ハーメルンジェネレーションズ シェリフ×エクシズ 奇箱事変   作:八咫ノ烏

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遅くなって大変申し訳ありませんでした。
ストックが切れました。


ep.3 交流

 ザリガニと戦った現場から撤収し、助けてくれたライダーにあっちこっちと連れ回されてたどり着いたのは、少し寂れた喫茶店。ハーメルンというらしいその店の外観を観察していると、彼はいきなり僕の方を向いて口を開いた。

 

「黒神恵理也」

「え?」

「俺の名前だ。名前も知らないと呼びづらいだろ」

 

 どこかぎこちない自己紹介。曰く自己紹介をすることには慣れていないのだという。

 僕もエクシズギアを腰から外して変身を解除する。装甲は白い光へ変化し、零れ落ちるように散っていった。

 

「月宮蒼樹、です。さっきは助けてくれてありがとうございました……」

 

 頭を下げて謝辞を述べる。もしあのまま戦っていたら、今頃僕は三途の川を渡河していることだろう。そうならなかったのは助けに入ってくれた黒神さんのおかげ。要するに命の恩人ということになる。

 

「感謝されるようなことをした覚えはない。俺があいつをやったのはしえ……目の前で死なれたら寝覚めが悪いからだ」

 

 黒神さんはそう言って謙遜した。しかし、僕にとって命の恩人であるということに変わりはない。いつかどこかでこの恩を返さなければ、と心の中で決意する。

 そんな僕の心中を知るはずもない黒神さんは、バイクから鍵を引き抜くとそれを指先でくるくると回しながら喫茶店の方に視線をやった。

 

「ここは俺が前に世話になった喫茶店だ。色々とお前に話さなきゃいけないことがあるし、とりあえず入るぞ」

 

 そう言って彼は喫茶店のドアノブに手を掛け、それを押して入店した。僕も急いで駆け寄ってそれに続く。

 店内はかなり落ち着いた雰囲気であり、これがいわゆるレトロな店というものなのかと思いながら僕は店内を見渡した。妙に大きな鏡が目を引いたが、すぐに興味は掻き消える。

 

「久しぶりです。またお世話になります」

「ああ、恵理也くんか。別に構わんが手伝ってくれよ?」

 

 黒神さんはマスターと呼んだ男性の言葉に頷くと、後ろにいた少年の方に手を振った。

 

「ところで恵理也くん、そっちの子は誰だい?」

「月宮蒼樹くんっていう仮面ライダーみたいです。僕が現場に着くよりも前から戦ってくれてたみたいで、おかげで被害はかなり少なく済みました」

 

 黒神さんがマスターに僕の紹介をしてくれた。僕がお辞儀をすると、黒神さんは近くにあった椅子を二つ下げ、僕に座るよう促した。僕はそれに従って椅子に腰を下ろす。

 

「ひとまず……、何から説明したらいいんだ……。悪いな、説明するのが難しいんだ」

「いえ、そんな」

 

 僕はそう言って、マスターが出してくれた温かいコーヒーを口にする。心がポカポカするような感覚がして、僕は驚嘆の息を吐く。さすがは喫茶店を開くだけであって、かなり美味しい。

 黒神さんは少し考えたあと、口を開くなり衝撃的なことを言い放った。

 

「まず前提として、ここはお前の知る世界じゃない」

「どういうことですか?」

「そうだな……異世界とかパラレルワールドとか。とにかくそんな感じだ」

 

 俄かには信じ難い。懐疑100%の目線で見つめる僕に、黒神さんは一つの質問を僕に投げかけてくる。

 

「お前、今は西暦何年だかわかるか?」

「2034年でしょう?」

 

 何を当たり前なことを聞いているんだ。そう言いかけた僕に、喫茶店のマスターは

 

「今は2020年だ」

 

 と僕に告げる。それは本当のことなのだろうか。妖怪か何かに化かされているような感じがして、薄気味悪かった。

 どうしても信じられない僕を見かねて、黒神さんは懐から何かを取り出してそれを僕に見せる。

 

「ガラケー……!?」

 

