幼女だよ。異世界を巡って自分探しをしてるよ   作:KDAL

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第三十話 さよならは突然じゃない時もあるよ。旅に持って行けない物は託してね。守って欲しいお願いがあるならハッキリと伝えること。また戻って来られるかなんて誰にも分からないんだからね

 

 

 

無法都市が半壊した事件から数日して、私の左手が薄らと発光し始めた。なんとなく察してたけど、やっぱりね。あの金髪さんを見た時から感じてたもん。あの人と出会うことが世界渡りの引き金になったみたい。

 

だとしたら、あの金髪さんはこの世界にとってどんな人だったのかな?逃げられちゃった後だし、もう分からないんだよ〜

 

そうそう。案の定と言うべきかな。私はやっぱり発熱した。不死性は消えなかったけど、微熱で一日ぼんやりしてたんだよ。

 

禰豆子の時は脳裏にフラッシュバックみたいのが起きたけど、今回はそれが無かった。それで微熱で済んだのかな?もう少し金髪さんと長く接してたら危なかったかも知れないね。

 

私に繋がる記憶を取り戻すチャンスだったけど、あの状況だと危険だったし、今回は仕方がなかったと諦めるんだよ〜

 

それと、パパから発熱の心当たりについて聞かれたから正直に答えた。他の世界でも似たことがあって不死性が消えたこと。金髪さんと干渉したことが発熱の原因っぽいともね。

 

魔王ポジのパパにこれ以上の弱みを知られるのは ちょっと憚られたけど、仕方がなかったの。タマや杏のこともあるし、変に濁すとダメな気がしたんだもん……。

 

さてさて 話を戻すけど、近いうちに世界渡りが発動しちゃうから、それまでに幾つかやっておいたことがあるんだよ。思い出しを兼ねて整理するね〜

 

 

まず、タマと杏の身の安全と治療の継続。これはパパとドクターに任せるしかない。私の目が届かなくなったら無茶苦茶にされる可能性もあるけど、こればかりはどうにもならないもん。二人とも!乙女の尊厳を失うことになっても強く生きてね!!(酷い)

 

まぁ、脅して二人の保証をさせることも出来なくはないよ。私が戻って来た時、二人に何かあれば許さないからね?……みたいな感じで。

 

でも、僅かでも築けてる信頼を真っ向から叩き潰す真似はしたくない。信用するしかないよね。

 

……あ、ドクターが薄ら笑みを浮かべながら涎を垂らしてる。やっぱり脅しておこうかな?(壁ドン)

 

次は世界渡りをする際、私に『同行者』を付ける話についてだよ。これに関しては、私の本能が『無理』と言ってる。私以外の『命ある者』は世界渡りさせられないって感じるんだよ。

 

……え?タマと杏は連れて来られたじゃないかって?二人は既に死んでたからね。そういう状態だったからこの世界に同行させられたんだと思う。そんな気がするの。

 

じゃあ、そもそも『同行者』の話は破綻してるじゃないか!……と、思うかも知れないけど、連れて行くのはドクターが用意してくれる『脳無』なんだよ。

 

脳無は改造人間だけど、ドクター曰く『動く死体』らしいから、ワンチャン連れて行けるかも知れないんだって。世界渡り君が設定ガバガバなら出来るかもね。上手く行く保証は無いけど、可能性が1%でも有るのなら実行するのが研究者なのかな?

 

あと、改良したスマホを持たせてくれるらしい。向こうでもパパ達とお話しが出来たら助かることもあるもんね。前の世界でもこの世界でもそこそこスマホは使ってたから扱いには自信があるんだよ。

 

基地局とか無くても通信出来るんだって!難しいことはよく分からないけど、取り敢えず凄いスマホってことだよね。馬のコスプレした女の子達が駆けっこするゲーム入れて良いかな?大丈夫だよ。そんなに課金はしないから。でも、月に3万円くらいまでは許して欲しいんだよ。カードの名義はドクターにしておこう!(鬼畜幼女)

 

後はパパやドクター、それにマキアさんを含めた何人かの部下さん達とお別れの挨拶をした程度だよ。そうそう、マキアさんへの『変質者』呼びはやめてあげた。最後くらいは名前で呼んで上げなくちゃ可哀想だからね。

 

マキアさんには初見以来 信仰に近い扱いを受けてたから、お別れの挨拶の時は大変だった。

 

『主の後継よ!是非とも旅の共に俺を!!俺をォオオオオ!!!』って叫びながら懇願して来たんだけど、無理なものは無理だからね!頑丈なマキアさんでも世界渡りの負荷には耐えられないだろうから連れて行けないんだよ〜!!

 

パパの説得もあって何とか理解してもらったけど、別れが惜しいのか、私を持ち上げて ぎゅ〜って抱き締めながら頬擦りして匂いを嗅ぎまくって来たのは流石に引いたんだよ。やっぱり変質者呼び続けようかな?

