鴉がG5を好きになるだけの話   作:飛び回る蜂

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本話投稿に伴い、一部修正項目があります。
壁越えALTにおいて、青色の炎はアーキバス製ブースターと書きましたが、正しくはジェネレーターです。
該当項目は修正しました。大変申し訳ありません。


機密情報漏洩阻止 ALT

 

 

 揺れるコックピットの中。

 その日、イグアスの機嫌は悪かった。

 

 

「クソが、ちっとアーキバスのパーツせびっただけだろうが。ミシガンの野郎キレやがって……!」

 

 

 先日から今日に至るまで、イグアスはレイヴンの戦闘ログを漁り続けていた。

 情報源はベイラムが依頼した時の作戦で確認できた、レイヴンの作戦行動記録。

 直近でこなしていたのは『移設型砲台破壊』『輸送ヘリ破壊』の2種。

 どちらも強敵との戦闘とは言い難いが、それでも多くの戦闘知識をイグアスに与えた。

 

 

「ブレードか……クソッ、アレも欲しくなっちまうな」

 

 

 彼女が用いる技術を片っ端から研究、解析を続けたイグアスが辿り着いたレイヴンとの決定的な差。

 それは『アセンブルの自由度』。レイヴンの挙動を再現する上で、これが無視できない大きな差であることが判明した。

 

 

 

 

 まず武装面。

 見たところレイヴンはレーザーブレードを多用する傾向にある。

 これがVCPLというアーキバス傘下企業の製品だ。

 更に相手が強固な装甲を持つ場合に備え、レーザーやプラズマライフルの調達も行っているらしい。

 

 EN兵器となればアーキバス先進開発局の専門だ。

 この時点でレイヴンはイグアスと違い、重装甲の敵への回答を所持していることになる。

 

 

 

 

 続けてフレームや内装。イグアスはどちらかと言えばこちらを問題視している。

 フレームはいい。この点に関しては今のレイヴンとそう大差ない。

 だが機動力は違う、ブースターは誤魔化せない。ブースターの違いはそのまま回避力と速度に影響する。

 

 映像から見たレイヴンの機体背面から出る炎は青白い。これもアーキバス製ジェネレーターの特長だ。

 加えてQBリロード時間がかなり短く、平地での速度がかなり早い。これらの特徴はやはり同社ブースターが持つ。

 これは機動戦を好むイグアスにとって非常に大きいメリットだ。

 対ACを意識するならば是非とも欲しい、そうイグアスは考えていたのだ。

 

 

 

 しかしこれらの問題に大きく絡むのが、自分の所属だ。

 アーキバス主導のEN兵器にシュナイダーの軽量機用ブースター、そしてEN回復速度の高いアーキバス先進開発局のジェネレーター。

 どれもベイラム傘下組織のレッドガンが容易く手に入れられるものではない。

 そこでものは試しとミシガンに掛け合ったのだ。鹵獲機体にアーキバスのパーツがあったら優先的に回せないかと。

 

 

『無理に決まってるだろうが馬鹿者!!お前の中にある脳みそは日中何のために使われているんだ!?アーキバスと仲良しごっこがしたければ握手でもしに行ってこい!!』

 

 

 このような発言が30分に渡り続いた。つまり遠回しな意味の無い罵詈雑言と共に吐き出されたのは『却下』の答え。

 ミシガンを鬱陶しい頑固親父のクソ野郎と再認識するには十分であった。

 

 イグアスとて他社製品を使うことの問題は理解している。

 それらを用いて戦場に出る、それはつまり相手の技術力が自分達を上回っていると機体で示すようなものだ。

 自社製品を用いる、それはレッドガンからベイラムグループへの『信頼』の表れであり、それに命を預けるという『信用』の取引なのだ。

 

 

「くっだらねぇ」

 

 

 だがそんな矜持、戦場で何になる?

 戦場では勝つことが絶対。死ねばその時点でゴミ同然。

 勝つために、生き残るために、優れた武器を使う。それの何が悪い?

 

 無論、今の機体のままでも戦果を出し続けることは出来る。

 仮にもG5、そこらのMTや通常兵器などに後れを取ったりはしない。

 

 

 

 

 

 

 

 ではもし相手がアーキバスの精鋭、ヴェスパー部隊なら?

