目覚め・1
僕はこの世界が嫌いだ。
僕は僕に興味が無い人が嫌いだし、各々が持つ有って無いような小さな個性を他者との違いとし優劣をつけるこの世界が嫌いだ。
それぞれが大きな個性を持ち、それを優劣として認識する世界に憧れがある。
だからだろうか。僕が創作の世界にハマり、ひたすらに憧れてしまったのは。
「お前は生まれてくるべきではなかった。時代を間違えたのだ。」
今、言葉もろくに話せないほど幼い僕の目の前で眉間に皺を寄せ険しい顔をしたシワだらけの老婆が僕を否定する言葉を放つ。
…のを、僕はその老婆同様の曇った目で見つめ、聞いていた。
「カグヤ、こんなことをお前に言っても仕方がないか、、、。お前を救えない私を許してくれ。」
僕はどうやら転生したらしい。生まれてすぐの記憶は当然ながらないからおそらく2歳といったところだろう。
転生する前の記憶は1部だけは鮮明に覚えている。僕が引きこもりで、人との小さな差を比べることを嫌いながらもその差を誰よりも気にし、引きこもり創作物を通して現実逃避を繰り返していたということをだ。
この記憶から分かることで言えば、僕の前世は承認欲求が高くどうしようもない男だったということであり、記憶があるので僕の容姿や個性次第では今世でもそれは変わらないってことだけだ。
そんな僕の腐りきった性格を曇った瞳から察したのかどうなのかは知らないが僕は暗く湿った部屋に入れられている。たまに来る老婆が僕の世話を毎回険しい顔をしながらしてくれている。
どのような状況なのかは分からないがこの老婆は僕の恩人なのかもしれない。
(というか状況説明早くしてくれないかなあ⋯。)
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「あの子は処分するべきですっ!今までだってそうしていたでしょう!」
「だめだ。あの子は正真正銘我がカグヤ一族の子だ。長老であるワシが許さんと言っておるのだ。」
「なら今までの子どもたちはなんだったと言うのですのか。あの子を庇うのは育て親である長老様だけですぞっ!あの子はカグヤを強く引き継ぎすぎているのですよ?!」
「なにより、あの子は不気味にすぎる。あの目はあの歳ができる目ではない。」
薄暗い部屋の中で長老と呼ばれる老婆を囲むようにして男たちが非難を浴びせるように老婆に対して訴えかける。
その光景は見るものが見れば違和感を感じずには居られないだろうがこの場では誰もこの弱った老婆を責め立てている違和感を認識していない。
「長老様っ!あの子が正真正銘のカグヤ一族だからこそなのですっ!我々カグヤ一族は血を薄くすることにより生き長らえてきたのではないですか、、!」
必死な形相をした男に対し、長老と呼ばれている老婆は片方の口角を上げながら眉を動かさず答える。
「確かに我が一族は希少な能力を持つが故に外界から狙われ、絶えかけ、そして外から女を攫い血を薄めるという選択をした。儂もその被害者だ。誰よりもその事は理解っている。
だからこそ分かる。この一族の歪さと軟弱さがな。戦うべきなのだ。あの子はカグヤ一族を新たなものとし、外界に復讐する旗印となる素質を持っている」
男達は老婆の放った無理な計画に驚きと怒りを隠せないでいるようだった。一人の男が古びた木の床を強く叩き、蝋燭の火が強く揺れた。揺れがおさまる頃、静かに再度反論を始めた。
「確かにあなたは被害者です、、。ですが、それは一族を守るためっ!一族が持つ再生する肉体を不老不死の材料とする外界の人間から守るためには外の人間の血が必要だったのです、、。それにより私たちの血は薄まり、寿命も伸び、狩られることも無くなった!それを全て無に返すおつもりですか!?」
男達は恐れていた。外から人を攫い、孕ませ、強い特徴を持った子どもは消すことで血を薄め、1度弱くした一族の能力である強い再生能力とそれに伴う薄命が戻ってしまい、不老不死の薬の材料として認識されていた時代すらも戻ってくることを。
「一族の能力を強く表した赤子を今まで何人も処分してきました。あの子だけ救うというのは全てを無駄にすることです。
ましてやあの子は伝承にある始祖であるカグヤ様に近しい強い再生能力を見せました。恐らくあの子の存在を許せば今までの全てが無に帰ります。長老様、、ご再考をお願いします。」
そこから2時間余り、男達が老婆に語る話は同一の内容ばかりであり、老婆に否定する気力はなくなったようであった。
「、、、、分かった。あの子は処分とする。処分は慣例通り女衆に任す。」
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老婆が僕を否定する言葉を放ってから十年ほど経った。
僕はあれから暫くして、虚ろな目をした多くの女たちに連れられ森の奥深くにある地下洞窟に作られた一室に入れられた。
それから十年間、一度も外に出れてないっ!。10人ほどの女達が日替わりで世話をしてくれるので生きるのに問題は無いがかなり来るものがある。というかあいつらは妙に虚ろな目をしてるが隙は見せないから監視だな。
唯一の楽しみは4歳頃から始まった1ヶ月に1度会いに来る老婆の絵本の読み聞かせとか悲しくなってくる、何歳だよ僕。12歳とかだぞ。
だけどその絵本、惹かれるものがある。主人公は女性なんだが僕と同じ名前で、何より僕を題材に作られているものなのだ。興味を持たれるのは好きだ。もっとやってくれ。
カグヤというその絵本の主人公である女性は僕ができること、僕ができそうなことを行いながら物語を進んでいくから没頭するし真似したくなる。監禁中だからむりだけど!
