第二十五話 タスケテ〜!自分をパパと呼ばせようとする変態さんに遭遇しちゃったんだよ〜!私は一向に構わん!!←!?
やぁ、みんな!こんな挨拶も久しぶりだね。世界渡りをして一週間くらいしか経ってないのに、思いの外みんなと会うのが遅くなった気がするんだよ。おかしいね?何故か偽りの家族と過ごしたり、ダンジョンでご飯食べたり、ゾルトラってた気がする。存在しない記憶なんだよ〜
それはそれとして、今はネオンの明かりが眩しい町並みが見下ろせる とっても高いタワーの上層階にいるよ。この世界はすごく科学が発展してるね。高いビルも人もいっぱいだもん。まさか お月様よりも地上の明かりの方がずっと眩しいなんて思いもしなかったよ!!
……え?テンションが高過ぎないかって?タマと杏のことがあったのに人の心とか持ち合わせてないのかって?
……そんなこと言われなくてもわかってるよ。それを出されると暗い気持ちになるんだからね。あんまり虐めないでよ。二人には悪いことをしたと思ってる。
私のことを庇ってくれたのは嬉しいよ。本当に感謝してる。あのままだと死んでたかも知れないんだもん。
でも無茶だよ!スコーピオンが勇者絶対殺すマンなのは察してたのに、タマったら壊れかけの楯で守ろうとするなんて……。
杏もそうだよ。私の身代わりに飛び込んでくるなんて無謀だよ!そんなあからさまな死亡フラグを立てたら死んじゃうってわからないのかな!?
その結果、私にトラウマ級の死に顔を二人で見せつけて終わるなんて最悪の展開だよ。数日間夢に出たもん。何度悪夢に魘されてパパに慰められたか わからないんだよ!
……え?あぁ『パパ』ね。この世界に来て最初に会った男の人のことだよ。そう呼べって言うから呼んであげてるの。私たちに救いの手を差し伸べてくれた人だからね。そのくらいお安いご用意なんだよ。私くらい器が大きいとパパの一人や二人居たって全然問題は無いの!前の『私』がなんて言うかは知らないけどね。……あ、噂をすれば、パパが来たんだよ。
「……やぁ、白のキミ。こんな所にいたんだね?」
白のキミ。私はそう呼ばれてる。良い名前が思い付くまでは、その仮名で我慢してくれって。それも可愛いから私は構わないんだけど、パパには何か考えがあるみたい。ちゃんとした名前にしたいんだって。そんなこと言われるとハードルがぐんぐん上がっちゃうよ?でもワクワクするね!楽しみにしてるんだよ〜
そういえば、パパは今お仕事が終わったの?いつも遅くまで大変だね。よしよしをして上げるから頭を下げてくれないかな?
「この歳になっても まだ頭を撫でて貰えるなんて感慨深いね。お願いしようかな……」
うむ!素直なパパは好きなんだよ。娘(仮)がたくさん褒めてあげるね。今日も沢山の『個性集め』お疲れ様〜!
……ところで、さっきの口振りからパパは私に会いに来たみたいだけど、どうしたのかな?遂にこの世界を案内してくれる気になったの?
「それはもう少し後かな。君の言うことが正しいなら、何がきっかけで『世界を渡る』ことになるか分からないからね。僕の友人にその辺りを調べてもらってるから、もう暫くはここで大人しくしていておくれ」
うん、わかってるんだよ。私だってあんな状態の二人を残して無闇に世界を渡りたくないからね。パパに頼るしかないんだよ。それで、今夜も私の身体を調べるのかな?
その言葉に肯定の返事をしながら、パパは大事そうに私を抱き抱えて、その場から移動を始める。
機械的な床と壁が目立つ近未来を思わせる廊下を行きながら、私はチラリとパパの顔を見上げた。
初めて会った時は雨の降る夜中に加えて私も疲労してたからね。パパの顔はボンヤリとしてよく見えなかったけど、すごくダンディな おじさんだった。2メートル超えの高身長に整った目鼻。それに縮れた白髪と赤い瞳。
……驚いたよ。パパもそう感じたみたいだけど、私達ってよく似てるもん。外見の話もだけど、たぶん内面にも共通点が多いと思う。やりたいことを思いのままに実行しちゃう所とか、自由が大好きな所とかね。
こうやって抱っこされて歩いてると、他人からは絶対に親子だって思われるんだよ。もしかして、私のお父さんですか!?(ニコ・ロビン口調)
誰かの真似をしながら聞く私に『そうだよぉ』と、ハニカミながらパパは答えた。……う〜ん、嘘っぽい笑みだね。心底楽しみながら会話をしてるのが伝わるよ。すごく良いと思う。どんな時も常に楽しく愉快で有りたいもんね!