 

 

世界渡りの前にやったことはこの辺りだね。……そうだ!パパから私がこの世界に帰ってきた後の『進路』について話をされたんだった。

 

その内容には驚かされたんだよ。パパの口から出るとは思えないお話だったからね……。

 

 

 

---------------

 

 

 

……さてと、そろそろ時間かな?

 

あれから更に数日後、左手の光が眩しくなって来たから、私は世界を渡る場としてドクターが用意してくれたテストルームにやって来たんだよ。

 

前に私が左手の力を使った時とは別の部屋。そことは比べるまでもなく内装が全然違う。窓ひとつ無い部屋の壁は全部機械で出来てる。メカメカしくて薄暗いね。スターウォーズの帝国軍基地みたい。部屋の中央には六角形の大きな光る台座があって、その周りを幾つもの観測ドローンが浮遊してる。

 

そんな仰々しい見た目の機械達に囲まれた台座。その中心に立ってるのが私だよ。世界を渡る直前までデータを取り続けるらしい。可能ならそれを解析して異世界に干渉したいとかなんとか。

 

離れた所で大型のコンピュータを操作しながら わくわくしてるドクターとそれを隣で見てるパパが印象的だね。研究者の探究心は止まる所を知らないんだよ〜

 

私のすぐ後ろには、それぞれが大きなバックパックを背負った脳無が三体控えてる。すごく大きなバックだね。DEATH STRANDING(デスストランディング)のバックパックみたい。高速道路を作って運送を楽にしようか!(何の話?)

 

バックの中身は何かの機械みたい。それぞれ側面にボタンが付いてる。無事に世界を渡った先で押しなさいって言われたんだよ。何の為のボタンなのか今から気になるね〜

 

それにしても、脳無含めて今回は旅先に持って行く荷物が多過ぎるよ。これは世界渡り後のバタンきゅ〜(昏倒)は必至だろうね。脳無三体だけでも許容量オーバーなのに、加えて大量の荷物は嫌だな〜……とか言ったらドクターがすごく寂しそうな顔付きになったから渋々了承したんだよ。我儘なドクターだな〜

 

まぁ、私は不死身の純白幼女だし、向こうで倒れても何とかなるとは思う。その為に護衛として『ハイエンド(試作品)』が一体同行するんだもんね。頼りにしてるよ!紫色の大男さん!!

 

ハイエンドは私がバタンきゅ〜してる間の護衛で、稼働時間は精々数時間くらいだって。渡った先が危険な場所の可能性は十分にあるからね。実用性はまだまだだけど、その場を離脱するくらいの時間稼ぎくらいは出来るらしいよ。その間に長期間活動可能な残り二体の脳無達が私を運んで逃げる算段とかなんとか……。

 

あ!そんなこんなしてたら私の左手が一層強く光り始めたよ!強制的な世界渡りが迫ってるみたい。

 

ドクターに合図を送ったら、頷いた彼が手元の操作盤をピコピコ弄り始めた。私を取り囲む計測機の電源が次々に入って、周囲の観測ドローンも一定の距離を保ちながら私の周りをゆっくりと周回し始めたんだよ。

 

その他の機材も呼応して動き出したね。暫く計器と睨めっこしてたドクターも親指をサムズアップして『いつでも行けるぞ!』みたいな表情を向けて来てた。最後に軽く手も振ってくれたから振り返してあげたよ。

 

何だかんだあったけど、ドクターのお陰でタマと杏の命も繋ぎ止められたからね。感謝してるんだよ。治療にはまだまだ時間が掛かりそうだけど、二人ならきっと元気になってくれると信じてる。二人は神樹に選ばれた勇者だもん。絶対に大丈夫なんだよ!

 

置き手紙もパパに渡してるから、目覚めた時はそれを読んで状況を伝えるようにしてある。パパ、後のことは任せたからね!

 

後ろに並んだ脳無達も私の肩に手を置いた。触れてないと追従出来ないからね。ちゃんと連れて行けるかは謎だけど、やるだけやってみよう!

 

「……緋異廊。たった一度の人生だ。君の言った言葉だが、いついかなる時も常に楽しく愉快であることを忘れちゃいけないよ?」

 

ドクターの側を離れたパパが私の立つ台座の正面に寄って声を掛けてくれた。わかってるよ。曲がりなりにもパパ(魔王)の子供だからね。娘として恥ずかしくない振る舞いをするんだよ。

 

……あ!無慈悲に蹂躙するとかじゃないからね!言葉の綾なんだよ。私は私がしたいようにするだけだもん!

