幼女だよ。異世界を巡って自分探しをしてるよ   作:KDAL

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第二十八話 人生の転換点っていつ来るか分からないね。唐突にやってくるんだよ。いつその日が来ても良いように、準備を怠っちゃダメなんだよ〜

 

 

 

どうしてこうなったんだろう。ジトっとした目でそんな事を思ってるんだよ。……え?何を意味の分からない書き出しをしてるのかって?

 

私を抱き抱えた『名も知らないヒーロー』とパパを筆頭としたヴィラン達が睨み合ってるんだもん。そんな文章にもなるんだよ……。

 

私を抱えるヒーローは空を飛ぶ個性を持ってるみたいで、今はぷかぷかと街の上に浮かんでる。横抱きにされたまま下を除けば、立ち昇る煙と火災が崩壊した街を飾ってた。逃げ遅れた人達の阿鼻叫喚がアクセントを生み出して『絶望』の一枚絵として完成してる。

 

さてさて、どうしてこんな事になったのかを説明しなくちゃいけないね。……と言っても、別に特別なことは無かった筈なんだよ。だから『どうしてこうなった』って言ったんだもん……。

 

 

私がいつも通り自分探しの為に街を散策してたら、ヴィランのグループが我が物顔で とある喫茶店をめちゃくちゃにしてたの。そこは私のお気に入りのお店だったんだよ。レモネードが有名で、一緒に出してくれるケーキが頬っぺた落ちちゃうくらい美味しい人気店だったの。

 

ここは無法都市だから、それなりに治安が悪いけど、それでも一定のルールの下に成り立ってる。この周辺での争いは禁止されてたのに……とか思ってたんだけど、たぶんパパとは関係ない『野良ヴィラン』ぽいね。なるほど、なら裏社会の決まり事を知らなくても不思議じゃないかな。

 

偶にいるんだよね。『無法都市はヒーローが居ないからどれだけ暴れてもお構い無しだぜw』とか勘違いしてるお馬鹿さん達が……。ヒーローが居ないのはそれだけ ヤバぁな場所だからなんだけどな〜。

 

まぁ、取り敢えずは許せないよね?今度パパと行こうと思ってた お店を内外共にメチャメチャにされたらお仕置きしない訳にはいかないんだよ。

 

この世界に来てだいぶ経つけど、中でもここのお店は気に入ってたのに、こんなにされたら いつお店が再開されるか わからないもん。

 

周りの野次馬さん達がオロオロしてる中、私はズカズカと店内で暴力に酔ってるヴィランへと歩み寄った。小声で静止する人も居たけど、それらは無視して進んだよ。

 

店員の若い女性がヴィランに殴られそうになった所に宙渡りで割って入った。それと同時に軽くアッパーカットをお見舞いしてあげたよ。咄嗟のことで反応出来なかったヴィランは、そのまま天井に頭をめり込ませてワンダウン。お空の彼方へ すっ飛ばさなかっただけ温情だと思ってね。バイバイキ〜ンにしてあげても良かったんだよ?

 

その後は『何だぁこの餓鬼⁉︎やっちまえ〜‼︎』て、テンプレな台詞を吐いた残りのヴィランをコテンパンにした。私を見ても何の反応も見せなかった辺り、やっぱりパパとは関係ない野良ヴィランだったみたい。お陰で最近抑圧気味だったストレスが解消されて良かったけどね!(ストレスの吐き出し方がバイオレンスな幼女)

 

ヴィランを小山みたいに積み重ねた辺りで、お店の人や周りから喝采と感謝の言葉を貰った。やっぱりみんなが喜ぶ顔は見ていて気持ちがいいね。私は誰かが喜んでる姿を見るのが好きだもん。こっちの方が性に合ってるんだよ〜

 

観衆の中には私の正体(魔王の娘)を知ってそうな人も混じってるみたいで訝しい表情を浮かべてる。うん。まぁ、マッチポンプだとか、何か裏が有るんじゃないかって思っちゃうよね?それは仕方がないかな〜