 

 

 

 惑星封鎖機構が用いる重武装の戦艦、そしてまだ見ぬ新型兵器なら?

 

 

 

 あの『レイヴン』なら?

 

 

 

 自社装備にこだわって負けました、などと納得できるか?こと勝負という点に譲れない思いが生まれたイグアスには我慢ならなかった。

 この時点でイグアスはあらゆるACの可能性を追求するあまり、思想がレイヴンやV.Ⅰ(フロイト)のそれに近づいていることを自覚していなかった。

 そういった点をミシガンは大いに危惧したのだろう。戦いの中に生きる喜びを見出す、そんな人間になってしまうことへの危惧だ。

 

 

「……ハァ、今はチューンに甘んじるしかねぇか」

 

 

 パーツは入手困難、万が一買えても使えない。

 ならば機体性能の底上げが今できる限度だろうと考えを改め、小遣い稼ぎの任務に出撃しているのだ。

 これからコーラルを巡る戦いは熾烈になる。せめて今の内に機体のアップグレードを済ませ、機体性能以外の優位さを埋めるべきだと考えている。

 パルスアーマーをアンロックできれば肩のシールドを外すことも視野に入り、その分火力は上乗せできる。

 今の戦闘スタイルから特別変えることはなくとも、出来ることが増えるのは大歓迎である。

 

 

「ドーザー連中の尻ぬぐいでこんだけ貰えるなら悪くねぇ。とっととケリつけてやる」

 

 

 今回の任務はドーザーの一派『ジャンカー・コヨーテス』からの依頼。

 商売敵のRaD*1が弱体化し、その隙をついて開発データ及び機密情報を奪取しようと試みているらしい。

 イグアスはその露払い。防衛に出てくる戦力の排除、並びにハッキングツールの防衛を行ってほしいとのことだ。

 

 ドーザーは金払いがいいとは言えない連中だが、今回は少し事情が違う。

 Radから得たデータを元に莫大な利益を得るつもりなのか、依頼料がかなり高く提示されているのだ

 金に頭の回る五花海からすれば、皮算用が過ぎると一笑に付しただろう。

 

 

「早く戦いてぇ……もっとだ、もっと強く……っ!」

 

 

 だがイグアスからすれば、どちらでもいいのだ。

 素直に金を払うならそれでいい、機体の設備拡充に当てられる。

 払わず踏み倒すようならRaDと纏めて殲滅、ついでに学んだ戦闘知識を実戦で試せる。

 

 毒を食らわば皿まで。罠があるなら罠ごと喰らい、全てを糧にする。

 イグアスの貪欲な力への渇望は、日増しに高まっていた。

 

 そうして考えている間に、イグアスは目的の場所へと到着した。

 遠目だがハッキリと見える『グリッド086』。RaDの本拠地にして、襲撃目標である。

 しかしイグアスがレーダーを見る限り、味方機であるコヨーテスからの信号がただの一機も無い。

 依頼受諾から最短で来たのだが、出遅れてしまったようだ。

 落ち目とはいえ腐っても流石にドーザーの一大派閥、そこまで温くない。

 

 

「……しくじったか?いや、まだ早ぇ」

 

 

 コヨーテスとハッキングツールの全滅、これはもう仕方ない。報酬も額面通りとはいくまい。

 だが防衛戦力を撃破するくらいはしていけば、多少の減額はあっても報酬は降りるかもしれない。

 降りなければ?力づくで言うことを聞かせればいい。

 機体のアサルトブーストを吹かし、再度接近を開始する。

 

 そうしてグリッドの入口まで近づいた時、その扉が開かれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの白い機体『レイヴン』が、自分を待ち構えていた。

 

 

「……あぁ!?テメェ、野良犬じゃねぇか……!」

 

 

 あまりに予想だにしなかった存在の出現に、イグアスの思考が一瞬途切れる。

 まさかレイヴンがドーザーと関係しているとは思わなかったのだ。

 

 

「テメェとまた戦場で会うとはなぁ。しかも今度は、初めっから敵として戦える……」

 