 それはガラケーだった。時が経つにつれて利用者が減っていき、ついには利用者が百人を切ったというニュースを去年見たばかりだ。到底目の前に座る高校生くらいの子が持っているような代物ではない。

 目を見開いて驚く僕に、黒神さんはそのガラケーを懐に仕舞って口を開く。

 

「俺のいた世界はまだ2009年。この世界の人間がずっと触ってるあの板……()()()とか言うんだったか? あんな変な板を使ってるやつなんか、俺の周りにはほとんどいない」

 

 嘘だろう。そう言いたかったが、彼の目はそれが本当のことだと訴えかけている。つまり、彼の周りの人間は本当にガラケーを使っていて、しかも二十年ほど前の時を生きているということになる。

 

「そんなバカなことが……」

「そんなに信じられないなら、そうだな……テレビでも見てみるといい。ちょうどニュース番組がやってるはずだ」

 

 そう言って彼はテレビをつけた。報道されるニュースの画面には、何かの大会の名前だろうか。何やら長ったらしい名前の後に2020決勝、今夜九時からと書かれているテロップが表示されていた。過去の大会の放送かと思ったが、生中継と銘打たれているためそうではないようだ。

 どうやら今は本当に2020年らしい。相変わらず信じがたいが、真実であると受け入れる他ない。

 

「まぁ混乱するのも無理ない。いきなり別世界に転移した挙句タイムスリップじみた現象も起きてるんだからな」

 

 黒神さんは苦笑いして温かいココアを飲んだ。コーヒーは飲めないのだろうか。せっかくこんなに美味しいのに、もったいないこともあるものだ。

 

「あぁそうだ。面白いことを教えてやる。この世界は仮面ライダーが特撮番組として放映されてて、まぁいわゆる娯楽になってるんだそうだ。それも割と子供向けの」

「え」

 

 思わず素っ頓狂な声を出してしまった。仮面ライダーが娯楽になっているとは一体どういうことだ。

 

「仮面ライダーって都市伝説扱いなんじゃ……」

 

 そう言ってから気がついた。ここは僕の住む世界ではなく異世界であり、僕の世界での常識がここでは通用しないこともある。ということは、僕の世界では都市伝説だったものがそうで無くなっていても何らおかしい話ではない。

 

「ついでに言うと俺の住んでる街は、その特撮番組の舞台として出てくるんだとさ。つまりこの世界では架空の都市ってことだ。初めてそれを知った時は腰を抜かしたね」

 

 懐かしむように目を宙にやる黒神さん。僕はもしかしてと思い、自分のスマホを取り出して恵九味市と検索を掛けようとしたが圏外と表示されて使い物にならない。世界を渡ったことによる弊害というやつなのだろうか。不便にもほどがある。

 

 はぁ、と溜め息を吐く僕を横目に黒神さんは立ち上がり、一旦荷物を置いてくるから、とだけ言い残してお店の裏に行ってしまった。

 そしてそれと入れ替わるように、一人の少年が僕の方に駆け寄ってくる。

 

 やけに目を輝かせているように感じるが、気のせいだろうか。

 

「ねえねえねえねえ!!」

 

 どうやら目を輝かせているように感じたのは気のせいではなかったらしい。あまりの大声に驚いて心臓が止まるかと思った。

 目をぱちくりして固まる僕に、その少年は捲し立てる。

 

「恵理也兄ちゃんが連れてきたってことはお兄ちゃんも仮面ライダーなんでしょ! 別の世界から来た!」

「ま、まぁ……うん」

 

 困惑気味にそう返して少年を見る。その少年は、やはり目をビッカビカに光らせて僕の方を見ていた。目の前に別世界から来た人間がいたら、そりゃあ興味関心は湧くだろうし目を輝かせるのもわかる。

 一人で納得していたが、どうやら少年が目を輝かせていたのは異世界から来た人間という部分ではないらしかった。口を開くなり

 

「ベルト見せてよ! どんなんなの!?」

 

 とベルトとやらを見せてくれと要求してきた。ベルトを見せろと言われても僕はベルトなんてつけていないし、そんなものを見せて何になるんだろう。

 彼が何を求めているのかまるでわからない。思わず首を捻りながら

 

