第?-1話 久しぶりに金ローを最初から最後まで観たんだよ。すごく面白かった!みんなはどうだったかな?(露骨なコメント稼ぎ)
ガタガタと揺れる馬車の上で私は微睡みに呑まれてる。お日様は高いのに暖かさが程良い。この地方は特にそうだね。数年間旅をしたけど、この辺りは お日様が優しいよ。
あぁ、頭を撫でて貰うの好き。枕の代わりにさせてもらってる膝と手が心地良い。私の安眠には欠かせない。これだけで馬車の荷台の上が高級お布団に早替わるんだよ。
「ほら、アトリ。もうすぐ着くぞ…」
ありゃりゃ、残念だね。もう少し惰眠を謳歌していたかったなぁ。でも仕方がないね。私はメリハリのある幼女なんだよ。
重たい瞼をゆるゆると上げて、今日の私の膝枕担当さんを見上げる。おはようなんだよ、ヒンメル。相変わらず、どんな角度から見てもイケメンさんだね。
私の言葉に そうだろう!そうだろう!と、胸を張るヒンメル。胸を張られると膝枕から落ちそうだから止めてほしい。眠たい目を擦りながら起きて、ぐい〜っと伸びをする。気持ち良いね。寝起き一番にこれをするのは止められないんだよ。
「よく飽きずに ずっと寝てられるね」
「寝る子は育つと言いますから」
「アトリの身長が伸び縮みしないのは知っとるだろうに…」
本に視線を向けたまま喋ったのがエルフのフリーレン。まだボ〜っとしながらポワポワしてる私の頭を撫でたのが僧侶のハイター。で、私がいつまでも幼女のまま成長してないと言ったのがドワーフのアイゼン。
何を隠そう、私達五人は魔王を倒した勇者一行。そして、今は王都への帰り道なんだよ。私はヒンメル達が旅立った後、しばらくしてから仲間に迎えられたからね。王都出発組みじゃないのが残念なんだよ。
勇者一行の凱旋だもんね。王都はきっと お祭り騒ぎの筈なんだよ。この世界は兎に角やることが賑やかだから、王都もさぞかし凄いことになってるんだろうね!ハイターはお酒を期待してる。私は未知!未知を所望するんだよ!食べ物でも景色でも、私が知らないモノなら何でも良いからね!
ガタゴト音を立てる車輪の音を聞きながら、私は間も無く到着する王都に胸を踊らせ、同時に終わってしまう旅に僅かな物悲しさも感じていた。
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王様ってパッとしない人だったね。お髭を蓄えた普通のお爺ちゃんだもん。……て、当人の前で言ったら打首にされる所だった。みんなが必死に止めてくれなかったら、今頃私の首はポトリだったよ。私の名前は『アトリ』なのに『ポトリ』なんだよ(お黙んなさい)
不死身だからギロチンの方が刃こぼれするだけだったろうけどね。なんか旅立ち前もヒンメルが似た状況になったらしいよ。後でハイターにでも聞いてみよう。
王様から少しのお叱り(私だけ)と大きな賞賛を受けて、私達は改めて魔王討伐を成したことを実感した。街は活気付いて飲めや歌えやの大騒ぎ。世界が平和に向けて歩み始めたんだもん。当然だよね。
謁見の後は街を練り歩いて沢山の人達に感謝の雨霰。ヒンメルは群がる女性達に取り囲まれ、ハイターはタダ酒に酔いしれ、アイゼンはそんな二人が迷子にならないようにお目付け役を勤めてる。そして、フリーレンはいつもの無表情を貫きながらも ほんのりと笑みを溢していた。
「アトリも楽しめよ。今日はどれだけ飲み食いしてもタダだからな。王様からのささやかなお礼だそうだ」
「本当にささやか過ぎだ。旅立ちの時の銅貨十枚と言い、この国は常に金欠なんだね」
「まぁまぁ、フリーレン。こうしてタダ酒が飲めるのです。今を楽しもうではありませんか」
お酒で少し赤くなってるハイターに 生臭坊主と溢しながら、たこ焼き擬きを頬張るフリーレン。私も同じのを食べてるけど、中身はタコじゃなかった。何だろこれ?説明出来ない味わい深さだね。でも美味しいよ。熱々のたこ焼き擬きも一定の熱さ以上を感じない私にはホカホカとした美味な食べ物でしかないんだよ。幾らでも食べられちゃうね。祭りが終わった後も食べ続けていたいよ。そんなにお金があるのかって?全部王様に付けといてよ(ダメです)
他にも美味しい物は沢山あるから、別の店に行こうとハイターに諭されて、私はみんなと屋台を巡りに巡ったんだよ。あれもこれも全部美味しい!この世界は自然が豊かだからかな?食材がみんな新鮮なんだよ〜
そうこうしてるうちに夜になっちゃった。楽しい時間はあっという間に過ぎるね。体感五分だもん。不平等過ぎて困っちゃうんだよ。
みんなは口々に冒険のことを振り返る。ヒンメルがいつも余計なことに首を突っ込むから旅が長引いたこと。ハイターが二日酔いで役立たずになったこと。アイゼンが うっかりハルバードを何処かに置き忘れたこと。フリーレンが宝箱に擬態したミミックに食べられたこと。暗黒竜に丸呑みにされた私が、そのまま巣にお持ち帰りされたこと。
