天地無用!~いつまでも少年の物語~。   作:かずき屋

9 / 135
天地家の飲み会で、いちおう天地君いままで高校生設定で、お酒飲んでなかったもので(^^;;;。みんなで飲む雰囲気を追求してみました(笑)。


始まりの章9

魎呼さんにお酒のとっくりを向けられて、「たまにゃぁ飲め!。」とからまれているのは短髪の若者、山田西南君か・・・。山田というと・・・。 

 「そうそう、ちなみに、そこに座っている山田西南殿はスーパー山田の御曹司だ。」

 「あ、これは、いつもお世話になっております。美味しいお総菜と、スイーツでお昼のたびに買いに行っています。」

いちおうご挨拶。この家以外の数少ない現実の接点のように感じる。でもホントにお総菜とオリジナルスイーツは絶品。今日はお弁当だったが、役場終わって30%オフになる時間帯がお得だったりする。買い物かごもって、うれしそうに店内を歩いていると、スーパー山田の奥さんに、「あらあら、こんなに買っていただいて。でも食べ過ぎちゃぁだめだよ。」とお腹をなでられるのが日課になっていたりするのだ。

 「魎呼さん駄目ですよ。俺、運が悪いから大変なことになっちゃう。・・・あ、ごめんなさい。いえいえ、こちらこそ。でも俺、あんまり店にはいないんですけどね。」

またまた意味深な発言。そう言われてみると。雰囲気はスーパーの跡取り息子というより落ち着いた態度や体つきからは、いつも危険と隣り合わせのような危うい感じがする。

あの人型メカらしきものから一緒に降りてきた、猫のようなでも耳が長い動物が傍らで、専用の小皿に取り分けてもらった料理を食べている。頭から背中をなでてもらって気持ちよさそうな鳴き声を上げている。

 「今日は、地鎮祭とか柾木天地君が言ってましたが・・・。」

西南君は、頭を掻き掻き、照れたような表情で顔を赤らめてうつむく。

 「ええ、ようやく準備が整いまして、正木の村の一画の土地が購入出来て、こちらでの家を持てるようになったんです。」

へええ、こちらでの、と言うことは別の家もあるのかぁ。大変そうだなぁ。

 「それはそれは、おめでとうございます。そんな日に、なぜかご迷惑をかけることになってしまって・・・。」

 「いえいえ、いつものことですから。もしかしたら俺が巻き込んだのかもしれませんし。」

妙に納得してしまうこの言動。やはり不思議な人だ。

 「西南君、今度の家は、霧恋さんちの隣なんだよね。」

柾木天地君が、ちょっぴり意地悪そうな表情で言う。

 「え、あ、あの(赤面)、いいじゃないですかぁ。ちょうど上に行くからって譲ってもらったんですよぉ。」

お、食卓の雰囲気が「ぽやぽや~~」としたものに変わる。

 「西南君幸せかい?。」

 「ええ(さらに赤面)。」

 「良かった・・・。」

なんと食卓にいるすべての人が本当にほっとしたように、暖かい笑顔になっていた。砂沙美ちゃんと阿重霞さん、天地君に至ってはちょっと目が赤く見える。つられて、自分もなんだかうれしくなる。涙が落ちそうになって上を向いた。

 「なんだい、おめーもうれしいのかい?。役人風情がよぉ。」

ちょっとはすっぱな言い方は魎呼さんだな。

 「いえね、毎日毎日、生活に困っただの、介護が苦しいだの聞いていると、本当に幸せな場面に出会うことがないんですよ。そういう言葉ってのに気持ちも引きずられますしね。なんだか皆さんがうれしそうだと、年取ると涙腺が崩壊しやすくなるんですよ。」

 「そうかい。あ~~、こんな時は酒だ酒!。」

 「魎呼さん、あなたはそればっかりですわね。でも今日は私も一緒に飲ませていただきますわ!。」

阿重霞さん、とっくりひったくって手酌でコップ酒(をい)。

 「ああ、うるさい子たちだねぇ。もうちょっと説明させておくれ。見た目の件だけど、この眼鏡を付けてほしいのさ。ちなみに、さっきの精密スキャンモンスターぬるぬる君3号のときに、パーソナル取っているのと、神社訪問時の映像データから偽装3Dフィールド作って、来たときと寸分違わない身体データを重ねて映すから、他人には今まで通り見えるはず。」

 一瞬あのおぞましい感触がよみがえるが、必死に頭の隅っこに追いやった。どんな技術なのか、今は聞くまい。とりあえず家に帰って自分の家族と、職場とその周辺をだませればそれで良い。

