幼女だよ。異世界を巡って自分探しをしてるよ   作:KDAL

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第十六話 主人公補正ってズルいよね。私だってこの小説の主人公なのにね。二次創作のオリ主はオリジナルの主人公には勝てないのかな……

 

 

 

 

 

「きゃぁ!!!」

 

「胡蝶ォ!……ぐぅ!!?」

 

同時に吹き飛ばされて雪塗れになる二人の剣士。蟲柱と水柱だね。

 

私の眷属達を相手によく持ったと思うよ。大百足のむーちゃんも、雪男のゆーくんも殺しちゃいけないから攻めあぐねてるだけで、ヤろうと思えば瞬殺なんだけどね。ごめんね二人とも、私が妙な縛りを入れたせいで。

 

「くそォ…ここまで、力の差があるとは、傷の一つも付けられない!ムカデの外殻が硬過ぎる」

 

「毒も、まるで効いてない。あの雪男、どうして猛毒を喰らっても平気で踊ってるのよ!?」

 

うん。どうして ゆーくんが一人チューチュートレインをしてるのかは謎だよ。言いながらそれが何かを理解してない私も謎なんだけど…。

 

さてと、柱の二人もだいぶ疲労してるね。なるべく刀を集中的に狙ってもらったから刃こぼれもすごいし。このまま利き手を貰って-----んぶゥッ‼︎?

 

鳩尾に何かが激突して来たよ。くの字に曲がってすっ飛ばされる。あぁ、家屋の壁に激突しちゃったよ。脆い壁が呆気なくガラガラと崩れてくよ。

 

倒れた状態の私は上体を起こそうとして-----

 

「-----岩の呼吸、弐ノ型 天面砕き!」

 

んきゃッ!変な声を出しちゃった。倒れたまんまの顔に何かが叩き落とされたよ。すごい圧力だね。なんだろうこれは?

 

叩きつけられた私の顔を中心に地面が大きく抉れて砕ける。傍目からは小さなクレーターみたいになってたとか…。

 

しかもそれで終わらない。怒号にも似た気合いのある声を轟かせて何者かは私の顔を殴る!殴る殴る殴る殴-----ちょ!待って!幼女の顔をラッシュするとかモラル!モラルは無いのかな!?口に土やら木屑が入る入るだよ。ぺってする暇もないんだよ!むーちゃん!ゆーくん 助けて〜〜!!

 

飛ばした思念を二人がキャッチした感覚はある。でも何故か助けに来ない。なにこれ?なにが起きてるのかな??ラッシュが酷過ぎて何も見えないし聞こえないよ!

 

仕方がない。……と、手を叩いて新しい眷属を呼び出-----せなかった!?両手を叩く瞬間に弾かれた。手を叩かないと眷属が呼べない私の弱点を的確に狙ってるね。いつの間に調べられたのかな?わたし、気になります!……そしてまた顔面ラッシュの再開だよ。人の心とかある?

 

……私自身の力だと殺しちゃうかも知れないから、いつも眷属に任せてたんだけど、これだけの手練れなら大丈夫かな?大振りで殴るから察知して避けてね?

 

私の拳が幼女顔面クラッシャーにヒットする瞬間、その人は大きく飛んで避けた。

 

よし、これで眷属が呼べ-----うわぁ!?

 

いつの間にか胴体に鎖が巻き付いてた。上空に飛んで避けた人の持ってる斧に連結されてたそれは、私の軽い体ごと空にランデヴーだよ!

 

「来たな。煉獄!ど派手にいくぜ!!」

 

「うむ。そちらに合わせよう!」

 

空に舞い上がった私の左右から複数の声だよ。なんて思ってたら左側から爆音、右側からは熱さを感じるよ。

 

「-----炎の呼吸 壱ノ型 不知火!」

 

「-----音呼吸 弐ノ型 迅斬影!」

 

あばばばばば!!?……なんだよ(あっけらかん)

 

煩いのと熱いのが同時に体を駆け抜けた。すごいね。ここまで攻撃の連打をされたのは『私』の知る限りこの世界が初めてだよ。

 

空に飛ばされた体は二人の剣士さんの攻撃を諸に喰らって、その衝撃で屋根の上に落下する。これ以上この家を傷付けないでほしいね。まだ中には遺体も残ってるんだよ?生き残った男の子に申し訳が立たないよ。

 