 

さて、あんまり長居しちゃうと妙な事態に巻き込まれそうだから、さっさとこの場を後にしよう。こんな時の私の勘は無駄に当たるからね。あんまり帰りが遅くなるとパパにも心配されるし。

 

そう思って駆け出したんだけど、どうも一歩遅かったみたい。その場から離れようとした私の身体は、誰かに腕を掴まれる事で止められちゃった。

 

何かと思って振り返ったら、どう見ても外見がヒーローな女の人が私を掴んでたんだよ。すごく美人なお姉さんだった。黒髪のポニーテールで、ぴっちり系の黒いスーツが程良く筋肉の付いた身体にフィットしてる。それに私のイメージカラーと同じ純白色のマントを付けてたよ。

 

すごく真剣な顔で何か私に喋り掛けてるんだけど、残念ながらこの世界では言葉のお勉強は不真面目でね。これまではパパから借りてた『言葉の個性』を使って誤魔化してたけど、生憎と今日は持ち合わせが無いから何言ってるのか ちんぷんかんぷんなんだよ。

 

……よし!こんな時はいつもの幼女スマイルで切り抜けよう。取り敢えず何を言われても笑顔で頷く。これに限るね。笑顔と肯定は全てを解決するんだよ!

 

そのスマイルが過去に悉く誤解を生んでいるとも知らない私は、女性ヒーローの言葉に全て頷いて返した。

 

……お?満足してくれたのかな?漸く手を離してくれたよ。

 

じゃあ、私はパパと夕食の時間だから、この辺りで失礼させてもらうね。あ!お姉さんも早くこの場を離れた方が良いよ?そんな格好で堂々としてるってことは知らないんだろうけど、無法都市はヒーローの立ち入りを禁止してるからね。パパやその部下さんに見つかったら有無を言わさず粛清されちゃうんだよ!……と言っても言葉が通じないんだった。うっかりなんだよ〜

 

案の定意味が伝わってなかったみたい。疑問符を浮かべてるんだよ。そんなヒーローに、バイバイ!って軽く手を振って踵を返そうとしたんだけど……妙な浮遊感を感じた。

 

あれれ?なんて思ってたら、そのヒーローさんに横抱きにされて、そのままお空にフライアウェイなんだよ。

 

……え?なにこれ!?ナチュラルにお持ち帰りされてるんだよ!!? 降ろして〜〜!!!

 

 

 

---------------

 

 

 

……で、お話は冒頭に戻る訳だね。お持ち帰りの道中で私の異変を感じ取ったらしい変質者(マキア)さんが現れてからはもう大変。街はめちゃめちゃに壊れるし、女性ヒーローのお仲間も二人出て来て怪獣大進撃の勃発なんだよ!

 

……にしてもすごいね。このお姉さん、変質者さんの攻撃を全部捌いてるんだよ。私を抱えてるから片手が塞がってるのにね。巨大化して岩山みたいになってる変質者さんのパンチを同じパンチで弾き返したもん。ちょっと強過ぎだね。

 

いつの間にか側に居たお仲間のヒーロー二人も相当なやり手だ。片や筋肉の塊みたいな人で、同じくパンチ主体の戦闘スタイルみたい。騒ぎを聞き付けて来たパパの下僕ヴィラン達をドンドン倒してる。

 

もう一人は足裏からジェットみたいなのを出して縦横無尽に立ち回ってる。素早い動きはお姉さん以上かな?本当にお姉さん達は何者なの?実は名のあるすごいヒーローだったりするかも。街で売ってたヒーロー名鑑は ざっと見たけど、この人達のことは載ってなかった。将来とっても輝くヒーローになるかも知れないし、今のうちにサイン貰っておこうかな?

