こっちはこっちで暴走妄想素人小説ですので、まあ怒られるまで暴走します(^^;;;。
しかし、介護蟻ですか(^^)。
実在したら、マジに特別養護老人ホームとか、病院の療養病棟とか、認知症対応型グループホームとかに組み込まれそう(^^;;。
2025年に向けて介護従事者が足らないとか言ってるし・・・。
一通り終わったところで一樹は例によって小さくなり、ドックの桟橋から外に出た。引き受け作業が終わった鷲羽ちゃんが出てくる。
「瀬戸殿からの依頼物件はこれですべてだね。あのフィールド発生器を調べると、今回田本殿が見ている世界が、我々にも見えるようになるかもしれないね。それは良いとしてだ・・・。」
鷲羽ちゃんに手を引っ張られて、研究室の奥に連れて行かれる。水穂さんにはちょっと待っていてね、と言っている。
「あんた、ちょっとここに座りな。本当にバカな子だね。周りの皇家の樹のエネルギーを一身に受けるなんて・・・。今からちょっと検査だ。」
簡単なイスに座らされ、頭に黄色く丸い何かのキャラクターみたいなものを置かれた。両の目のように見える物が左右ぴかぴかと光っている。
「え~、またぬるぬる君ですか?」
「ぬるぬる君を準備する時間がないし、ご希望なら出すけどぉ?」
鷲羽ちゃんは半透明の端末を忙しく操作しながら、半分上の空で話している。それ以上口を挟む気もせず、しばらく待った。ぴこここん、と結果が出たようである。鷲羽ちゃんの周りに半透明のウインドウがたくさん表示された。
「うん、現状の身体に異常はない。皇家の樹とのリンクは・・・、ふう、また強くなったようだねぇ。ほとんど田本殿そのものが、皇家の樹に近い存在になってるかも・・・。天地殿ちょっと来ておくれな。やはり・・・、あるていど説明はしておかないと、ね。」
鷲羽ちゃんが声をかけて、呼び出すと、しばらくして天地君が研究室に入ってきた。剣士君を送り出したあとで、今まで見たこともないような寂しそうな顔をしていた。
「あ、天地君。今日はごめん。剣士君の旅立ちに立ち会えなかったね。」
顔を上げこちらを見る天地君。僕の顔を見るとさらに複雑な表情になった。その顔のまま鷲羽ちゃんを見る。鷲羽ちゃんはゆっくりと頷く。天地君は研究室の適当なイスを持ってきて座った。
「いいえ、様々なことが重なってしまったので、それはしょうがないです。でも、まさか田本さんまでが・・・。」
今にも泣かんとするように顔がゆがむ。
「いや、田本殿は、天地殿のせいではないよ。人を一人救おうとして周囲にいた皇家の樹のエネルギーを一身に集めたんだ・・・。覚えているかい?そのことを。」
まるで朝方に鮮明な夢を見ていて、目覚めたときのように記憶は薄れ始めていた。たしか、背後から一突きされた籐吾さんを救おうとして悲しみと怒りで・・・。
「う、うおおおお・・・・・・!」
あのときの感情がぶり返してくる。両手が熱くなる。
「もういいんだ、もういいんだよ・・・。田本殿。」
鷲羽ちゃんが手を握ってくれるのと、柚樹がぴょんと膝に飛び乗ってくれるのと、一樹が肩にそっと乗るのを感じると、ゆっくり感情が収まっていく。
「・・・せっかく、僕のそばにいてくれるというのに、絶対に死なせたくないと、僕のせいで死なせたくはないと・・・。」
ぼたぼたと、音を立てるように涙があごを伝って落ちた。
「そうかい、そうかい・・・、優しい子だね。でも田本殿自身が、ね。」
鷲羽ちゃんが珍しく悲しそうな顔をしている。
「そうだ・・・、両手が熱くなって、自分自身から光が漏れ出すように、自分が太陽系よりも大きくなった、そう思ったときに、もの凄く大きな力に押さえつけられました。もがいて苦しんでいると、光のシルエットみたいなイメージの人に、超銀河団を旅したいんでしょ、遙か未来、光が死に闇が支配する、その先を見たくないか?と言われました。」
鷲羽ちゃんと天地君が顔を見合わせていた。
「その人の言葉を聞いたら、超銀河団を旅したい、その先の世界を見てみたい、そう強く思ったところでこの身体に戻った、そんな感覚でした。」
