幼女だよ。異世界を巡って自分探しをしてるよ   作:KDAL

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第?-10話 ヒンメルはハートの器集めを怠ったんだろうね。だから剣が抜けなかったんだよ。私に任せて!ハートがカンストしてる私なら抜けると思うの。デクの木様も仰天するくらい気持ち良く抜いたげるんだよ!

 

 

 

雪の積もった山道を えっちらおっちら歩いて、漸く次の目的地───『剣の里』に辿り着いた。

 

ここまで長くて寒かったね。旅の途中、吹雪で遭難し掛けたり、フリーレンと同じエルフのクラフトさんと知り合ったりしながらやっとの思いでここまで来たんだよ。

 

私は一定の寒さ以上は感じないけどね。少し肌寒い程度だったけど、それでも『肌寒い』とは感じちゃうもん。万年ノースリーブ肩出しワンピースな私は、ずっと身体を包むように摩って雪道を歩いてたんだよ。

 

………最近になって、これワンピースじゃなくて、キャミソールなんじゃないかと思い始めたんだけど、実際の所どうなんだろう?

 

え?寒いなら どうしてフリーレン達みたいに厚手の防寒着を着てないんだって?うん。重たくって歩き難くてね。起動力が駄々下がっちゃうから服屋で買ってあげるって言われたのに『要らな〜い』って言っちゃったんだよ。自業自得だね。反省なんだよ〜

 

「寒かったですね。アートリクス様、よく頑張りましたよ」

 

両手にハァ〜って息を吐き掛けて温めてたら、後ろからフェルンが包み込むようハグしてくれた。ほわぁ……フェルンは体温高めだね。フェルンの着てる防寒着も相まってポカポカであったかいんだよ。このまま寝落ちしちゃいそう。

 

序でに頭も撫で撫でされて、私のご機嫌は最高潮。迂闊にも えへへ〜って、とろ顔を晒しちゃってた。いけないいけない、私はこれでも勇者パーティの前衛だもん。威厳と風格を大切にしなくちゃね!

 

……あ、そこ好き。顎の下を摩られるの好き。もう少し手前を撫でてくれないかな?……そこ!そこが一番気持ち良いんだよ〜(相変わらずのクソちょろ幼女)

 

「お待ちしておりました。フリーレン様」

 

フェルンの指捌きに完堕ちしてゴロゴロと喉を鳴らしてると、里の奥から何人か村人が出てきた。先頭に立ってる幼女がフリーレンと話してる。会話から察するに、あの子が里長なんだね。世襲がどうとか言ってるけど、それ以上に私には気になることがあるんだよ。

 

フェルンのあったかハグを惜しみつつ、私はザクザクと雪を踏み締めながら里長ちゃんに近づく。幼女にエンカウントしたら背比べをしなくちゃね。最早恒例行事なんだよ〜

 

「それ以上近寄るな!」

 

お、里長ちゃんの後ろに控えてたボディガードみたいな人達が私に剣の先を向けてきた。……あぁ、そうか。就いてた期間は短かったけど、私は元・七崩賢の魔王軍だもん。ここは剣の里だし、そのことを知らない筈はないよね。警戒されるのは当然なんだよ。

 

「良いんです。あなた達は下がってください」

 

里長ちゃんが彼らを制してくれた。ありがとう。ただ、私が言うのも何だけど、ちょっと警戒心が薄くないかな?この里の重要度的に、睨み付けるくらいが当然だと思うんだけど?里長なら尚更ね。

 

「仰る通りです。ですが『アートリクス様は魔族にあっさりと騙されて、滑稽にも利用されていただけだから、寛大な心で許してあげなさい……』と言うのが、先先代のお婆様の遺言なので」

 

おぅふ!私の精神にクリティカルな遺言だね。深く心に突き刺さったんだよ。先先代のお婆さんは物理に強くて精神攻撃に脆い私の弱点を良く分かってるんだね。流石は剣の里の里長だ。鋭い剣を隠し持ってたんだよ。剣の里だけにね!(全然上手くない)

 

でも事実だから反論出来ない。悔しいんだよ。……あ!里長ちゃんが何故かドヤ顔で私を煽ってくる!オマケに私よりも ほんの少しだけ背が高い気もする。うえ〜ん!全敗なんだよ〜!フェルン慰めて〜〜っ!!

