天地無用!~いつまでも少年の物語~。   作:かずき屋

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GXP11巻読みました。やっぱりお金がもらえる文章って違うんだなぁと愕然としてみたり。でも西南君とまた会えてうれしかったり。

こっちはこっちで暴走妄想素人小説ですので、まあ怒られるまで暴走します(^^;;;。

しかし、介護蟻ですか(^^)。

実在したら、マジに特別養護老人ホームとか、病院の療養病棟とか、認知症対応型グループホームとかに組み込まれそう(^^;;。

2025年に向けて介護従事者が足らないとか言ってるし・・・。


晴れ時々樹雷14

一通り終わったところで一樹は例によって小さくなり、ドックの桟橋から外に出た。引き受け作業が終わった鷲羽ちゃんが出てくる。

 「瀬戸殿からの依頼物件はこれですべてだね。あのフィールド発生器を調べると、今回田本殿が見ている世界が、我々にも見えるようになるかもしれないね。それは良いとしてだ・・・。」

鷲羽ちゃんに手を引っ張られて、研究室の奥に連れて行かれる。水穂さんにはちょっと待っていてね、と言っている。

 「あんた、ちょっとここに座りな。本当にバカな子だね。周りの皇家の樹のエネルギーを一身に受けるなんて・・・。今からちょっと検査だ。」

簡単なイスに座らされ、頭に黄色く丸い何かのキャラクターみたいなものを置かれた。両の目のように見える物が左右ぴかぴかと光っている。

 「え~、またぬるぬる君ですか?」

 「ぬるぬる君を準備する時間がないし、ご希望なら出すけどぉ?」

鷲羽ちゃんは半透明の端末を忙しく操作しながら、半分上の空で話している。それ以上口を挟む気もせず、しばらく待った。ぴこここん、と結果が出たようである。鷲羽ちゃんの周りに半透明のウインドウがたくさん表示された。

 「うん、現状の身体に異常はない。皇家の樹とのリンクは・・・、ふう、また強くなったようだねぇ。ほとんど田本殿そのものが、皇家の樹に近い存在になってるかも・・・。天地殿ちょっと来ておくれな。やはり・・・、あるていど説明はしておかないと、ね。」

鷲羽ちゃんが声をかけて、呼び出すと、しばらくして天地君が研究室に入ってきた。剣士君を送り出したあとで、今まで見たこともないような寂しそうな顔をしていた。

 「あ、天地君。今日はごめん。剣士君の旅立ちに立ち会えなかったね。」

顔を上げこちらを見る天地君。僕の顔を見るとさらに複雑な表情になった。その顔のまま鷲羽ちゃんを見る。鷲羽ちゃんはゆっくりと頷く。天地君は研究室の適当なイスを持ってきて座った。

 「いいえ、様々なことが重なってしまったので、それはしょうがないです。でも、まさか田本さんまでが・・・。」

今にも泣かんとするように顔がゆがむ。

 「いや、田本殿は、天地殿のせいではないよ。人を一人救おうとして周囲にいた皇家の樹のエネルギーを一身に集めたんだ・・・。覚えているかい?そのことを。」

まるで朝方に鮮明な夢を見ていて、目覚めたときのように記憶は薄れ始めていた。たしか、背後から一突きされた籐吾さんを救おうとして悲しみと怒りで・・・。

 「う、うおおおお・・・・・・!」

あのときの感情がぶり返してくる。両手が熱くなる。

 「もういいんだ、もういいんだよ・・・。田本殿。」

鷲羽ちゃんが手を握ってくれるのと、柚樹がぴょんと膝に飛び乗ってくれるのと、一樹が肩にそっと乗るのを感じると、ゆっくり感情が収まっていく。

 「・・・せっかく、僕のそばにいてくれるというのに、絶対に死なせたくないと、僕のせいで死なせたくはないと・・・。」

ぼたぼたと、音を立てるように涙があごを伝って落ちた。

 「そうかい、そうかい・・・、優しい子だね。でも田本殿自身が、ね。」

鷲羽ちゃんが珍しく悲しそうな顔をしている。

 「そうだ・・・、両手が熱くなって、自分自身から光が漏れ出すように、自分が太陽系よりも大きくなった、そう思ったときに、もの凄く大きな力に押さえつけられました。もがいて苦しんでいると、光のシルエットみたいなイメージの人に、超銀河団を旅したいんでしょ、遙か未来、光が死に闇が支配する、その先を見たくないか?と言われました。」