痛くはないけど、口の中に溜まった土とか木屑をやっと吐き出せた。うぇ〜…気持ちが悪いよぉ。

 

「おいおい、嘘だろ……全くの無傷だぞ」

 

「うむ…。我々の攻撃は兎も角、行冥の力でも駄目となると、打つ手が限られるな」

 

目に入った埃をゴシゴシ取って(みんなはやっちゃ駄目だよ?眼球に傷が出来ちゃう!)屋根上から辺りを見渡した。おぉ、圧巻だね〜

 

柱だ。柱がたくさんいるよ。

 

赤い人、派手な人、大柄な人…この三人が今私に攻撃してた人達だね。

 

……で、遠くでバラバラに解体された むーちゃんと ゆーくんの側にも複数いる。……もしかして、全員が柱かな?

 

あぁ、むーちゃん達泣いてるよ。痛いよね。死なないだけで痛みは感じるもんね。ごめんね。私のせいで苦しい思いをさせて…。

 

「童女よ……一つだけ聞きたい」

 

数珠と呼ばれる物をジャラジャラ鳴らしながら合掌する大柄な人が、私を見上げて聞いてくる。何かな?私は大切な眷属を虐められて少しだけ鬱々してるよ。聞きたいことは一言で完結にしてね?

 

「そなたは、本当に鬼なのか?」

 

……知らない。私は『私』が誰なのかを探してるの。その為にお兄さん…無惨さんと協力関係にあるんだよ。

 

ん?何か急にざわついたね。あぁ、そうか。鬼はお兄さんの名前を人前で口にしないもんね。私今お兄さんの名前出しちゃったよ。これは殆ど鬼ではない答えになっちゃったかな?

 

「そなたは『自分』を探していると?……それはどういう……」

 

記憶がバラバラになっててね。私の心は穴だらけなんだよ。あ、もう口は開けないでね。聞きたいことは『一つだけ』なんでしょ?ならもう聞いてあげないよ。

 

むーちゃん達が泣いてる。痛くて痛くて、でも死ねないから苦しんでる。ごめんね。今行くからね。

 

飛んだ。右手を使って『宙渡り』した。

 

片や突如消えた。片や当然現れた私に仰天してるよ。面白いね。……いや、今はあんまり面白くないかな。

 

バラバラになった二人に手を翳して軽く撫でてあげる。ごめんね。今日はありがとう。ゆっくり休むんだよ。

 

ずるり…と、むーちゃん達は私の胸に吸い込まれ、戻っていった。胸の奥で他の眷属達がすごく二人を心配して気遣ってる。『私を出せ!ボクを出せ!』と怒りに任せて私に叫んでる子もいるね。みんな気持ちは一つだもん。大切な友達……仲間を泣かされたら黙ってられないよね?

 

でも、本当にごめんだよ。ここは私に任せてほしい。二人と同じくらいのことは仕返すから。それで怒りを収めてほしいんだよ。……でも、みんなの気持ちもよくわかる。だから少しだけ、その怒りの力を『私』に流してね。

 

いつの間にか、すっかり取り囲まれてるね。それでも私を攻撃しないのは、あの大柄な人の力でも私が傷付かなかったからかな?

 

でも、赤い人が『打つ手は限られる』って言ってた辺り、私を倒せる希望は残ってる感じかな?でも、私は君達が言うところの鬼の王様よりも強いと自負してるよ?奢りでも傲慢でもなく事実としてね。

 

さてと、じゃあ眷属達の仇を取ろうかな?中に戻って絶賛治療中の二人から『役に立たなくてごめんなさい』と何度も謝罪が思念として届くけど、気にしないでよね。私のせいなんだからね。

 

みんなからよく見えるようにしたいから、もう一度『宙渡り』で屋根の上に瞬間移動した。流石に二度目は動揺しないね。どんなカラクリが?とか血鬼術か?とか聞こえるけど、そんなものが霞むような『特別』を魅せてあげるね?

 

徐に左手を上げる。すごい警戒されてるね。私の一挙手一投足にみんなが集中してるね。いいよ、しっかり目に刻んでよ。そして後世に語り継ぐんだよ?……二度と鬼に立ち向かっちゃいけないんだってことをね。

 

……生える。ひしゃげる。潰れてまた生える。私の語彙力が無いからそんな表現しか出来ないけど、今の私の体の状態を指し示すならこんな感じかな?

