……どうしよう。捕まっちゃった。食べられそうになってた男の子を庇って捕まっちゃった。
なにこれ?私への対策が早過ぎないかな?
空に固定された私は、多くの人達の視線に晒されたまま身動き出来ないでいる。
両腕に一体ずつ星擬きが喰らい付いて、左右に伸ばすようにして私の腕を封じてる。両足も一体の星擬きが咥えてて動かせないよ。
え?お前の馬鹿力なら何とでもなるだろって?
うん。君たちが私の何を知ってるかなんてわからないけど、私は別に怪力じゃないよ?これまでに見せた力は、全部『勢い』に乗せたパンチやキックなんだよ?岩とか重くて持ち上げられないもん。間違いないよ。
さっきも言ったけど、勢いなの。私の素の攻撃は全部勢い任せに不死身の頑丈な身体をぶつけてる感じなの。なんて言うのかな……殴り始めた速度が瞬間的に光の速さになる感じだね。本当に光程に速いのかって?知らないよ!(悪意無し)
だから、こうやって拘束されて手足が ビクとも動かせないと何も出来ないんだよ。ちょっと手の内を見せて動き過ぎたかな?これじゃ、いい見せ物だよ。恥ずかしい……。
頼みの綱だった左手の力も試したけど、意味がわからない謎の力だった。うまく説明出来ないけど、この状況を打開出来る力じゃ無いことだけは確かだよ。なにこれ?って感じだった。
……それにしても、夜空で無数の怪物に礎にされる純白幼女って絵面は良くないね。なまじさっき怪物達をボコボコにしてた分、見上げてる人達の絶望感が増してる。変に希望を与える真似しちゃったよ……
んぶっ!……この星擬き、さっきから定期的にお腹に頭突きとかしてきてる。さっきは謎の体液を頭から掛けられたし、ワンピースを捲られたりした。捲った星擬きは絶対に許さないよ。さっきから目で追ってるからどの個体かわかってるからね?(凄い笑顔)
……もしかしてだけど、私のこと調べてる?どんな攻撃なら通用するかとか探ってる感じかな?
無駄だと思うよ?お兄さんにも調べてもらったけど、結果は『化け物』止まりだったもん。君達は知恵とか無さそうだし、絶対にわからないとおもーよ?
んぐッ!……今度は背中から頭突き。痛くないけど不快なんだってば!くぅ……手さえ動かせたら瞬殺なのに……ん?何か下から飛び上がってくる。え!?既視感だよ!禰豆子じゃないよね!!?
今の所、私の唯一の天敵っぽい
なんて思ってたら、左右の星擬きが縦に裂けた。いや、断面が綺麗過ぎるね。斬られたみたいだよ。
殆ど同時に足に喰らい付いてた星擬きも赤黒い煙を出しながら死んだみたい。ちょ、待って、空中に投げ出された感じだよ?このままじゃ自由落下なんだよ!
落下の衝撃に備えようとしたら、誰かに空中で受け止められた。今飛び上がって来た女の子だ。右手に刀を持ってる。それに、青くて薄い衣みたいのを身に纏ってる。同じく半透明な青色の翼みたいなのも生えてるよ。なんだろうこの子?その者青き衣を纏いて金色の野に降り立つべしなんだよ。違うけどね。降りるどころか飛び立ってるし、金色じゃなくて白い星擬きの渦中だけどね(何の話?)……もしかしなくてもこの子に助けられたのかな?