話し出すとキリが無いね。濃厚な旅だったもん。掻い摘んで話したとしても十日は掛かるだろうね。
みんなのお陰でクソみたいな旅になったってヒンメルが笑ってる。でも、だからこそ楽しかったって。……まるで未来の私が言いそうなことを言ってくれるね。その言葉が気に入ったから、私も『私』が誰なのかを見つけた時、同じことを言わせて貰うんだよ。
ん?フリーレンは高々十年の旅だって。……そうだね。私も沢山の世界を何年も旅してるからね。この世界での数年も長いとは思わなかったかな。話を聞く限り、フリーレンは私と同じく不老不死に近い存在だもん。気持ちはわかるんだよ。
でも、みんなと出逢えて良かった。あのまま『魔王側』にいたら、私は騙されてると気が付かないまま、この世界の人達を惨殺し続けるところだった……。うぅ、思い出すと胃が痛くなってくる。
第一村人が人類にとって『敵』となる存在だったことは過去に訪れた世界でも少なくはないけど、この世界の魔王軍は超が付く外道が殆どだった。そんな魔族に良いように使われてたのは私の中の黒歴史だね。掘り返されると穴に入りたくなっちゃう。
勇者のみんなに挑まされた時も、後少しヒンメルの説得、誤解を解いてくれるのが遅かったら殺してたもん。物語が始まる前にゲームオーバーにしちゃう所だったよ。……ん?みんなは既に冒険にでてたんだから『始まる前』っ思うのは変だよね?どうしてそう思ったのかな。不思議なんだよ〜
あ!流れ星!それも沢山だよ。ハイター曰く『
「出た。アトリの妄言だ」
「ほほぉ、今度は神様ですか。でも、この星々は神様からの贈り物として相応しいですね」
もう、フリーレンもハイターも相変わらず失礼なんだよ!妄言じゃないのに。別の世界で起きたことなんだってば!……ぐぬぬ、結局最後まで私が別の世界から来たって信じてくれなかったね。私の頭の中だけのお話だと思われてるもん。心外なんだよ〜
この世界は自然に満ち満ちてるけど、流石に王都内からの星空は霞んで見えちゃうね。……ん?フリーレンが鑑賞に最適な場所を知ってるから次の機会にはそこに案内してくれるって!
やったね!次のエーラ流星の時期が待ち遠しいんだよ。それで、次はいつなのかな?
………え、五十年先なの?……ゑ??
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それから数日が経過して、王都のお祭りも収まりつつある時、フリーレンが先に旅立つことになった。趣味の魔法収集を続けるんだって。もっとゆっくりとして行けば良いのにね。相変わらずの魔法好きさんなんだよ。そうだ、一緒に行ってあげようか!……え?トラブルメーカーはお断り?ガッカリなんだよ。
それにしても、五十年後か〜。私はそれまでこの世界に残っていられるのかなぁ……
遠退いていくフリーレンを見つめながら、私は自分の左腕を見下ろした。
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-----勇者ヒンメルが魔王を討伐して五十年の歳月が経過した頃、件の勇者パーティは再び集まった。
すっかり老いたヒンメルやハイターに驚くフリーレン。だが、外見こそ変われど、彼らの心は何一つ変わる事なく相変わらずであり、不思議と安心感と安堵を感じていた。だが、ふと気になることがあった。辺りを見渡して、その気掛かりが居ないことを確認した後に口を開く。
「……アトリは まだ来てないの?」
その言葉に僅かな沈黙が生まれたが、ハイターが重たげに口を開く。……あの子は消えてしまったと。
まるで具体性の無い答えに不満を漏らすフリーレンだが、ハイターもそれ以上の説明が出来なかった。何故なら、それが全てだったからだ。
フリーレンが去って数年後、アトリは王都の街中。何の変哲もない道端で突然光に包まれて消えてしまったのだと、多くの街人が目にしていたそうだ。
光に包まれる……というハイターの言葉でフリーレンは思い出す。アトリが事ある毎に言っていた話だ。左腕が光を放ち、周囲を眩しく照らした時、自分はこの世界を去る事になる。そんな話だった。
それはアトリの想い描く空想であり、夢見がちなアトリらしい不思議な発言の一つにしか思っていなかった。だが、ここに来てそれが現実味を帯びて来ている。一瞬、アトリのイタズラとも考えたが、その後 五十年も姿を見せないのは異常が過ぎるだろう。
「まさか……本当の話だったの……」
ポツリと口にしたフリーレンに、誰も返す言葉が見つからなかった。天真爛漫でコロコロ変わる表情を振り撒いて、常に元気にパーティを明るく保ってくれていたアトリ。あの子はもう、この世界には居ない。
たったの数年だ。ヒンメル達とは十年 旅をしたが、アトリとはその半分程度の付き合い。だが、その半分がとても濃厚な日々だったのは記憶に新しい。