鷲羽ちゃんが僕の目をまっすぐ見て、ゆっくりと口を開く。
「田本殿は今でもその世界を見たいと思うかい?地球から遠く離れ、銀河系からも遠く離れた超銀河団を旅してみたい、そう思うのかい?」
鷲羽ちゃんにはめずらしく、ゆっくりと念を押すように尋ねてくれた。あまりにも遠い未来、その時間・・・。でも実際、いつになるのか定かでもないのだけれど、見られるものなら見てみたい・・・。
「・・・自分で言っていて、なんですが、ちょっとあまりにも荒唐無稽ですよね。でもいずれはというか、その時が来れば、そうしたいと思いました。」
なぜかそこでホッとした表情の天地君。
「あーあ、水穂殿も大変だね。そのことについては、また追々話すとしようか。ねえ、天地殿。」
「ええ・・・、共に行きましょう。光が死に、闇が支配するその先に・・・。」
遠くを見るような視線を僕の向こうにやる天地君。
「は?天地君がなんで?。」
「内緒です。まだ・・・。」
人の悪い笑顔を浮かべて、にっこり笑いながら。でもちょっと嬉しそう。ふと気付いて、左手首に目をやる。
「あ~~~。」
驚いた表情で二人がこちらを見る。
「さっきの騒ぎで、例のケータイ端末壊れちゃった・・・。というか、消し飛んじゃった・・・。」
別の意味で涙が頬を伝う。う~、連絡先が消滅しちゃったのだ・・・。鷲羽ちゃんと天地君が脱力している。
「なんだ。また作りゃ良いじゃないか。データは以前にバックアップ取ってるし。そのための恒星間探査船だったり、一樹の工場だろう?。」
「う、そうすね。携帯なんて、町のショップで買うモノだとばかり・・・。鷲羽ちゃんバックアップデータと、鷲羽ちゃんバーションの設計データくださいな。」
「はいはい、今夜転送しておくから。ホントにバカな子だよ。クルマは柾木家の裏に駐まったままだからね。」
ひらひらと手を振りながら、研究室出口に歩いて行く鷲羽ちゃん。
「田本さん、また追々話しましょう。」
ふわぁとあくびをかみ殺すような天地君だった。天地君も立ち上がる。
「そだね。もう遅いし。それじゃ帰るわ。」
そう言って立ち上がると、グラリとめまいがした。すぐ治まるだろうと一歩足を出そうとして、うまく踏み出せず、僕の身体は右横に倒れ込もうとした。さっきの後遺症?とか思って手を出そうとしたら何かに支えられている。半透明のフィールドのようなモノだった。
「あ、一樹か、柚樹さん、ありがとう、もう大丈夫だよ。」
めまいは、ほんの一瞬だった。でも信じられない答えが二人から返ってくる。二人とも僕の前にいて天地君に続いて研究室出口に向かっている。
「何もしてないよ(ぞ)。」
「え、よろめいたから光應翼張ってくれたんじゃないの?これ、なに?」
鷲羽ちゃんと天地君が、驚いた表情と納得づくみたいな不思議な表情をしていた。そう言ってすぐに僕を支えていたその半透明のフィールドは消えてしまった。支えていたモノが無くなったので、たたらを踏んだが、何とか転倒せずに済んだ。顔を上げると鷲羽ちゃんと天地君が顔を見合わせて、頷き合っていた。突然、天地君が右手で拳を作り、殴りかかってきた。とっさに腕をクロスして防御態勢をとる・・・。ズダンと結構な打撃音がした。
目の前に、三枚の半透明の、大きな花びらのような光應翼が現れている。天地君の拳はその光應翼に当たって止まっていた。
「まだ皇家の樹のエネルギーが身体に残っているんですかねぇ・・・・・・?」
そしてまたそのフィールドは、すぐに消えた。冬場の帯電みたいなもん?
「いんや、まぎれもなく、あんたが作り出した光應翼さ・・・。」
鷲羽ちゃんが、大きなため息をついてそう言った。天地君は拳をさすりながら、目を伏せている。
「すまないね、いまはこれがどういうことか説明する時期ではないと思う。その時が来ればちゃんと説明するから、今日は何も聞かないでくれるかい。」
さっきと同じように僕の目をまっすぐ見て、ゆっくりと言った。その目を見つめていると、すぐそこに真空の宇宙があるような、冷たく暗い迫力を感じた。正直言って震え上がるほど怖い。
「わかりました・・・。」