 

「おいおいおい…なんだこりゃ……」

 

痛たたたた……流石に痛いね。私が現状唯一感じる痛みだよ。自分の体を改造する痛みには抗えないね。涙が出そうだよ。

 

「よもや、よもやだ…これで鬼でないのなら……」

 

今回は『龍魚(りゅうぎょ)』の りーちゃん。『八咫烏(やたがらす)』の かーくん。それに、この前 眷属になった『八岐大蛇(やまたのおろち)』の やーちゃんの力を流してもらう。

 

「この子は……いったい……」

 

やっと変身が終わった。私の体はどうなってるかな?変身の度に姿が細かく変わるから、自分の体がどんな感じかイマイチわからないよ。

 

右手は魚の鱗と鋭い爪、左手はいつものきめ細やかな幼女の腕のまま。何故か左手だけは変わらないんだよね。やっぱり左は特別なのかな?

 

あ、今回は尻尾も生えてるね。りーちゃんの魚の尾だ。ビタンビタン動くよ。可愛い。ん?髪が動いてると思ったら、一部が小指サイズの蛇に変わってるよ。これは やーちゃん達だね。まるで異国の怪物、メデューサみたいだ。背中には かーくんの黒翼が生えてるね。空も〜飛べ〜る筈〜だよ。

 

さてと、みんなには今の私はどう見えてるかな?可愛くなってると良いんだけれど……。

 

『-----化け物だ。正真正銘のな…』

 

あ、お兄さん。来たんだ。

 

空気中に染み出すように現れたお兄さんに、鬼殺の柱達は明らかな動揺をみせてる。当然だよね。自分達が追う鬼の王様が出たんだもん。

 

「……鬼舞辻…無惨。貴様が!」

 

「鬼狩り共よ。どうやら私の『利き腕』を怒らせた様だな。半端な覚悟では命がないぞ?死ぬ気で掛かってくるのだな?」

 

ちょっと待ってよ。何勝手に出て来て勝手に焚き付けてるのかな?ちょっと見た目で驚かそうと思って変身したけど……あぁ、なるほど。お兄さんの狙いがわかったよ。

 

-----ここで私に柱を殲滅させるつもりだね?

 

私にその気が無くても、向こうが死に物狂いで向かって来るなら、ある程度反撃しないといけないもんね。

 

それにこの姿って加減が難しいから、そんな中で来られたら うっかり利き手だけを狙えずに殺しちゃうかも知れないよね。

 

……お兄さんはそれを狙ってるんだ。なんて無情で狡猾なんだろう。人の心とかある?

 

さり気なく自分の『利き腕』とか言って、私よりお兄さんの方が上だとアピールまでしてる。ちょっと!頭に手を置いてポンポンしないでよ!柱の人達が『あんな怪物を手籠に…‼︎』みたいな顔付きになってるでしょ!

 

髪から顔を出す白い小蛇達がお兄さんの手にカプカプ噛み付いてる。『主に触るな~』みたいな思考が感じられる。優しい子達だね。毒は流しちゃ駄目だよ?お兄さんが死んだら黒死牟さん達も逝っちゃうから。

 

お兄さんすごい笑みだね。ご満悦だね。鬼殺隊の柱達と同時に私にまでマウントが取れてる現状が幸せで仕方がないみたいな顔だよ?ほんと人の心とかある??

 

「さて、貴様らを殺す前に確認することがある」

 

だから殺さないよ?それ前提で進んでるのやめてくれないかな。向こうが完全にその気になってるよ。もう弁解は無理だね。どうしたらいいのかなこの状況。

 

「-----お前達、どうやって鳴女の力を使っている?どんな手段でここまで来たのだ?」

 

ん?鳴女さんの力?……あぁ、確かにおかしいよね。なんで疑問に思わなかったんだろう。

 

こんな山奥に、柱が一堂に会するって、そんなのおかしいよね。仲良くハイキングしてた訳でもあるまいし(しかも雪山で)

 

「………。」

 

みんなダンマリだ。感情が全然読み取れない顔付きだ。必死に読まれないよう努めてる風にも見えるけど、私にはサッパリだよ。お兄さんなら少しは読み取れるのかな?