私よりも背が高いこの子は、幼くも凛々しい顔付きで心配そうに私を覗き込んでる。何か言われてるけど、相変わらず意味が伝わらない。……よし、いつも通りニッコリ微笑んでおこう。それが良いね。
私の笑みと同時に、見上げていた人達から歓声や安堵のため息が上がる。良かった。この判断は間違いじゃなかったみたいだね。
-----夜空には無数の白い星が飛び交う。その中に浮かぶ未来の青い勇者と純白の妖精は、世界が滅ぶ寸前だというのに幻想的な光景として人々の目に写った………
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あの後、私と青い子は生き残った人達と逃げた。うん。逃げたんだよ。仕方がなかったの。
あの星擬き達、私が動けなくなると何も出来ないのを理解したみたいで、拘束しようとする動きにシフトチェンジしちゃったんだもん。
何となくだけど……次に捕まったら、何処かに連れて行かれる気がしたんだよね。だから無理に戦わず、人を逃しつつ後退する感じになってる。今はさっき降りた山の中腹辺りかな? 逃げるは恥だが役に立つ…だよ。
ん?また一体 星擬きが来た!私の渾身のパンチが食べたいんだね。いいよ。大きなお口を開けて突っ込んでおいでよ……と、その前に青い子がやっちゃった。
この子はすごいね。自分の身も顧みず他者を助けようとする意志がすごく強い。さっきの青色の衣と翼は消えちゃったけど、刀一本で向かってくる星擬きを塵に変えてる。誰なんだろう?普通の人間に見えるけど、これまでの世界と同じ、そう言う種族の人間なのかな?面白いね。この世界も未知で溢れてそうだよ!街に入った時、心が震えた感じがしたし、懐かしさもあったから『私』の故郷に近い場所かも知れないね。……でも、同時にこの世界じゃないってこともわかっちゃう。似てるけど違うって何となくそう思うんだよ。
さて、今の所、星擬き達は捌けてるし、このまま元来た山の上まで逃げようね。あそこはどうして星擬きが近づかないんだろう?不思議だね。
それと、ちょくちょく青い子が話しかけてくるんだけど、全然わからないや。その度にニッコリと笑顔を向けておく。その困惑してる顔も可愛いよ。戦ってる時の凛々しい顔付きとのギャップで倍可愛い。堕姫ちゃんには劣るけどね(依怙贔屓)
そんなこんなやってるうちに山頂に帰って来たよ。やっぱりここには星擬きがいないね。たくさんの人達が避難してて寿司詰め状態だよ。パフェ鰯なんだよ。
何のことかな?比較的どうでも良くて役に立たないことを口走った気がするけど……、もうどうでもいい(無惨さんボイス)
ん?青い子が小走りで神社の方に行っちゃったよ。知り合いでも居たのかな?……よし、ここは安全みたいだし、私は街に戻って逃げ遅れた人を避難させないとだね。さっきは不覚を取っちゃったけど、今度は助けた端から山に宙渡りを繰り返す救出メインの動きで行こうと思うよ。大丈夫、僕、最強だから!(誰の台詞かな?)
え?自分よりも大きな質量を持って宙渡りしたら『バタンきゅ〜』じゃないのかって?甘いよ、甘々だよ。私がお兄さんの所でのんびり花とか眷属だけ探してたと思ったら大間違いなんだよ。毎日その日の終わりには、バタンきゅ〜するまで自分以外の質量を持って宙渡りをして鍛えてたんだよ!今では人一人くらいなら疲れずに移動出来るようになった。褒めてくれても良いんだよ!甘いお菓子を食べさせてくれながら頭を撫でてね?
ん?青い子が私の方に誰かと向かって来てるけど、ごめんね。あんまり時間が無いから、行くんだよ。ここの人達は任せるからね〜
右手を街に向けて ぎゅっとすると、私の姿は山から掻き消えた。
その後も瞬間移動で現れては、逃げ遅れた人や怪我人を運んでくる私に青い子も連れていた もう一人の女の子も目をぱちくりさせてたよ。もちろん、周りの一般人のみなさんもね。驚いてないで怪我人を手当てしてほしいんだけどなぁ。衛生兵〜!
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朝になった。この世界にも太陽があって安心したんだよ。日の光が出た頃には星擬きもかなり数が減ったみたいで、空に群れてた連中も殆ど居なくなってる。もしかして鬼に近い種族だったりする?太陽光苦手なのかな?勘違いなら謝るから近づいて来てほしいな。顔面パンチをもって謝罪とさせてもらうんだよ(横暴)
街の人達も一先ず危機が去って安心したみたい。でも、同時に涙を流し始めた。不安や恐怖が治ったことで、今度はそれまで溜まってたいろんなものが込み上げて来たみたいだね。
日常、資産、家族、友達……人それぞれ思うものは違うだろうけど、たくさんのモノを失った筈だもんね。
山の天辺、広い敷地の神社らしき場所は所狭しと人々が埋めてる。嗚咽や泣き声、絶望に浸るみんなの姿が目に痛いよ。私には赤の他人たけど、それでもちょっと心が痛むんだよ。
ん?青い子が近づいて来た。何か神妙な面持ちで話しかけて来てる。……うん、やっぱりわからないや。取り敢えず今日はお疲れ様なんだよ。あと、助けてくれてありがとね!
感謝の気持ちとして手を差し出す。どの世界でも『握手』と言う概念はあるみたいだからね。
青い子も少し考えた後、薄らと笑いながら握手してくれた。……と、思ったら手を繋いだままトコトコ歩いて行く。え?何処に連れて行ってくれるのかな?私の好きな『未知』があれば嬉しいんだけど!