 

「そうさ。緋異廊はそれで良い。ありのままの自分を貫き、無駄な思考を省いて、やりたいように生きるといい……」

 

それだと私が制御不能の暴力装置になりそうだね。マキアさんみたいになるのは嫌だから、ある程度の知性とモラルは持ち合わせておくんだよ〜

 

むむ、左手の発光が強まってるね。いつでも両手を握れば世界渡りが発動しそう。

 

……うん。いよいよこの世界とはお別れかな。

 

見守るパパとドクターの顔をしっかりと瞳に焼き付けた後、私は両の手を前に出して、最後に大きな声で元気よく別れの挨拶をした。

 

「───じゃあ、行ってくるんだよ!!」

 

別れと言うよりは旅立ちの挨拶になったね。それも学校や友達の家に遊び行くような簡単な言葉。でも、それが私らしいと思ったのか、パパもドクターも笑顔を向けてくれてる。

 

「あぁ、楽しんで来るといい。遅くならないうちに、帰ってくるんだよ……」

 

その言葉を皮切りに、私は両手を強くぎゅっと握り締めた。途端に両手から激しい光が溢れて、部屋全体を包み込んだと同時に………、私はこの世界を後にした。

 

視界は真っ白に染まり、耳鳴りすらも聞こえなくなって、世界渡り特有の浮遊感を覚え始める。

 

そんな時、数日前にパパと交わした お喋りが、不思議と脳裏に蘇った……。

 

 

 

───緋異廊……。もしも君がこの世界に戻った時、魔王としての僕が〝終わっていた〟場合、君は寄る辺を失うことになるだろう。その時は魔王の娘としてではなく、別の道を生きるといい。その道も予め用意しておいてあげよう。

 

夕食後の何気無いティータイム。魔王の膝上でデザートのショートケーキを食べさせて貰っていた娘は、口の中のケーキを はむはむと咀嚼し終えた後、父親に返事をする。

 

───パパが自分の倒された話をするなんて初めてだね。完全無欠で敗北とは無縁の感性だと思ってたから少し驚いたんだよ。でも、娘の進路を真面目に考えてる所は父親として及第点以上だね!……ただ、そうなったら私はどんな道に進んだら良いのかな?

 

足をパタパタと動かしながらケーキの催促をする娘に、フォークで一口サイズにされたそれが再び迫った。今か今かと待ち侘びる娘の口にケーキが運ばれた瞬間、その進路を指し示す言葉が魔王の口から発せられる。

 

 

───それはね……〝ヒーロー〟さ。

 

 

パクッと口に含んだケーキの甘さと魔王が口にした言葉。それは複雑に絡み合いながら、娘の胃の中へと消えて行った……。

 

 

 






〜嘘か本当かシリーズ〜
とある魔王の独語


……夢を見た。

手を伸ばせば届く、理想郷の夢を見たんだ。

魔王を目指し、凡ゆる障害を跳ね除けて進み、全てを僕のものにする最高の夢。

夢とは叶うまでが楽しい。その過程を食事だとすれば、口に含む前の香りと見た目を楽しみ、咀嚼して飲み込むまでと同じ。

でもね、食事とは一人で摂っても楽しくはない。共感者が必要だ。僕にとってのそれは『弟』だった。

……いや、それは失ってから気が付いたこと。それまでは、自分が初めから持っていた『所有物』だから手元に置いていただけ。

失くしてから気付くなんて、僕もまだまだ人間の範疇を出ていなかったんだと驚いたものだよ。

その後、弟の意志が脈々と受け継がれていると知って、何とか取り戻したいと思うようになった。唯一無二の無くした私物を取り戻したいと思うのは当然のことだろう?

だが、どうしても思い通りにならない。凡ゆる物、人、個性。欲しい物は全て手元に置いてきた僕が、未だに触れられない存在に、弟は昇華していった……。

心のどこかで、もう取り戻せないのではないかと思い始めた頃だったかな?不意に『あの子』は現れた。

……驚いたよ。僕が『僕』として在り始めてから数える程しかない衝撃だった。

その衝撃は、血に染まり息絶える二人の少女に被さった あの子の姿を見たからじゃない。

匂いが……漂う気配も何もかもが、この世のものではなかった。常に様々な個性を混ぜ合わせ、五感を跳ね上げていたからこそ分かる。そして、感じたんだ。

───この子は神童だと。まごう事なき神の子だと。

この世の理を超えた超常の存在。僕たちの『個性』が塵芥に思える程に確立された者。天は二物を与えずなどと言うが、そんな次元の話ではない。

この子そのものが『天』だと悟った。

………欲しい。

純粋に心からそう思ったのは、いつ以来だろう。よちよち歩きの頃?……ドブネズミを払い除けながら残飯を漁っていた頃?……雪の降る中、路地裏で弟を抱き寄せ寒さを凌いでいた頃?

───弟を……、失った頃?

気が付いた時には、その子に声を掛けていた。救いを求める子に手を差し伸べ、確約など出来ない お友達の回復を誓った。

だが、その時はひたすらに思ったのだ。何としてもこの子を手元に置きたい。


そして、いつの日か僕の………僕の──────



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ここまで読んでくれてありがとう!

また次の世界の冒険が終わった頃に会いたいんだよ〜

みんなのコメントを待ってるね。何よりの励みになるんだもん!

コメントをくれない人は、ディアボロス教団と見なしてデルタさんを差し向けるから覚悟しておくんだよ?

……『デルタ』さんって誰かな?数字の意味だった気がするけど、そんな捻りの無い安直な名前なんて付ける人いるのかな?

それじゃ、バイバイだよ〜!

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