 

「……まぁどうでも良い。この場で貴様らを皆殺しにすれば良いだけのことだ」

 

……理解出来たのかな?それとも出来なかった?よくわからないや。あと、皆殺しにはしないからね。

 

でも、鳴女さんの能力……お兄さんが言うんだから、そうなのかも知れないけど、どうして鬼殺隊がその能力を?もしもそうなら無限城に入って来たことがある?それとも既に潜入して何処かに秘密基地でも作ってたりする?

 

……。

 

…………。

 

-----やっぱり利き腕だけじゃなくて、両手両足にしよう。

 

ちょっと危険過ぎるね。それに不穏だ。安心できない。寝首を掻かれても私は平気だけど、弱いお兄さんが狙われて、それで殺されたら全員が死んじゃう。

 

そんなことは容認出来ないね。ならこの場で鬼殺隊の力を徹底的に削いでおかないと。

 

拷問に弱そうな人を残しておいて、本部や支部……なんなら産屋敷って人の場所も吐いてもらおう。誰が良いかな……よし、蟲柱のあの子にしよう。女の子だから痛みに弱そうだし、なんなら花柱のお姉さんを人質にすれば きっと心良く話してくれるね。逆も然り。この際だから、花柱さんもついでにダルマにしてあげよう。妹さんとお揃いだね。これで寂しく無いよ?(何が?)

 

「……お前、人の心とか無いのか?」

 

何を言ってるのかな?そんなに楽しそうな顔してるお兄さんにだけは言われたく無いよ。私はみんなの安全と『私』のことを何よりも優先してるだけだよ。

 

「そうだな。お前はそれで良い。……さて、向こうも待ち切れぬようだ。そろそろ始めるといい」

 

ふと見上げると大柄な人と赤い人が空から降って来る。跳躍力すごいね。

 

じゃあ、私も反撃しようかな?やーちゃん達、お兄さんは後で噛ませてあげるから、今は仲間の仇に集中するよ。

 

その言葉で小蛇達はキッと赤い人と大柄の人を睨みつける。口を開けて角度の調整をすると喉がボコッと膨れ上がった。

 

次の瞬間、細い細い紫色の水の線が二人に伸びた。お爺ちゃんの分身、積怒さんを苦しめた猛毒の液体だ。

 

察しがいいね。攻撃の呼吸をやめて回避行動を取った。すごい水圧でしょ?後ろの木が豆腐みたいに切れてるよ。

 

ついでに地面で待機してた他の柱達にも八本の高圧毒液を向ける。みんな動きがいいね。ちゃんと避けてる。水柱と蟲柱はギリギリって感じだ。流石に疲労が溜まってるからね。よし、あの二人を集中的に狙っていこう。他の柱の動きも制限される筈だもん。

 

やーちゃんのうち、数匹をその二人に狙わせておいて、逃げる大柄な人に毒液を向ける。あんなに大きな体なのに華麗なステップで木を盾にしながらジグザグに逃げてる。木そのものは何のガードにもならないけど、一瞬視界から消える分狙いが定まってないね。この毒液を飛ばしてるのは やーちゃん達で私の意思じゃないからね。みんな頑張って〜

 

おっと、私たちが屋根にいるのを良いことに、家の中……真下から誰かが突き技をしてきたね。りーちゃんが魚の尻尾でビタンと弾いて回避してくれなかったら当たってたよ。ありがと、りーちゃん。

 

……て、ちょっと待って、今突きで私の股の間を狙ったの?この作品のR-15なんだよ?もしも私のお股に入ってたらその瞬間にR-18にしなくちゃいけないでしょ?バカなのかな?

 

ちょっとキツめのお仕置きだよ。歯を食いしばってね。食いしばっても腕は捥げると思うけど。

 

かーくんにお願いして、黒翼を大きく広げた。私の身長の三倍はある翼が屋根を覆う。その屋根の下に鋼鉄の強度の鋭い羽根を差し向ける。散弾になって降り注がれる羽根の雨霰だね。この家の人達(亡骸)には悪いけど、こっちも仲間の安全が掛かってる。許してクレメンスだよ。

 

お、窓側から逃げ出したね。さっきの派手な人だった。そんなに派手なのに見えない下から攻撃するなんて陰湿だね。派手柱の名は返上した方がいいよ?

 

「その名も良いが、残念だな。俺は音柱が気に入ってるんでね!」

 

ありゃりゃ、音柱さんだった。なるほど煩い筈だね。口を閉じてればイケメンさんなのに、その綺麗な顔を少し削いであげようかな?