細い体ながら強い肉体を持ち、体術と自らの骨を使って最強を目指していく、そんな物語である。
カグヤが使えるように僕も骨を少しの痛みを伴うが自由自在に操ることが出来たし、それでできた傷を再生させることも出来た。これは僕が題材で間違いないだろう。というかこの老婆どういう教育方針だ。
この能力は僕がこの世界に来て身につけた僕だけの大きな個性だったから、発見したときは嬉しくなりすぎてそれを老婆に見せたら老婆は嬉しそうに次の月から絵本を持ってき始めたのだ。いい老婆だ。
「カグヤ、開けるよ」
「うん」
この老婆は僕の淡白な反応を特に気にしていないのか、10年前の険しい顔を忘れてしまったような楽しげな表情で毎回話す。
老婆はいつもより少し分厚い絵本だろう本を持って現れた。てかこれ毎月作ってくれてるってことだよな。そこまでしなくても会話ぐらいするのに。
「カグヤ、今日は少し長くなるよ。楽しみにしてたかい?」
そう言いながら絵本の中のカグヤが死んだ後の世界の話を絵本を見せながら始めた。
「カグヤは最強になり10年間肥沃な大地全てを支配したが、カグヤとて人間、多くの夫に見られながら齢60にして亡くなったのだ。」
「夫たちはカグヤが残した王の座を自らの子に継がせる為に争いを始め、カグヤの力を最も濃く継いだ者が生き残り王になった。そこから長い支配が続くことになったが、力が重視されるその時代ではカグヤの力が支配には必要になる。力を失わないためにカグヤの血縁のみで子をなし続けた結果、その力は変質し、弱まってしまうことになる。」
(理解できるからいいけど話し方がいつもと違うな、、。いつもは難しい言葉なんて使わないし、説明口調でもないのに。)
「そして弱ったカグヤの力では王の座を守れず、カグヤの血縁は遠い渇いた土地に逃げ延びることになる。その土地で貧しい生活を始め、いまのカグヤ一族は出来たのだ。ここからカグヤ一族の不運は始まる。」
(?話が飛んだな。)
「新たな土地で生活を始めたカグヤ一族はなおも一族間でのみ子をなし続けた。その結果、18頃で成長が止まり、そこから死ぬまで一切肉体的老化が起きず、30になるまでに皆死んでしまうようになった。」
「この事実はカグヤ一族の立場を危うくすると考え、秘密とされていたが、旅の商人がこの秘密の肉体的老化が止まるという部分のみとカグヤと比べれば弱まりきった再生の力を知ってしまいカグヤ一族は不老不死の薬の材料として認識されてしまうようになる。」
「昔から100年前程度までその認識は変わらず、カグヤ一族は不老不死の薬として狙われ続けていた。だからこそカグヤ一族はカグヤの血を薄くする行いを始めた。今では老化は僅かだが進む程度になり、寿命も長くなり、再生力もかなり落ちた。」
(何の話だ?)
「聞きたいんーー」
「お前も察しているかもしれないが今までの絵本やこの話は実話であり、私やお前はカグヤ一族だ。真なるカグヤ一族は私とお前しかもういない。」
「そしてカグヤ、お前はカグヤの血を誰よりも濃く継いでいるっ!お前はカグヤ一族を正しき道へと戻すことが義務付けられている。」
「あ、、。え、、っ、。っ待ってっ!僕は、、僕がカグヤ一族を正しき道へと戻す?何を言ってるのか、。」
老婆の話を必死に理解しようとしてたら、外から沢山の足音が聞こえ始めた。監視の女たちだろうな。
「もう時間が無い。それは私のであって、お前の、カグヤのではない。お前はこれから一族を正しき道へと戻すのだっ!」
全てを語ったような表情になったと思ったら直ぐに老婆は今まで見せたこともないような心からの楽しげな表情を浮かべ出した。それと同時に外からの足音が扉の前で止まり、木の古い扉が開かれ軋む音が部屋に響いた。
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「残念だ。」
扉が開かれ、見えたのは男の集団だった。先頭の男が老婆を見て悲しそうな表情をし、僕を見て苦虫を噛み潰したような顔をする。
「どうやったかは知らないが女衆はあんたの傀儡になっていたんだな、、。」
「知らんな。」
老婆はまだ楽しげな表情を残したまま男と話している。
そんなことより早く僕にさっきの話の説明とこいつらについての説明をしてくれ。背伸びをして奥まで見てみると男の後ろには僕を世話してくれていた女達が多くの男に大切そうに抱えられていた。
「新たな長老も決めた。この場であんたもあの子も処分する!その表情を見ると分かっていたのだろうがな。」
とてつもなく物騒なことを言い始めた男に興味津々な僕とは違い、老婆は落ち着いて無視をかましていた。落ち着いているように見える老婆は僕に語りかけてきた。
「カグヤ、お前にはまだ教えたいことがあったがここまでだ。私はお前を信じてるよ。」
そういうと老婆は僕の頭を撫で、顔を両手で掴み目を覗き見るような姿勢を取った。こんな事までしてくれたのは初めてだけど嬉しくはないです。それより説明くれ。
そんなことを思っていると、さっきの老婆の言葉が頭を何度も駆け巡り老婆の信用に答えたくなる気持ちがフツフツと湧いてきた。僕に限ってそんなことは有り得ないということと他者をきっかけとしてここまで強い感情が湧くのは初めてだったこともあり動揺が止まらない。動揺は直ぐに身体の震えに出始め、追い討ちのように男が要説明なことを言い始めた。
「これで最後にしたいな」
男はそう言いながら後ろにいる男から手渡された槍を使い老婆を突いた。
屍骨脈が好きなので早く本格的に出したい。