-----『演説』みたいなことだった。
神社の前に立った青い子は私ともう一人を左右に立たせて、生き残った人達に大声で何かを語ってる。凛とした姿勢で喋るその子をみんなは畏れにも似た表情で見つめる。私のこともチラチラ見てるし、何か関係性がある話なのかな?小さな子供の話だからか、中には訝しんでる人もいたけど、青い子の話が終わりに差し掛かる辺りで、そんな顔をする人も居なくなっていた。
その後、演説が終わったと同時に人々は各々動き出した。荷物を纏めたり、何人かのグループを作って話し合いをしたりだね。神社の中も物色してる。……何となく成り行きを見てたけど、たぶん何処かに避難するんだろうね。ここじゃない、もっと安全な何処かに。
……私は、どうしようかな?私の目的は『私』が誰だったのかを探すこと。街並みを見る限り、懐かしさを感じるから、私に繋がるものが見つかるかも知れない。
でも、この人達と一緒だと自由に動けないよね。ここにいる人達相当多いし。甘く見積もって数百人はいるよ。
私一人なら瞬間移動で好きに動けるけど、この人達を庇いながらだと、それも制限されちゃうよね。
……人間は好きだけど、やっぱり優先順位は『私』が上だし……でも、助けられるなら助けてあげたい。いや、一先ずは助けたことになるのかな?さっきの侵略は一旦防げたし……う〜ん
なんて考えてると、青い子じゃない方の子が来た。紫っぽい髪に赤いリボンが特徴的な子だ。青い子と仲が良いのかな?会った時から殆ど一緒にいるね。
……何か細々とした声色で話しかけてるけど、わからないんだよね。向こうも言葉が通じてないのはわかってるみたいだけど……ん?ひ…、ひーた…?
あ、この流れは知ってる!ありゅごさんの時やお兄さんの所でも同じだったね。自己紹介だ!指を自分に向けて同じ言葉を連呼する。その仕草はいろんな世界で共通なんだね。たすかるよ〜
ひーた?かな……イントネーションが難しいよぉ…。でも、たぶん『ひーた』だ。そんな気がするよ。
この子も…『ひーた』も通じたことが嬉しいみたい。ちょっぴり名前が違うのか、えへへっ…て眉をハの字にして困り顔だね。
同じ要領で青い子の名前も教えてくれた。『わあば』だと思う。うん、少し違うっぽいね。けど、意味が伝われば一先ずは良いよね?
ひーた が私の名前も聞きたそうにしてる。……ごめんね。私にはこの世界での名前が無いんだよ。本名として定着させたくないから『ショー』も『
首を左右に振ると、なんとなく察してくれたみたい。教えたくないとかじゃなくて、教えられない事情があるみたいな受け取り方をしてくれた。すごいね。もしかして ひーた はすごく頭がいいんじゃないかな?
その後、わあば も戻って来て、改めて名前を呼んだけど、やっぱりちょっと違うみたいだね。少し困ってるよ。ひーた が わあば に今のやり取りを説明してるみたい。喋り方と表情でそんな気がするんだよ。
ん?今度は真剣な表情で何か話しかけてくる。……うん。たぶん一緒に来て欲しいとかそんな感じだね。山向こうを指差しながら地図見たいのを広げて教えてくれてる。……私たちのいるところから、ここまでって……かなり遠いね。もしかして、この人数でここまで行くのかな?地図が正しいなら相当遠いね。何ヶ月とか掛かるんじゃないかな?
いや、本気だね。本気の目だよ。……わかった。一緒に行くよ。旅の途中で『私』のこともわかるかも知れないし、乗りかかった船って言うもんね。乗る船は泥船かも知れないけどね〜(不謹慎)
私の返事を不安そうに待ってた二人に笑顔で頷いた。ちゃんと伝わったみたい。安心した顔と笑顔で返してくれたよ。
それにしても、わあば は何者なのかな?私みたいに不死身でもないし、腰に刺してる刀の力かな?……今度見せてもらいたいね。
-----その日の昼過ぎ、私達は必要な荷物を持って、民族大移動を開始したんだよ。もちろん、堕姫ちゃんの籠も忘れないようにね。
明るくてもそこそこの星擬きは空を泳いでたから、道中での戦闘が予想された。でも、何故か私達は星擬きに襲撃を受けることはなかったよ。
星擬きは一定の距離まで近付くと、嫌がるような挙動を示した後、元いた空へと帰って行ったんだよ。
その結果、私達は予想してた期間よりも、ずっとずっと早く目的の場所へと辿り着いた。
なんでかな?そう思いながら、私は堕姫ちゃんから貰った竹の籠を大切に握り締めていた……。
堕姫ちゃんから貰ったお菓子は、目的地に辿り着くまでの非常食として使い切ったよ。もちろん、私も食べた。すごく美味しかったから、次に会った時はまた食べたいな。今度は無限城のみんなと一緒にね!
それと、この世界を去った後、私の残した籠が星屑を寄せ付けない不思議な力を出しているとされて、妖精様の御神体として扱われるんだけど、それはまた別の話なんだよ〜
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わあば「……あの子は、化け物どもに囚われているのか!……くそ、私に何か出来ないのか。逃げて来た人々の話が本当なら、あの子は化け物と戦っていたことになる。どうにかして助けたい。私に……もっと力が、あの子の所まで飛んで行ける『翼』があれば!!!」
-----心で強く深く願った少女は胸の奥に熱いものを感じ、気が付いた時には青い衣と翼を顕現させていた…。