「ベルト……って何のこと?」

 

 と尋ねると、彼はこう返してきた。

 

「変身する時に使うでしょ? あれのことだよ!」

 

 変身する時に使うもの。そう言われて思い浮かぶのは一つしかない。絶対にエクシズギアのことだ。確かに変身する時にベルトのように腰に巻きついている。あれをベルトと呼ぼうと考えたことは一度もなかったから盲点だった。

 

 なるほど、異世界人ではなく仮面ライダーであるという方面に興味を持っていたのか。ここまでヒートアップしているのを見るに、この子は仮面ライダーオタクなのだろう。それも重度の。

 

「えっと……エクシズギアのこと、かな……?」

 

 確認するように少年に問い返すと、多分それと言って首をブンブンと縦に振った。

 やはりそう来たか。僕は心の中で少しだけ考え、しかし首を横に振ってギアを見せることを拒否する。

 

「大事なものだし、あんまり人に見せないでくれってアス……偉い人に言われてるから見せてあげられないんだ。ごめんね」

 

 少し心苦しいが、雪村さんや篠崎さんに怒られるかもしれないのだ。許してほしい。

 

 少年はわかりやすいくらいに気分が沈んだようで、そっかと言いつつ肩を落とす。本当に罪悪感が凄まじいが、これも一応組織に所属する者の務めだ。

 ルールは基本的に守るべきだろうし、別世界だからといってそれを無視していい理由にはならない。

 

「ギアって言ってるしファイズみたいなのかな〜。どんなベルトなんだろう」

 

 ぶつくさ言いながら僕のエクシズギアがどんな物なのか想像する少年。どうやらエクシズギアを見るというのは諦めたらしい。聞き分けの良い子で非常に感心する。どっかのバカとは大違いだ。

 少し郷愁に襲われていると、ひょこりと黒神さんが顔を出して僕に手招きをした。

 

「月宮。お前もひとまずは裏へ荷物を纏めとけ。これからこの喫茶店の手伝いをするんだからな」

「喫茶店の手伝い? 僕が?」

 

 思わず聞き返す。僕はこの店のアルバイトというわけでもないし、手伝うと言った記憶もない。一体どういうことなんだ。

 

「手伝いたくなきゃそれでもいい。今日から野宿生活になっていいんなら、な」

「え」

「あそこから逃げる時に言っただろ? 今のお前は家どころか戸籍すらないんだ。俺達みたいな年代が野宿してたら警察のお世話になるだろうけど、本来はこの世界に存在しない人間なんだぞ。絶対普通の人の数倍は面倒なことになるだろうな」

 

 言われてみればそうだった。今の僕は衣食住のほぼ全てが危うい状態にある。しかし、それは彼も同じはず。なら彼は一体この世界でどうやって生活するつもりで……。

 

「まさか……」

 

 一つの考えが脳裏に浮かぶ。彼はここに入る前、この喫茶店を世話になっている場所と説明をした。ただ単純に働いている場所なのだと思っていたが、もしかするとそれは少し間違いなのかもしれない。

 

「ここに住まわせてもらってるんですか……!?」

 

 そうでなければ、僕が手伝えば野宿生活にならないと暗に示す理由がない。黒神さんは首を縦に振って僕の言葉を肯定すると、続けてこう言った。

 

「その代わりに手伝ってるってわけだ。お前だって手伝いさえすれば食も住も解決するとなったら喜んで手伝うだろ?」

 

 その言葉に僕は首を縦に振る。僕には野宿をするスキルなんて全くないし、もし野宿するとなれば数日で死体になっていること間違いなしだ。だがここを手伝えば生活の基盤を確保できるし、野垂れ死ぬことだってなくなる。

 少し考えたのち、僕は

 

「わかりました。マスター、その……良いですかね?」

 

 とマスターに宿泊の許可をもらおうとする。マスターは特に拒否することなく「いいよ」と言ってくれたため、なんとか食と住を確保することができたのだった。

 

 

▽▽▽▽▽

 

 