 

 互いに機体の顔を正面に捉え、武器も構えないまま睨み合いになる。

 よく見てみれば、最後にガリア多重ダムで見かけた時とはフレームは同じだが、武装が一部違う。

 まず右手のマシンガンがベイラム製のライフル、TURNERへと換装されている。継戦能力を上げた形となる。

 垂直ミサイルは閉所での戦闘に不向きだと判断したのだろう。短距離型ショットガンHALDEMANに。

 左腕のブレード、右肩のプラズマミサイルと変わっていない。どうやらこの部分が、レイヴンの『癖』らしい。

 

 

「ちょっとした小遣い稼ぎのつもりだったが、テメェがいるなら話は変わるなァ……?」

 

 

 レイヴンと出会い、胸の内に沸々と湧き上がる感情。

 強くなる、そう志してから日々自身の内側に溜まるそれを、イグアスは今自覚した。

 

 

 

 

 

 

 

「会いたかったぜェ、野良犬ゥッ!!」

 

 

 ───歓喜だった。

 

 因縁の相手、類稀なる強者、今自分が最も『超えたい』と願った好敵手。

 イグアスは戦場でレイヴンと出会えたことを、心から歓んでいた。

 

 アサルトブーストを吹かし、射程に入ったと同時にマシンガンとミサイルをバラ撒く。

 同時にレイヴンもまた、射程に捉えたイグアスの機体『ヘッドブリンガー』へとミサイルの弾幕を張る。

 それに臆することも無く、パルスシールドを展開したまま突撃、彼我の距離はマシンガンの射程圏内にまで近づいた。

 それが二人の、飽くなき闘争への合図だった。

 

 

「テメェの戦闘ログは何度も見た……認めてやるよ、テメェは強ェ」

 

 

 マシンガンとミサイルで牽制しつつ、リニアライフルをリズム良く叩きつける。

 当然レイヴンも反撃をする。咄嗟に襲い掛かるショットガン、そして継続的にライフルが『ヘッドブリンガー』を攻め立てる。

 それをパルスシールドでカバー、そしてまたリニアライフルを差す。

 時にはチャージして牽制。迂闊に近づけば狙い撃つその行動から、ショットガンを近づかせない所作が見て取れる。

 

 

「だがそれも、今日で終わりだ。俺はテメェを超える、それをここで証明してやるッ!!

 

 

 レイヴンはイグアス同様、フレームのほとんどをベイラム製のMELANDER C3で固めている。

 装甲と軽さを両立したバランスのいい機体。だがしっかりと観察すればその違いが明確になる。

 レイヴンの機体は『腕部パーツ』が違うのだ。

 

 

(そいつは見たことがあるぜ。シュナイダーの……となりゃ至近距離での射撃精度は向こうが上か)

 

 

 アサルトブーストを用いて高速で擦れ違った後、振り返ってからの命中精度が明らかに高い。

 搭乗者の腕もあるだろうが、機体の制動に引きずられることなく精密な射撃を保てているのはその影響もあるだろう。

 これがショットガンとすこぶる相性がいい。ライフルの射撃精度といい、機体が構築から()()()()のだ。

 

 対してシールドがある分機体の剛体性は『ヘッドブリンガー』が上回る。

 弾幕の厚さこそ劣るが、機動力は負けという程劣っているわけではない。

 的確に、チャージしたリニアライフルを叩き込めるかどうか。そこがイグアスにとってのポイントである。

 

 レイヴンはシールドを搔い潜りショットガンとミサイルを、イグアスはリニアライフルをそれぞれ火力として担保している。

 故に二人の勝敗を分かつものは、互いの間隙を突く技量である。

 

 

(痒い距離だ、どこかで懐に入らなきゃスタッガーは取れねぇ。だが奴にはHALDE(あれ)MANがある)

 

(焦る必要はねぇ、削り合いは盾がある以上こっちに分があるんだからな)

 

 

 中距離での睨み合いに、稀にレイヴンが接近して食らいつく。

 それをブーストでいなしつつ、また距離を取る。

 膠着が続く二人の戦い、先に流れを作ったのはレイヴンであった。

 

 