 

……とか呑気なこと考えてる場合じゃなかった!そうじゃなくて、いい加減にお姉さん達は私を置いて ここから離れた方が良いよ!これだけの騒ぎになったら流石にパパに気付かれるだろうし、見つかったら間違いなく殺され───

 

「おやおや、いつまで待っても夕食に顔を見せないから、どうしたのかと思えば……」

 

……あぁ、ダメだったね。お姉さん達、残念だけど逃げるには遅いみたいだよ……。

 

変質者さんや部下ヴィラン達を制して、見慣れた黒いスーツを着た人が現れた。ふわふわと お空に浮かびながら近付いて来る。他でもない、私のパパこと、オールフォーワンさんだね……。

 

「幼い子供を誘拐するなんて、とてもヒーローのやることとは思えないね」

 

「───?───。」

 

「耳の痛い話だ。だが、子供は家に帰って眠る時間だよ。そんな血生臭い話は大人だけでするべきじゃないかな?」

 

ありゃりゃ、唐突に会話が始まったけどお姉さんが何を喋ってるのかさっぱりだ。パパ〜、私にもお話しが わかる個性を持たせてよ〜!

 

ヒーローの腕の中でパパに訴え掛けるけど、パパはお話に夢中だね。……なんか意図的に私を無視してる気もするけど、気のせいかな?もしもそうなら思春期を迎えた娘ばりにパパを毛嫌いしちゃうけど良い?洗濯物は別にして洗ってもらうんだよ??

 

「さぁ、僕の娘を返してくれないか?そうすれば、命だけは助けてあげても良いよ?……まぁ、ワンフォーオールはきっちりと頂くけどね」

 

むむ!今聞き捨てならない言葉がしたよ!ワンフォーオールって、パパが言ってた中々手に入れられない個性だよね?チラッと話に聞いてたけど、このお姉さんがその所持者さんなの??

 

改めてお姉さんを見上げると、私の視線に気が付いたのか、お姉さんも私を見下ろした。あ、ニコッと笑ってくれた。やっぱり美人さんだね。……でも、パパの娘ってバレたのにどうして微笑んでくれるのかな?ヒーローに取っては憎むべき敵の娘なんだよ?

 

…………何となくだけど、お姉さん達は私を『殺し』に来たんじゃないのかな?本能的にそう感じたんだけど……。て、うわぁッ!!?

 

お姉さんに唐突に投げられた!硬いコンクリートの地面に向かって投げ落とされたんだよ!!ちょっと、いきなりビルくらいの高さがある空の上で幼女を投げ落とすなんてモラルがなってないんじゃないかな!?

 

落下中に宙渡りで何処かへ着地しようとしたんだけど、それは出来なかった。私が瞬間移動する前に横から飛び出して来た誰かに抱き止められたからだよ。

 

さっきの女性よりもずっと筋肉質な腕の中に収まった私は、誰かと思ってその人を見上げた。

 

……金髪のお兄さんだ。黄色いイメージカラーが特徴のお兄さんなんだよ。パンチスタイルでヴィランをやっつけてた女性ヒーローのお仲間だ。

 

 

……あれ?さっきは遠くて良くみえなかったけど、この人───何処かで見たことがあるような?

 

……ココじゃない『別の世界』でも似たような感覚があった。……何処だったっけ?

 

それを身体と心が認知する前に、私の耳に絶叫が響く。

 

「───ッ!───!───、───!!」

 

「───!?───ッ!!?」

 

空の上のお姉さんとお兄さんが何かを叫び合ったと思ったら、お兄さんが私を抱いたまま驚きの速さでその場から逃げ出したんだよ!

 

ちょ、待って待って!もしかしなくても、これって私の『争奪戦』になってないかな!?やめて!私の為に争わないで〜なんだよ〜!