 

先先代の遺言に負かされて目尻に涙を溜めた私は、思わずフェルンの胸に抱き付いた。私のお豆腐メンタルを癒してくれるのは体温高めであったかなフェルンだけなんだよ〜

 

「よしよし、アートリクス様は悪くない、悪くないですよ。ちょっとお(つむ)が足りなくて騙されちゃっただけですもんね」

 

私の背中を撫でつつ、頭をポンポンしてくれるフェルン。優しくて柔らかくてバブみを感じるんだよ〜。……ちょっと言い方に棘がある気もしたけどね。

 

フェルンの腕の中であやしてもらいながら、私達は村の奥へと進んで行く。

 

………やっぱり村の人達の視線が痛い。私に突き刺さってくる。窓とか家の角から覗き見てるよ。ヒソヒソと話をしてるし、中には手に凶器を持ってる人も居るんだよ。

 

自己防衛の為だと思うけど、もしかしたら背後からドスっと刺されるかも知れない。ヒンメルの剣でも擦り傷一つ付かなかった私には効かないだろうけど、そんなことをされちゃったら、私の心は酷く深く傷付いちゃうんだよ……。

 

「……ねぇ」

 

「はい。わかりました─── 全員、控えなさい」

 

フリーレンから不機嫌な声色が聞こえたと同時に、里長ちゃんがさっきまでの幼女ボイスが嘘みたいな冷たい声を上げた。わぉ、そんな無機質な声も出せるんだね。思わずゾクゾクっとしちゃったんだよ。

 

それを聞いた村の人達が慌てて蜘蛛の子みたいに散った。私なんかの為に気を使わせちゃったみたいだね。いや、自業自得だし、針の筵だろうと受け入れるつもりだったけど、それでも みんなの軽蔑と畏れの視線って すごくツラい。冗談じゃなく泣きそうになっちゃうんだよ。

 

「失礼しました。事前に里の者には通達していたのですが、拭い切れない事情を持つ者もいますので……」

 

いや、良いんだよ。ありがとね里長ちゃん。ぺこッと頭を下げて素直にお礼を言った。里長ちゃんは出来た幼女なんだね。私と違って中身は成熟した大人な幼女みたい。何年経っても内外共に未熟な幼女のままの私とは格が違うんだよ。

 

里長ちゃんも『良いんです』と笑顔で応えてくれた。嬉しい。魔族に騙されて醜態晒したクソちょろ幼女な私に優しくしてくれるのが嬉しい。今度盗賊なんかが剣の里を襲った時には連絡してね。誰よりも早く駆け付けてそいつら千切って投げるから!

 

剣の里だし、生半可な奴らなら千切投げ(ちぎな)くらい出来そうだけど、脳筋でフィジカルお化けな私がお返し出来るのはその程度だからね。時が来たら猛威を振るってあげるんだよ!

 

その時はどうかよろしくお願いしますね。と、手を差し伸べてくれた里長ちゃんが眩しい。この子は何かな?天使なのかな?実は白い羽と天使の輪っか(ヘイロー)が付いてたりしないかな??私に天使が舞い降りたんだよ〜

 

……あ、そうだ!ねぇねぇ、里長ちゃん。〝これで勝ったと思うなよ〜ッ!〟って言ってくれないかな?さっき会った時から思ってたんだけど、すごくハマる気がしてるんだよ!

 

「これで勝ったと……、え?なんです?」

 

なんやかんや打ち解けた里長ちゃんと楽しく談笑しながら、今夜泊まらせてもらうログハウスへ案内してもらった。

 

ちなみに、里長ちゃんとはその日の夜一緒のお布団で寝ることになったんだけど〝危機管理〜ッ!〟とか〝なにくそにゃ〜ッ!〟とか言ってもらえた。やっぱりすごくハマる。まだまだ言ってもらいたい言葉は沢山あるからね!今夜はオールなんだよ〜

 

 

 

---------------

 

 

 

次の日、私たちは目的の魔物討伐に赴いた。ヌシと呼ばれてる大きな二足歩行の狼を屠ったよ。フリーレン達があっさりと片付けちゃった。私の出番が無いのが残念だったね。私はいつ世界を渡るか分からないから、戦闘はシュタルクに任せることが多いんだよ。場慣れしておかないと、いざと言う時に戦えないもんね。思いっきり身体を動かして遊びたかったのに〜(戦闘狂幼女)

 

あ、そうそう、忘れてたんだよ!里長ちゃんにも『もう一人の私』について何か知らないか聞いたんだけど、残念ながらそんな事実すら初耳だったみたい。

 

剣の里なら きっと手掛かりや風の噂くらいあると思ってたのにね。全く無いのも少し不気味なんだよ。戦士の里の生き残りがシュタルクさんだけだとして、そこを襲った魔族達が他の街や里を襲撃してないとも思えないし、どうなってるんだろう?

 

電話とかメールも無い世界だし、本当に剣の里(ここ)まで情報が届いてないだけの可能性もあるけどね。新情報を期待してた分、当てが外れたのは少しガッカリかも……。

 

「フリーレン、これってどういうことなんだ?」

 

む?シュタルクが洞窟の奥に刺さってる勇者の剣に気が付いたみたいだね。それの放つ御立派なオーラに当てられて魔物が集まって来てたんだよ。あれ?フリーレン話してなかったの?じゃあヒンメルの剣が偽物なことも?……あぁ、その顔は話してなかったんだね。

 

シュタルクとフェルンが何の話か分かってないから、里長ちゃんの許可を取ってフリーレンが簡単に説明してくれた。

 

剣の里には『勇者の剣』があること。今までそれを抜けた勇者は一人も居らず、ヒンメルもその一人だったこと。でも、ヒンメルは勇者の剣なんて無くても、魔王さんを倒して本物の勇者になったこと。

 

二人が真実を聞いて驚いてる中、私は件の勇者の剣がずっと気になってた。話には聞いてたし、ヒンメルも何だかんだ抜けなかったのが残念だったみたいな話はしてたから、すごく興味があったんだよ。……ねぇねぇ、里長ちゃん。あの剣、私も抜けないか試してみて良いかな?