 時間は日が落ちて少ししたくらい。ザリガニドーパントがメモリを手に入れたその場所で、男女が二人、話し合っていた。

 

「黒い仮面ライダー……。面倒なのが来たわねぇ」

 

 話題の中心は仮面ライダーシェリフである。ガイアメモリを破壊できる彼の存在は、二人にとって目の上のたんこぶとも言うべき厄介な相手であった。

 

「あれをどうにかするまでは色々と不便でしょうね」

 

 彼らの目的であるガイアメモリの流通させることであり、この世界の治安を悪化させること。

 それらを達成するためには、シェリフをどうしても排除しなければならない。いくらガイアメモリを流通させたとしても、シェリフが存在する限りいつかは全て破壊される。そう確信を抱くのも理由があった。

 

「彼は以前私達と似たようなことをしようとした男を殺したそうです。そうなると、今回も私達の邪魔をしてくるだろうというのはわかりますね?」

「一度ならず二度までも、そうなってもおかしくはないよね」

 

 そう。シェリフこと恵理也は、以前この世界にガイアメモリをバラ撒こうとした男を倒し、結果的に殺している。その情報をどこからか入手した彼らが警戒するのは当然と言えるだろう。

 自らが同じ目に遭う可能性があるのだから。

 

「仮面ライダーなんていないと思ってたし事実いないはずだったんだけどな〜。せっかく仕入れた大量のガイアメモリも簡単に出せなくなっちゃった」

 

 女は心底面倒くさそうにそう言いながら木箱をパシパシと叩く。その中には文字通り大量のガイアメモリが仕舞われており、女が叩く度にガチャガチャと音を立てる。

 しばらくそうして気を紛らわせた後、女は男へ視線を送って口を開く。

 

「まぁしばらくはあの男からもらった腕輪をバラまいて時間稼ぎかな~。流通させたって破壊されちゃうんじゃ意味ないし」

「そうですね……。少なくともシェリフを始末するまでは」

 

 破壊されないからという理由でガイアメモリを選んだのだ。なのに破壊されてしまうのであればどうしようもない。

 なんとも面倒な事になった。そんなことを考えながらメモリを一本、手の上で弄ぶ。

 

「でもさぁ、実際のところ、あんたならあんなガキ一人くらいどうにか出来るんじゃないの?」

 

 口から滲み出る信頼。男が強いことを知っているからこその発言である。

 男は少しも考える事なくこう答える。

 

「必ずという保証は出来かねますが、やれと言うのであれば全てを懸けて首を討ち取ってみせましょう」

 

 と。

 

▽▽▽▽▽

 

 

「……ふぅ」

 

 温かい浴槽に浸かり肩の力を抜く。異世界に来た挙句トレイター以外の化け物に遭遇してめちゃくちゃに苦戦して、一時はどうなることかと思ったがなんとか安心できるスペースを確保できてよかった。ここに辿り着けていなければ、今頃僕は外で凍えているはずだ。

 あまりにも濃い一日だったが、こうして無事に一日が終えることができるのは素直に喜ぶべきだろう。

 

 

 

 喫茶Hamelnの二階にあるとある部屋。章太郎君の話に寄ると元は単なる物置部屋であったが、とある仮面ライダー二人組が来訪してからというもの、この世界に訪れる仮面ライダーが宿泊するための部屋になっているらしい。

 タオルで頭を拭きながら、僕はその部屋のドアを開けた。

 

「上がりました」

「うん」

 

 緩い返事が返ってくる。昼間の凶暴な言動をトレイターに浴びせていたあの黒い仮面ライダーと同一人物とはとても思えない。あのギアを使うと人格が乗っ取られるのだろうか。あまりの豹変っぷりに少し恐怖を抱く自分がいる。

 そんなことを考えながら、二つあるうち片方のベッドに腰掛けて黒神さんを見る。あまり光を感じない瞳に吸い込まれてしまいそうな気がした。

 

「……どうした?」

 

 ジッと見ていることに気が付かれたらしい。僕は慌てて目を逸らして、なんでもないですと言い誤魔化した。黒神さんはそこから詰め寄ることもなく、そっかとだけ返して彼はベッドに体を沈める。

