見つけた、元公務員のおっさんです。あ、元じゃまだないか。

駆駒将殿と、次かその次あたり、ちょっちからんでみようかなと(^^;;。


晴れ時々樹雷6

「いやあ、楽しいねぇ。この火星って結構いろいろ遺跡とかあるようだし。」

いくつかのプローブから答えが返ってきていた。生命はいまのところ、細菌もほとんどいない。水分が多少あるところに藻の類いがわずかに集中して生えていると言った程度。気圧も地球のかなりの高山程度しか無く、二酸化炭素が主でわずかに窒素、アルゴン、水素と続く。気温も氷点下60度程度、風速15mと、機外は生命には非常に厳しい環境であった。しかし、古いとは言え、ヒューマノイドが生活していたような遺跡であった。遺跡の入り口、窓の寸法などは、高さ2m程度である。ということは、我々と似た大きさの生物だった可能性が高い。

 プローブの一個が、書店か図書館のような物を発見する。やはりここは町の遺跡だったのだろうか・・・。当たり前だが、読んだことのない文字・・・・・・ではなさそうだ。このニューロコンピューターが瞬時に解析し翻訳出来る、と言うことは銀河アカデミーとかで過去に解析されていると言うことか・・・。へええ、樹雷草創期より前に銀河標準で使われていた文字のようだった。とりあえず、面白そうなので歴史書のような物を見繕う。探査プローブに取ってきてもらおうかと思ったが、もしかして、その内容が欲しいのなら本を開けずに内容は採れるのでは・・・?。そう思い、コンピューターに聞くと可能だという。地球の非破壊検査の究極の姿みたいなものか。

 「樹雷草創期より前に書かれた、書籍のような物を発見しました。プローブにて書籍内容を採取中。」

そうだ、それに思いついたのだ。第5惑星の残骸を浴びたってことは、貴重な惑星内部の鉱石や、レアメタルさん達が地表にごろごろあるのでは・・・?次いで、鉱石探査プローブも打ち出してみる。やっぱりあるわあるわ、ダイヤに、金に、プラチナ・・・さらに様々なレアメタル。

 「鷲羽ちゃん、立木謙吾さん、火星って今のところ、誰の物でもないよねぇ・・・。」

 「え、どうしたの(んですか?)。」

 「あのおぉ、レアメタルだの、貴金属だの、古代の書籍だの、お宝がざっくざくなんですけどぉ。」

そう言いながら、今のプローブの内容を鷲羽ちゃんに転送する。

 「くっくっく、あんたホントにバカな子だねぇ・・・。そうだねえ、今のところ地球を中心に半径30光年は地球の領宙と決まったから。そしてその代表は、駆駒将殿だね。」

にたぁぁっと、これぞ哲学士と言う顔だった。

 「もしかして、そこの許諾があれば、掘ったりできるんでしょうね・・・。今度時間ができたら契約に行きませんか?」

 「もともと地球の人間の田本一樹殿が行くなら、たぶん問題ないだろう。私たちは部外者だからねぇ。」

腕組みして考えている鷲羽ちゃん。

 「とりあえず、サンプル採取の許可は、あった方が良いと思うのですけれど・・・。」

 「正式にはそうだろうねぇ・・・。ひとまず瀬戸様経由で申請書だけでも出しておくかい?」

 「そうですね、水穂さんにあとで頼んでみます。」

 「ふうん・・・、いつやるの?いまでしょ?」

ポンポンと肩を叩かれる。聞いたことがある声が・・・。振り返ると、水穂さんが立っていた。ひくくっとこめかみを引きつらせながら・・・。

 「にゃ~~、ごめんなさい。ほ、ほら夜遅かったし、さっきも大変なこと言われたし。・・・済みません。今度から単独行動はしません!」

さらに後ろから声がかかる。

 「今度の天木日亜殿は、こういう趣味もあるんですねぇ。それに強力なお目付役もいるようだ・・・。あ、今は田本一樹様の格好なんですね。」

そう言って、にこやかな笑顔の竜木籐吾さんが現れる。あの三人娘も一緒である。

 「あなた方まで、どうして・・・。」

 「樹雷へ帰ろうとしていたら、面白そうな機体が超空間ジャンプしているし。あの田本一樹様だと言うし。こりゃ、見に行かないと、と。」

 「あなた、地球の領宙だとは言え、三次元レーダーくらい起動しておかないと・・・。ほんとにもお。」

そう言いながら、隣の席に座って様々な機器を起動する。竜木籐吾さんは、僕の反対側に座る。武器管制系だ。三人娘は各種プローブからの情報を管理する席にあやめさん、生命維持システムに阿知花さん、機関部管理席に茉莉さんが座ろうと、席に手を掛けた。