 

右の掌を音柱に向ける。小さな穴の空いたそこに空気が溜まり、前腕が風船みたいに膨らんでいく。そらそら、音柱さん大きく後退しないと余波だけで手足が吹き飛んじゃうよ?

 

りーちゃんから『吐き出せるよ?』と思念が届く、おっけー出しちゃって〜

 

右手から圧縮された水の大玉が打ち出される。水と聞いて侮っちゃダメだよ。甘めに評価して大砲くらいの威力あるからね?

 

ん?いつの間にか大柄な人が間に入ったよ!?あれ?やーちゃん達の毒液は?……ありゃりゃ、出し過ぎて疲れちゃったみたい。みんな口を開けて はぁはぁしてる。お疲れ様。少し休んでていいよ〜

 

大柄な人は何か口走った後、斧と棘付きの玉を使って水大砲を弾いた。遠くで聞こえなかったけど、たぶん呼吸の型を口走ったのかな?わかるよ。技名は言いながら出すと かっこいいよね?

 

私の水大砲はその型に流されて、跳ね返って来た。すごいね。弾くんじゃなくて跳ね返したよ。あれは喰らうと横で観戦してるお兄さんも木っ端微塵だから、ちゃんと回収しなくちゃね。

 

りーちゃんごめん。戻って来たからまた呑んでくれる?吐き出したモノを呑み込むなんて鹿じゃないんだから嫌だよね?でも、文句一つ言わずに了承してくれた。ありがと。帰ったら美味しいご飯を用意するね……猗窩座さんが。

 

この場にいない栄養分から激昂の声が聞こえた気がしたけど、構わず右手を水玉に向ける。

触れた瞬間、ビタッと水玉は停止して、ゴクゴクと嚥下の音を響かせながら、右手に吸収されてるね。りーちゃん頑張って〜

 

そんな隙を見逃す程、柱は優しく無いよね。水柱と蟲柱を守る必要が無くなったから、残った柱達が一斉に飛びかかって来た。遅れて水と蟲も飛んでくる。

 

右手は水玉の吸収で動かせない。やーちゃん達は毒液の使い過ぎでバテてる。かーくんの黒翼は補充出来ないから、半分くらいのサイズになってる。ちなみに、こんなに小さくなってると もう飛べないよ。

 

狙うなら最高の状況だよね。でも、隣のお兄さんのことも忘れないであげてほしいな…。

 

「目障りな羽虫共め……」

 

お兄さんの腕は肉肉しくて長い鞭に変貌した。表面には びっしりと牙とも爪ともわからない鋭い刃が埋まっていて、それを横一線に薙いだ。それだけで柱達はみんな吹っ飛ばされる。腕や足、体には細かな切り傷が生まれ、真っ白な雪を赤で彩る。……でも、誰一人として死んでない。五体満足だよ。

 

「……化け物。何故邪魔をした?」

 

「私の目の届く所では殺させないって言ったでしょ?」

 

唯一自由な左手でお兄さんの腕をずらした。軌道が変わって柱達は致命傷を免れた訳だね。どさくさに紛れて殺すつもりだったのはお見通しだよ?

 

「……まぁいい。見ろ。直撃はしなかったが、毒で奴らは動けない。さっさと手足を捥いでくるといい……お前の言う『縛り』なのだろう?」

 

……わかってるよ。毒かぁ、悉く狡猾だね。見た所即効性の麻痺毒だね。前にやーちゃんの毒液を寄越せって言ったから分けてあげたけど、もしかしてそれを解析して使った?……別に良いんだけどね。

 

屋根から飛び降りて、ぎゅっぎゅっと雪を踏み締めながら大柄な人の前に立つ。この人が一番危険な感じだからね。真っ先に倒しておかないと。

 

麻痺が効いてるのか、うつ伏せになって動かないね。さっさと済ませないと。だって柱は大勢いるんだもん。あんまり時間は掛けてられないから-----

 

……おぉ、やっぱり動けたね。いや、無理矢理動いたのか。すごいね。大柄な人が自分の体で覆い隠してた斧を私の首にぶん回してきた。

 

避けることは出来なかった。というよりしなかったよ。だって私の首には擦り傷も付けられないんだからね。

 

ほら、斧の刃先がひび割れちゃった。さっきのラッシュでわからなかったのかな?私は絶対に傷付けられないんだよ?今は変身してるから、衝撃にだって耐えられる。現にこの場からぴくりとも動いてないでしょ?