鷲羽ちゃんと天地君が顔を見合わせていた。

 「その人の言葉を聞いたら、超銀河団を旅したい、その先の世界を見てみたい、そう強く思ったところでこの身体に戻った、そんな感覚でした。」

鷲羽ちゃんが僕の目をまっすぐ見て、ゆっくりと口を開く。

 「田本殿は今でもその世界を見たいと思うかい?地球から遠く離れ、銀河系からも遠く離れた超銀河団を旅してみたい、そう思うのかい?」

鷲羽ちゃんにはめずらしく、ゆっくりと念を押すように尋ねてくれた。あまりにも遠い未来、その時間・・・。でも実際、いつになるのか定かでもないのだけれど、見られるものなら見てみたい・・・。

 「・・・自分で言っていて、なんですが、ちょっとあまりにも荒唐無稽ですよね。でもいずれはというか、その時が来れば、そうしたいと思いました。」

なぜかそこでホッとした表情の天地君。

 「あーあ、水穂殿も大変だね。そのことについては、また追々話すとしようか。ねえ、天地殿。」

 「ええ・・・、共に行きましょう。光が死に、闇が支配するその先に・・・。」

遠くを見るような視線を僕の向こうにやる天地君。

 「は?天地君がなんで?。」

 「内緒です。まだ・・・。」

人の悪い笑顔を浮かべて、にっこり笑いながら。でもちょっと嬉しそう。ふと気付いて、左手首に目をやる。

 「あ~~~。」

驚いた表情で二人がこちらを見る。

 「さっきの騒ぎで、例のケータイ端末壊れちゃった・・・。というか、消し飛んじゃった・・・。」

別の意味で涙が頬を伝う。う~、連絡先が消滅しちゃったのだ・・・。鷲羽ちゃんと天地君が脱力している。

 「なんだ。また作りゃ良いじゃないか。データは以前にバックアップ取ってるし。そのための恒星間探査船だったり、一樹の工場だろう?。」

 「う、そうすね。携帯なんて、町のショップで買うモノだとばかり・・・。鷲羽ちゃんバックアップデータと、鷲羽ちゃんバーションの設計データくださいな。」

 「はいはい、今夜転送しておくから。ホントにバカな子だよ。クルマは柾木家の裏に駐まったままだからね。」

ひらひらと手を振りながら、研究室出口に歩いて行く鷲羽ちゃん。

 「田本さん、また追々話しましょう。」

ふわぁとあくびをかみ殺すような天地君だった。天地君も立ち上がる。

 「そだね。もう遅いし。それじゃ帰るわ。」

そう言って立ち上がると、グラリとめまいがした。すぐ治まるだろうと一歩足を出そうとして、うまく踏み出せず、僕の身体は右横に倒れ込もうとした。さっきの後遺症?とか思って手を出そうとしたら何かに支えられている。半透明のフィールドのようなモノだった。

 「あ、一樹か、柚樹さん、ありがとう、もう大丈夫だよ。」

めまいは、ほんの一瞬だった。でも信じられない答えが二人から返ってくる。二人とも僕の前にいて天地君に続いて研究室出口に向かっている。

 「何もしてないよ(ぞ)。」

 「え、よろめいたから光應翼張ってくれたんじゃないの?これ、なに?」

鷲羽ちゃんと天地君が、驚いた表情と納得づくみたいな不思議な表情をしていた。そう言ってすぐに僕を支えていたその半透明のフィールドは消えてしまった。支えていたモノが無くなったので、たたらを踏んだが、何とか転倒せずに済んだ。顔を上げると鷲羽ちゃんと天地君が顔を見合わせて、頷き合っていた。突然、天地君が右手で拳を作り、殴りかかってきた。とっさに腕をクロスして防御態勢をとる・・・。ズダンと結構な打撃音がした。

 目の前に、三枚の半透明の、大きな花びらのような光應翼が現れている。天地君の拳はその光應翼に当たって止まっていた。

 「まだ皇家の樹のエネルギーが身体に残っているんですかねぇ・・・・・・?」

そしてまたそのフィールドは、すぐに消えた。冬場の帯電みたいなもん?

 「いんや、まぎれもなく、あんたが作り出した光應翼さ・・・。」

鷲羽ちゃんが、大きなため息をついてそう言った。天地君は拳をさすりながら、目を伏せている。

 「すまないね、いまはこれがどういうことか説明する時期ではないと思う。その時が来ればちゃんと説明するから、今日は何も聞かないでくれるかい。」

さっきと同じように僕の目をまっすぐ見て、ゆっくりと言った。その目を見つめていると、すぐそこに真空の宇宙があるような、冷たく暗い迫力を感じた。正直言って震え上がるほど怖い。

 「わかりました・・・。」

 

 


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