「あぁ、たった一度の人生だ。悔いの無いように目一杯楽しみたいものだね?」
大きな掌で私の頭を わしわしと撫でるパパは本当に嬉しそうにしてる。そんなに娘が……子供が欲しかったのかな?私は構わないんだよ。こんなに似てるんだもんね。寧ろ違うって言う方が無理があるんだよ。
……え?さっきから流暢に喋ってるけど、もうこの世界の言葉を覚えたのかって?違うよ。私は何にも覚えてない。すごいのはパパだよ。『あらゆる言語を理解する個性』って力を使ってるんだって。この世界も面白そうだね。沢山の未知で溢れてるんだよ〜
さてさて、そんなやり取りをしてる間に、パパはいつもの扉の前で立ち止まった。私が定期的に寄るお部屋なんだよ。
「僕は先に行ってるから、君はお友達に顔を見せてから来なさい」
そっと私を床に下ろして微笑んだパパは、そのまま廊下の奥に歩いて行っちゃった。友達と会う時は席を外すなんてモラルがしっかりしてるね。娘(仮)として嬉しいよ。
パパを見送った後、手を扉に翳して認証を終えると、それは横にスライドして開く。
中は薄暗いけど、足下のフットライトと奥に見える大きな二つの光の柱が部屋を照らしてくれるお陰で支障なく歩けた。
その二柱の明かり……円柱状の培養槽の前まで辿り着くと、私は『妖精』の時と変わらない笑顔で二人に話しかける。
こんばんわだよ。タマ、杏。……まだ疲れてるよね?ゆっくりで良いから、元気になってから目を覚ましてほしいんだよ。
私の言葉に返事をするみたいに、培養槽の底から
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「おや?お友達とは、もう良いのかい?」
うん。大丈夫だよ。ずっと私が居たままじゃ二人もゆっくり休めないからね。付かず離れずが大切なんだよ。
二人と別れた後、私はパパとドクターが待つ実験室に入った。ドクターはパパと協力関係にある凄腕のお医者さんだよ。
私を含めて、タマ達の身体に興味津々なんだって。構造は人間と同じなのに皮膚も血も骨も何もかもが未知の物質だって興奮してたんだよ。別の世界の住人だからね。そんなこともあるんだと思う。
お陰でドクターが二人の治療に協力してくれるキッカケにはなったけど、反対に治療が遅れてる要因でもある。治癒の個性や機材を駆使しても治りがすごく遅いんだって。
だから、二人にはスコーピオンから受けた傷が風穴となって生々しく空いたままだもん。詳しい説明を受けても ちんぷんかんぷんだから、そこら辺はお任せするんだよ。
部屋の中は私には理解出来ない機械や資料でいっぱい。これ全部 タマと杏、それに私のデータなんだって。そこそこ広い部屋なのに、この一週間で随分埋まったね。本当にドクターは研究熱心なんだよ。
……熱心過ぎて二人の乙女の領域まで覗こうとした時は鉄拳制裁が必要だと思ったけどね。流石に容認出来なかったんだよ。壁の染みになりたいのかな?黒死牟さんの後を追ってみる??(黒死牟さんは死んでないけど)
パパからもお叱りを受けて、二人の尊厳は絶対に犯さないとドクターに誓ってもらった。でも、涎を垂らしながら二人の治療をする時があるから油断出来ないんだよ。やっぱり染みになっとく?(バイオレンス系幼女)
そんなドクターは早く私を調べたくてウズウズしてる。二人の尊厳を守る分、私なら徹底的に調べて良いと言ってるから仕方がないよね。私は傷付かないからサンプルとかは取れないだろうけど……。
それにしても、天井に当たるくらい資料が積み重なってるのに、まだ調べ足りないのかな?私も『私』に付いて知りたいから良いんだけどね。
それに、ドクターの協力が無いと二人が治療出来ないもん。私の身体は取り引きの材料みたいなものだよ。ドクターは二人を治して、私は自身を提供する。ギブ・アンド・テイクなんだよ。
ドクターに急かされるままに、新しく導入された寝るタイプのカプセルベッドに横たわる。MRIみたいなものかと思ったけど、アレとは比べものにならない程のスキャニング?が出来るんだって。よく分からないけど凄そうだね。
中に入ると透明な上蓋が閉まって密閉された。精密機器っぽいピコピコ音が鼓膜を撫でる。それと同時に小さな風音が聞こえ始めた。眠気を促進するガスだってパパが言ってたんだよ。スキャニングは眠ってる方が深くまで見られるらしいから、抵抗はせず流れに身を任せることにするね。
『世界渡り』をしてバタンキュ〜になった時のような急速な眠気を感じながら、私はスヤスヤと寝息を立てて意識を手放した……。
───ドクターの身体検査は毎日続いたけど、ある日パパから別の実験を受けることを提案されたよ。
私に『個性』があるかをチェックするんだって。私は個性の塊だと思う。喜怒哀楽がはっきりしてるし、好きな物もいっぱいだもんね。個性だらけなんだよ!(盛大な勘違い)
〜嘘か本当かシリーズ〜
とある研究者の殴り書き①
先生からの土産は素晴らしい。可能性の塊、未知の原石、不老不死の完成体。ノーム計画など足元にも及ばない胸の高まりを感じる!
魔王の夢が叶う目前でこれ程のモノが手に入るとは、世界そのものが彼を世の中心にしたいのではないかと感じずにはいられない。
だが、同時に危険因子でもある。彼曰く、その存在(以降、存在Xと呼称)は彼の力でも殺すことは不可能だそうだ。それどころか、敵に回せば我々の夢など一瞬で潰えると……。
そんなバカな……とは思わん。何故なら、彼が間違えたことなど私の知る限り一度しか無いからだ。故に、彼は存在Xに『枷』を付けることを提案した。
死んでいる異界人二体の蘇生。それを手綱として存在Xを手元に置き、決して敵にしないこと。これは絶対条件。くれぐれも粗相の無いように注意しなければならない……。