 「あ、その席は僕が座るよ。」

そう言ったのは、立木謙吾さん。

 「あうあう、立木謙吾さんまで・・・。じゃあ、茉莉さんは、情報管理が得意そうだから水穂さんの隣に、通信関連は水穂さんに・・・。」

あたかもそこが自分の担当部門であるように、みんなシステムを起動し、様々な仕事が分担され、効率的に処理されていく。はっきり言って、素人の僕が何かしていると邪魔だったりする。しょうがない。後ろに下がろう・・・。

 「竜木籐吾さん、操縦および武器管制をお願い出来ますか?」

 「・・・はい、わかりました。」

にっこり笑って振り向いたその顔は、ちょっと涙ぐんでいる。

 「どうしたんですか?もしかして、何かお気に障りましたか?」

 「いいえ、実は、あの真砂希様との辺境探査の折にも、こういった探査艇で仕事をしたんですが、あなたが天木日亜殿そっくりなら、この配置もその通りで・・・。もう二度とないとあきらめたものがこういう形で復活するとは・・・。本当に嬉しく思います。」

あの三人娘も、少し鼻をすするような音が聞こえてくる。ピココンと通信の着信があり、ディスプレイが起動すると、そこには瀬戸様!。

 「あら・・・、なんだ、問題ないじゃない。これで、田本一樹殿艦隊司令決定ね。水穂ちゃん、さっきの申請は、樹雷としては受理したわ。ただ、駆駒将殿とはあくまでも対等の関係だから、一度話し合う必要はあるわね~。そうね、とりあえずはサンプル採取して、持って行って話したらどお?GPの西南殿にも連絡入れておくわ。あの子もあの島には関わっているし。」

 「瀬戸様ぁ、どんどん外堀を埋められている気がしますぅ。」

身動き取れなくなってきている気がするのは気のせいだろうか・・・。

 「ほほほほほ。それだけじゃ、済まないかもよぉ。それじゃあね。」

瀬戸様は、謎めいた微笑でディスプレイの向こうに消えていった。ひとまず、サンプル採取なら、というか、とにかくそこら辺に落ちてる岩石にレアメタルだの、物によってはダイヤだの、金だのプラチナだのが大量に含まれている。鉄やニッケルは言わずもがな。まあ、2,3個、適当に拾って成分分析をしよう。あとは、遺跡の本のような物だけれど。

 「さっき、本屋さんのような、図書館のような場所で、プローブに情報収集を命じましたけど、どうなりました?」

あやめさんが状況を報告してくれる。茉莉さんがその収集した情報を翻訳および管理してくれる。

 「ええ、収集し終わったようです。非常に古い汎銀河言語です。驚いたことにすべて翻訳が可能です。田本様には、日本語に翻訳して、その携帯端末に転送しておきますね。」

いちおう、汎銀河言語といわれるモノは天木日亜の記憶としてあるし、鷲羽ちゃんが生体強化の折にナノマシンで転送してくれてもいる。でもやはりこういう物は母国語になっている方がわかりやすいのも確かである。

 「拾った岩石の成分分析は・・・。」

 「ああ、プローブが確認した時点で、ほぼ終わっています。おっしゃるとおりレアメタルやら、ダイヤモンドなどの含有量は非常に高いですね。」

これも茉莉さんが携帯端末に転送してくれた。

 「そうでしょうね、第5惑星のなれの果てですから・・・。」

竜木籐吾さんに、あやめさん、茉莉さんに阿知花さん、立木謙吾さんまでが不思議そうな顔をする。

 「・・・ええっと、僕が柚樹さんから聞き取った報告をどこかで見せてもらってください。天木日亜さんの亡くなった時の、地球大洪水にからむ太陽系の大激変が記録されています。」

 「あなた、それなら樹雷の大ライブラリに日亜ー一樹レポートとして保存されていますわ。」

水穂さんが即座に答えてくれる。自分にとっては先週の話なんだけど、長いからそのレポートを読んでもらうとしよう。

 「それじゃ、それを読んでください。かなり長い物語です。さて、帰還しますか。」

この第4惑星の火星軌道上に上がったところで、機体をナノマシン洗浄をして、みんなと一時お別れだった。立木謙吾さんは樹沙羅儀へ、竜木籐吾さんと、神木あやめさん、茉莉さん、阿知花さんはそれぞれの阿羅々樹他、皇家の船に帰って行き、樹雷へ旅立っていった。