(ミサイルは当たる直前で逆に切り返す。進行方向に重ねてブーストを吹かす必要はねぇ)

 

 

 ログでレイヴンが行っていた回避方法、それを的確に実践し被弾を減らす。

 その戦術は正しい。ミサイルの推進力を無駄に消費させ、着弾位置をズラす。

 対ミサイルへの行動としては、極当然の事をしている。

 

 ───相手が同じ、ACでなければ。

 

 

「しまっ、ぐぁッ!!」

 

 

 ミサイルの発射と同時に、レイヴンは仕掛けていた。

 イグアスが横方向へとブーストを吹かしミサイルを引きつける行動を取った瞬間アサルトブーストを起動、彼我の距離を一気に詰めて機体を蹴り飛ばす。

 そのまま流れるようにショットガンを叩き込み、『ヘッドブリンガー』の体勢が崩れスタッガー状態に陥ってしまう。

 

 

(詰めが早ぇッ、しくじったッ!)

 

 

 レイヴンは機体の背後からレーザーブレードを取り出す。

 そのまま更に急接近、ブレードの刀身が碧く煌めき、『キャノンヘッド』の胴体を両断しようと振りかぶり───

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 二本の青いレーザーが、レイヴンの機体の背面を灼いた。

 

 

「なっ……!」

 

 

 態勢を崩したレイヴンに更に追撃をかけるように先ほどまで姿形の無かった謎の機体が、鞭のようにしなるレーザーブレードを振り翳して襲い掛かる。

 呆気に取られたイグアスはすぐに気を取り戻し、目の前でレイヴンに鞭を振るおうとした機体を勢いよく蹴り飛ばす。

 先のレーザーで大きく傷ついたレイヴンの機体は、これ以上の損害を受ければ爆散しかねない。

 ならば盾を持った自分が前に出るのが最善、そう判断しての行動だった。

 

 

「なんだこの、訳の分からねぇ機体は……!?オイ、野良犬!テメェは前に出るんじゃねェ!死にてぇのか!!」

 

 

 体勢を取り戻したレイヴンにカメラを向けつつ、シールドを展開して射線を切る。

 出力の高いレーザーがパルスシールドに干渉し、漏れ出た熱が機体を焼く。

 だが致命傷にはほど遠い。そのままレイヴンを機体の陰に置きつつ、近くの遮蔽へと身を隠させる。

 

 

「邪魔しやがって……上等だ、テメェらからぶっ潰すッ!野良犬、1機はテメェでなんとかしろっ!」

 

 

 『ヘッドブリンガー』が遮蔽から飛び出すと同時に鳴り響く多数のロックオン警告。

 それが鳴り止むギリギリを見計らって、さらにブーストを吹かす。

 2線のレーザーに加え紫色のプラズマが背後へと抜けていき、壁面を大きく焦がす。

 目視範囲で敵は4機、内1機は背後へと抜けていく。

 

 

(面隠して狙撃かァ?舐めやがって、まずはテメェだ!)

 

 

 迫りくる鞭の機体を直前で躱し、アサルトブーストで背後へ抜ける。

 そのまま速度を乗せ、チャージしたリニアライフルを狙撃機体に叩きつけ、傾いた所をミサイルで追い打ちして撃破。

 更にもう1機をマシンガンで穴だらけにしつつ、再度ブースターに点火して直接蹴り砕く。

 今のイグアスは普段のそれよりも荒々しく、苛立ちをそのまま叩きつけるような戦いをしていた。

 

 

「ムカつくんだよ……」

 

 

 不意打ちを仕掛けた挙句、待ち望んでいた闘争の邪魔をする。

 その癖やることが狙撃に珍奇な実験兵装モドキ。ACの投入すらない。

 苛む強烈な()()()も相まって、イグアスの苛立ちは頂点にまで達していた。

 静かに、苛烈に。やがて溜まった怒りが津波のように押し寄せ、怒号となって溢れる。

 

 

「あいつは俺の獲物(モン)だッ!!雑魚が近寄るんじゃねェッ!!」

 

 