 「自分の見た目は、これで偽装出来るんですね。」

 「眼鏡を取りさえしなけりゃ、わからないさ。」

とりあえずは、あとは焼けて溶けたワイシャツとスラックスだな。明日洋服の緑山行かないと(笑)。

 「ああ、服かい、それなら・・・。」

 「田本様、こちらに今までのと同じサイズのものをご用意しました。」

うわ、ノイケさん手際よすぎ。

 「あれ、ちょっと素材が、違うような・・・。」

 「ええ、急遽こちらにあるものしか使えなかったので、化学繊維と呼ばれるものはご用意出来なかったんです。」

ええ、ええ、どうせ安物ですよぉだ(自爆)。

 「あははは。もお、形がそのままなら文句も言いません。いろいろご迷惑をおかけし申し訳ありません。」

 「あんたにとっちゃぁ、交通事故みたいなもんだからねぇ。ただ、これからはもっと大変かもしれないよ。」

鷲羽ちゃん、また下からねめあげるような目線で言う。

 「う、自分、昔からこう大変なことに巻き込まれることが多いんです。今の福祉課の担当になってからも複雑困難事例が増えてるし、いろいろな相談事も増加中で・・・。」

あれ、西南君と鷲羽ちゃのが目がキラキラしているのはなぜ?。天地君はやれやれみたいな表情だし。

 「でも、一生懸命やってると、うまくいってなるようになることが多いので、まあ、自分的には気にしちゃぁいません。たぶん、今度のこともなるようになるでしょう。」

 「そうそう、田本さん、乗ってこられたクルマは、この家の庭先に移動しておきました。」

 「うわ、天地君ごめん、ありがとう。って、そういえばキーは?。」

 「ぬるぬる君3号のときに回収して鷲羽ちゃんに渡しましたが・・・。」

 「はい、これだね。」

あれれ、キーホルダーが一つ増えている。

 「お守りだから(にっこり)。」

 「そうですか、重ね重ねありがとうございます。」

今度は、柾木天地君も西南君もまた気の毒そうな顔・・・。

 「さあ、田本さん、もう仕事はないんじゃろ?。だったら、少し飲んでいかんかね?。」

時間を見るとまだ夜7時50分くらい。

 「ええっと、いろいろお世話になった上にそこまでしてもらうのも・・・。」

 「なに、ちょっとした通過儀礼じゃ。」

柾木勝仁さんもすでにコップ酒。砂沙美ちゃん一升瓶抱えて持ってきてるし。

 「代行(代行運転業者)来てくれますかね?。」

 「来られると思うけど、うち広いから泊まっていってもいいですよ。」

 「今日はいろいろあったんだから酒で厄落としさね。」

柾木天地君もいつの間にやら、右手にコップ持ってるし、砂沙美ちゃん注いでるし。鷲羽ちゃんもとっくりから手酌してるし。ここまで誘われると断り切れない、ダメなボク。ノイケさんにコップ持たされて一升瓶からなみなみと注がれてしまった。

 「コホン。それじゃあ、みんな飲み物は行き渡ったかのぉ。本日は、山田西南君の地球での家も決まったし、さらに新しい皇家の樹のマスターも決まったようじゃ。これを目出度いと言わずしてなんと言おう。・・・乾杯!。」

 「か~~んぱ~~い。」

 柾木勝仁さんの音頭で飲み会が始まってしまった。またよくわからない言葉があるけれども、自分は、ちょっと席を立たせてもらって、先に家に連絡した。別に同じ町内だし特に問題はない。たまにへべれけになって帰ってくることを両親は知っているので「飲み過ぎるなよ」と言われたくらいである。あと、トイレが近くなるのでトイレの場所をこっそりノイケさんに聞くのも忘れない。

 そう、なにより、こういう暖かな酒の席は大好物だったりする(笑)。仕事柄様々な総会やら役員会やらで接待のようなことも多く(もちろん会費制)、あまり美味しくお酒を飲めないことも多い。

 まずは、柾木勝仁さんに注いでおかないと。

 「改めて田本一樹です。今日は本当にお世話になりました。」

 「びっくりすることばかりじゃったろう。悪気があるものは誰もおらんでの。悪いようにはせんから気にしないでいてくれると幸いじゃ。」

 「ああ、もう全然、とはいえませんが(笑)、こんな席にお呼ばれ出来て自分はうれしいです。あ、暖かい方が良いですか?。」

と見ると、とっくりはほとんど空になっていて、横に寝ている(笑)。適当に3本ほど持って台所に行こうとすると、

 「あらあら、ごめんなさい。」と、ノイケさんに取り上げられてしまった。

 「こういうの慣れているし、ご迷惑をかけてばっかりなので、お手伝いさせてください。」

 「男性の方が女の城に入るもんじゃありませんよ、と言ってみますが・・・。」

あらら、古風な(笑)

 「今はあんまり関係ないそうですわね。」

と台所で、とっくりを鍋に湯煎している場所、補充用一升瓶の場所などなど教えてもらう。

女性にしては、短くした髪で、何となく青く見える。お酒が入ると、言葉遣いが柔らかくなってほほに紅が差し、その代わり「直角はこう!」みたいな厳しさのように感じるものが少し後ろに引いて正直綺麗な人だと思う。

 「ここの方は皆さんお綺麗な方ばっかりなんですが、ノイケさんっていろいろ難しそうな印象を感じたんです。」

 「まあ、正直なお方ですね。悔しいけれどよく言われますわ。(苦笑)」

 「でも今は、ほほの紅がとても美しく思います。」

なんて言ってみる。

 「あら、・・・褒めていただいても何も出ませんわよ。」

スッとかわす言葉と表情が、鋭利なナイフを思い起こさせる。

 「それで、わたしの印象ってどんな感じですか?」

 「そうですね・・・。夏のむちゃくちゃ暑いときに、吹き抜ける風に稲穂が揺れるのが、燃え上がる炎のように見えることがあるんですが、そんな雰囲気です。」

ハッと、こちらを見る。ちょっと思っていたよりもリアクションが大きい。田舎の田んぼの中で育った自分は、あの強い緑が好きだったりする。

 「お、燗がとおりましたね。小さなお盆とかありませんか?。」

 「・・・はいどうぞ。」

あれれ、機嫌を損ねてしまいましたかね。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。