 僕も元の操縦席に座って、水穂さんと地球に帰る。来たときと逆に、いちおう柾木家に戻る。柾木家の庭に着陸し、軽自動車の形態に戻して、水穂さんと別れて、今度こそ自宅に帰る。途中コンビニに寄って、お腹がすいたので飲み物とサンドイッチを買って自宅の庭に戻って鍵を開け家に入ると、さすがに午前1時を過ぎていた。

そうして暮れた月曜日。火曜日も日中の仕事は例によって忙しく、何とか午後8時に柾木家に、探査艇兼軽自動車でお邪魔して、剣術の稽古をして、鷲羽ちゃんに、昨日慌ただしく飛び出した、探査艇の操縦法他いろいろのレクチャーを鷲羽ちゃんの研究室で受けた。

 「そうだ、昨日、田本殿が見つけた火星の遺跡の書物だけれど、読んでみたかい?」

ちょっと声をひそめる鷲羽ちゃん。

 「いえ、実はまだ読んでないんですよ。神木茉莉さんが、日本語訳まで作ってくれているんですけどね・・・。」

 「あれ、私も分析してみたんだけど、どうも数億年前にシードを行った文明のモノらしいよ。当時は、まだ地球は蒸し暑く、酸素もまだ充分になかったから、シード先史文明は、まずは火星に橋頭堡を築いたようだね。火星は一足先に条件がそろっていたんだろうね。」

 「もしかして、進化のミッシングリンクなんてよく言われているモノは・・・。」

 「そう、その文明の遺伝子操作などの結果かも知れないね。・・・それで、だ。今度、駆駒将殿と、採掘権の話し合いをするのだろう?この遺跡などの発掘権も話し合って、押さえておく事を勧めるね。情報を開示しちゃうと、変な連中もこの星系に来ることになるだろうし。」

この静かな太陽系が、地球人類を差し置いてウルサくなるのは、あまり好ましいことではないかも知れない。日本も明治初期には相手に良いようにされて、不平等条約なんて結ばされているし・・・。

 「もしかすると、しばらくそっとしておくのが良いのかも知れませんね~。」

腕組みして、考える。時間ができたら、その資料もじっくり読んでみよう。

 「ああ、そうだ柚樹殿と一樹殿の調整終わったよ。」

光学迷彩を解いて走ってきた柚樹さんと、パタパタと一樹が飛んできた。たった一日だけど、とても長かったような気がする。

 「どうだった?柚樹さんと、一樹?鷲羽ちゃんに変なことされなかった?」

 「わからんのぉ、わしらは寝ていただけだからのぉ。」

一樹も同じようである。

 「変なことって・・・。鷲羽ちゃんショック・・・。」

顔に縦線を急いで書いて、研究室隅っこでいじけるふりをする鷲羽ちゃん。

 「いや、だから、そこで落ち込むような人じゃないでしょ、鷲羽ちゃん。」

 「まあ、そうなんだけどね~。いちおう、お約束と言うことで。」

頭を掻き掻き、顔の縦線を拭いて消しながら、千変万化の表情の鷲羽ちゃんだった。

 「皇家の樹の異次元からのエネルギー吸収方法、そして放出などを改良したというか、調整したから、まあ、ひょっとすると、一樹殿はもともと第2世代超えた力だったから、第1世代超えてるかもね~。柚樹殿も樹のカタチしていない分だけ落ちるけど、まあ、強力になったと思うわ。こないだの主砲なら、柚樹殿単独ではじき返せると思うよ。」

えへへ~、やっちゃったぁ、みたいな顔の鷲羽ちゃん。

 「あくまでも、瀬戸様には第2世代皇家の樹と言うことでお願いします。今でもいろいろ押しつけられようとしているのに、第1世代がどうこう言うと、とんでもないことになりそう・・・。」

表情筋がひくひくしているのが分かる。

 「あれ、知らなかったっけ?第1世代皇家の樹に選ばれると、問答無用で皇位継承権ができちゃうよ。・・・それに、あんた呼ばれていないのに、第1世代皇家の樹の間に行けたんだろ?いやぁ~、どれか第1世代の樹に選ばれると、皇位継承権第5位くらいまでに、はいっちゃうね~。」

つんつんと胸筋を触ってくる鷲羽ちゃん。そのままぴとっと抱きついてくる。

 「いいねぇ、瀬戸殿が離れないはずだわ・・・。」


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