 

お兄さんはお空を飛べないのか、半壊した街を恐ろしい速さで駆け抜けて行く。大破した車を避けて、倒壊したビルの中を駆け抜ける姿はパルクールなんかよりずっとすごい。

 

パパがすぐに追撃してくると思ってたけど、あのお姉さんが戦って妨害してるみたい。上空で花火みたいな爆発が沢山起きてるけど、あれがそうなんだろうね。

 

でも、パパが動けない分 パパの部下さん達が追いかけて来てる。そこらのチンピラヴィランと同一視して侮らないでね。パパの部下さん達は結構強いんだもん。

 

あ、もう一人の足からジェットが出るヒーローさんがキックで全員捌いてる。やっぱりこの人達は名のあるヒーローさん達じゃないかな?アニメの主人公並みに強過ぎるもん。

 

なんて考えてると、私を抱えるお兄さんが何とも言えない表情で私を見つめてるのに気が付いた。ずっと見てる訳じゃなくて、チラチラと覗き見てる感じ。脱兎の如く逃げてる途中なのに余裕があるね。

 

その表情は……なんだろう。敵意とも取れるし、憐憫とも思える。すごく複雑な顔なんだよ。お姉さんとの会話が分かったら意図が汲めたんだろうけど、こればかりは仕方がないね。

 

……でも、やっぱり見たことがある顔だ。何処だろう?何処で会ったんだろう。

 

私は間違いなくこの人を知ってる。『魂』が知ってるって言ってる。自分でもよく分からないけど、そんな感覚なんだよ。

 

………。

 

………………。

 

………………………そうだ!あの時もそうだった!!もう何年も前、無惨さんの世界で味わった感覚と同じなんだよ!

 

あれは雪山でのこと。『禰豆子』の名前を聞いた時に私の中に溢れた記憶の断片。『前の私』が知っていた記憶。その蓋を無理矢理こじ開けるような感覚!

 

 

……もしかして、このお兄さんも禰豆子と同じ〝この世界〟にとって大切な存在なのかも!

 

 

だとしたらマズイんだよ!とってもマズイ!あの時はそれを感じた瞬間に酷い頭痛と眩暈、それに私の『不死性』が消えたもん。もしも今同じことが起きたらヤバぁじゃ済まない。私に繋がるかも知れない記憶なら喉から手が出る程に欲しいけど、今はその時じゃないよね。戦いのド真ん中で不死性が消えたら命の危機なんだよ!

 

幸運にも まだ頭痛も起きてないし、不死性も消えてない。でも、いつそうなっても不思議じゃないんだよ!これ以上余計なことを思い出しちゃう前にこのお兄さんから離れなくちゃ!!前回、前々回と続いて命の危険に晒されるとは思わなかった。不死性君がガバガバ過ぎて困るんだよ〜!!!

 

危機感に慌ててジタバタ足掻くけど、お兄さんは私を離してくれない。お兄さんの掴む力が強いんだよ〜!どうして私を離してくれないのかな!?私は身の危険をすごく感じてるの!これ以上は関われないの!!だから私を離してほしいんだよ〜!!!

 

これ以上 余計な情報を拾わないよう、お兄さんにそっぽを向いて抵抗してたんだけど……その時、目に入っちゃった。

 

───パパがお姉さんの脇腹を深く抉ったのが……。

 

 

 






〜嘘か本当かシリーズ〜
とある研究者の殴り書き④

先生から素晴らしい贈り物が届いた。存在Xの毛髪と血液、更には皮膚の一部だ。夢幻かと疑ってしまったが真だ。思わず彼の手から取り上げるようにサンプルの入った透明な保護ケースを受け取りマジマジと眺めてしまった。

話を聞けば、存在Xを見つけた現場で入手したそうだ。異世界で瀕死になった存在Xが出現した場所らしいが、既にそこは儂のドローンで隈なく探している。

目ぼしい物は何も残っていなかった筈だが、なるほど。彼の有り余る個性を使えば如何(どう)とでもなるという訳か。先生には本当に頭が下がる。

これで研究は大きく飛躍するだろう。だが、サンプルは極々少量だ。ノーム計画に流用させる方向で進めるか、それとも存在Xのコピー製造に回すか。どちらか一方にしか使えないが、なんと贅沢な悩みだろうか!

あぁ、もう記録など取っている場合ではない!この興奮が冷めないうちにラボへ向かわなければ!!

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