 何か考え事をしているのか、目を瞑ってぶつぶつと呟き始めた彼を横目に、僕は窓の外を見る。

 

「本当に違う世界に来たんだ……。なんだか夢を見ているみたいな気分になってきた」

 

 その窓から見える景色は、やはり僕の知らない街のもので。どうしてこんなことになったのかわからないし、未だにこれが現実であることを受け入れられていない。

 電話に出て、気が付いたら平行世界にいた、だなんて現実味が全くない。ラノベやアニメでも、もう少しマシな理由を付けるだろう。

 

「黒神さんはなんでこの世界に来ちゃったのか、わかったりするんですか?」

 

 おそらく僕よりこの世界について詳しいであろう黒神さんに尋ねる。少なくともあれこれと推察くらいは教えてくれることだろう。

 そんな期待を秘めていたのだが、どうやらそれは空振りに終わったらしい。

 

「正直俺にもわからない。みつっ……どっかの誰かさんはドーパントへの対抗手段としてこの世界が俺を呼んだんじゃないかって言ってたけど、どうせ呼ぶんなら俺なんか呼ぶよりも他の奴のが適任だ」

 

 と返されてしまった。きっとこの喫茶店のマスターとあの子──藤堂権兵衛と藤堂章太郎というらしい──もわからないだろうし、これ以上考えても時間の無駄だろうか。

 後は自分で考えろ。そんな意思すら感じる彼の答えに、僕は思わず黙り込む。

 

 気まずい静寂。それを先に破ったのは黒神さんだった。

 

「……素朴な疑問だが、お前はどうして戦ってるんだ?」

 

 それは本当に純粋な疑問。何か勘繰っているとかそんなわけではないのはよくわかった。

 少し始まりの日を思い出しつつ、ゆっくりと口を開く。

 

「……目の前で、友達が傷つけられたんです。いや、若干自業自得みたいな感じはあるんですけど」

「……どういうことだ?」

「僕らがトレイターって呼んでる化け物に襲われたんですけど、そいつに立ち向かった結果怪我したというか……」

 

 正確に言うならば、トレイターの股間に膝蹴りをかました結果、あっちの硬い鎧的なもののせいで怪我をしたのだ。

 僕を庇おうとしたのか、周りの人たちを助けようとしたのか、それとも単にムカついたからか。なんやかんやで今に至るまでに、なぜトレイターへと襲い掛かったのかを聞けていない。

 

 ともかく、目の前で友達が怪我をしたのは事実。そして殺されそうになったのも。

 

「もうあんなのは嫌だから……」

 

 別にあいつみたいに勇気があるわけじゃない。それほど強いわけでもない。ただ、誰かが目の前で傷つけられているというのに、何もできないというのはもう勘弁だ。

 僕はきっと、それが理由で戦っている。

 

「なるほどな……」

 

 それを聞いた黒神さんはもう僕に対する興味を無くしたのか、それだけ言ってベッドで横になった。

 

「黒神さんはどうして戦っているんですか?」

 

 彼はどうして戦っているのか、気になって仕方がない。きっと僕とは違う理由のはずだ。

 そう思い、彼に聞いたのだが。

 

「……まぁ、そのうちな」

 

 はぐらかされてしまった。口を挟む隙を与えず、彼は目を瞑って寝息を立て始めた。

 言いにくいのか、まだ僕を信用していないのか。まぁ初対面の相手をいきなり信用しろ、というのも難しい話なのはわかるのだが。

 世界を渡って、倒せない敵と戦って。それによる疲労もあるのだろう。僕もかなり眠気に襲われていて、今にも寝てしまいそうだ。

 

「……おやすみなさい」

 

 ベッドに身を投げ、目を閉じる。すぐに意識が沈んでいった。




profile.3 「アストライア」

蒼樹がいた世界に存在する組織の名前。雪村をリーダーとし、トレイターたちから民間人を守るために日々戦っている。
その組織の成り立ちを知る者は少なく、また誰もそんなことに興味を示さないため話される事も無い。
蒼樹の想像以上に、謎に包まれているようだ。
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