 

首に当たったままの斧を軽く弾く。それだけで斧は森の奥へとぶっ飛んだ。見つけるの大変そうだね(他人事)

 

……じゃあ、ごめんね。名も知らない大柄の柱さん。あなたの手足を貰うんだよ。心配しないで、それらは上弦のみんなに提供して更なる力にしてもらうから。

 

同じように倒れる柱達から悲鳴に近い声が響く。全員で鳴かないでよ。何言ってるかわからないでしょ?……わかる必要はないけどね。

 

左手を手刀の形にして振り上げる。そのまま下へ鋭く下-----「やめてください!!!」

 

-----滑り込むように誰かが間に入って来た。私は一人だと上弦のみんなのように『気』とか『気配』が探れないんだから、そんな風に現れられると気が付かないんだよ!危なかった。咄嗟に やーちゃん達が腕に巻き付いて止めてくれてなかったらそのまま下ろしてたよ!

 

あわわ…と、少し慌てた後、大柄の人と私の間に入った人を見つめる。あぁ、誰かと思ったらこの家の最後の生き残りの男の子だね。逃げたと思ってたけど、何処かに隠れて見てたのかな?

 

柱達が男の子に逃げろ!よせ!と投げかけてる。どう見ても無謀だもん。当然だとおもーよ?

 

「もうやめてください!これ以上、殺し合わないでください!!」

 

可哀想に。大粒の涙を蓄えて必死に訴えてる。全身がガクガク震えて今にも倒れそうだよ?心身共に鍛えられた柱でさえ身震いする私の前に立ってるんだもん。絶対に怖いよね?

 

大丈夫だよ。もうすぐ終わるから、ごめんね。君の大切な場所や家族の側でこんなに暴れて。あと少しだけ待っててほしいんだよ。この人達から貰う物を貰ったら帰るからね。

 

「そ、そうじゃないです。どうしてこんな、こんなことをするんですか!俺の、家族を……それに、この人達も殺そうとして!!」

 

……そうだよね。でも、君の家族を殺したのは……いや、ある意味で私だよね。私がお兄さんと出会っていた時……人を食ってると知った時に殺していれば、君の家族やそれまでに犠牲になった人はみんな生きてた訳だし。

 

お兄さん、そんなにビビらなくていいよ。今更お兄さん達をどうこうなんて思ってないんだよ。私はそんなに信念が緩々じゃないんだよ。

 

……君への答えだけど、あのお兄さんは……いや、私達は生きたい。生きていたいんだよ。人を殺して食べないと生きていけない体なんだ。ただそれだけ、その過程で一部実験もしないといけなくてね。君の家族はその実験の被害に遭ったんだ。

 

……納得いかないよね。わかるよ。理不尽だよね。でも、世界全ての人が平等には生きられないんだよ。誰かが幸福な分、誰かが不幸になってる。それが世界なんだよ。今回は運悪く君が不幸の側だっただけ。

 

……怒ってるね?当然だよ。怒って良いよ?なんなら後ろのお兄さんを気が済むまで殴っていいよ?でも、それでも君の何族は還らない。戻らない。二度と逢えないんだよ?それで気が済むなら、君の家族への想いはその程度だったことになるんだよ?

 

それでも殴りたいなら、私は止めない。あ、こら!お兄さん逃さないよ?責任はちゃんと取らせるからね?

 

むーちゃん、もう傷は治ってるよね?ごめんだけど、お兄さんを捕まえておいて-----

 

……と、そこまで思った矢先、男の子の顔が唖然とする。何かな?視界には柱全員が収まってる。まだ誰も動けてないよ?……あれ、何かに頭を掴まれて-----

 

すごい勢いで垂直にぶん投げられた。なにこれ?どうして私は空を飛んでるのかな?……ん?誰かが下から飛び上がって来たよ。あれは……血塗れの女の子?

 

伸ばされた足が私の頭を打ち付ける。勢いを殺せないまま、私は地面へと秒で戻された。もちろん、大きな地響きと抉れる大地に潜るようにしてだよ。

 

誰だろう。さっきの女の子の着物は確か……家の前で倒れていた子だ!