あの子は不老不死だった。だから、別れる時も対して会話をしていなかった。また数十年程度もすれば会うのだからと。きっと長い付き合いになるだろうからと。そんな軽い気持ちで別れたのだ。
………もう会えないんだ。
そんな思いが浮かんだ時、フリーレンは目の前の年を取ったヒンメル達のことを よく知ろうと……いや、知るべきだと唐突に思い立った。
これからエーラ流星が美しく見える丘の上まで、歩いて七日ある。たった七日だが、それでも構わない。ヒンメル達のことをもっともっと知らないといけない。覚えておかないといけない。使命感にも近い感情が芽生えたフリーレンは、その短い旅の中で停滞させていた十年分の会話をしながら勇者パーティと七日間の短くも長い冒険を繰り広げるのだった。
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「ありがとう、フリーレン。君たちのお陰で最期に素晴らしい冒険ができたよ」
五十年振りのエーラ流星の下で、ヒンメルは目を輝かせながらフリーレン達に感謝を述べた。魔王を倒してからも、魔物の討伐などを生業としていたが、その時から感じていた違和感と物足りなさがシコリとなってヒンメルに纏わり付いていた。それは魔王軍と比べて戦いの緊張感や、やり甲斐の無い仕事に対する不満なのではないかと思う日もあった。だが、今ハッキリと実感した。みんなが居たからだ。みんなと一緒にいたからこそ楽しくて仕方がなかったのだ。
こうしてみんなと流星が見られて良かった。人生の締め括りとしては申し分ないだろう。何となくだが、自分の死期が近いことを悟っていた。この日を……この日だけを待ち望んでいたからかも知れない。張っていた糸が切れるようなものだろうか。
死が恐ろしくないのかと問われれば否と言うだろう。だが、みんなとの思い出さえあれば、死を受け入れることが出来そうだ。目を瞑れば暗闇が広がるが、そこにはみんなの笑顔が思い浮かべられる。何も臆することはない。きっと大丈夫だろう。
だが、心残りが無い訳ではない。……アトリのことだ。今この場に居ない最後のパーティメンバー。あの子の頭を撫でて、膝枕をしてあげることが好きだった。それは全員に言えることだろうが、あの子はそれがお気に入りだった。
今頃どうしているのだろうか。寂しい思いをしていないだろうか。知らない世界でひとりぼっちなのではないだろうか。あの子が消えてからというもの、常にそんな思いが燻り続けていた。国王に掛け合って国中を捜索までしたが、何一つ手掛かりは掴めなかった。きっと、本当に別の世界に渡ってしまったのだろう。
せめて……せめて、最期にあの子の頭を優しく撫でてあげたかった。
ヒンメルを始め、他のみんなも同じことを考えていたのか、少しの沈黙と澱んだ空気が場に溜まり始める。だが、それは一人の言葉で掻き消えることになった。
「……ん?ねぇ、あの流星。落ちて来てるよ」
その言葉に全員が同じ星を目に映す。白い尾を引く流星は、確かに落下してきていた。それはヒンメル達がいる丘の下に広がる円状の湖へと向けて突き進んでいる。
隕石ならば危ないとも考えられるが、誰しもがその星の『姿』を見た時、思わず立ち上がって駆け出していた。声を出すでもなく、ただ湖に向かって走ったのだ。
次第に地表に近くなる白い流星はバタバタと足掻いているような動きを見せ、それが星では無いことを証明していた。老いたとはいえ、勇者のパーティだ。中でも老体に鞭を打って駆けるヒンメルは速かった。この場所まで七日間の行程を思い出しても人一倍足腰が弱っていると見て取れた彼にしては速過ぎる程に。
「ひゃあぁぁぁ‼︎」と叫び声を発っしながら落ちて来た白い星は、やがて湖に着弾した。大きな水柱を叩き上げながら、辺りに水飛沫を撒き散らす。その頃には湖に辿り着いていた勇者の面子は、服が濡れるのも構わずザブザブと湖を突き進む。広さの割には腰程度の浅さしかない水を掻き分け、星の落下地点へと急ぐ面々。その表情は不安や期待感の入り混じるものだったが、落ちた白い星が ぷはぁッと顔を出した瞬間、破顔したような顔付きへと変わった。
純白のワンピースをびしょ濡れにして、大量の水を滴らせる星は、何か悪態を吐きながら口に含んだ水をペッペッと出している。
「……アトリ!!!」
誰が発したかはわからないが、その声を聞いた星は彼らに振り返る。一瞬訝しむ顔になったが、次の瞬間には五十年振りに見る満面の笑みを浮かべて勇者の面子へと向かっていった。
少々遅れはしたが、こうして勇者のパーティはエーラ流星の降り注ぐ空の下、再集結したのだ……
※ウィアートリークス。ラテン語で女性の名前だね。旅行者を意味してるよ。ちなみに、ベアトリスは『喜びの運び手・幸せの担い手』とも解釈されてるらしいね。え?この話の続き?アニメが進んだら、そのうち本編に組み込んで連投するかも知れないんだよ(何の話?)