この二人は海賊だった。
知ってるよ。知ってたんだよ海賊の知識。
何処で知ったかはわからないけどね。
旗を見て、海賊みたいなデザインの旗だな〜。と思ったんだけど、本当に海賊だった。
でも悪いことはやってないんだよね。
別の小さな海賊船襲ったり(私は隠れて見てた)襲われる一般人から市民を守ったり(私は隠れて見てた)そんな光景が続くばかりだ。ねぇ海賊やめなよ。
それと、二人の名前もわかったよ。
メガネさんは『れりー』で麦わらさんは『ろじゃ』と言うみたい。
イントネーションが少し違うみたいだけど、二人の反応からだいたい合ってるぽい。
合ってるぽいならそれで良いよね。
名前を呼んだ時の二人の驚いた顔が面白かった。
自分の顔を指差しながら『ろじゃ!ろじゃ!』ってやってて嬉しそうにしてたよ。
そういえば、れりーが私に下着や靴を買ってくれた。
薄手のワンピ一枚じゃ可哀想と思ったのかな?
貰えるものは有り難く貰うよ。
私は花も恥じらう少女だからね。ノー下着はよろしくないもんね。
ん?別に後ろ向いてなくても良いんだよ?私は気にしないよ?
そもそも裸の私を甲斐甲斐しくフキフキしてくれてたでしょ?
あぁ、れりーはその時は目を瞑って吹いてくれてたっけ?ろじゃ は目を開けてたよ?すごく興味なさそうにしてたなぁ…(ショック)
れりーが ろじゃの顔を無理矢理にひん曲げて明後日を向かせてる。おもしろいね。
……。
…………。
ごめん。やっぱり下着は要らないや。ゴワゴワする。
何だろう?密着してるのがイヤだ。気に入らない。
気持ちは嬉しいけど、これは海の藻屑となってもらおうかな?
イテッ!?…何で叩くの?着とけって?ヤだよ。ゴワゴワ〜ってするんだもん。
全身を締め付けられてる感じで すごく不快なんだよ。
あーもう!わかったよ。わかったから そんな人を変態みたいな目で見ないでよ。私は花も恥じらう少女だって……、ありゃ?
なんだろう?遠くに大きなお船が見える。
立派な大砲も付いてるね。マストにはカモメみたいなマークもある。
こっちに向かって一直線だ。
ん?どうして れりーは慌ててるの?ろじゃは相変わらず面白がってるよ?
うわ!あの軍艦いきなり撃ってきたよ?
酷いね。私たち何もしてないんだけど。
もしかしなくてもあれって海軍かな?
世界観的に居てもおかしくないな〜なんて思ってたけど、やっぱりそうなのかな?
おっと、今のは危なかったね。船のすぐ横に着弾したよ。水飛沫すごいね。
じゃ、私はこの辺で失礼するよ……と、言いたいんだけど二人からの視線が痛い。
はいはい。そんな目で見つめないでよ。やるよ。やれば良いんでしょ?
私の移動方法を知ってる れりーからの『あれやって』感がすごいもん。
見捨てて行くのは忍びないから一緒に行くよ。
ろじゃもワクワクしながら見つめてくる。やりづらいからあっち向いてて欲しいな。
倒れた後の面倒はよろしくね?目覚めの一杯は甘めの飲み物がいいな。
え〜と、取り敢えず軍艦と反対方向で良いよね?
適当な地平線に手を出して、いつものように軽く手を握る。
……。
…………。
景色変わらないね。
相変わらず軍艦からの砲撃音がうるさい。
もう一回やるよ。今度はもっと真剣にね。
地平線を掴んで引き寄せる感覚だ。初心を忘れちゃいけないね。
……。
…………。
あ〜、ダメだね。出来ないや。なんでだろう?
れりーと ろじゃの頭に『?』が付いてる。
ごめんね。こんな時どんな顔すればいいのかわからないの。
脳内で『笑えば良いと思うよ』と、声がした気がしたから取り敢えずニッコリと笑っておいたけど、なんか逆にれりーがパニックになって、ろじゃは今日一番笑ってた。
この選択は間違えてたかな?それとも正解?
次の瞬間、私達のお船は軍艦の砲撃でひっくり返った。
ーーーーーーーーー
なんでかな。牢屋にぶち込まれました。
軍艦の砲撃でも殆ど無傷なバケモノな私たちは、海兵さん達に引き上げられてそのまま牢屋に放られたよ。
待って待って。私は海賊じゃないよ?
そこそこ長く一緒に過ごしたりご飯食べたりしてるけどそれだけだよ。
なんなら捕虜的な立ち位置だとおもーよ?だから出してほしいな。
……ダメみたい。言葉通じないもんね。仕方ないね。
同じ牢屋に入れられた れりーと ろじゃは手枷を嵌められてる。重そうだね。
私は何故かされてない。幼女だからかな。舐めプされてる。……なめぷ?