 2機を仕留めて振り返り、鞭装備にパルスシールドの機体を迎え撃つ。

 見たことも無いおかしな兵器に戸惑いつつも、足の遅さに着目して引き撃ちで削る。

 その機体越しにイグアスがレイヴンの方を見れば、自分同様危なげなく空中から撃ち降ろしているのが見える。

 あれなら撃墜される心配はない。そう判断して目の前の機体に集中する。

 

 

(チッ、今の装備じゃ盾を削るのも一苦労だぜ)

 

 

 『ヘッドブリンガー』はレイヴンの機体の様に一撃で高い火力を持たない。

 盾を展開しつつ削り合い、チャンスが来たらリニアライフルと格闘戦で一気にAPを詰める、そういった戦い方を好んでいた。

 だが今戦っている敵もまたシールドを持つ。こういった状況は戦いが長引き、我慢が利かないイグアスにとって非常に苛立つものである。

 無論負けはしないだろうが、つまらない戦いは終わった後まで余韻が残る。

 

 

「ハッ、ようやく剥がれたか。くたばりやがれッ!!」

 

 

 強引にシールドを引き剥がした機体に弾丸とミサイルを浴びせ、猛攻撃を仕掛ける。

 瞬く間に不明機体の装甲が剥がれていくが、ここでイグアスに焦りが生まれる。

 

 

(……ッ、リロードかッ!)

 

 

 マシンガン、ライフル、ミサイル。間の悪いことにその全てがリロードに入る。

 攻勢に出ることを意識するあまり、詰めの判断を見誤った。既に敵機体は体制を立て直そうと姿勢を整えている。

 その時であった。レイヴンが敵機をショットガンで片づけ、こちらに向かっているのを確認したのは。

 

 

「───野良犬ッ!」

 

 

 敵機体が持ち直す直前、即座に接近して大きく蹴り上げる。

 軽量寄りの中量機体である『ヘッドブリンガー』の機体重量はそこまで重くない。

 それに比例して衝突した時の衝撃もそこまで大きいものではない。

 すぐさま復帰しようと鞭の機体がイグアスの方へと機体を向ける。

 

 

『……』

 

 

 だがこの時のダメージなど、イグアスにとって然したる問題ではない。

 吹き飛んだ先にはあの『レイヴン』が待ち構えている。

 

 

「仕留め損なうんじゃねぇぞ」

 

 

 肯定の代わりに返ってきたのは、レーザーブレードのチャージ音。

 

 足を止めた機体の胴へと、大きく振り被る。

 

 一閃、そして二閃。

 

 敵機は成すすべなく、崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 頽れた機体を前に、イグアスは考えていた。

 

 

(どう見てもドーザーに扱える機体じゃねぇ。俺か、あるいは野良犬を始末する為に……)

 

 

 つぶさに観察して分かったことだが、中に人間がいる構造ではない。

 それに外観から、惑星封鎖機構の用いる戦術機体とも造詣が異なる。

 どこかの企業の試作機と考えるには、使われている技術があまりに高度。

 

 ルビコンには無人機を多数操り、けしかけてくる存在がいる。

 イグアスは自身の考えに、そう決定づけた。

 

 

「……野良犬。今日の所は見逃してやる、消えろ」

 

 

 フレームの各所から火花が散り、今にも倒れてしまいそうなレイヴンの機体を見て、イグアスは見逃す事を決めた。

 こんなボロボロの状態を討ち取ったところで、この女を超えたことにはならない。

 

 勝つ為なら、その勝ち方まで拘る。

 それがイグアスの、AC乗りとしての新たな『矜持』であった。

 

 

(野良犬の雇い主のせいでドーザー連中の支払いはパーだ。この後を考えなきゃいけねぇ)

 

『待ちな、レッドガン』

 

「あァ?」

 

 

 その時、回線へと割り込んで来る音声がコックピット内に響く。

 

 

『ビジターの知り合いなんだろう?その機体の修理はこっちで請け負うよ』

 

『せっかく来たんだ、少し話でもしようじゃないか』

 

 

 モニターに映し出されたのは『ピンクと白の蜘蛛』。

 RaDの頭領、シンダー・カーラその人である。

*1
Reuse and Development。シンダー・カーラが率いる武器屋一派

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