 

がばっと起き上がると、その女の子は男の子の隣にいた。守るように側にいる。男の子は泣いてる。困惑しながら大粒の涙を流してる。

 

……あの女の子、鬼になってるね。鬼化してるよ。

 

屋根の上のお兄さんに振り返ると、訝しむ顔になってる。意図してた訳じゃないのかな?

 

柱達も流石に毒が抜けて来たみたい。少しずつ動き出してるね。鬼になったなら立場上は仲間。でも明らかに敵意を向けてきてる。そもそも、側にいた人間じゃなくて、わざわざ私を狙って来たし、今も男の子を守ってる。

 

自我があるようには見えないけど、どうなってるのかな?ちょっと ムザえもん!どうにかしてよ〜!

 

あぁ、ダメだね。何か思案し始めた。こうなるとしばらくは自分の世界に篭りっきりになるからね。ビンタでこっちに引き戻してあげようかな?

 

……よし。路線変更だ。まとめて殺そう。そうしよう。あまりにも不安要素が多過ぎるよ。不気味と言っても良いね。数年間この世界で暮らして来たけど、今が最も怖ろしいもん。世界が動き出す直前というか『物語』が始まる瞬間に立ち会ってる感じだ。

 

今ここで、この男の子と女の子を殺せば、それは起きないと断言してる自分がいるんだよ。私たちの安全のためにも、悪いけど死んでもらうんだよ。本当にごめんね。立派なお墓を作ってあげるから許してね!

 

私の殺気を感じたのか、女の子が突っ込んできた。ただの突進だ。何の脅威にもならないね。じゃあ、君から先に逝かせてあげる!!

 

「や、やめろ! 禰豆子ぉおおお!!!」

 

 

 

-----男の子が吐いたその言葉。

 

それで体が固まった。動けなくなった。まるで心臓が止まったみたいに

 

-----禰豆子。ねずこ………禰豆子

 

その言葉は、文字は、名前は……なに?

 

知ってる。私はその名前を知ってる。昔知ってた。知った名前だった。何処で知ったんだろう。……禰豆子。

 

鬼になっても自分を失わず、残された兄と一緒に鬼狩りとして生きる。そんな人生を進む兄妹だ。そんな兄妹の-----『物語』

 

……ッ痛い!?

 

……痛い痛い。頭が痛い!!!割れそうだよ。なにこれなにこれなにこれなにこれ!!?

 

たたらを踏んでしまう。頭痛が酷い。酷すぎる。痛みが やーちゃん達に電波して苦しんでる。こんな苦しみを味合わせたくない。私の中に返したい。返してあげたい。あぁ無理だ。戻せない。戻す余裕がない。痛くて視界も霞んでる。死にそうな程に痛い!!!

 

「……今だァ!たたみかけろ!!」

 

誰かの声が響いた。たくさんの足音がする。たぶん柱達だ。目を開けてるのに何も見えない。ダメだ。今はダメ。今私は無防備だ。本能でわかる。今私は無敵じゃない。不死身じゃなくなってる。そんな気がする。確信が持てる。今斬られたら、私は、わたしは-----簡単に死ぬ

 

 

「-----邪魔だ 羽虫共!…失せろ!!」

 

突風?暴風?…それとも微風??

 

今の私は肌に触れる風の強さすら判別出来ない。でも体がすごく揺れてるのはわかる。力が入らない。……倒れる

 

仰向けに倒れそうになった瞬間、誰かに ふわりと抱えられた。意識が飛びそうになって変身も解けて、元の純白幼女に戻された。眷属が私の中に帰っていく。……もう、意識が-----

 

 

-----。

 

 

「-----鬼狩り共。今日は利き腕の調子が悪い。特別に見逃してやろう。だが、我々との力量差を忘れるな。二度と私の視界に入るな。もし次に会うことがあれば必ず殺す。凄惨な死だ……何の誉にもならない程の絶対的な死を……与えてやろう」

 

誰かの言葉と琵琶の音。それを最後に私は温もりに包まれながら、ゆっくりと何かに沈んでいった………。

 

 

 

 

 







※竈門兄妹は鬼殺隊に保護された。鬼に堕ちても人の心を失わない稀有な体質。そして柱が束になっても叶わなかった『無弦の零』に、何かしらの傷を与えられた逸材として……。

また、この翌月、後に恋柱として活躍する甘露寺蜜璃が盛大に振られるのだが、それはまた別のお話(深掘り無し)


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