 

フリーレンが、流石にそれは……と言いかける中『良いんじゃないでしょうか?』と、里長ちゃんはあっさりと許可してくれた。やったね!流石は親友の幼女仲間なんだよ。昨日も夜遅くまで楽しくお喋りしたもんね。里には他に同世代の子供もいなかったみたいで、里長ちゃんも久しぶりに気兼ね無く喋れる相手が出来て嬉しかったみたいだよ。

 

よ〜し!じゃあ、引っこ抜いてみるね〜!私が次の勇者になるんだよ〜〜!!………なんて言ったけど、全然抜けない。すごいね。これが勇者の剣かぁ。なるほど、納得のガッチリ固定系の剣なんだよ。 かの有名なハイラルの勇者や騎士王さんが手にした伝説の剣と同類だもんね。感慨深いものがあるんだよ〜

 

うむむ。しかし抜けないね。まぁ、私も本当に抜くつもりなんてないし、ちょっと触りたいなぁ〜ってくらいのノリだったから良いんだけどね〜

 

なんて思いながら剣のグリップから手を離そうとしたんだけど………なんかフリーレン達が『ふ〜ん、アトリでも無理なのか〜。そっか〜、ふ〜〜〜ん』みたいな目で見てくる。

 

ぐぬぬ、流石にその視線は傷付く。戦闘力だけなら誰にも負けない私の存在意義が問われちゃうね。勇者の剣には記念のつもりで触ろうと思っただけなんだけど、こうなったら本気で抜いてやるんだよ!ふんぬ〜〜!!ふんならば〜〜〜ッ!!!

 

ムキになって『勢い』任せに剣を抜こうとする私に、みんながやめた方が良いみたいな声掛けをして来たんだけど………ちょっと止めるのが遅かったみたい。

 

 

「 「 「 「 「 ───あ 」 」 」 」 」

 

この場にいる全員がそう言った。勿論、私もね。すぽんッと、小気味良い音が洞窟内に響いたと同時に勇者の剣が───抜けたんだよ。

 

でも、みんなが注目したのは抜けた剣よりも、その切先に付いた『オマケ』の方だった。

 

剣の先に『岩』がくっ付いてる。岩に刺さって固定されてた剣がそれごと ずっぽ抜けたみたい。イメージし易く言うと、ティアキンのスクラビルドみたいな感じだね。『剣+岩』状態なんだよ。攻撃力アップだね。ガノンでも倒しに行く?

 

う〜ん。これは……、厳密には抜けてないんじゃないかな?だって切先周辺の岩ごと抉り取っちゃった訳だからね。

 

心なしか勇者の剣も嘆いてる気がする。え?そんなの有り??みたいな悲しみのオーラを感じるんだけど、これは気のせいかな???……よし、気のせいにしておこう!!(現実逃避幼女)

 

フリーレン達の何とも言えないジト目な視線に気が付かない振りをしつつ、私はそっと ぶっこ抜いた『勇者の剣+岩』を洞窟の壁際に立て掛けて、その場から立ち去ったんだよ〜(心の中で精一杯の謝罪)

 

 

 

---------------

 

 

 

無事に魔物討伐を終えた私達は、剣の里を去ることにしたんだよ。里長ちゃん、また五十年したら遊びに来るね。その頃まで私がこの世界に止まってるかは分からないけど、元気な幼女のままでいてほしいんだよ!

 

「残念ながら、その頃にはヨボヨボのお婆ちゃんになってるか、私の子孫がお迎えすると思います。でも、またお会い出来る日を楽しみにしていますね」

 

ちょっと寂しそうにしてる里長ちゃんと硬い握手をした後、お互いに名残惜しくも手を振り合って私達の旅は再開した。次は何処に行くのかな?新しい幼女友達に巡り会えるといいな〜

 

 

 







〜嘘か本当かシリーズ〜
▶︎純白幼女と別れた後の里長ちゃん◀︎


↓↓↓背の低さを指摘されて↓↓↓
「小さなにくそにゃ〜ッ!まだ成長するかもら〜!」


↓↓↓家に帰りたくなって↓↓↓
「かえして!おうちにかえして!」


↓↓↓フォークを手に取って↓↓↓
「フォークなのに匙加減〜!フォークなのに匙加減〜〜!!」


里長ちゃんに『別世界の魔族の口調』を植え付けた純白幼女に対して、里の人々の憎しみが更に膨らんだとか膨らまなかったとか……。シャミ子とアトリが悪いんだよ?


勇者の剣+岩「そんなことより訴訟起こしたい」(ボソッ


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