なんだろう、不意によくわからない言葉出るけど……まぁいいや。
それよりも、今はどうして瞬間移動が出来なかったかを考えないと。
疲れてた?お腹空いてた?よく眠れてなかった?それとも使える回数が決まってたとか?
強過ぎる力ってそれなりに制限があるイメージだけど、私の場合は『昏倒』だと思ってた。
それだけじゃなかったってことかな?
試しにもう一度、今度は牢屋の外に出るイメージでやってみよう。
でも、その前に良い加減この下着と靴が鬱陶しいから脱ぐよ。ストリップだよ。
れりーが隣で何かうるさいけど、無視して脱ぐ。そんなに見たくないなら目を閉じてれば良いじゃん。
白ワンピ一枚の私に戻ったよ。ゴワゴワのイヤな感じが消えた。こっちのが良いね。
脱いだ下着は畳んで牢屋の隅にでも置いとこう。
短い間だったけど、私のことを包んでくれてありがとね。
ひたすらにゴワゴワしてた君たちの事は忘れないよ。
よし。それじゃ、改めて牢屋の格子から手を出して軽く握ってーーーーーー
ありゃりゃ、出来たね。
最も容易く行えたね。
既に牢の外にいるよ私。
呆気なさすぎて逆に驚いてるんだけど。
ほら二人もキョトンとしてるよ。
……もしかして下着?アレが原因とか?
確かにゴワゴワして動き難くて、なんか束縛感があったけど。
心に『ゆとり』が無いと使えないとかそんな感じ?
……まぁ誰も答えをくれないから自己解釈しかないよね。確信はないけど、今はそれでいいや。
さてと、じゃあ清廉潔白な私は一足先に逃げようかな。
ん?何かな二人とも?その置いていかれる子犬みたいな目は?
いやね。出してあげたいよ。今日まで一緒だったんだもん。情くらい湧いてるんだよ?
でも二人は牢屋の中にいるでしょ?
たぶんそこから出してあげる為に力を使うとその場で私バタきゅ〜だよ?
軍艦の檻から出ただけで力を使い果たしたら結局三人共また捕まるだけでしょ?
なら私一人でも逃げた方が良くない?三人揃って連行されるのと一人助かるのなら後者を選ぶでしょ?当然だよね。
……と、言う訳で今度こそ。本当に今度こそお別れだね。シーユーアゲイン(四度目)だね。
二人とも達者で暮らすんだよ!
ひらひらと手を振りながらその場を後にする私に、二人がどんな顔を向けていたのかはわからない。
でも二人ならきっと大丈夫だと信じてるよ。確証も保証もな〜んにも無いけどね。
ーーーーーーーーー
はい。海兵さん達に取り囲まれした。
軍艦の上だもんね。甲板に出たタイミングでイヤでも見つかるよね。
見た目幼女だからか銃は向けられてないけど、遠巻きに囲まれてる。
待ってよみんな!私は海賊じゃないんだってば!私はただの幼気で人畜無害な記憶喪失系幼女だよ。
言葉通じてないから何言っても進展しないや。
私の倍以上ある背丈の海兵さん達に囲まれてるせいで瞬間移動も出来ない。
あれって見えてるところじゃないと使えないから壁を造られると逃げられないんだよ。
あ、ちょ!腕掴まないでよ。私は自由に生きながら『私』探しがしたいだけなんだってば!
一人の海兵が私の腕を掴んだので、振り払おうと腕に力を込めて薙いだ。
……瞬間、すごい風圧と一緒に海兵さんはその他の海兵を数名巻き込みながら勢いよく吹っ飛んだ。
思わず「わぁお…」なんて声が漏れちゃった。え?なに?どうしてそんなに吹っ飛ぶの?
そこそこ力は入れたけど、大の大人を飛ばす幼女とかあり得ないでしょ?
ありゃりゃ、みんなの警戒度が跳ね上がったみたい。
待ってよ待って!今のは何かを間違いだよ。弁解させてほしい。違うってばこの手は弁解を求めるジェスチャーであって攻撃の意図は無いんだよ!
手をパタパタ振ったのがダメだったのか、銃を構えた何人かが撃ってきた。
最早ここまで!ごめんね記憶を無くす前の私!私のことは何一つわからないままにゲームオーバーなんだよ!
初見クリアは出来なかったけど、強くてニューゲーム出来たならその時は頑張るから!
……ありゃりゃ、痛くない?
弾は当たってるよね。指先でツンツンされたくらいの感覚しか無いよ?
足下に転がるへしゃげた銃弾が確かな命中を証明してる。
呆気に取られてるのは私もだけど、海兵さん達も酷く狼狽してる。気持ちはわかるよ。私も君たちと同じ境遇だもん。
弾が当たっても痛くもなんとも無い私って……やっぱり普通の人間じゃない?
れりー「あの娘、大丈夫だと思うか?」
ろじゃ「これは運命だ!」ドドン‼︎
れりー「……お前最近どうした?」